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今働いているのは外科だから、もちろん若い人もいるけれど、お年寄りも多い。
当然認知症がある方もいる。
認知症の出方は様々で、ずっとしゃべり続けたり、奇声を発したり、排泄の管理がおかしいことになったり、食べなくなったり…ひとそれぞれ。
ときどき、意味もなく乱暴になってしまう人がいる。
今入院しているおじいちゃんも、自分の欲求が通じないと、物を投げたり、看護師さんや私を蹴ったり殴ったり、乱暴なことを言ったり。
当然それは病気だから、私たちは辛抱強く対処するわけだけれども、やっぱり面白くはない。みんな、そのおじいちゃんの受け持ちになるのは嫌がるような状態が続いていた。
ある日、わたしに手をあげたので、私はその手を掴んで目をのぞきこんで言ってみた。
「私はあなたが好きなの!!あなたは私が好きじゃないの?こんなに治ってほしいと思っているのに」
おじいちゃんが目をぱちくりさせていたので、念を押した。
「私たちは、意地悪してない。あなたがとても好きだから、あなたに治ってほしい。とても好きだから、私のことも好きになって、信じてね。」
おじいちゃんは殴らなくなった。
誰のことも。
私は毎日回診するたびに「あなたが好きだから、早く治ろうね」と言って、手を握ることにした。
おじいちゃんは最近、すっかり痩せこけてしまったほほを懸命に動かしてにこっとしてくれるようになった。
手を握ると指相撲を仕掛けてくるようになった。
今病棟では、あなたが大好きキャンペーンを実施中です。
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