星の鈴を響かせて

日々鬱々とした暮らしの中で息苦しさを感じている方へ

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私は小さな頃から空想好きの少女でした。
 
赤毛のアンや小公女が大好きで、
 
不幸せな少女が未来への希望を持って進んでいく物語がお気に入りでした。
 
 
セーラが薄汚い屋根裏部屋でアーメンガードと秘密のお茶会を開く場面では、
 
何もない古びたものたちを「あたかも素敵なものたちに囲まれているつもり」で
 
その世界を創り上げていく想像力に興奮し、
 
殺風景な部屋がインド人の召使によってこっそりと変身していく
 
まるで魔法のような出来事に心をときめかせたものでした。
 
 
 
私の生家は昭和の初めに建てられた古びた家で、幼い私は洋風のモダンな家に憧れ、
 
暇さえあれば理想の家の間取り図を描き、そこに配置する家具のあれこれを想像し楽しんでいました。
 
 
 
そんな私はいつも将来のことばかり夢見て、
 
現実の世界を自分の中での「我慢すべき日常」という位置づけで考えて生きてきたように思います。
 
 
 
「自分の理想とする生活はこんなふうに展開していってほしい」
 
「けれど今はまだそれが実現できる段階にはない」ので
 
「取りあえずこれとこれは棚にしまっておいて後で出すことにして」
 
「今やらねばならない現実にはとにかく我慢して付き合い、何とか凌いでいくしかない」
 
 
 
 
こんなふうに生きてきた私は、その時々でのっぴきならない現実と出会い、
 
それが自分の想い描いていた未来とは違っていればいるほど、
 
今日という日をすぐにも「過去」という大箱の中に処分して
 
「悔い」という始末書だけを人生の書棚にしまいこんでいました。
 
 
 
そうやって生きてきた私は、あすなろのように将来を夢見ていたはずだったのに、
 
「昨日という日」が実は「おととい」から見れば「明日という将来」だったことに気づかず、
 
「明日」が「今日」に切り替わった時点で、もう「その一日を味わう」ことに
 
興味を失っていたように思います。
 
 
 
私の詩の中に「25歳の私へ」という作品があります。
 
私は20代を子育てに費やし、公園とスーパーと家という小さな三角形の中で生きていました。
 
育児に悩んでも相談する人もなく、孤独な子育ての中で
 
子どもたちが大きくなったら「あれもしたい、これもしたい」と願いながら、
 
とにかく一日のスケジュールをこなすことに一生懸命でした。
 
 
 
そんな私が今となっては忘れられない一言をご近所の女性から言われました。
 
「若いってことはいいわねえ。もうそれだけで輝いていて」
 
その方は私のことを羨ましげに見つめました。
 
 
心臓疾患のある方で、子どもを産めないためご夫婦二人で静かにお暮らしでした。
 
今考えると、その方がもう決して「手に入れることができないもの」
 
「若さ」と「子ども」と「健康」と
 
そのすべてを当時の私は持っていたからでしょう
 
 
その方は無造作に束ねた私の髪を眺めて言いました。
 
「たっぷりとして、艶があって羨ましいわ」と。
 
私はと言えば、その太くてしっかりとした髪は重たくて、
 
10代の頃から持て余していたのでした。
 
 
ジーパンがパンパンになってしまう大根足でさえ、
 
「こんなふうに張りのある肌にもう一度戻ってみたいものだわ」と言われて。
 
 
それでもその頃の私は、若い女性はみんなそうなのだからと、
 
私自身の持っていたものの素晴らしさに気づくこともなく、
 
寝癖のつかない柔らかい髪や、ジーンズの似合う細身の身体だったらいいのにと、
 
「今の自分が持っているもの」より
 
「今の自分にはないもの」ばかりに目がいくのでした。
 
 
 
