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被告人甲は、食品店で3万円相当の商品を万引きしたとして起訴された。甲は収入が少なく、その上幼い子供を抱えており、生活に困窮していた状態だった。
甲の境遇に大変同情した弁護士Xは、甲は渋っていたものの万引きした商品代金3万円を立て替え、示談を成立させた。 Xの活動に問題があるか。 本問のXが商品代金を立て替えた行為は、基本規程25条に反しないか。
この点、代金の立替は「金銭の貸借」や「保証」には当たらない。 しかし、同条の趣旨は、金銭の貸借や保証による特別な利害関係の成立により、弁護士の独立を害したり依頼人の信頼を害する事を防止する事に有る。 とすると、文言通りではなく、それと経済的、法律的に同様の自体が生じる場合も含まれると解する。 本問での、立替は後に依頼人に求償する性格のものであるので、同条の適用が有るといえる。 そうだとしても、「特別の事情」が有るとして、許されないか。 この点、同要件に該当する為には、特別の必要性があり、同条の趣旨に反しないという特別の事情が必要と解する。 本問では、被告人が執行猶予などの判決を得るには示談の成立が重要であり、なるべく早く成立すべきである。 にもかかわらず、甲は生活に困窮しており、その金額を速やかに出せるとは到底考えられない。 また、確かに甲はXの立替を渋ってはいるものの、値段の低さや弁護活動の為である事から鑑みて、その意図に反したからといって本条の趣旨に反するとはいえない。 よって、「特別の事情」が有るといえる。 従って、Xの本問の商品代金を立替た行為は、基本規程25条に反せず許される。 |
弁護士倫理
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弁護士Xは、BからAに対する貸し金返還請求訴訟を受任した。有る程度訴訟は進んだが、Xとしては和解を考えている。
①XはBから全てを任すと言われていたので、Bに全く相談することなくAと和解をした。問題は有るか。 ②Xが事件を受任した後、Bは病気になり親族以外面会謝絶となった。Xはどうすべきか。 ①について。
本問では、XはBに相談しないでAと和解をしている事から、依頼者の意思を尊重したとは言えず、基本規程22条1項に反しないか。 この点、同条の趣旨は依頼者の権利や正当な利益の実現の為に依頼者の意思を尊重する事に有る。 しかし、弁護士には職務の独立性があり相当の範囲において自由裁量が認められている。 そこで、両者の調和から、攻撃防御方法などに付いては弁護士の自由裁量が認められるべき物の、請求の放棄・認諾や上訴するか等、重要事項に付いては依頼人の意思を尊重る必要が有ると解する。 そして、和解に付いては、和解するか否か、するのであれば基本的内容や条件をどうするか等に付いて依頼人の意思を尊重すべきと解する。 しかし、本問では全てを任すと言われたものの、Xは全くBに相談せずに和解をしており、「尊重」したとは言いがたい。 よって、XのBとの和解は、基本規程22条1項に反する。 ②について。
本問では、Bは面会謝絶なので「その意思を十分に表明できない」(同2項)場合にあたる。 そこで、Xは「適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に努め」るべきである。 この確認に付いては、事情により様々な方法が有るといえ、一律に決する事は出来ない。 そこで、本問では親族はBと面会できるので、Xは、親族を通じて和解に付いてBの意思を確かめるべきであると言える。 |
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弁護士甲は、受任した事件の記録を以下のように保管し処分していた。問題は有るか。
①事務所の本棚に記録を綴じたファイルを並べ、いつでも取り出せるようにしていた。 ②処分する際には、ファイルからはずし一般ゴミとして捨てていた。 ①について。
本問における、弁護士甲の記録の保管は、基本規程18条に照らし適当と言えるか。 この点、「事件記録」とは、弁護士が装弾や受任した事件に関して職務上作成や入手した書類や記録などを言い、記録を綴じたファイルは「事件記録」に当たる。 次に、「保管」とは、事件記録を自己の管理の及ぶ範囲内に保存して毀損や滅失などを防ぐ為の管理行為を言う。 本問では、事務所の本棚に並べているが、それでは来客者がすぐに手にとって中身を閲覧する事が出来、依頼者の「秘密やプライバシーに関する情報」がすぐに知れてしまう。 よって、少なくとも、来客の目にふれないロッカーなどに入れておくべきであり、本問の保管状態では適当と言えない。 ②について。
本問における処分は、18条に沿った「廃棄」と言えるか。 この点、「廃棄」とは、事件記録を捨てる事や本来の用途に供し得ないように効用を失わしめる事をいう。 本問において、ファイルからはずし一般ゴミとして捨てているが、そのような廃棄の仕方では部外者にすぐ内容が知れてしまうことになる。 すくなくとも、シュレッダーなどにかけて細かく裁断し、部外者にその内容を容易に知られないようにしないと「秘密やプライバシー」に関する注意が合ったとはいえない。 よって、本問の廃棄では適当とはいえない。 |
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金銭の貸主をAとし、借主をBとし、Bの所有建物に付き抵当権が設定されていた。そこで、弁護士甲は、その抵当権を実行するためにAから抵当権付債権を譲り受けた。
問題点を検討せよ。 本問における債権の譲受は係争物の譲受に当たり、弁護士法28条やそれと同趣旨である基本規程17条に反しないか。
まず、甲が譲り受けた抵当権付債権は「係争権利」「係争の目的物」に当たるか。 この点、それらの条文の文言である「係争」の範囲が明確でなく、又、これら条文で禁止されない行為に付いては品位を損なう非行として懲戒にすれば足りる事から、拡大して解釈するのは妥当ではない。 そこで、「係争」とは裁判所に現に係属中の権利に該当するもののみを指すと解する。 また、「譲受」とは有償無償を問わないものの、弁護士が不当な利益を得ることを防止した趣旨から、他人の計算において譲り受ける事は同文言に当たらないと解する。 以上から本問に付き検討すると、詳細は不明であるので、AB間において債権について訴訟が行なわれており、さらに弁護士甲が自分が利益を得る目的で譲り受けた場合には、それら条文に反し、許されない。 |
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株式会社Xは、いわゆるキャバクラ等を経営する会社であり、飲食代につき不当に高く設定しているとの噂が絶えない。
①かかる会社Xに弁護士甲が社長として就任する場合 ②経営には関与しないが、顧問に就任する場合。 ③顧問として、店長などに、風営法等の法律に違反せず警察の捜査を逃れるすべにつき指南する研修会を開いた場合に付いて検討せよ。 ①について。
甲が社長として就任するとは、業務につき執行権を有して対外的に代表権を有する役職につくことになるので、「事業を営み・・・参加」しているといえる。 また、株式会社Xは、その業務の内容や噂から「公序良俗」や「品位を損なう」事業にあたると言える。 よって、甲が社長として就任する事は、基本規程15条に反するので、かかる行為は許されない。 ②について。
この点、顧問に就任する事は「事業に参加」しているとも思える。しかし、同条は弁護士自ら営業したり名義を使用することを認めたりする事を想定しており、顧問として関与する事を当然に禁止したものではない。 よって、顧問に就任する事は同条に反せず許される。 ③について。
②で見たように、顧問に就任することに付いては許される。また、研修会を開く事も顧問としてやるべき業務の一つともいえる。 しかし、その研修において、違法か否かの限界事例に付いて検討して脱法行為を指南していたとすれば、基本規程14条の禁じる違法行為の助長に当たる。 よって、甲がかかるような研修を開いていた場合は14条に反し許されない。 |





