蓂莢亭の物書きペンギン

泣いても一生、笑っても一生、ならば今生泣くまいぞ。

世界を生きてみる

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素敵な小説を書かれるhachiさんと、夢のようなコラボを決行しました。

テーマは『ゲーム』の小説×イラストです。

お時間の許す限り、楽しんでください<(_ _)>

上からどうぞお読みください。
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イメージ 1

 

 人に絶望を与えるのは簡単だ。
 
 偽りの愛を囁くだけでいい。



 人に快楽を与えるのも簡単だ。

 僕が感情を殺せばいい。



 翼を失い地に堕ちた僕は

 こうして地上で生きるのだ。

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[1]

「全て嘘だったというのか!?」

 高級ホテルの一室。

 ダブルベットの上で僕に馬乗りになっている男が激昂した。

 感情を昂らせ我を忘れた男は、返事を待たずに僕の頬をグーで殴った。

 痛みは感じない。

 世界は、この痛みより酷いから平気だ。

 ただ、今の状況は好きになれなかった。

 世間で紳士と呼ばれる男の、僕に対する束縛という欲。

 正直イライラする。

 僕の全てを自由にしていいのはトキだけだ。目の前にいる、男じゃない。

 だから僕は警告をする。

 男の喉元近くへ手を伸ばし、爪で引っ掻いた。

 肌に紅い線が浮き出てきた。

(綺麗だな……)

 生きているモノだけが付けることができる特権のような色。

 とても素敵な事なのに男は痛そうな顔をする。

「そんな顔をしないで、僕はあなたの優しい顔が好きだから」

 僕は囁き、今度は爪で喉を切り裂いた。

 紅い温かな生の証が、ほとばしり僕を濡らす。

 苦痛に満ちた表情のまま動かなくなった男が、僕に覆いかぶさってきた。

 魂を失い重たくなったモノの下から脱出すると、僕はモノを残し僕は寝室を出ていっ

た。

[2]

 僕は天使だ。

 そう言って、信じる人間はまずいない。

 翼もない、空も飛べない。

 それに……

「こんな血塗れの天使が、世界中どこを探したっているわけないよ」

 僕は呟き、熱いシャワーを浴びる。

 僕を染めていた紅を、綺麗に流すのだ。

 濡れたまま部屋に戻ると男も紅く染まったシーツもなく、トキが一人掛けのソファーに

腰掛けていた。

 トキは美の暴力とでも言うべき容姿をしていた。

 誰もが見惚れ、失神をしてしまうほど美しいが、僕はトキの前を素通りし床に置きっぱ

なしのタオルを手に取った。

 髪をガシガシと強く拭いている間、トキの視線を感じていた。

 僕は無視をする。

 トキの言いたい事がわかっているからだ。

「どうでしたか?」

 トキの声は、地上のものとは思えぬほど甘美で憂いに満ちていた。

 僕は答えることなく、タオルで乾いてしまった髪を拭き続けた。

 いつの間にか隣へ来ていたトキが、僕の手首を掴みタオルで髪を拭く事を禁止した。

「手を離せ!」

 トキをキッと睨みつける。

 この睨みつける行為が、少しも怖くない事を僕自身よく解っている。

 なのに、トキは物凄く辛い顔をした。

 それが、とても腹立たしかった。 

 トキは僕を怒らせて、楽しんでいるのだ。

 そして……これから始まる時間を喜んでいるのだ。

 僕にとっては屈辱的な事だというのに……どうしてそんな気持ちになれるのだ?

「悪魔め!」

 吐き捨てるように言うと、トキはますます辛い顔をした。

「違いますよ。私は死神です」

[3]

 天使である僕が、なぜ地上にいるか?

 答えは簡単だ。

 トキに捕まったからだ。

 人間になりすまし、地上の楽しみというやつを満喫していた一年前。

 トキに出会った。

 ちょっとしたいざこざに巻き込まれた僕を、トキは救ってくれた。

 そこで、「さよなら」すれば問題はなかったのだ。それなのに……。

「助けてあげたお礼を請求するつもりはないですよ。たとえ、君を助けた事で今夜のデー

トがおじゃんになったとしても、私は心が広い青年です。請求したりしませんよ。ええ、

しませんとも」

 思い切り請求されたのだ。

 しかたないから、お茶だけ付き合うことにした(そうしないと、いつまでもついて来そ

うだったから)。

 始めは見た目どおりの好青年だった。

 それが変化したのは、食事を終えてからだったと思う。

 気がつけば、僕は何も身に着けておらずトキの腕の中で眠っているという失態を犯して

いた。

 意識を失うほど、何か強いお酒でも呑んだのだろうか? 

 焦りだした僕は翼を取り出し逃げようとしたが、いくら意識しても天へ帰るための翼は

出てこなかった。

「ご存知でしたか? 死神と口づけを交わした者は、二度と本来の場所に戻れなくなる。

という素敵な伝説を」

そういってトキは僕に口づけをしたのだ。

[4]

「私とゲームをしませんか?」

 翼を失い天へ戻れなくなり、死神に口づけまでされた事に打ちのめされている僕に、ト

キはそんなことを言ったのだ。

 トキは死神として大切な鍵を人間の命に隠したそうだ。

 人間が転生を繰り返しているうちに、鍵を持った人間が解らなくなってしまった。

 その鍵を僕が見つけることが出来たらならば、どんなムチャなお願いも聞いてくれると

トキは言った。

 何もかも失い、何かに縋りたかった僕は深く考えもせず同意してしまった。

 ゲームが始まったとたん、僕は自分の考えなしを後悔した。

 僕が人間に近付き媚びを売り快楽を与え最後に……絶望をつきつけ殺す。

 鍵を持たない人間を殺せば、それは僕の罪となる。その罪を償うため、トキは僕に罰を

科すのだ。



「あっ…」

 短く漏れる僕の声と、二人分の重みで軋むベッドの音が重なり、とても卑猥に聞こえ

る。

 罰と称し、僕はいつもトキに玩ばれる。

 嫌なのに、死神の陵辱から逃げたいのに、僕は抵抗せずトキの与えてくれる快楽へ溺れ

ていく。

 トキの甘い声と香りの所為で、頭の芯がジンジンと痺れてくる。

 もうだめだ。

 僕は僕である事を放棄する。

 重ね合わせた肌、トキの体温を直接感じ体が火照ってくる。

 下腹部の痛みに耐え切れず、トキの首に腕を回し自ら近付いていく。

「優しくしてあげますよ」

 耳元で囁かれ、僕は小さく頷くので精一杯だ。

 本当の意味でトキを受け入れたのは、それからまもなくだった。



「次は誰ですか?」

「死神に教える義務はない」

 ベッドでリラックスしているトキに背中を向けて、僕は床に散乱している服を身に着け

ていく。

 下着にシャツに靴下に……順よく身につけると最後にネクタイをキッチリ締める。

 どこから見ても品行方正な学生の完成だ。身支度を整えると出口へ向かう。

「期限は二ヶ月。今度こそ、あるといいですね」

 背中に投げ掛けられる優しい言葉。

 僕は振り返りトキを睨み付けるのだ。

「気を使うな! 死神のくせに」

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