現在、何人もの孫がいる私は若い頃より痩せてしまい、髪の量もずいぶん減って細く腰がなくなりました。
 
「若さ」というのは抽象的で精神的なものも持ち合わせてはいますが、
 
娘たちの艶やかで波打つ髪を眺めながら、思わず撫でてしまいたくなる自分に対して、
 
「あの頃もっともっと、鏡を覗いておけばよかったのに」と言いたくなるのです。
 
 
10代の頃から鏡に映った自分の姿が好きになれずに、
 
目鼻立ちの気に入らない所ばかりを数え上げ、すらりとした体型に憧れ、
 
「その年代の自分だけが持っている良さ」を自覚してこなかった私。
 
 
 
いつも「こうだったらいいのに」「未来はこうあってほしい」ということに関心が傾き、
 
その時期が「過去になって」初めて「あの頃まだ手にしていたもの」の素晴らしさに気づく私。
 
 
最近は家事にしても、孫の世話にしても手に力が入らず困ってしまいます。
 
若い頃は台所で茶碗を取り落とす母を見て言ったものです。
 
「また茶碗を割ってしまったの」と。
 
 
母は寂しそうに言いました。「この頃握力がなくなってしまってね」と。
 
 
もう90歳に近づいた両親は日常の生活にも困難が付きまといます。
 
そんな両親の日々の心細さを思うと、今の時点の私はまだまだたくさんのものを手にしている、
 
そのことをしみじみ実感しないではいられません。
 
 
もう自分ひとりでは外に出ることさえできない母からしたら、
 
私はどこへでも歩いていき、誰の手も借りずに家事をすませ、孫を背負うこともできるのです。
 
 
 
 
未来の私は言うでしょう。
 
「あなたはまだそんなにたくさんの自由を手にしているのね。
 
晴れた日に、自分の手で洗濯物を干せるなんて幸せね。
 
食べたい食材を自由に選んで料理して味わえるなんて素敵ね」
 
 
 
未来の私から見たら、今の私が羨ましくてたまらないかもしれません。
 
 
 
今日の私が今できること。
 
それはもしかしたら今だからできることかもしれません。
 
それを大事に今日を過ごしていきたいと思っています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

閉じる コメント(11)

星の鈴さん、お久しぶりです。
お孫さんのご誕生おめでとうございます。

星の鈴さんがしばらくのお休みを取られる前からご無沙汰しておりましたが、マイペースを身上になんとかブログを続けております。
ネット上ですがまた星の鈴さんにお会いすることができてとても嬉しいです。

私たちにとっての「今」はかけがえのない「今」。
二度と来ない「今」 未来へ続く「今」

今ここに自分が在るということを大切にしていきたいですね。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

2011/5/28(土) 午前 11:14 [ ゆみこ ]

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私も小さい頃から空想が好きでした。
みにくいアヒルの子やシンデレラなど、辛い状況から最後はハッピーエンドという童話が好きでした。

私も将来の事ばかり見てるなあ・・・。
時間を無駄に使ってしまってるんじゃないかと思う事がよくあります。
『今』という時は戻ってこないんですよね。
良い所じゃ無くて出来ない所ばかり探してるって言われます。
もっと今を、自分を、大事にしていきたいです。

2011/5/29(日) 午前 0:35 優しい花

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ゆみこさん、こちらこそご無沙汰しております。

私も新しい孫が生まれた後はまた普段どおりブログを再開する予定だったのですが、3月の大震災以降はパソコンの電源は切っていることが多いです。

ゆみこさんご家族もご無事でいらして何よりです。
被災地の方々は、あの日以来人生観が変わってしまったのではないでしょうか。
関東の私でさえ、こうして存在していられることに感謝し、
どうぞもうこれ以上人間の住めない環境になりませんようにと、
切に願わないではいられないのですから。

