ゆで卵

意味のないことを、永遠とだらだらだらだら書くブログ。

「リリー」

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出会い

リリーがこの田舎街に辿り着いたのはもう夜の8時を回っていた。

皆、夕食を済ませ、寝る支度をしていた頃だった。

馬車でこの田舎街の入口に着くと、リリーは馬車を荷物を持って降りた。

女ひとり、田舎の一本道を歩いていた。

やがて商店街へと辿り着いた。

酒場では、男や女たちの大きな笑い声や怒声が聞こえた。

その道をまっすぐ進み、気がつくと、街はずれまで来ていた。

そこに何軒かの家が建っていた。

その中で2番目に小さい家の前でリリーは力尽きてしまった。

少し貧血を起こし、荷物を置いてその小さな家の庭の芝生の上に横たわっていた。

しばらくすると、窓から何やら住人らしき人が覗き見ているのを感じた。

リリーは、申し訳なくなり、急いで立とうとしたが、ふらふらと座り込んでしまった。

少しすると、その家の玄関の明かりが点き、ドアが開いた。

瞳がブルーな綺麗な白髪をお団子に結った細身の老婆が近づいてきた。

「どうされました?」

やさしい老婆の声が聞こえた。

少し意識の遠のく中でリリーは、

「すみません、貧血を起こしたみたいで。すぐよそへいきますから、

しばらく座らせて下さい」

と言った。

老婆は、

「かわいそうに」

と言うと、リリーの手を取ってゆっくりと立たせた。

老婆は、まずリリーを自分の家の中に案内し、リビングの大きな机に座らせると、

庭に置きっぱなしのリリーの荷物を運び入れてきた。

「心配しないで、こんな年老いた私一人だから、気兼ねなく休んでいって」

と、老婆はリリーに語りかけた。

暖かいハーブティーを入れると、リリーに飲ませた。

そして、リリーが少し良くなってから客室用の部屋へ案内し、

洗いたてのシーツをベッドにかけるとそこにリリーを眠らせた。

朝、すっかり元気になったリリーは眼を覚ますとここがどこだかよくわからなかった。

知らない寝巻きを着ていて、知らない部屋に居た。

かすかにやさしい老婆の顔が浮かぶ。

部屋を出て、リビングへ行くと、もう老婆は起きていて朝食を二人分作っていた。

スクランブルエッグとベーコン、おいしそうなパンがテーブルに置かれていた。

「あの、、、、」

リリーが話そうとすると、老婆は

「よく眠れたかしら?ハーブティーにジャスミンも混ぜたから効いたかしらね。

さあ、お座りなさい。あとはスープを注ぐだけよ」

と言った。

リリーは、わけも分からず、テーブルに座った。そして、昨夜、自分が貧血を起こしたことを

思い出した。

「すみません、そう、私、昨日、貧血で、、、」

と椅子から立ち上がってリリーが言うと、老婆はカップに注いだスープを運びながら

「すっかり顔色がいいわ。よかった」

と言った。

「すみません、私、すぐ出ます!」

と立ったままリリーが言うと、

「いいじゃない、ご飯もう出来ちゃったし」

と老婆が言った。

食事が終ると、暖かい淹れたてのコーヒーを出してくれた。

老婆と向かい合い座りながらリリーがコーヒーを飲んでいると、

老婆は

「あんな時間に一人で、こんな田舎街のはずれにいるなんて、

楽しい旅行って感じではなさそうね。どう?私に話してみたら?」

と言った。

リリーは迷ったが、母が死に、婚約者も死に、住みなれた港町を出てきたと

初対面の老婆に話した。それほど、不思議と心開かせる力を老婆は持っているようだった。

「そう、それは辛いわね。私も夫に先立たれ、若いころに両親もなくしたの。

兄弟もいなくてね。今はこうして夫の残してくれた家で一人で暮らしているわ。

たまに手伝いに行っているこの近くにあるパン屋が毎日売れ残ったパンを家に

届けてくれてね。さっき食べたパンよ。おいしかったでしょ。特製の窯で焼いているのよ。

外はこんがり、中はしっとり。そうそう、だからね、私は、たまにパン屋のお店番を

するくらいで、ゆったりと老後を過ごしているわけ。

ねえ、あなた行くところ、あるの?」

老婆は聞いた。

リリーは、少し下を向いて黙っていたがやがて

「ありません」

と言った。

すると老婆は少し考えるようなそぶりを見せて、リリーに言った。

「ねえ、しばらくここに居たらどう?あなたさえよかったら。私も

こんな年寄りで、心細いし、あなたがいてくれたら、色々助かるわ。」

「そんな!!!困ります」

とリリーは断った。

