Addicted to HIKARU NO GO

このブログは休止しています

全体表示

[ リスト ]

密室(その1)

設定はあかりちゃん大学1年生の夏。2005年の7月23日に実際に起こった出来事を題材にしています。



「ヒカル!」

学校帰りに家に向かって歩いてたら、ヒカルを見つけた。

「あかり?」

ヒカルは歩くのが速いからなかなか追いつかなくて、走ったから息が切れた。

「おまえ、走ってきたのか?久しぶりだな。元気だった?」
「・・・うん。」
「今、学校の帰り?」
「そう。」
「あれ・・・?」
「どうしたの?」
「あっ、そうか。おまえ大学生になったんだよな?」
「そうだよ!まさかまだ高校生だと思ってたの?」
「いや、お母さんに聞いて知ってたけど、ずっと会ってなかったから。」

ヒカルはこの春から一人暮らしを始めた。そんなに遠くないからいつでも帰ってこれるんだけど、あまり帰ってこないっておばさんが寂しがってた。私も・・・道でこんな風に偶然会う機会が減って寂しかった。今日会うのだって何ヶ月ぶりだろう?前に会ったときは私はまだ高校の制服を着ていたはずだ。

「なに見てるのよ?」
「おまえさ・・・ひょっとして化粧してる?」
「うん。大学生なんだから化粧ぐらいするよ。変かな?」

俺とあかりは子供の頃からの友達で、この年になっても幼馴染の延長を続けていた。いつ会っても変わらずに俺に笑顔を向けてくれるあかりは、俺にとって懐かしい故郷とかそういう感じだった。中学を卒業してたまにしか会わなくなると、会う度に少しずつ変わっていって、その変化にドキッとすることはあったけど、今日ほど驚いたことはなかった。高校生と大学生ではこれほど違うものなのか。よく見ると髪型が変わっていた。トレードマークだった耳の上で二つに結んだ髪は大学生には子供っぽすぎるのだろう。

「いや、そんなことないけど、あかりが大学生か・・・。ちょっと前まで中学生だった気がするのに。」
「それはヒカルが学校行ってないからだよ。私なんかその間に2回も受験経験してるんだよ。」
「受験か・・・。俺そんなの経験せずにすんでよかった。そうだ。俺まだお祝い言ってなかったよな?合格祝いも入学祝いも。」
「もう。何ヶ月経ってると思ってるの?もうすぐ大学夏休みだよ。」
「はは・・・。それもそうだな。そうだ。賞金入ったし、お祝いになんか買ってやるよ。」
「ほんと?いいの?」
「うん。何がいい?」
「急に言われても思いつかないよ。」
「じゃあ、考えといて。一緒に買いに行くから。今度の土曜日、空いてるか?」
「うん。大丈夫。」

プレゼントなんて口実だ。また会いたいと思ったから誘った。あかりはすんなりと俺の誘いを受けてくれた。俺たちはもう子供じゃない。いっしょに街に出かけたりすれば恋人同士に見られるだろう。俺はこの年になるまで女とつきあったことはなかった。一番そういうことに興味の出るはずの年頃に囲碁に夢中になって、そのまま突っ走ってきたから、同じ年頃の連中と比べるとそっち方面はかなり遅れているはずだ。これまでは年上の仲間たちに生々しい経験談を聞かされても、別世界の話だと思ってきたけど、最近やっと自分も仲間入りしたいと思うようになってきた。そういうとき、決まって俺の頭に浮かぶのはあかりだった。でも、俺は頭の中でそんな妄想を必死で打ち消した。子供の頃からの思い出がたくさんありすぎて、あかりをそういう対象に考えることはとてつもなく悪いことに思えたからだ。でも・・・今日のあかりは、まるで別の魅力的な女性に見えて、そういう罪悪感のようなものもどこかへ吹き飛んでしまった。

「じゃあ、土曜日の2時でいい?迎えに行くよ。」
「うん。待ってる。」

あかりの家の前で約束をして別れた。家に帰ってもあかりのことが頭を離れなかった。あかりは俺のことどう思ってるんだろう?誘いを受けたってことは少なくとも彼氏はいないはずだよな?いくら幼馴染でも、彼氏がいたらいっしょに出かけるのをためらうはずだ。

