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地理・交通系お気楽ブログ(仮)
熊本&九州地方の地理・交通・歴史の話題や旅の話などをぐだぐだと。

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ランタンフェスティバル開催中の、九州有数の観光都市・長崎市。
西洋や中国の文化が交錯するエキゾチックタウンとして、全国全世界からたくさんの観光客が集まる魅力的な都市であり、街も活気あふれているわけですが・・・

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実は、長崎市の人口減少率は群を抜いて高いんです。
つい先日、総務省より発表された2018年の人口動態報告によると、長崎市の転出超過数はなんと全国の市町村の中でもワースト1位なんですよね、これが。
実際、2000年の時点で長崎市の人口は43万人程度だったのですが、その後西彼杵郡の三和町や野母崎町、外海町、琴海町など7町も合併したにもかかわらず、現在の市人口は41万5000人程度と、逆に合併前よりも人口が減ってしまっているんです。
人口の減少は全国的な趨勢とはいえ、それでも県庁所在地周辺はまだまだ人口を維持できているところが大多数なんですが、長崎は一方的に減り続けており事態はかなり深刻です。

長崎の場合、基幹産業であった造船不況もさることながら、地形的に平地がほとんどない(市街地の7割以上が斜面地)ことから、新規で住宅開発できる土地が少ないというのもかなりのウィークポイントになっています。
そして、斜面地に這いつくばるかのように広がる古くからの住宅地の道路は極端に狭く、急坂や階段だらけで自動車どころかバイクですら家まで乗り付けられないところも多数あり(消防車や救急車などの緊急車両も入り込めないので防災の面からも問題視されています)、あまりに生活がしにくいことから若者層を中心に人口の流失が止まらない状況です。
観光地としての魅力は最高でも、住みやすさとは別問題である」というのが長崎市の問題点なのでしょうね。

長崎市銭座町付近の風景。
一観光客からしたら「いかにも長崎らしい」とも、「風情がある」ともいえる眺めですが、住民の方々の立場からすると「毎日しんどい」の一言らしいです。
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特に足腰が弱い高齢者の方々や障害を持った方々にとって、この急坂や急階段は生活をするうえで大きな支障となっており、ちょっとした外出すらもままならないことが以前より問題視されていました。
また、他都市では当たり前のように行われている道路の新設・拡張工事も、長崎では勾配・斜面地という地形上の制約や家屋密集による収容事業の難航もあって、道路の整備がなかなか進まないままになっていました。

そこで、これまでとは方向性を変えて、実験的に導入されたのがこれ(↓)です。
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その名も「斜面移送システム」!
急斜面を安全・快適に昇り降りする移動手段として、高齢者などの交通弱者を対象として整備された簡易型モノレール(リフト?)です。
現在、長崎市内にはこの斜面移送システムが天神町、立山、水の浦の3地区に設置されています。

今回ご案内するのは3地区の中で最初(2002年3月24日)に導入された、天神町地区の「てんじんくん」です。
長崎電軌の宝町電停から東側に広がる商業地・住宅地の中へと分け入り、銭座小学校の校庭の前を抜けると浦上街道(時津街道)と交差します。
まさか、こんなところに斜面移送システムの乗り場があるとは思えませんが・・・
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裏路地を奥へと進むとやがて長い階段になりますが、よく見てみると・・・階段の右端に沿って斜面移送システム用の茶色の支柱が!
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ここが階段下の「てんじんくん」乗り場(駅?)です。乗り場は階段の上と下、そして途中の天神町公民館前の3つあります。階段上までの路線長はわずか80m!。
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ちょうど階段上から車両がやってきました。
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確かに懸垂式の簡易モノレールっぽい風情ですが、車両だけ見ると遊園地のゴンドラというか、大昔の丹頂型の電話ボックスというか・・・
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欲を言えば浦上街道との交点あたりが起終点ならば、なお便利そうなんですが。
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簡易型モノレールといえど運行時刻が決まっているわけでもなければそれ専門の作業員がいるわけでもなく、エレベーター同様に乗車するときには各乗り場にて赤ボタンを押して車両を呼び寄せ、乗車したら[上][下]のボタンを押して自ら機体を動かします。そういう意味では「てんじんくん」はモノレールというよりエレベーターに近い乗り物なのかもしれません。

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・・・と、ここまで書いておいてなんですが、残念ながら、私は「てんじんくん」に乗車することはできません。もともとが高齢者や障碍者対策の輸送システムであるため、それに該当した地元の方々だけしか使用できないことになっています(つまり、地元住民といえど健常者の方も乗車することはできません)。
斜面移送システムを使用するためには市役所に使用登録申請し、許可がおりると専用のカードが発行され、呼出操作ボックスや車両のカード差込口にそれを挿入することで各種操作が可能になります。上の操作ボックスにも呼び出しボタンの横にカード挿入口があるのが確認できますね。

てなわけで、「てんじんくん」の階段上の乗り場や公民館前の乗り場を見るためには階段を歩いて昇り降りするしかありません。まぁ、「てんじんくん」の利用者自体はそこそこいるので、車両が作動する様子は難なく観察することができます。
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いくら簡易型の小型モノレールとはいえ、道幅(階段幅)の半分くらいのサイズはあります。
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分速で15mという、超・低速度で急斜面を上下します。健常者ならば普通に歩いて昇り降りしたほうが速いです。
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途中停車地の天神町公民館前です。この辺はたくさんの猫を見かけました。
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いかにも駅(?)らしく、公民館前の軒先にはベンチも設置されています。
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ちなみに、この天神町公民館あたりの地下深くを九州新幹線・西九州ルートが通ることになっています。
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ここで車両についてのお話でも。
この「てんじんくん」はアダチ産業・長田工業・嘉穂製作所・研究開発グループにより建造されました。分速15m(=時速0.9km!)で、最大勾配32度に対応しています。
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車両内部の様子。定員2名となっていますが椅子はひとつ。外扉はなく、安全バーがあるだけです。車いすも折りたためば乗せることが可能です。
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前述のとおり利用者操作による自動運転のため、専用カードを差し込んだあと、[上][下]のボタンを押して車体を制御します。
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「てんじんくん」の終着地点はかなりの山の上。でも、ここからもまだまだ急な階段は続きます。
高齢者が多い地区なのに、ほんと、こりゃ大変ですよ。
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確かにこんな斜面地を日常的に登り下りするのは大変だと思いますので、それなりに利用価値はありそうですね。
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斜面移送システムは長崎ならではのユニークな乗り物ですが、この程度では多数ある交通困難住宅地をカバーするのには全然追いついていないのもまた事実です。
斜面住宅地における住環境改善が進まない限り住民の流失はこれからも続くと思うので、何らかの抜本的な都市計画策定が急務でしょうね。

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