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それからどれくらい歩いただろうか? 『トイ☆マーケット』へ来ている、お客さんの客が激減した。 しばらくして、お客さんは見かけなくなった。 いや、『トイ☆マーケット』の従業員も、王様も王妃さまも家来もいなくなってしまった。 楽しい建築物は見えなくなり、愉快な音楽ははるか遠くから流れている。 あるのは静寂と森に近い緑の多い場所だった。 「めりぃさん、ここはどこですか?」 問いかける。 機嫌がまだナナメかもしれないけど、現状を把握するためには質問して答えをはっきりさせておかなく てならない。 めりぃさんは、再びスケッチブックとマジックを取り出した。 何かをさらさらと書き出した。 態度は微妙に刺々しさを感じるけど、機嫌は治っているみたいだった。 《ココハ『とい☆まーけっと』ノショユウチ》 「そうなんだ。でも何もないよ」 《アラタナあみゅーずめんとニナルヨテイ。チャクシュハライネンノハルダ》 「そうなんだ」 《スウカゲツマエ、『とい☆まーけっと』ノショユウシャガコウニュウシタ》 「ふ〜ん、そうなんだ」 《キサマ、ナニモシラナイノカ?》 「今、教えてもらうまでは、ゼロでした」 《シンブン、ヨマナイノカ? てれびハ? いんたーねっとデモイイゾ》 「新聞は経済的に余裕がなくて、テレビは故障中なんだ。パソコンは睦が持ち込んだ私物の中にあるかも しれないけれど、僕は基本アナログだから文明の発達したものは使えないんだ」 僕の答えを聞いためりぃさんは、口を◇の形にして停止していた。 数秒後。 動き出しためりぃさんは、スケッチブックに何かを書き殴った。 乱暴とも言える文字には、渾身の力と悪意が込められていた。 《セカイヲシレ! シルコトデ、マモレルモノガフエルコトヲキサマハワカラナイノカ!ソノヨウナコ ト、イマドキノいぬデモデキルゾ! ソレガデキナイトイウナラ、シンデシマエ! ひがんサマノトモデ アルコトヲテイセイシロ!!》 ……訂正しよう。 めりぃさんの文字は、桜山のために必死な可愛い女の子の力強い想いが込められていた。 やっぱりめりぃさんは、可愛い女の子だ。 敵意がなければ、頭を撫でて抱き締めてあげたいくらいだ。 そんなほんわか思考の僕の足元を、めりぃさんが何度か叩いたのだ。 「なんですか?」 《ホウケテイテハ、タスケラレルモノモタスケラレナイ。サッサトイクゾ! へたレ!》 「あっ、はい! めりぃさん、待ってください」 道具をしまっためりぃさんは、来年には楽しい場所になる予定地である森の中へと入っていった。 森の奥へ進む前に、めりぃさんには内緒で強引に納得しなければいけないことがある。 それは……めりぃさんが道具をどこへしまっているか? だ。 彼女は道具を……おなかの中から取りだしている。 おなかの中心にあるピンクのボタンがつまみになっているらしく、右前足で器用に掴むと左前足を自ら のおなかに突っ込んで必要な道具を出している。 見ようによっては、なかなかグロい絵図である。 めりぃさんはそんな事などおかまいなし。 必要なものをサッとだし、不必要となればサッと片付ける。 なかなか手馴れたものだ。 これは、なんとか納得出来そうだ。 でも、僕はどうしても納得できないことがある。 めりぃさんの体長は、どこにでもある普通のぬいぐるみと変わらない。 大きなスケッチブックや、マジックをしまっておけるとは、どう考えても無理なのだ。 なのに、めりぃさんのおなかから難なく出てくる。 四次元ポケットみたいだった。 もし、四次元ポケットとおんなじ仕組みなら……めりぃさんのおなかの中はどこまでも広がっていて、 どれだけのものが入っているのだろうか? 次の疑問が、脳裏に浮かんだときだ。 めりぃさんが立ち止まり、その視線を僕へと向けたのだ。 