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弁護士甲は、拘留中の被疑者Xから、封書で弁護の依頼を受けた。甲はかかる依頼を拒否できるか。
出来るとした場合、甲は諾否の通知をする必要があるか。甲がXとは全く面識がなかった場合はどうか。 設問前段について。
甲はXからの依頼を拒否できるか。 この点、弁護士法25条には、弁護士が依頼を拒否できない場合が定めて有り、その条文の反対解釈から、その条文の要件に当たらない依頼については拒否できると言える。 そして、本問の依頼は「法令により官公署の委嘱した事項及び会則の定めるところにより所属弁護士会又は日本弁護士連合会の指定した事項」に当たらない。 よって、甲はXからの依頼を拒否できる。 設問後段について。
甲は、諾否の通知をすべきか。 この点、法や基本規定では速やかな諾否の通知を義務付けている(弁護士法29条、基本規定34条)。 よって、甲はXに対し速やかな諾否の通知をすべきである。 では、面識のない場合はどうか。 この点、それら条文の趣旨は、依頼者が他の弁護士を探す判断や準備の機会を保護するために、弁護士に諾否の通知の義務を定めたものである。 とすると、形式的には依頼の形をとっていても、真摯な依頼ではないことが明らかな場合については、特に依頼の機会を弁護士が保護する必要はなく、諾否の通知の義務を免れるものと解する。 本問では、確かに弁護士が広告などを頻繁に出していない場合には、面識のない者からの依頼を受けることは少ないと言える。 しかし、弁護士と個人的な知り合い関係のある人は、まだまだ少ないと言えると言えるので、面識ないことから真摯な依頼でないことが明らかとは評価しがたい。 よって、例外的に通知義務を免除されることはなく、甲はXに対し速やかな諾否の通知をすべきである。 |
弁護士倫理
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アパートを経営しているAはBに一室を貸していたが、半年たっても賃料を払わず、部屋に帰っている様子も見られなかった。
そこで、Aは弁護士甲に対して、部屋の中に入って滞納賃貸の支払いに変えられそうなものはないか調べた上で、賃料の回収を依頼した。その依頼を受けた甲は、Aの依頼の通りに債権回収に着手した。 問題点はあるか。問題点があった場合、甲はいかなる手続きをとればよいか。 前段について。
本問では、依頼内容として、Bに断りなく部屋の中に入ることが依頼内容となっている。 そこで、かかる依頼を受けることは、不当な事件の受任(基本規定31条)に当たらないか。 この点、「依頼の目的が・・・明らかに不当」と言えるか検討すると、AはBに対して賃料債権を有しており、その回収を甲に依頼したものなので、かかる要件には当たらない。 そうだとしても、占有権原あるBの承諾なく部屋に立ち入ることは、住居侵入に当たり、違法性が阻却される事由もない。 よって、「事件処理の方法が明らかに不当な事件」に該当する。 したがって、甲が係る事件の受任をした行為は基本規定31条に反する。 後段について。
仮に、訴えをAに提起しても、審理の間に財産状況が大きく変動することは十分考えられることから、現に部屋の中にある財産を保全する必要がある。 そこで、占有移転禁止の仮処分を申し立て、その仮処分の執行の段階で、執行官により、財産を保全してもらうべきである。 |
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高級スポーツクラブAは、長年の放漫経営が祟って資金繰りが悪化してきて預託金の返還請求に応じる事さえ難しくなってきた。そのAの会員で有る弁護士甲は、同じく会員であるBからAに対する預託金の返還請求訴訟の代理人の依頼された。
①甲はこの依頼を受ける事が出来るか。 ②依頼を受けるに際し、甲はAから優先的に預託金の返還を受けた。注意点は有るか。 ①に付いて。
