第16回みなつき句会 = 講評 康祐
名句鑑賞について
「よく見れば薺花咲く垣根かな 芭蕉」
ミクロの世界からマクロの世界へ、垣根の中に咲くペンペン草のように人も垣根の中のような小さな世界に生まれ育ち死んでいくのか、その小さな世界から垣根の外に大きな世界の広がりを見た。小さきもの、弱きものを優しく見つめた一句とも言えましょう。作句には俳聖芭蕉の句などの名句鑑賞も大切なことと思います。
「年の暮」の兼題句や当期雑詠では皆様の作句には大変苦労された句やユニークな句が見受けられました。
来年もまた作句の楽しみと投句を通じてのお互いの交流に役立つ「みなつき句会」に発展させていきましょう。
各句の感想を記します。
1, 身を寄せてしのげやしのげ猿団子
団子が寄り添い合つている様子でしょうか、押しくら饅頭のよう。滑稽なり。
2, ご破算にするのせんのと近松忌
何をご破算に?別れ話か、芝居の台詞でしょうか、意味深です。
3, 迷う客六年待つと暁の星
はやぶさは金星を通過、再トライは6年後とか。
4, バタバタと今年も過ぎる年の暮れ
あれこれと忙しい年の暮れです。バタバタと過ぎていく、表現が面白い。
5, また一つ年を重ねる大晦日
また一つ年を取る年末、うれしくもわびしくもあり。
6, ことことと黒豆を煮る年の暮 <良選句>
ことこと時間をかけて黒豆を煮る。おせちの一品、暮れの一端がうかがえます。
7, 寒々と葉っぱ散らした立木かな
寒風に散る木の葉、裸木のまま冬を越す景が良い。
8, 為す事も無く爪を切る年の暮れ
大掃除も終ってあとは新年を迎えるだけ、余裕の年末ですね。
9, 秋空を紅き尾翼の機は西へ
秋の空を飛ぶ飛行機、尾翼の紅が印象的です。
10, 顔揃うそれだけでいい年の暮れ<良選句>
子供や孫たちが帰って来てくれれば、それ以上の嬉しい年の暮れはないですね。
11, 金星に届かぬ地球の便りかな
金星探査機、失敗でした。金星からの便りも届きませんね。残念です。
12, 冬麗やこずえ揺らして千の風
冬晴れの日の風、梢を揺らすのは千の風でしょうか。
13, 枯れ草や匂い懐かし母の声
枯れ草の匂いと母の声とが交錯した懐かしさの想いがあります。
14, 群れ鯉に一尾の緋色際立てり
黒い鯉の中の緋色の鯉一匹は特に目立ちます。
15, 眠れぬ夜指折り数え俳句練る
数を確認しながらの作句、睡眠不足になりますね、冬の夜、と季語がほしい。
16, 如来堂肌刺す寒さは父母の鞭
如来堂にお参り、厳しい寒さは父母の鞭にも値するものです。
17, 凍る月暖とる影や通夜の寺
寒々した月夜、通夜の寺には暖を取る人影が見えます。
18, 散歩道子犬も急ぐ師走かな
師走は子犬までも急がしそうに走っています。
19, 故郷は雪積りしか今朝の冷え
冷え込んだ朝、ふる里は雪だろうか、故郷を思う気持ちが出ています。
20, 齢老いて喪中挨拶増えにけり
年齢を重ねると不幸の挨拶も増えてしみじみとします。
21, 北颪韋駄天像の凛と立ち<特選句>
寒い北風にも負けず、リンと立つ韋駄天像。身が引き締まる力強い句です。
22, 年の暮れ恩も返せず師逝きて
年末の悲しい別れ、恩返し出来ず悔やまれます。
23, 年の暮れ認知の母はうたた寝て
年の暮れとも知らずか、うたた寝の母、いとおしい。
24, 温暖化しかしやっぱり冬寒し
しかしやっぱり、暖冬とは言え冬は寒いです。
25, 兎に角も一山越えて古希の春
人生70年古来稀なり、杜甫の漢詩の一節。長寿の時代に感謝です。
26, 忘年会こもごも悲喜を併せ呑む
忘年会らしい句、悲喜こもごもを併せ呑む。としたい。
27, 年の瀬や円高に泣きドル怨む
円高の一年、ドルもしっかりしてほしい。
28, コンサートはねて都会の冬銀河<良選句>
田舎ではなく都会の夜、冬の夜空が綺麗です。
29, 冬めきて流行のコートほしくなり
冬場は温泉にでも行きたい季節。はやりのコートを着て出かけたい。
30, 満天に夢散りばめぬ冬の空
満天の星空、夢をちりばめたような冬の空です。
31, 足元の芯まで冷える立ち仕事
足元から冷え込みます。立ち仕事はつらい。
32, 音もなく積もりし雪の音を聴く<良選句>
しんしんと降る雪は静か、その雪の音を耳を澄まして聞いている。
33, 年の暮れ円高よろこび海外え
円高での海外旅行はお土産がたくさん買えますね、得した気分になります。
34, さくと刃を入れし白菜真二つに
白菜漬けか、鍋料理でしょうか、包丁で切る時の気持ちが出ています。
35, 行く年や青春十八切符手に
年も押し迫り新しい年に向けて若返りの切符を手にしたようです。
36, ビールより熱燗がいい季節かな
冬はやはり熱燗がいいですね。
37, ポインセチア一葉二葉と鮮やに
青から赤へ葉の色が変化して鮮やかですね。
38, デイケアでレリーフ作りイブを待つ
レリーフ作りのクリスマス、お年寄りの楽しみです。
39, 母と子と影をお供に冬の月
冬の月夜は母子と影も一緒についてきます。
40, 枯葉かと見まがう枝の群れ雀
雀の群れは賑やか、枯れ葉に見間違えるほどです。
41, 米を研ぐ手も朱くなる冷てし水
冷たい水での米研ぎは手が赤くなるほど冷たい。
42, 黄昏にピンクあでやか寒椿
寒椿が夕日に映えて美しい。
43, 木枯らしや道ゆく人は襟を立て
木枯らしに人は襟を立てて急ぎます。
44, 気が付けば皆寄り添いし堀炬燵<良選句>
掘炬燵は暖かく、人の温もりがありますね。
45, 年賀状出すか出さぬか年の暮
あの方に出そうか、どうしようかと迷う年賀状の季節ですね。
46, 園の前話しそこそこ年の暮れ
忙しい年の瀬、人との話もそこそこに急ぎます。
47, 兄弟星今は会わぬとひじ鉄砲
肘鉄をくらったのはどなた?仲の良い友達でしょうか。
48, 市場より鴨と葱来る年の暮
カモがネギを背負って来た。カモ鍋がいい季節。
49, 昔日の父母の作りし晦日蕎麦<良選句>
父母の作った晦日そば、昔が懐かしい。
50, 荒走り日本男児であればこそ
日本人はやはり新酒、最高ですね。
以上