「あ、あ、あの〜、なんですか?」 意味の繋がらない言葉を、並べて、シドロモドロだ。 そんな僕になんの感情も見せず、めりぃさんは再び謎のおなかからスケッチブックとマジックを取り出 したのだ。 《ナニヲシリタイ?》 「いいえ、なにもです。はい」 僕が首を何度も縦に振るものの、めりぃさんはあのつぶらな眼で僕を見上げている。 (か、かわいい……) 馴れ合いを拒否するクマの表情じゃない。 あの瞳に見詰められたら、僕は今考えている全てを彼女に向けて吐露してしまう。 それだけは、何とか避けたい。 これ以上嫌われるのは、いくら相手が人でなくても傷付くからだ。 余計なことは言いたくない。 決意しているけど、その表情はルール違反というものだ。 「うっうっうっ……」 唇を噛み、強引に笑ってみせる。 でも、笑顔になっているか。とてつもない疑問である。 おかしな笑顔の人間と、保護欲をかき立てる表情のクマのぬいぐるみ。 永遠と思われる時間が流れ始めた時だ。 バリバリ! 森の中で、大音量の破壊音。 音に逃げるかのように、森にいた鳥たちが騒ぎながら飛び立っていった。 背筋が凍る重いがした。 それはめりぃさんも同じだったらしく、表情が一瞬で強ばっている。 もう一度、大音量の破壊音。 音がなり終わった瞬間、 おなかから自分の二倍ある機関銃を取り出しめりぃさんは走り出した。 「めりぃさん、待ってよ」 機関銃を軽々持って走る彼女の背中を、僕は遅れて追いかけた。
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世界桃色征服実行中!【約束】
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歩く。 本当は全力で走って、二人を探したいんだけど……そうはいかない理由がある。 理由は、僕の前を歩いている……桜山のクマだ。 右足と右手が同時に出て滑稽な歩き方だ。 しかし、愛くるしい姿とトテトテトテと聞こえてくる可愛らしい足音のおかけで滑稽な歩き方は完全に ご愛嬌になっている。 だからなのか……めりぃさんを見つけたお客さんは十人が十人、「かわいい〜!!(>▽<)」と声を あげてめりぃさんの頭を撫でたり、抱き締めたりしていく。 めりぃさんは、抱き締められるのが(特に女性)が気に入らないらしく、抱き終わった人たちが自分か ら離れると小さく舌打ちをしたのだ。 「………」 僕は何も言わず、めりぃさんに従うだけ。 だって、彼女は教えてくれたのだ。 出発してすぐ。 スケッチブックに。 太字マジックを取り出して。 デカデカと。 読みやすい字で。 《ワタシハめりぃダ。キサマヲツレテイク。ハグレルナ》 「ありがとう。本当に助かるよ」 《ひがんサマノメイレイ。デナケレバキサマナドアイテニシナイ》 「……あはは」 《ソレカラちゅういシテオクガ、ワタシハナレアイガキライダ。ヒツヨウイジョウニチカヅクナ》 「……近付いたらどうなるの?」 素直な疑問を口にした。 すると、めりぃさんは素早く何かを書き僕に見せてくれた。 《イノチガナイモノトオモエ》 「絶対に気をつけるよ。でも、僕以外の人がめりぃさんのことをほって置かないと思うよ」 《フンベツクライアル。ワタシハひがんサマノユウシュウナヨウジンボウダ。ひがんサマガカナシムヨウ ナコトハシナイ》 そう言っためりぃさんは、堂々と胸を張った。 それからすぐだ。 「かわいい!」 女の子たちの集団が押し寄せ、めりぃさんを代わる代わる抱き締めたのだ。 めりぃさんは、女の子たちの気分を害さない程度に動き回り彼女のいう「ナレアイ」から逃れている。 逃れているとは、動いているというわけだが、夢の国『トイ☆マーケット』は人の常識を感覚マヒさせ る魔法でもあるのか、めりぃさんが動いても誰も疑問を感じていない。 