|
弁護士甲は、被相続人Dの遺言執行者となった。相続人はDの妻Aと息子B、それと妾腹の子供Cである。
遺言状では、全財産をAとBに相続させる事となっていたものの、相続を終了する前に、Cから遺留分減殺請求の訴訟を起こされたので、甲はAとBから訴訟代理人を依頼された。 甲は依頼を受けてよいか。 本問において、甲はDの遺言執行者となっている事から、利益相反を禁じる規定(基本規程28条2号)に反し、依頼を受けることが出来ないのではないか。
この点、遺言執行人になることを承諾した事は「受任している他の事件」と言いえる。 しかし、Cは「依頼者」とならないか。 ここで、遺言執行の場合の相続人が「依頼者」にあたるか問題になるが、確かに遺言執行人は遺言をした被相続人の意思を実現することが任務であり、常に相続人の利益の為に活動するわけではない。 しかし、遺言執行者は相続人の代理人とみなされ(民法1015条)委任の規定が準用されている(1020条)。 また、実質手的にも利益相反になる可能性があり、それにも拘らず受任すると、任務遂行の中立性を疑わせる事になり、本条の趣旨に反する。 そこで、相続人も「依頼者」に当たると解する。 従って、Cは「依頼者」に当たるので、三者の同意(基本規程28条柱書)がない限り、甲は依頼を受ける事が出来ない。 |
弁護士倫理
[ リスト | 詳細 ]
|
C社に勤務している運転手Bは、勤務中に被害者をAとする交通事故を起こした。そこで、弁護士XはAの訴訟代理人になることが出来るか。但し、XはC社の顧問弁護士である。
C社を被告とする場合と、Bを被告とする場合に付いて述べよ。 C社を被告とする場合。
この点、Bは勤務中に交通事故を起こしているので、C社は使用者責任を負う事になり、被告になりうる。 そこで、XがAの訴訟代理人になれるか検討すると、原則、代理人になれないと言える。 なぜならば、XはC社の顧問弁護士であり、「継続的な法律事務の提供を約している者」(弁護士法25条、基本規程28条1号)に該当するからである。 しかし、「依頼者及び相手方が同意した場合」(同柱書)はその限りでないので、AとC社の同意が有れば、例外的にXはAの訴訟代理人になれる。 Bを被告とする場合
この点、先に見たように顧問契約をしているのはC社でありBではない。 しかし、同条の趣旨は依頼を受けている者や顧問契約をしているものに対して提訴する事で信頼関係や弁護士の品位等を侵害する事を防止する事に有る。 とすると、C社の従業員であるBに対し、勤務中の自己を原因として提訴する場合もかかる趣旨が妥当する。 よって、同条の規程が適用され、原則としてXはAの代理人にはなれない。 しかし、同意を得れば例外的になれるが、ここではCとBの利害関係の深さから、AとBのみならず、C社の同意も必要であると解する。 よって、その三者の同意が有れば、例外的にXはAの代理人になれる。 |
|
弁護士Xは、甲県の収用委員会の収用委員に就任していた。
①就任時に担当していた、市を起業者とするA土地収用事件に関し、土地所有者Bから乙市に対する訴訟に関し、Bからの依頼を受けてよいか。また、乙市からの依頼の場合はどうか。 ②Bから、乙市ではなく甲県に対する訴訟に関し、Bからの依頼を受けてよいか。また、甲県からの依頼を受けてよいか。 ①に付いて。
本問において、Xは甲県の収用委員会の収用委員に就任していたのであるから、「公務員として職務上取り扱った事件」(弁護士法25条4号、基本規程27条4号)にあたり、依頼を受けられないのではないか。 この点、Xは収用委員であったので、「公務員」に当たる。 次に、「事件」に付いては、弁護士の職務の公正さや当事者の利益の保護と言う趣旨から、社会的事実に同一性が有る場合であると解する。 そこで本問に付き検討すると、Bと乙市間の訴訟であるので、形式的当事者訴訟であると言える。 としても、Xは収用委員として甲地の収容に関して担当しており、社会的事実につき同一性が有る。 よって、「事件」に当たるので、XはBからの依頼を受ける事は出来ない。 では、乙市からの依頼はどうか。 この点、収用の際の補償価格を決めるのは収用委員会で有るので、Xが保障価格の適正につき正当性を主張することは、弁護士の職務の公正や当事者の利益を害せず、例外的に許されるとも思える。 しかし、乙市はあくまでも一方当事者の立場にあり、乙市の代理人になる事は一方に偏する態度といえ、なお趣旨に反するといえる。 よって、「事件」に該当し、Xは乙市からの依頼を受ける事は出来ない。 ②に付いて。
