|
|
世界を生きてみる
[ リスト | 詳細 ]
|
「全て嘘だったというのか!?」 高級ホテルの一室。 ダブルベットの上で僕に馬乗りになっている男が激昂した。 感情を昂らせ我を忘れた男は、返事を待たずに僕の頬をグーで殴った。 痛みは感じない。 世界は、この痛みより酷いから平気だ。 ただ、今の状況は好きになれなかった。 世間で紳士と呼ばれる男の、僕に対する束縛という欲。 正直イライラする。 僕の全てを自由にしていいのはトキだけだ。目の前にいる、男じゃない。 だから僕は警告をする。 男の喉元近くへ手を伸ばし、爪で引っ掻いた。 肌に紅い線が浮き出てきた。 (綺麗だな……) 生きているモノだけが付けることができる特権のような色。 とても素敵な事なのに男は痛そうな顔をする。 「そんな顔をしないで、僕はあなたの優しい顔が好きだから」 僕は囁き、今度は爪で喉を切り裂いた。 紅い温かな生の証が、ほとばしり僕を濡らす。 苦痛に満ちた表情のまま動かなくなった男が、僕に覆いかぶさってきた。 魂を失い重たくなったモノの下から脱出すると、僕はモノを残し僕は寝室を出ていっ た。
|
|
僕は天使だ。 そう言って、信じる人間はまずいない。 翼もない、空も飛べない。 それに…… 「こんな血塗れの天使が、世界中どこを探したっているわけないよ」 僕は呟き、熱いシャワーを浴びる。 僕を染めていた紅を、綺麗に流すのだ。 濡れたまま部屋に戻ると男も紅く染まったシーツもなく、トキが一人掛けのソファーに 腰掛けていた。 トキは美の暴力とでも言うべき容姿をしていた。 誰もが見惚れ、失神をしてしまうほど美しいが、僕はトキの前を素通りし床に置きっぱ なしのタオルを手に取った。 髪をガシガシと強く拭いている間、トキの視線を感じていた。 僕は無視をする。 トキの言いたい事がわかっているからだ。 「どうでしたか?」 トキの声は、地上のものとは思えぬほど甘美で憂いに満ちていた。 僕は答えることなく、タオルで乾いてしまった髪を拭き続けた。 いつの間にか隣へ来ていたトキが、僕の手首を掴みタオルで髪を拭く事を禁止した。 「手を離せ!」 トキをキッと睨みつける。 この睨みつける行為が、少しも怖くない事を僕自身よく解っている。 なのに、トキは物凄く辛い顔をした。 それが、とても腹立たしかった。 トキは僕を怒らせて、楽しんでいるのだ。 そして……これから始まる時間を喜んでいるのだ。 僕にとっては屈辱的な事だというのに……どうしてそんな気持ちになれるのだ? 「悪魔め!」 吐き捨てるように言うと、トキはますます辛い顔をした。 「違いますよ。私は死神です」
|
|
天使である僕が、なぜ地上にいるか? |
|
「私とゲームをしませんか?」 |