うそみたい・・・。ヒカルがプレゼントを買ってくれるのももちろん嬉しいけど、二人で出かけられることの方が何倍も嬉しい。だって・・・デートみたいじゃない。ヒカルは私のことどう思ってるのかな?子供の頃は憎まれ口ばかりたたいてたのに、最近はたまにしか会わないせいもあって、会うといつも優しい。それに・・・今日は特に私を見る目が違ってたような気がする。ずっと変えなかったヘアスタイルが変わったから驚いてただけかもしれないけど。少なくとも彼女はいないはずだよね?いたら私を誘うはずないから。プレゼント、何を買ってもらおう?恋人同士じゃないのにアクセサリーはおかしいよね?入学祝いだしな。やっぱり実用的なものがいいのかな?せっかくヒカルが買ってくれるんだから、できればいつも身につけられるものがいいけど・・・。

「お母さん、ちょっと出かけてくる。」
「あら、せっかく帰ってきたのに。また碁会所?」
「いや。ちょっと買い物。」
「買い物?あんたが?めずらしいわね。」
「えっと・・・あかりに入学祝買ってなかったから、買いに行ってくる。」
「あら。あかりちゃんとデートなの?」
「デ、デート?そんなんじゃないってば!」
「二人で出かけるんでしょ?それで朝からなんだか落ち着かなかったのね。変だと思った。」
「・・・。」
「晩御飯は?うちで食べるの?」
「えっと・・・それは成り行き次第?・・・かな。」

2時ちょうどにあかりの家に行くと、あかりが門のところで待っていた。ノースリーブのワンピースを着て、かかとの少し高いサンダルを履いたあかりは、この前会ったときよりさらにきれいで、俺は思わず見とれてしまった。ひょっとして俺に会うためにおしゃれしてくれた?あかりは、俺を見つけると、飛び切りの笑顔になって駆け寄ってきた。その笑顔だけは子供の頃と変わらない。俺だけじゃない。おまえも俺に会うのを楽しみにしてたのか?

「おまえ、なにが欲しいか決まった?」
「ごめん・・・まだなの。決めにくくて。」
「じゃあさ、腕時計とかどう?」
「腕時計?・・・そんな高いものいいの?」

あかりに何かプレゼントをしたい。本当はネックレスとかブレスレットとか女の子の喜びそうなものをあげたいところだけど、恋人同士じゃないしな・・・。時計だったらいつもつけられるし、入学祝にあげても全然おかしくない。

「いいよ。おまえには世話になってるし。これまでの分、まとめてってことで。」

お店の人が薦めてきたのはブレスレットみたいな可愛いデザインの時計だった。彼氏から彼女へのプレゼントだと思ったのだろう。でも、文字盤が小さくて針だけしかないから時計としてはあまり役立たない。今日みたいなドレッシーな服には似合うけど、電車の時間とか正確に知りたい通学時には使えないよね。やっぱりいつも身につけていたいから、もう少し実用的なものじゃないと・・・。

「じゃあ、俺のみたいなのにする?勝手に時間合わせてくれるからめちゃめちゃ便利だぜ。」

ヒカルのはスポーツタイプの時計だった。

「電波時計ですね。」
「そうそう。」
「電波時計?」
「定期的に正確な時間を受信するので狂わないんですよ。」

そう言って店員は同じメーカーの女性用のデザインの物をいくつか出してきた。男性用は黒とかシルバーがほとんだけど、女性用はカラフルだった。結局私はその中からホワイトを選んだ。黒と白で碁石みたい。なんだかほんとにヒカルの彼女になったような気がして嬉しかった。

「ありがとう、ヒカル。大切にするよ。これ、すぐに使ってもいい?」

あかりは俺がプレゼントした時計を早速身につけてくれた。男ものより小ぶりだけど、同じメーカーだからデザインが似ていてお揃いみたいだ。しかも黒と白。店の人、あかりのこと俺の彼女だと思ってるよな。なんだかこそばゆいような変な気分だった。

「まだ時間早いからついでにどっか行く?」
「うん。」
「俺さ、あのビルの展望台に行ってみたいんだけど。」

 ―つづく―

閉じる コメント(4)

顔アイコン

エレベータの閉じ込め事故?

2007/12/16(日) 午後 0:23 [ ぬくぬく ]

顔アイコン

その通り!

2007/12/16(日) 午後 0:42 南七海(みなみなみ)

ああ! それで密室か〜!

2007/12/16(日) 午後 2:55 くにざわゆう

顔アイコン

いや〜。題名いいのが思い浮かばなくて(笑)

2007/12/16(日) 午後 10:27 南七海(みなみなみ)

開く トラックバック(1)


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事