本問では、弁護士甲もスポーツクラブAの会員であり、預託金返還請求することが出来る。 しかし、利益相反(基本規程28条4号)にあたり、受任する事は出来ないのではないか。 この点、「利益」とは、利益相反の範囲を明確にする為、法律上保護された利益のみを指すと解する。 また、「相反」については、協力して訴訟を追行するほうが利益になる場合も有るので、利害対立が顕在化した場合のみを言うと解する。 本問を見ると、甲とBの利益はAに対する預託金の返還請求であり、法律上保護すべき利益なので、「利益」に当たる。 さらに、Aは資金繰りが悪化しており預託金返還請求に応じる事さえ難しくなっているから、甲とBの返還請求に満額応じられる可能性が低くなっており、利害対立が顕在化しており「相反」も認められる。 よって、原則として甲はBの依頼を受ける事は出来ず、同意が有る場合には例外的に依頼を受ける事が出来る(同条柱書)。 ②に付いて。
甲はクラブAの会員であり、預託金返還請求する権利は有る。 しかし、Bから返還請求に付いて依頼を受けており、優先的に返還される事は相手方からの利益の供与(基本規程53条)にあたる可能性が有る。 よって、甲は自身の預託金の返還がかかる利益供与に当たらないか注意すべきである。 |
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Aは、ヤミ金に借金が500万円があり、Bはその連帯保証人になっていた。ヤミ金の苛酷な取立てに応じてBが100万円支払い、その後も続いた過酷な取立てにに困り果てた両者は、弁護士甲に相談した。
①そこで、甲はAとBの両者の訴訟代理人になれるか。 ②なれるとして、甲のすべき義務は何か。 ①に付いて。
本問では、債務不存在確認と不当利得返還請求をAとBが主張すると考えられるが、一方、保証人として100万円支払ったBはAに対して求償権を行使することも考えられる。 そこで、利益相反(基本規程28条3号)にあたり、甲は、代理人になれないのではないか。 この点、「利益が相反」するかの判断基準が問題になるが、合同して訴訟追行したほうが当事者の利益追求になる事から、利害対立が潜在的で有る時は同要件にあたらず、利害対立が顕在化したときに該当すると解する。 本問では、BはAと供に相談してきたのみで、Aに対して求償権を行使してはおらず、利害対立が顕在化しているとはいえない。 よって、利益相反にあたらず、甲は両者の代理人になれることが出来る。 ②に付いて。
本問では利害の対立は顕在化してはいないが、その恐れは有る。 そこで、後に利害が対立した場合には甲は代理人を辞任する可能性がある事や他に生じうる不利益を、AとBに説明する義務が有る(基本規程32条)。 |
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甲株式会社の代表取締役乙は、株主Yから代表訴訟を提起された。そこで、後者の顧問弁護士Xに自分の代理人になるように依頼した。
①Xは乙の代理人になれるか。 ②なれないとした場合、Xはいかなる活動が出来るか。 ①に付いて。
本問で、Yは株主代表訴訟を起こしているが、かかる訴訟は会社の為の訴訟である。 そこで、利益相反(基本規程28条)にあたり、受任は許されないのではないか。 この点、Xは後者と顧問契約を結んでいるが、代表訴訟で訴訟活動をするのは株主で有るので「継続的な法律事務の提供を訳している者を相手方」(同2号)にしてはいない。 しかし、取締役が敗訴した場合には、取締役の出捐で会社に賠償金が入ることになり、「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する」場合(同3号)にあたる。 よって、原則として、Xは乙の代理人にはなれない。 しかし、「同意」(同柱書)があれば例外的になれるが、代表訴訟の場合は株主が訴訟活動をする事から、会社でなく株主Yの同意が必要であると解する。 そこで、Yの同意が有れば、例外的にXは乙の代理人になることが出来る。 ②に付いて。
この点、代表訴訟が提起された場合には、会社は役員の側に補助参加することが認められている。 そこで、甲株式会社の補助参加を進めた上で、会社の代理人となって訴訟活動するべきである。 |