本問では、Bは甲県に訴えをしようとしているので、裁決の取消しに関する抗告訴訟と言える。 とすると、Bから甲県に対する訴訟は、Xが収用委員会のときに扱った事件に該当すると言え、「事件」に当たる。 よって、XはBからの依頼を受ける事は出来ない。 では、甲県からの依頼はどうか。 確かに、形式的には「事件」に当たる。 しかし、甲県の代理人となっても収用委員であった時の判断の正当性を主張することとなり、当事者の一方に偏することもなく、自己が関与した判断と矛盾した活動をするわけでもないので、弁護士の職務の公正や当事者の利益を害する事はない。 よって、例外的に「事件」に該当しないと言える。 従って、Xは甲県からの依頼を受ける事が出来る。 |
|
① 弁護士Xは、被告人Aの傷害事件の国選弁護人であったが、被害者Bから、第三者Cに対する損害賠償事件の訴訟に関する依頼を受けた。問題点を検討せよ。
② 被告人Aから、第三者Dに対する損害賠償請求訴訟の提起の依頼を受けた場合はどうか。 ①に付いて。
弁護士Xは、Bからの依頼を受ける事が出来るか。 この点、かかる依頼が職務を行ない得ない事件に該当(弁護士法25条3号、基本規程27条3号)にあたれば、Xは依頼を受ける事が出来ない。 そこで、かかる条文に当たるか検討するに、「相手方」とは、現に受任している事件の相手方当事者本人のことを言うと解する。 とすると、刑事事件の場合はAの相手方は国(検察官)であるので、Bは「相手方」に当たらないと思える。 しかし、Bからの依頼であっても、弁護士の職務執行の公正に対する疑惑を招来しかねず、同条の趣旨は該当する。 よって、Bは「相手方」に当たると解する。 従って、XはBからの依頼を受ける事は出来ない。 ②に付いて。
XはAからの事件の依頼を受ける事が出来るか。 ここで、本問事件の依頼が「報酬・・・対価」(基本規程49条1項)にあたれば事件を受任する事は出来ない。 そこで、「報酬・・対価」の異議が問題になるが、そもそも、同条は国選弁護人が対価等を受領する事により、国選弁護制度の公正さを害する事を防止する事に有る。 とすると、「報酬・・・対価」には金銭の授受に限らず、物品の受領やサービスの利用、権利の譲受の場合も含むといえる。 では、本問の別事件の依頼は「報酬・・・対価」に含めるべきか。 この点、事件の依頼が報酬的性格が有るのか明らかではない。 そこで、対価が不相応に高額で有る場合や、事件として受領する事の必要性が乏しい場合であれば、同要件に該当すると言える。 よって、かかる場合であれば、XはAからの事件の依頼を受ける事は出来ない。 |
|
弁護士甲は、貸主Aから、借主Bに対する債権回収の相談を受け、依頼を受けてはいないが、①回収に関する法的なアドバイスを行なった、②アドバイスをしてはいないがAから法律間関係に付いて色々と話を聞いた。
後日、Bが甲のもとを訪れて、同一債権の支払いに付いて相談してきた。 問題点を検討せよ。 弁護士甲は、Bからの相談を受ける事が出来るか。
この点、Bからの相談が弁護士法25条1,2号や同様の規定で有る基本規程27条1,2号に該当すれば、相談を受ける事が出来ない。 ここで、まず同号の「相手方」とは同一案件における事実関係において利害の対立する当事者のことを言い、AとBはその「相手方」に当たる。 そして、「協議を受けて」とは主体的に法律相談を受ける事を言い、本問のAからの相談は同要件を満たす。 さらに、「賛助」とは、相談者が希望する一定の結論を擁護するための助言の事を言い、法的なアドバイスはそれに当たる。 よって、本問のAからの相談は、弁護士法25条1号や基本規程27条1号に当たる。 従って、①に付いては、甲は、Bからの相談を受ける事は出来ない。 次に、②に付き検討すると、アドバイスをしていないので「賛助」にはあたらない。 しかし、Aから法律関係に付いて色々と話を聞いている事から、1号に比するほどの信頼関係が認められ、「信頼関係」(2号)が認められる。 よって、②に付いても、甲は、Bからの相談を受ける事は出来ない。 |





