ショートストーリー&エッセイ

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精一杯 − その2

映画と競馬と笑いの好きな「ばっどのお部屋」のぱっどさんの公募第20弾です。
締め切りは5月31日
(締め切りが延期となりました)

今回のキーワードは「元気」「笑顔」です 

 
曜子は母と郊外にある大型ショッピングセンターに買い物に出かけた。
「今日はBの5ね」母が言った。
曜子はもう少しで忘れるところだった。以前にも駐車場の位置番号を確認せずに買い物をして、4000台もの車を駐車することができるこの駐車場で、自分の車を探すのにひどく苦労したことがあった。
「あら、あそこの車、ライトが点いているわ」
「本当だ。ハザードランプを点けたままね」と曜子が前方に駐車している車の方を見た。
「言ってあげないと」
母はこういう時にはとても親切である。曜子はひとりだったら、そのまま気に留めずにいただろう。
「じゃ、インフォメーションカウンターがあるから、そこに知らせましょう」
 
 
曜子はもう一度ライトの点いている車のナンバーを確認して、母と一緒に館内へ向かった。
中央にあるインフォメーションカウンターには若い女性係員が客の応対をしていた。
「すみません」と曜子がそのうちの一人の女性に声をかけると、「少しお待ちください」と言って忙しそうに背を向けた。
曜子は少し面倒になり、知らせるのをやめようかと思って立ち去ろうとしたところ、別の女性が「お待たせいたしました」とニコニコしながらやってきた。
「あの〜、駐車場なんですけど」
「はい」
「ライトがチカチカしている車があったんで」と曜子が言った。
「あ、ハザードランプですか?」
「はい」
「お知らせありがとうございます。何色の車でしょうか?」
「え〜〜と」と言いながら、曜子は後ろにいる母の方を向いた。母もわからないような顔をしたので、曜子は「なんか、暗い感じの青っぽい車だったような気がします」
「そうですか」と言いながら、係員はメモを取っている。
「ナンバーは“八王子ま1456”です」
「八王子ま1456ですね」
「場所は、Bの5です」
Bの5、わかりました。わざわざありがとうございました。のちほどアナウンスさせて頂きます」
午後5時、まだ少し早いが二人は夕食を食べにレストランへと向かった。ライトを消し忘れた車のアナウンスはその後入らなかったが、二人はショッピングをして、その車のことはすっかり忘れてしまった。
2時間ほどショッピングをして帰ろうとすると、「駐車場A1に停められておりますお車で“八王子ま1456“ダークブルーのお車でおいでのお客様、ハザードランプがついておりますので至急お車までお戻り下さい」というアナウンスが聞こえてきた。
駐車場の位置だけは違っていたが、曜子が知らせた車に違いなかった。曜子と母が駐車場に行くと、まだ“八王子ま1456“のハザードランプが点滅したまま停めてあった。
「まだあの車、停まってるわね」母が言った。
時計を見ると7時半だった。
「さっき、アナウンスがあったのはやっぱりこの車のことだわ」曜子が言って、駐車場に立っている表示を見るとBの5の隣がAの1になっていた。どうやら、この位置はBの5とAの1の境で、ダークブルーの車はAの1に停めてあったのだ。
「私たちがBの5って言ったから、係の人はBの5を全部チェックして見つからなくて、Aの1だって突き止めるのに時間がかかったのね。それで、すぐにアナウンスを流すことができなかったんだわ。でも私たちにできることはこれが精一杯よね」
 
つまんない落ちですみません〜

精一杯 − その1

映画と競馬と笑いの好きな「ばっどのお部屋」のぱっどさんの公募第20弾です。
締め切りは5月12日。

今回のキーワードは「元気」「笑顔」です キーワードとは外れてますが、勘弁

 
 
曜子はお彼岸のお花を買って駅まで歩いていた。
「あ〜、忘れた!」
定期入れを忘れたことを改札を通る直前に思い出したのだ。家に戻って定期券を取り、駅に着くと目の前で乗車する予定だった電車が去っていった。曜子は定期券を取りに戻ったことを後悔したが、あとの祭りである。
次の電車は1037発、姉との待ち合わせのバスの発車時刻は横川駅10:39分である。横川駅まで1駅だが、2分では絶対に間に合わない。姉に「先に行って」とメールを送った。横川駅に到着するとのんびりと階段を上って改札を抜けまっすぐにバス停へと歩いて行った。
イメージ 1
 