「明日」が「今日」という日として
無事に訪れてくれたことに感謝し、
その日を充分に味わってから未来へと繋げていきたいですね。

田舎の両親の身体が弱ってきておりますので、
そちらへ出かける回数も増えるため、あまり皆様のブログへお邪魔できないとは思いますが、
これからもゆるやかに繋がっていけたらいいですね。

2011/5/30(月) 午前 8:34 ☆ 星の鈴 ☆

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む〜さんも夢見る少女ですものね。

いつも将来に希望を持って、夢を持ち続けるというのは
とても大切なことだと思うのですよ。
それがあれば人はいつも前を向いていられますから。

ただ、私はいつも「その時期だからこそできること」を
ないがしろにしてきたように思うです。

20代がどれだけ育児に追われていようと、
ほんの少しの工夫や自覚でできたこともあるでしょう。


それは外見上から言えば、ごく些細な日常。
例えばあの頃のつやつやしてたっぷりとした髪を
ギンガムチェックのリボンで結んだ三つ編みして、
赤毛のアンのような小花をあしらったワンピースに
素敵な麦藁帽をかぶってお出かけをする。


私ときたら、まだ25歳でこれからなのに、
もう子持ちの主婦は若さを楽しむ時期は終わったと考えていて。

それなのに40歳になった時に愕然としたのですよ。
私の30代は何を楽しんできたのだろう。
30代の女性なんてまだまだあんなに若々しいのに、と。

結局はそう言いながら、もし現在の母の年齢まで生きていたら、
孫が小さかった頃の私はまだまだ若かったな

2011/5/30(月) 午前 9:05 ☆ 星の鈴 ☆

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そう思うのに違いありません。

身体的な若さというものは、特に生きる過程において
「その時期に特徴的なもの」が多いものです。

む〜さんも以前に制服のことを仰っていましたね。
今からでもぜひご自分の好きなファッションを楽しんでください。
私のようにさすがにこの年でアンのファッションは、ね。

私は心の持ちようばかりに注目していたので、
外見はどうあろうと心の若ささえ失わなければと考えていました。
ただ、100歳になっても心は若く保てるかもしれませんが、
20代なら20代、30代なら30代の「その時期の自分」を
楽しんで過ごすという行為をないがしろにしていた、
今となってはそう感じざるを得ないのですよ。

「今はまだ〜だから」「今の自分にはまだ無理だから」
そう自分自身に言い訳をして。

2011/5/30(月) 午前 9:28 ☆ 星の鈴 ☆

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現在の私が、年老いた母と、祖母である自分と、息子や娘たちと、小さな孫たちとを見比べて感じること。

それは「その時期なりに工夫すればできること」を
いつもいつも考え続け、探し、試し、実践すること。

それが生きる喜びへと繋がっていくように思うのですよ。
む〜さんの未来が喜びに満ちたものとなるといいですね。

2011/5/30(月) 午前 9:29 ☆ 星の鈴 ☆

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こんにちは、星の鈴さん。ご無沙汰しています。
お孫さんのご誕生おめでとうございます。

有るものに満足出来ず、無いものばかりに目がいってしまうと限が無いですね。私も反省です。
自分を顧みると、今はこうして仕事もあり家族も健康でつつがなく暮らしていける・・この幸せは奇跡と言っていいのかもしれません。
人生は順風満帆にはいきませんね。
山あり谷ありそれでいいんだと思います。
感謝を忘れず工夫する意識を持ち、今ある自分の生活全般を楽しみながら、小さいことでも人の助けになることを実践したり、幸せを祈ることや自分の置かれている状況でできることを精一杯やることが大切なんだと思いました。

2011/6/4(土) 午後 2:46 taka

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たかさん、ありがとうございます。
私の方こそご無沙汰しています。

