弁護士倫理

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弁護士倫理34

 弁護士甲は、依頼者AからBに対する月末払いの分割払い債権の回収を受任した。
 甲は、月毎に回収した債権をしばらくはAに支払っていたが、平成16年12月頃に2ヶ月分の債権の回収をしたものの、それをAに秘匿して金銭を事務所の維持費などに流用した。
 その後、平成20年12月末日を経過した。なお、Aは甲に対する取立て委任を解除していない。
 
 
1 Aはその後、平成21年1月に、甲が流用した2月分が、実は回収されていたにも関わらず流用されたことを知ったので、甲の懲戒を申し立てた。懲戒請求手続は開始されるか。
 
 
2 Aの指摘を受けて、甲が流用した金銭を返還した後、3年を経過する前に綱紀委員会が調査を開始したものの、調査中に3年が経過した場合はどうか。
 
 
3 甲とAの間で流用金の返還について調停が成立して、その調停の成立から3年が経過した場合はどうか。
 
 
4 甲が分割で流用金を返還する旨の調停が成立していたものの、その調停条件を守らずに3年経過した場合はどうか。
 
 
1について。
 本問では、懲戒の事由である金銭の流用から懲戒の申し立てまで4年経過している。
 そこで、「3年を経過」(弁護士法63条)したとして、除斥期間が経過していないか。
 この点、懲戒の除斥期間の始期が明確でなく問題になるが、「懲戒の事由」との文言から、懲戒の事由に当たる行為が終了した時が始期に当たると解する。
 そして、本問では、資金を流用した時ではなく、流用金が変換されたり示談が成立したときに違法状態が解消され、懲戒の事由に当たる行為が終了したときに当たると言える。
 ただ、委任関係が終了した場合は、それにもかかわらず除斥期間が開始しないというのは、弁護士にとって極めて不安定な立場に置かれることから、委任関係が終了した時点でも除斥期間が開始されるものと解する。
 本問を見るに、懲戒を申し立てた21年1月には、甲はXに返還しておらず、また、調停が成立してもいない。
 よって、除斥期間は始まっておらず、期間経過していないので、懲戒請求は手続は開始される。
 
 
2について。
 本問においては、3年を経過する前に綱紀委員会の調査が開始されている。
 そこで、3年経過する前に「手続」が開始されたとは言えないか。
 この点、手続とは何を言うか明確ではなく問題となるが、弁護士法第8章は「懲戒」となっており、その中に綱紀委員会の調査手続きも規定されていることや、懲戒制度の公正な運用という観点から、懲戒委員会の調査手続きのみならず綱紀委員会の調査手続きも含むと解する。
 本問では、先に見たように、3年経過する前に綱紀委員会の調査手続きが開始されており、除斥期間は完了していない。
 よって、懲戒の手続きを開始することは可能である。
 
 
3について。
 本問では、調停が成立しているので、1で見たように除斥期間は開始している。
 よって、調停の成立から3年が経過しており、除斥期間は完了していることから、懲戒の手続きを開始することは出来ない。
 
 
4について。
 本問では、3年前に調停が成立しているものの、その条件が守られていない。
 そこで、条件が守られていない事が新たに「懲戒の事由」が有ったものと言え、それについては除斥期間は開始していない。
 従って、その条件が守られていないことについて、懲戒の手続きを開始することは可能である。
 

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