すると、横断歩道の向こうに10:39発の大山団地行きのバスが発車したのが見えた。すぐにバスは赤信号で止まった。曜子はバスを追い越せば、次のバス停で乗り込めるのではと思い、背中にリュック、右手に畳めるタイプのキャスター付きのバック、左手に菊の花束を握って思い切り走り出した。
横断歩道で止まっているバスを追い越し、一目散に歩道を駆けた。ちらっと姉がバスの右後部座席に座っているのが見えた。
のんびりしている余裕はない。ひたすら、次のバス停、高松町三丁目を目がけて走った。
生憎、信号がたくさある道だった。
まっすぐ行くと歩道は途切れて反対側の歩道に渡らなければならない。すでに半分の距離を走っているので、あとには戻れない。走って右側の歩道へ渡り切り、また横断歩道を渡って次の信号で左の歩道へ戻る。ジャッキーチェンだったら、きっとこんなの軽々だなと曜子は思った。
あとはまっすぐに、高松町三丁目までひたすら走る。後ろを振り返るとまだバスは見えない。これはいける!
どんどんどん、走る。
また後ろを確認する。赤信号で止まっているバスが、青信号に変わった瞬間、迫ってくる。
イメージ 2
 
汗を流しながら曜子は走った。
両手の荷物が邪魔なうえに、今日は特別に風が強く吹いている。目に刺さるような風で涙がぼろぼろと流れたが、曜子はジャッキーチェンの映画を思い出しながら懸命に走った。
 
ふう〜〜〜。後ろを振り返る余裕はない。
 
 
 
次の交差点は赤信号だ。後ろを振り向くと、バスが追いついてきた。青信号とともに走り出した曜子をバスは勢いよく追い越して行った。
そして、ジャッキーチェンになる夢は儚く消えたことを曜子は悟ったのだった。
はあ、はあ、はあ。
 
おわり
 
その1ってことはその2もあるんですが

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ありがとう

映画と競馬と笑いの好きな「ばっどのお部屋」のぱっどさんの公募第18弾です。
締め切りは11月15日。

今回のお題は「ありがとう」です

月曜日の夜、夢を見た。
いつものようにちずさんと駅で待ち合わせた。
いつもと変わらずランチをしてカラオケ。
そして、「私の家に遊びに来ない?」と久しぶりにちずさんが言った。
「そう?いいわよ」
遊びに行った場所は以前のマンションとは違う所だった。場所は二子玉川駅から徒歩10分だ。
一戸建ての家には知らない男性が待っていた。
「こんにちは」と私は言った。
そしてちずさんの方を見ると、彼女はニコニコして「私の夫です」と言った。
「え、結婚したの?」
「まあ、そんな感じ…」
「あら、結婚式はよばれてないわ」と私が言った。
「まだ、正式には…」と言って、ちずさんは困った顔をした。
ちずさんの夫は髪が長くて、不精な感じの垢抜けない男だった。
ちずさんと私は数え切れぬほどに海外旅行をし、日本にいるときも食事やカラオケ、お互いの家を行ったり来たりするほど親しかった。
え〜〜〜、こういう人、ちずさん選んだんだ。妥協?これでいいの?と私は失礼なことを思った。
2人は出かけてくると言って、私を置いて家を出て行った。ここが夢だ。他人を招待して出かけてしまうって、普通なら失礼だよね。
そして、1,2時間くらいたったのだろうか。2人は帰ってきた。
彼は床屋に行ってきたようだ。
髪は短くなり、かなりこざっぱりした感じになっていた。最初の印象よりずっと清潔でいい男になったじゃない。ちずさんはそんな彼のことを見通していたのだろうか。
 
イメージ 1
私ははっと目が覚めた。
もし、本当にちずさんが結婚するのなら、私は今まで付き合ってくれてありがとうと言いたかった。でも夢だった。
ちずさんはいつもパソコンからメールを出してくる。今日、会社から帰ってメールが届いていたら、これは正夢かもしれない。来たら怖いなあと私は思っていた。
火曜日の夜、私はパソコンを立ち上げ、メールをチェックした。ちずさんからメールは来ていなかった。
水曜日の夜、すでに私は夢のことは忘れていた。そして、ちずさんからのメールはなかった。
私はその夜はぐっすり眠って、翌朝満員電車で会社に向かった。
会社に着くと、私は携帯のメールをチェックした。
すると、1通のメールが届いていた。ちずさんからだった。
 
このものがたりの登場人物は実在ではありません
 
 な、な、なんと〜〜〜♪
Yahoo、ノンフィクション、エッセイランキングでただ今第2位
(11/10 15:23現在)