むしろ好意的に、存在を認めている。 ひとしきりおもちゃにされためりぃさんが解放されたのは、それから十分後。 めりぃさんは、虚脱感たっぷりにその場で撃沈していた。 「大丈夫?」 なんだか可哀想で、なれあいといわれそうだけど声をかけた。 僕が近くにいることに気づいためりぃさんは、ムクッと起き上がり再びスケッチブックを取り出した。 《シンパイナイ。コレグライナントモナイ。キサマニシンパイサレルホド、ワタシハへたレデハナイ!》 綺麗な文字が少し乱暴になり、その文字にあわせたかのように僕は睨まれた。 僕の事を気に入っているというのが全て「陽元のため」というのが、よくわかった。 つまりだ。 僕は気に入られていないし、好かれてもいない。 ただ、めりぃさんにとっては“敵”以外の何者でもないのだ。 命の危険を感じた僕は、慌てて訂正した。 「そんなこと思ってないよ。めりぃさんは、強いんだよね。桜山を護ることができるくらい。ただ、桜山 から君を貸してもらっている以上、怪我をさせたらいけないと思うんだ」 《シンパイムヨウトイッテイルダロ。ワタシハひがんサマヲマモルセイエイノナカデモとっぷくらすナノ ダ》 でも……敵だって思われているのに僕は言わずにいられなかった。 「うん。でも、めりぃさんは女の子だから。怪我をさせるわけにはいなかいだろ?」 《…………》 めりぃさんの文字を書く手がぴたりと止まった。 そして、僕と目が合ったかと思ったら全ての道具を慌ててしまいソッポを向いて歩き出してしまった。 「めりぃさん、待ってよ」 慌てて続くが、めりぃさんは立ち止まることなく振り返ることはなかった。
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僕の目に映るのは、秋緒と相変わらずクマを頭に乗せた桜山。 秋緒は、今にも泣き出しそうな顔をしている。 桜山は、いつもみたいな人のいいニコニコ笑顔でなく、困ったような難しいようなよく解らない表情を している。 「夏樹君!」 「秋緒……」 「良かった、本当に良かったです」 今にも泣き出しそうだった彼女は、心なしかいつもより顔色がよくない。 「秋緒?」 「はい、夏樹君」 僕が難しい顔で名を呼ぶと、秋緒は青白い顔でムリヤリ微笑んだ。 なんたが心配で、彼女の膝枕からゆっくりと起き上がる。 すると、アイスによって何かを奪われ倒れていた人たちが、僕と同じように起き上がっていく。 誰も彼も、起き上がっては首を傾げていた。 自分たちが倒れていたという事実がわかっていないみたいだ。 でも、そんなことはすぐになかったの用に思い思いの場所へと散っていく。 数秒で、僕の周りはいつもどおりの賑やかな『トイ☆マーケット』へ戻った。 楽しい、夢の国に。 僕らは、その夢に取り残されたような感じで同じ場所に留まっている。 まるでカッターで切り取られてしまった、写真の一部のように……。 それでも、僕は少しもかまわない。 目の前の彼女のことが心配でたまらないのだ。 「秋緒」 ゆっくりと手を伸ばし、彼女の頬に触れようとした。 でも…… 「夏樹君、早く行ってあげてください」 「えっ……でも……秋緒、顔色が悪いよ」 「私は平気です」 「ウソだ!」 「ウソではありません。私は元気ですよ」 秋緒はいつもみたいに、ニコリと微笑んだ。 でも、次の瞬間には上体がグラッと揺れた。 僕の目の前で、後ろに倒れていく秋緒。 無理に微笑んではいるが、真っ青な顔色だ。 「秋緒!」 手を伸ばし、彼女を救おうとした。 でも、彼女を救ったのは僕でなく 「石楠花さん、もういいよ。無理をしなくても」 頭にクマを乗せた桜山だった。 「桜山君」 「後は僕たちに任せてくれないか?」 「はい」 秋緒は桜山に小さく微笑むと、気を失った。 「秋緒!」 僕が手を伸ばそうとしたけど、 「夏樹。