しかし、行くあてもなく、心と体が疲れきったリリーは、2、3日だけ、といって

家に置いてもらうことにした。

次の日からリリーは、部屋の掃除、洗濯、庭の草むしり、お料理などして

なんとかお礼をしようとした。

3日目にリリーが荷物をまとめ出ていこうとすると、老婆は、

「私ね、癌なの。もうそう長くはないわ。お医者様にも言われていてね。

もってあと半年かしら。ねえ、その間だけでも、私の相手をしてくれない?」

と言った。

びっくりしたリリーは、

「お体、大丈夫なんですか?もしよかったら、私が家事をいたします。

泊めて頂いたお礼に」

と言った。

二人の生活が始まった。朝食と昼食はリリーが作り、夕食は老婆とリリーで作った。

季節は秋だった。

リリーは、老婆に献身的につくした。

パン屋での店番もリリーが行くようになった。

なぜなら、日に日に老婆は衰えていったからだ。

食事も少しずつ少しずつ少なくなっていった。

体は痩せ細り、冬には歩くのがやっとというぐらいにまでなってしまった。

しかし、それまでの間、老婆は、リリーにたくさんの種類のハーブの成分の事や

おいしいパンの見分け方、おいしい野菜やお肉の見分け方、効率的な洗濯の仕方などを

教えてくれた。そして、たくさんの種類のスープの作り方を教えてくれた。

冬が本格的になり、クリスマスと正月を二人でひっそりと祝った。

1月になり、老婆の体力が一気に落ちていった。もう歩けなかった。

ベットに横たわり、ずっと窓の外に目をやっていたり、読書する日々が続いた。

最後には、静かに、眠るように息を引き取って逝った。

医者から

「ご臨終です」

と言葉をかけられた時、リリーは涙を堪え切れなかった。

葬儀をすべてすませ、一通り落ち着くと、リリーは部屋の大掃除を始めた。

3日かけて全ての汚れをふき取った。今までのお礼にと。

そして次の日、荷物を整理し、その家から出て行く準備をしていると、一人の初老の男性が

庭先にやってきた。

「どちらさまでしょう?」

リリーが言うと、その初老の男性は

「弁護士です」

と言った。

部屋へと入ってもらい、要件を聞くと、今日は亡くなった老婆から預かっている遺言状を

持ってきたと言った。

リリーは、自分には関係がないからと言った。すると弁護士は、いえ、あなたのことで、と言った。

弁護士は物々しく革の鞄から1通の封筒を取り出すと、封を開け、読み始めた。

「わたくし、メアリー・トンプソンは、すべての財産を同居人、リリー・フランクリーに

譲る。○○年12月5日」

リリーはびっくりして椅子から立ち上がった。

リリーが

「そんな!!!困ります、私、そんなつもりじゃ。。。。」

と言うと、弁護士は、

「私はね、メアリーさんとは古くからの友人でね、君のこともよく聞いていたんだよ。

生前、彼女は君に財産のすべてを捧げることを強く強く希望されていてね、君が断ったら、

どうか納得させるよう、私は仰せつかっているんだよ」

と言った。

リリーは、まだびっくりした顔のまま、どうしてよいか分からないという風だった。

「聞けば、君は行く所もないそうじゃないか。どうだい、最後の老婆の願いを聞き入れてやって

くれないかね。彼女には子供ができなくてね、君を娘のように思いたかったんだと思うんだよ。」

リリーは、その言葉に黙りこくった。しばらくしてから、私がここに居ることが許されるなら、

といって遺産相続を了承した。

もうリリーには、行くあてもなかったし、何より、心が疲れていた。大切な人を3人も亡くした。

リリーは考える力もなかった。

しばらく、途方にくれながらリリーは暮らした。

しばらくすると、落ち着いてきて、状況が飲み込めてきた。

老婆の死を、本当に受け止めることができた。老婆の気持も受け入れる準備ができた。

リリーは久々に近所のパン屋へ行き、そこで本格的に働かせてもらうことにした。

それから数年が経った。もともと明るい性格のリリーは、いつの間にか街で人気者になっていた。

街の人たちからも受け入れられ、馴染みの店や友達もできた。

パン屋では、奥さんが妊娠していることがわかった。

そんな頃、アニーが突然、やって来たのだった。

リリーとアニーは酒場から帰宅した。

帰宅するとすぐに着替え、二人とも何も言わずに

ベッドへと潜り込んだ。

お昼すぎ、先に目を覚ましたのはめずらしく

アニーのほうだった。

リリーはすっかり安心して眠っていた。

アニーは、カラカラに乾いた空気の中で、昨夜リリーに仕立ててもらった