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モンスター同僚

カオルと木本がもっと仲良くしてくれたらいいのにとエンジニアの大山は常々思っていた。一ヶ月前にエンジニアの木本が二年間の赴任を終え、ルクセンブルクから帰国した。大山とは同期だ。大山、木本、カオルの上司のジョンとカオルは同じキュービクルに座っている。
「始めまして、木本です。よろしくお願いします」
「始めまして、高橋(カオルの姓)です。こちらこそよろしくお願いします」とカオルも挨拶を返した。これが始めて二人が言葉を交わした時である。
「プル〜ン、プル〜ン」木本の電話が鳴った。席には木本の姿はない。カオルは木本と同じキュービクルに座っているので、席を立って彼の電話を取った。カオルもこの時はまだ新入社員で、外資で働くのは初めてだった。鳴っている電話はすぐ取らなければいけないと日本の企業での経験からそう思っていた。
「もしもし」と電話を取って、木本が席をはずしている旨を伝え、折り返し連絡することにして電話を切った。カオルは早く伝言を伝えようとエンジニアルームへ行った。多分、そこで木本が実験をしているのだろうと思ったからである。彼はちょうどパソコンの前でデータを取っていた。
「木本さん、韓国のジュンヒュックさんから伝言です」と言って木本にメモを渡した。彼はお礼を言うどころか、忌々しそうにカオルからメモをひったくるようにした。
 木本は朝会ってもカオルに挨拶をするどころか睨むような顔を向けた。そしてある日のこと木本の大きな声が聞こえてきた。
「だから、新聞を止めるのは一年前に言ったはずだ!」と電話に向かって怒鳴っていた。どうやらルクセンブルクのアパートの前には新聞が山積みになっていて、木本の後任の山田が大家さんから文句を言われて、日本に連絡をしてきたということだ。そして、木本はルクセンブルクの新聞屋に国際電話をしたのだ。新聞屋は木本が帰国する前に確認を取らなかったので、一年前の約束を忘れていたのだ。こんなやり取りが小一時間も続いていた。
 また数日後、木本は電話で怒鳴っていた。
「だから(だからと続く時は決まって彼が文句を言っているときだ)僕は当日ホテルの予約をキャンセルしたんだ。請求されるのはおかしい。どうして請求書が届いたのかわからない!」彼はルクセンブルクを発つ日に予約したホテルを何かの理由でキャンセルをした。電話はカード会社だった。別のホテルに泊まったのだが、当日キャンセルしても払い戻しすることが出来なかった。それで、カード会社から請求が来ていたのだ。またこのやり取りは小一時間近く続いた。木本は社外、社内を問わず、あらゆる人とトラブルを起しては怒鳴りちらしていた。そして、相変わらずカオルとは挨拶もしなかった。
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 ある日、大山は木本に尋ねた。
「どうして、カオルさんと話をしないんだ?もっと仲良くしたらいいじゃないか」
「俺はああいう女の人とは話をしないことにしているんだ」と木本は言った。
「ああいう女の人ってどういう人?」
「末っ子で四大卒の女はわがままだから」
「え?」と大山は怪訝な顔で聞いた。
「俺がカオルさんと話をしたら、カオルさんが俺のことを好きになるからな。だから、話はしないんだ」
その後の木本の奇怪な言動は延々と続くのだった。
 
                                                 おわり
 
           このものがたりの登場人物及び団体は実在ではありません。
                                  
 
 

色んな見えないもの

映画と競馬と笑いの好きな「ばっどのお部屋」のぱっどさんの公募第15弾です。
締め切りは今月末。ということは明日です。
今回のお題は「見えないもの」、こじつけで書きました★

☆通勤ラッシュ
通勤ラッシュでつり革につかまるどころか、中まで入るのもかなり大変。
やっとつり革のところまでたどりついても、まず坐れることはない。特に最近はそうだ。なぜか、私が立っている前の席の人は頑固に降りない。右隣の人も、左隣の人も降りた。けど、私の前の人は降りない。この列は私の前の人以外は全員降りた。ここ1年くらいはずっとこんな感じ。
しかし、ある日の朝、8人掛けの真ん中あたりのつり革までやっとたどり着くと、私の目の前の人が降りていった。「今日はラッキー♪」と私はすぐに坐った。間もなく、次の駅に電車は到着した。
すると右側に坐っている人達も、左側に坐っている人達も、私意外は全員降りていった。向かい側の座席は……誰一人降りていない。
私はこのことを同僚の岡田君に話した。(岡田准一君ではない。残念)
「それはですね」岡田君は眉をひそめ、「宗教に入るか、オーラの泉で聞くっきゃないですね」と言った。

イメージ 1

☆地下鉄の改札
ザワザワ。
高校生の男子が部活の帰りらしく、群れをなして騒いでいる。
「エディー・マーフィン!」
“エッ???”と私が高校生の群れの中の一人を見ると、彼はもう一度言った。
「本当だよ。エディー・マーフィン」と言って、トイレに入っていった黒人の親子を指差した。
“プププ。違うだろ”と私。
真剣な顔で、また同じことを言っている彼を横目に仲間は歩き去っていった。


イメージ 2

☆ ある休日の電車の中
下り電車の中で若いカップルがドアにもたれかかり、イチャイチャしている。
女の方は、年のころ、二十歳くらい。男も同年代のようだ。女はきれいに化粧をした、伊東美咲似の美人である。
ところが、突然。
思い出したように「今朝の金返せ〜」と男に向かって、その女が叫んだ。
「え〜!ないよ、そんなの」と男が答えた。
「なんだって〜〜!テメェ、ウゼェンダヨ〜〜!」と美人。
ビックリ仰天のわたし。
イメージ 3


                                  
                          おわり

           この物語の登場人物及び団体は実在ではありません。

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