@Marine's

アメリカでの生活と、短編小説書いてます♪

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桜空II

イメージ 1

夢を見た。


僕の通る道を光のカーテンが照らし、ざわつくように覆う緑が僕を包み込み、僕は安堵と希望を感じ、それが現実とわかっていない僕は、ただ涙を流す―――


あの光景、僕は一体いつどこで出会ったのだろうか。



目が覚めた時はもううる覚えで、僕は暑苦しいほどにカーテンの間から差し込む日差しから逃れるようにして重い体を動かした。

―――病院に行かなきゃ。


そんなことをまるで習慣のように頭の中で唱え、僕は身支度をした。


いつも吐きそうな気持ちで外に出て、もう希望とか未来とか、僕にはもうそんなものは残されていないんだと思いながら、僕はうつむき加減で重々しく自分の背中を押す。
あの時から、もう僕はこの世界の住人なんかじゃないんじゃないかって思うようになった。

僕は小走りで母の運転する車に乗り込み、外を見ないようにと目を閉じた。




「また少し内臓の機能が落ち始めたみたいですね。あまり強い日差しに当たらないこと。激しい運動も極力避けてください。また食事は…」

いつも診察の度に医者から言われる言葉。なんだか最近はもう、それをしたからどうなんだって言いたくなってしまう。母親も僕の世話に疲れきっているように見えて、交わす言葉も減った気がした。

そんな空間が息苦しくて、前に一人で帰ると言い出したんだ。たった1キロほどの距離。なんか自分の体じゃないみたいな生活はもう嫌だったんだ。


あの日。あのお姉さんは今日は絵を広げているのかな。車の中から何度か見かけることはあったけど、最近はあまり見かけない。

あの絵奇麗だったな―――お姉さんの通学路だって言ってたっけ。見てみたいなぁ。そんなことをぼんやりと思い浮かべながら、母や医者が言う言葉は僕の耳をただ右から左へと突き抜けた。



昼間の日差しからは考えられないほど、夕方には激しい雨が降った。僕は少し外の空気が吸いたくなって、誰のものかもわからない透明のビニールがさを抱え、家の前の通りに出た。
僕の家の前は少しばかり傾斜になっていて、激しい雨の日は水が川のようになって家の車庫の前へと流れ込む。家の向かいにはこじゃれた感じのアパートがあり、その通りは商店街につながる十字路になっている。

僕はアパート沿いに咲いているピンクのツツジをぼんやりと眺め、乱れた気持ちを少しばかり落ち着かせた。

正直言って、人といるのは辛い。でも不思議なことに、自然のものを見つめる時は孤独を感じないんだ。



アパートの角にあるポールに軽く寄りかかっていると、一台の自転車が通った。その自転車は5メートルほど僕の前を過ぎた後に止まり、こっちを見た。

「…あーっ、君、あの時の男の子でしょ!最近会わなかったねぇ」

僕は何かに心臓をぶたれたように驚いた。制服だったから気づかなかったけど、あの公園通り沿いに絵を広げていたお姉さんだった。

「こんにちは。」僕は軽くお辞儀をし、また少し節目がちになった。

「最近全然会わなかったからさ、どうしてるのかなーって思ってたんだよ。元気してた?」

「……」しばし沈黙した。目を見なくてもお姉さんがちょっと困ったような顔をしているのがわかった。

「ごめん、なんか聞いちゃ悪かったかな?」

「いえ、大丈夫です…。実は僕、病院に通ってるんです。」

一瞬彼女はハッとした顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「…そっか、大変なんだね。私も一時期入院していた時があったからさ、なんとなくわかるよ。」

「えっ、お姉さんも通院してたことがあるんですか?」

「うん、半年くらいね。入院してたんだ。今でもまだベストじゃないんだけど、ちょっと大腸が弱くてさ。実はその時なんだ、絵を描き始めたの。ほら、あまり外に出られないのって退屈じゃない?だから部屋にいても外にいる気分になれるように風景画を描くようになったの。」

「そうなんですか…でもあんな絵を描けるなんてすごいですね…僕なんて…」

のどに一瞬何かがつまったように僕は一瞬言葉につまった。それでも彼女は黙って聞いてくれていた。

「僕なんて…もう何にもしてない。何にもできない気がして。みんなに置いてけぼりにされてる気がして、なんだかもう生きてるのも怖いんだ。」

涙はこらえていた。こんなこと、親にも言ったことなかったのに。

でも僕は誰かに聞いてもらいたかったんだ。家族にも友達にも言えなかった。


「…そう、辛いのね。でもね、何もできないなんて、そんなこと言わないで。こんなにも君は『自分はここにいるんだ』って叫びたがっているじゃない。」

僕は何も言わず、ただ地面を見つめていた。

「そうだ、今度素敵なものを見せてあげるよ。きっと君も何か見つけられると思うよ。」


彼女の少し戸惑ったように明るく振舞う瞳を見て、僕はまた少し目線を落として頷いた。


またね、と少し高い声で言う彼女を見送り、僕はしばらくアパート沿いの通りに立っていた。


少し胸のあたりが晴れやかで、雨に濡れてるツツジが、いつもよりいっそう鮮やかなピンクを見せた気がした。

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がらりと雰囲気変えたね。 まだ続くの?桜が咲くまで。

2007/3/3(土) 午後 4:02 [ kaw*s*ki5*200* ]

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なんだか知らないけど長編になってるしね。一応続けるけど、余裕のない時に書いてるから表現メチャクチャ゚・(ノД`)・゚・

2007/3/4(日) 午前 4:01 [ min**ura76 ]


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