たかさんは今とてもお忙しい状況のようですね。
心身ともにさぞお疲れのことでしょう。

そういうたかさんの現状を踏まえつつ、なおお伝えしたいこと。
それはその時期その時期にしかできないことを
どうぞ大切に味わってくださいということです。

私の20代は子育てひと筋でしたが、
それだけにどんな想いで過ごしたのかよく覚えています。
けれど30代は子どもたちが幼稚園や小学校に通う中で
親たちやPTAの仕事など、対外的人間関係への対応に必死で、
私個人の30代への関心も記憶もほとんどないのですよ。
気づいた時にはもう40になっていたというふうに。

それとは逆に、40代は子どもたちにお金がかかる時期で、
いくらその年代を楽しみたくても経済的に余裕がなく。
50代になれば身体的、肉体的な衰えは取り戻しようもなく。

結局今振り返ると、いつの時期も私は「この時期をとにかく乗り切ろう」ということばかりに心を割いてきたように思います。

2011/6/6(月) 午前 8:00 ☆ 星の鈴 ☆

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たかさんにもご高齢のご両親がいらっしゃるのでお分かりだと思いますが、
もう少し前ならこんなこともできたのになあと感じることが、
年を追うごとに増えてくるものですよね。

例えば私の母は足が不自由になってしまい、
一人また一人と欠けていく、遠方にいる女学生時代の友だちに、
もう一度会いたいと思いながらも実現できずにいます。

人は人生のどの時期にどんな進路変更があるのか予測できません。
必ずしも自分が想い描いていた予定通りに進むとは限らず。

今の私にはだんだんできないことが増えてきています。
そしてこれからもっとその範囲は広がっていくでしょう。
けれど「やろうと決めればできること」はまだまだあります。

2011/6/6(月) 午前 8:33 ☆ 星の鈴 ☆

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たかさんの年代は家でも職場でも大黒柱として大忙しです。
それでも、10代のお子様方との触れ合いは今だけのもの。
将来新たな家庭を築き、親となったお子様たちが拠り所とするもの。
それは今のたかさんとお連れ合いの生きる姿であり、対応でしょう。
いつの世でも子どもは後になって親の姿を自分と重ねるものです。

時間と命題に追われ必死に働きながらも、
何か工夫の余地はないだろうかと創造性を発揮なさるたかさんの姿は、
きっとお子様たちの頼もしい指針になると思いますよ。

そしてたまには意識的にお連れ合いと休む時間を共有し、
お二人の原点となる地へ久方ぶりに足を運んでみる、など
現在のご自分たちの居所を再確認する作業を大事になさることで、
「今日を生きる」ことを実感しながら、
未来への道筋を見つめていけるように思うのですよ。

お互いに今を味わって生きていきたいですね。

2011/6/6(月) 午前 8:34 ☆ 星の鈴 ☆

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お初コメントさせて頂きます(*´∀`)
新参者なので失礼があったらすいません!同性ですヽ(*’-^*)。
☆ 星の鈴 ☆さんのブログが心に響いたので思わず書かせて貰っています(`▽´)

最近は嫌なことばかりで、打ちのめされて凹んでばっかり。。。
だけど、☆ 星の鈴 ☆さんのブログを読んでいるとなぜかいっぱい励まされた自分がいました。
なぜかなんていうと勘違いされそうですが、そういうつもりじゃなくて気軽に読ませて貰ったんですね(*^-^)
なのに気持ちが楽になっていく自分がいて、本当に、☆ 星の鈴 ☆さんのブログって優しいなって。

☆ 星の鈴 ☆さんに感謝の気持ちがいっぱいです(*ロ′∀`b)
差し出がましいお願いなのですが、☆ 星の鈴 ☆さんに聞いて欲しい悩みがあります。
koikaren@i.softbank.jp

唐突で驚かせてしまいましたよね(o^∇^o)
でも、☆ 星の鈴 ☆さんにならお話できる。。。どうしても聞いてほしいという思いでいっぱいです。
※でも迷惑だったらコメントは消去しちゃって下さい。。。

2015/1/21(水) 午前 1:07 [ m16**252476 ]


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☆ 星の鈴 ☆
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