心配しなくても平気だ。彼女は少し頑張りすぎただけなんだ」 「頑張りすぎたって……まさか!」 何事もなかったかのように起き上がり、普通に歩き去っていく人たちが脳裏に蘇る。 僕が桜山の顔を見ると、彼は何も言わなかった。 でも、表情は完全に「YES」と言っていた。 一人で頑張った秋緒。 彼女はとても優しすぎる。 自分の持てる力を凌駕してしまうとわかっていても、助けることに力を惜しげもなく使ってしまう。 本当に優しい子だ。 「くっ…」 僕は強く唇を噛み締めた。 それに比べて、僕はなんてだらしないのだろう。 たった二人の友達のケンカを止めることが出来なくて、立ち止まっている。 たった一人の親友と、仲直りさえ出来なくて背中を見せている。 桜山の中で静かに眠っている彼女の頬に、そっと手を触れる。 「ありがとう、秋緒」 彼女には決して聞こえていない。 それでも、お礼を言わずにはいられなかった。 彼女のおかけで、僕はやるべきことを見失わずにしんだのだから……。 次に桜山へ視線を移す。 「何か吹っ切れたかい?」 「たぶん……。でも、やれるよ。やらなくっちゃ、前には進めないから。それから、今度はみんなでちゃ んと遊びにこようよ。本当は、今日、そうするべきだったのだけれど、今日はアイスと約束をしているか ら。だから、次。次はみんなで遊ぼうよ」 気持ちを正直に伝えると、なんだか急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にして頬を軽く掻いた。 そんな僕に、桜山微笑みかけてくれた。 「君に会えたことは、本当に幸せなことだよ。僕にとっても石楠花さんとっても」 「桜山……」 桜山の言葉が、無性に嬉しかった。 理由とかなんかつけなくても、このうえなく。 僕もみんなに会えて幸せだ。 だから、どうにかしなくていけないのだ。 「秋緒をお願いします」 「任せておいて」 桜山はニコリと、いつもみたいに笑ってくれた。 安心できる笑顔に、僕も笑い返した。 立ち上がると、僕の隣に桜山のクマが立っていた。 「?」 「彼女を連れて行くといい。きっと役に立つはずだよ」 「……ありがとう」 少々の疑問は残るものの、桜山の好意だし、きっと悪いことないのだろう。 僕はお礼を言って、クマを先頭に歩き出した。
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どこに向かうかわからないけど、行った先はアイスとハルの戦場になるのは確実だが、その前に僕は二 人を止めることができるだろうか? (無理) 疑問符を打ってから、僕は心の中で即答した。 二人の力に僕が敵うわけないのだ。 僕は無力なのだ。 絶対に、それは間違っていない。 僕は普通の人間であり、僕はシホウノミタマ。 世界を救う乾電池とはいうけど、無力この上ない。 そのはずなのに…… 僕はキュッと眉根を寄せた。 それから、ゆっくりと震えている手を胸のところに持っていった。 僕の中から聞こえた声。 あれは僕じゃなかった。 とても怖かった。 アイスの持っている闇とは明らかに違う、深淵の闇が僕を支配しようとしていた。 それが一番適した言い方だ。 いくら僕が強さを望んだとはいえ怖かった。 肩がブルッと震えた。 その震えはすぐに全身に伝わり、どうしようもなくなった。 現実では、人たちがたくさん倒れている。 アイスが倒してしまった、無関係な人たち。 僕が救えなかった人たち。 目に映るもの全てが怖くて、僕は目を固く閉じた。 すると、自然に口が動き言葉が漏れた。 「タスケ…」 「夏樹君」 僕の言葉に、秋緒の声が重なった。 心配性な彼女にピッタリの声音だった。 でも、次には彼女の声は何かを把握したらしく、とても力強った。 「大丈夫です。夏樹君は、私が護ります。