服を洗って干した。

アニーは、りりーが起きださないよう、スープを作り、パンを食べると

自分の持ってきた荷物を少しずつまとめ始めた。

どんなに遅く帰っても、昼前には起きるリリーがめずらしく夕方まで眠っていた。

リリーが起きてキッチンへ行くとすっかり夕食の支度ができていた。

そこにアニーの姿はなかった。

テーブルにメモ紙が置いてあった。

「ごめんなさい。本当は、昨日までに帰らなくてはいけなかったの。

寂しくて言い出せなくて。リリーが何も言わずに私たちの街を離れた理由が今、わかる気がするわ。

楽しい一か月だったわ。お世話になりました。また来るわね。今度は夫も連れて。。。

きっとあなたに会いたがるわ。じゃあ、リリーの仕立ててくれた服で帰るわ。今日はすごい

お天気だったのよ。元気でね。体に気をつけて。アニーより 愛を込めて

追伸 いつでも私たちの街に帰って来て。」

メモを読み終わったリリーの目からは一筋の涙がこぼれていた。

リリーはメモ紙をテーブルに置くと、そのまま外にある井戸へ行き顔を洗った。

ドレス

アニーはリリーに仕立ててもらった服のスカートを
得意げに広げながらニコリと笑ってリリーに見せた。
リリーもうれしそうにほほ笑んだ。
「これから町へ出かけましょうよ!」
「これから?」
「ええ、これから!」
「でもあなた、夕食作ってくれたじゃない!?」と
リリーはアニーの顔を覗き込むように言うと、アニーは
「それは明日の朝、た・べ・る・の」とわざとゆっくり言った。
アニーはご機嫌で、バッグに出かける用意を始めた。
リリーも押されるがまま、外出着に着替えた。
リリーとアニーはいつもの酒場へ行って、仲間たちに挨拶した。
もう、アニーも地元の連中と顔なじみになっていた。
リリーが化粧室に立っている間に、アニーは奥のテーブルに
行って、そこの連中に自分の着ている洋服を自慢していた。
「あ〜あ、これだもの」といったなんとも言えない顔で、
リリーはアニーを見て笑った。
リリーは席について、飲みかけのカシスオレンジを飲み干した。




リリーは、晴れた日が好き。

裁縫

リリーはアニーがリリーの元に訪ねて来てから二日目に
アニーに選んでもらって大きな生地を買ってきた。レースも買ってきた。
アニーのために久々に普段着を作るためだ。
リリーは夜更けになるとゆったりと椅子に座り、アニーの為の服を縫う。
それをテーブルの向こうでアニーが嬉しそうに見ている。
リリーは昔から裁縫が得意で、よく友達や自分の服を仕立てていた。
アニーの寸法を測って型をとり、生地を切り、縫い合わせてゆく。
その作業がなぜかリリーは大好きなのだ。
「こんな田舎町に住むようになって、まったく流行がわからないから
もしかしたら、着るのはずかしくない?」
リリーは手を休めることなくアニーに聞いた。
アニーはすかさず、「まったく。むしろうれしいわ。リリーはお洒落だもの」というと、
リリーは、自分から聞いた割りに裁縫に注意が向いているようで、
「ありがとう」と乾いた感じで礼を言った。
リリーは確かにお洒落というのにふさわしく、田舎町に住もうが都会に住もうがきっとリリーは
お洒落なんだと誰もが思っている。
リリーは周りの草花や自然な町並みの色、食べ物の飾りつけ、ワインの色、空の移り変わり
そうした全ての物を参考に服を仕立てる。ただ流行を追う若い者達とは少し違った。
リリーの部屋もとても素敵で落ち着く居心地のいい空間だった。
リリーはそうして自分の周り全てをいいもので満たしていくような人だった。
服を一通り縫い合わせ終わると、装飾のレースを所々に縫いつけ始めた。
これもリリーならではの感性で縫い付けられていく。ただの平らな生地がリリーの手で
立体となり、美しいフォルムになる。
アニーはお茶をリリーの分も入れなおすと、「少し休んだら?」と聞いた。
「そうね。」リリーは笑顔で答えた。
「久々に人の服を縫うわ。気に入ってもらえるといいけど。」


リリーはオレンジジュースが好き。

笑顔

「リリーは怖くないの?」
まだ赤い目で涙をぐずつかせているアニーが言った。
「いいえ、まったく。」
「強いのね、リリーは。相変わらず。」
「だって、あのままじゃ、ここの地元の男どもが止めに入って
今頃大惨事よ。」と得意げにリリーは言った。
「そうね。」アニーがやっとほほ笑んだ。
アニーの笑顔は太陽のようで、リリーの心をいつも明るくする。



リリーはアニーが大好き。

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