私が夏樹君を助けます」 彼女の手が僕の頭に触れ、ゆっくりと僕の頭を上げた。 柔らかな枕のような感触の自分の太腿に、僕の頭を静かに下ろした。 初めて彼女に会ったとき、怖いお兄さんにボコボコにされた時と同じ感触がした。 一度体験した感触が、僕を落ち着かせていく。 全身の震えがゆっくり静まりだすと、秋緒の歌声がした。 柔らかな旋律。 全てを癒す、彼女らしい彼女の能力。 戦いを嫌う彼女にはぴったりの能力。 僕が感じた深淵の闇が包み込むのとはまるで逆の秋緒の声が、僕を包み込んでいく。 全てが、あの時と一緒。 一緒なら、次、僕は目覚めた時には、温かい布団で眠っている。 起きて、おいしい朝ごはんがあって、幸せを感じている。 そう。 それでいいんだ。 「夏樹君、いけません!」 「そうだね。いけないよね。君にはやるべきことがあるよ」 深い眠りにつく直前、二人の声を僕ははっきりと聴いた。 秋緒と桜山。 二人の声は僕を眠りでなく、目覚めへと導いた。 「夏樹君! 起きてください! 水蜜桃さんを助けてください!」 「水蜜桃さんが危険なんだ」 二人の言葉に、僕はゆっくりと瞼を開けた。
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「ブラックディーパー! 夏樹に何をしたのですか!!」 「いいえ、私は何も」 ハルの物凄い剣幕とアイスのマイペースな冷ややかな声が、地面とお見合いをしている僕の頭上です る。 背中に強い衝撃を喰らった僕は動くことができずに、二人の会話を聞くのが精一杯だ。 止めることは、そうでなくても絶対に無理だ。 「何もしてないなんて言わせないです! 夏樹は今、明らかに苦しんでいたのです。あなたの前で苦しん でいたのです」 「そうですか? 私にはそうは見えませんでした」 「ハルはしっかり見たのです。つまり、それが動かぬ証拠。ブラックディーパーが何かをした証拠なので す!」 「つまり、シェンシュプリームのお嬢様は、楡夏樹と私の行動をずっと見ていたと? ……くふっ」 「何がおかしいのです! なにもおかしなことは言っていないのです!」 「いえ、おかしくはないです。ただ、少し嬉しくなりました」 「嬉しい?」 「はい。ストーカーされたのが初めてでしたら」 「す、す、す、ハルはそんな卑怯なまねなどしないのです! 偶然です! 別の遊び場へ行こうとした通 り道での出来事なのです! 断じて、す、す、す……なんかしてないのです!」 ハルは激昂していた。 怒る理由は解っているけど、その理由を指すストーカーという単語だけはどうしても口にすることが出 来なかった。 真っ直ぐで正義の大儀を持っているハルなら、すんなり納得できる。 でも、自分がそれに当てはめられて今、ハルが攻撃をしないとは甚だ疑問だ。 「勝負です! ブラックディーパー!!」 「よろしいですよ。今回は以前のように手加減はいたしませんよ」 「手加減など無用なのです! 夏樹、少し待っているのです。この諸悪の権化を倒すのです」 「諸悪の根源では?」 「くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。もう、本当に許さないのです!! 表に出るのです!!」 「ここは表です」 「いちいち煩いのです! 今のは言葉のアヤなのです!! ここは手狭なのです。他でぶちのめすので す」 ハルは倒れている人たちをよけると、大きく跳躍して姿を消した。 それを見送ったアイスは、小さくため息を吐いた。 「楡夏樹、あの分からず屋と軽く遊んできます。帰ってきたときには、巨大迷路へと行きます。そこでゆ っくり休んでいなさい」 こちらを見てアイスは微笑むと、静かに影の中へと沈んでいった。
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