「らりるれろ」通信 Remark On The MGS

考察系です。ゲームとちょこっと映画です。よろしくお願いいたします<m(__)m>。

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スラムドッグ$ミリオネア(2008)
監督 ダニー・ボイル 
出演 デーヴ・パテル              ジャマール・マリク 
   マドゥル・ミッタル            サリーム・マリク 
   フリーダ・ピント             ラティカ 
   アニル・カプール             プレーム・クマール 
   イルファン・カーン            警部 
   アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール  ジャマール(幼少期) 
   アズルディン・モハメド・イスマイル    サリーム(幼少期) 
   ルビーナ・アリ              ラティカ(幼少期) 


インドの国民的人気番組「クイズ$ミリオネア」。
ムンバイ出身の青年ジャマール(デーヴ・パテル)が、次々と難問をクリアし、
ついに最後の一問に辿り着いた。
スラム出身で、ロクに教育も受けていない彼がどうしてここまでクイズを勝ち抜いてこれたのか?
それにはジャマールの過去が大きく関係していた。
果たして彼は、みごと大金を手に入れることができるのか?
そして、彼の今まで辿ってきた人生とは?




最近はインドと云うと経済的にもかなり勢いがありますね。
さすがに世界同時不況のあおりをそろそろ喰っているようですが、
それでも、インドの企業がディズニーと提携したり、
スピルバーグのドリームワークスも資金難から、インドの企業に投資を受けています。
そのインドを舞台にしたのがこの映画「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)ですね。




この映画は基本はサクセス・ストーリィですが、
主人公が得る成功がお金や名誉ではなく純愛なのが、とても今の映画の中では新鮮でした。
現代において、このテーマを語るのに、
高度経済成長期のインドを舞台にしたというのは絶妙なチョイスだと思います。
今のインドの状況が描かれていますが(一応いろいろ物議は醸していますが)、
リアルなようでどこか神話的な印象が与えられるのがこの映画の特徴ですね。
でも、そうは云いつつも、貧しい国や、貧困のある国で、
子どもたちが搾取されると云うのは見ていて本当に胸が痛みます。
この映画で印象的だったのは、途中で少しだけ挟まれるオペラのシーン。
この映画は、そこまでで、インドのスラム街や、
主人公兄弟の生きてきた悲惨な道筋を見せてきました。
そのオペラの世界は、すごく幻想的に美しく光に彩られた、
ジャマールたち兄弟にとってはある意味「別世界」でしたが、
そんな異世界には目もくれず、彼らはそこで置き引きをします。
生きていくために仕方がないのですが、
本来芸術や文化と云うのは子供たちの心が豊かになるためにも存在するものなのに、
貧困と搾取の中で生きてきたこの子供たちにはそんなものは何の意味もなさないのです。
私はここでちょっとあまりの悲惨さに涙が出そうになりました。
演じられているオペラはグルックの「オルフェオとエウリディーチェ」。
この演目はギリシャ神話に題材をとっています。
この辺を見ても、神話的な要素は意識されている気がします。
歌われているのは「エウリディーチェを失って」と云う、妻を失ったオルフェオの嘆きの歌。
これは、ラティカを奪われたジャマールの心情にオーバーラップさせているのでしょうね。
ここで、この演目を使う事で悲劇的な恋愛を示唆する感じもひっかけ、と云うか演出ですね。
オルフェオは妻を愛するあまり、冥界にまで妻を追って行きます。
このシーンからもジャマールのラティカへの想いも深いことがわかります。
この映画は、こう云うちょっとした部分にも気が利いていると云うか、
短い映像をちょっと入れたり、
わざと短カット映像を繰り返して臨場感をうまく出すことに成功しています。
映像も、中間ショットを多用しています。
極端なロング・ショットは避けて、中間的な遠近をうまく使うことによって、
独特の世界を作ることに成功していると思います。
ロング・ショットを多用すると、この映画ではダイナミックな映像になり過ぎて、
猥雑な感じとか、人口密度が高そ〜な感じが出ないと思うんですよね。
そう云う所は映像もマッチしていました。
あと、やっぱり、ともすれば、結構地味な話になるところを
音楽でフォローしているところも大きいですね。
多少過剰と思う人もいるかもしれませんが、ダニー・ボイルはイギリスの映画監督らしく
やっぱり比較的体温低めの映像を作る人なので、この音楽の使い方で、
そうなるのを避けていたような気がします。
それでいて、暑苦しすぎなくて見やすい作りでした。




この映画は最後まで見ると、ある意味ファンタジーな映画だと思うんですが、
私は、こう云うファンタジーはどちらかと云うとあんまり好きな方ではないのですが、
この映画は、これでいいと思いました。
途中で、あまりに悲惨だと思ったせいかもしれませんが(^_^;。
もちろん、インドを舞台にしたのがこの映画の最大の勝因だと思うんですが、
ラストがよかったのは、意外に?兄の存在も大きかった気がします。
兄のサリームは弟のジャマールを救けるために人生を狂わされた感じですよね。
ある意味悲劇的な人生で、これがうまく弟の人生とコントラストになっていました。




役者は、主役のジャマール役デーヴ・パテルは、体温低そうでよかったです。
暑苦しすぎるとどうかな?って感じの役ですしね。
何考えてるのかいまいちわからなさそ〜な加減がクイズの時はスリリングでしたね。
兄役のマドゥル・ミッタルも、今時の若者風な感じで、
役の割にはクールぽいところがよかったですね。
ラティカ役のフリーダ・ピントは基本がきれいならいいわけですが、
最後のダンスを踊っている所のスタイルがいいなぁ、と思ったらモデルなんですね。
イルファン・カーンはもういるだけで安定感がありますよね。
プレーム役のアニル・カプールも渋い感じでよかったですね。
個人的にはママン役のアンカー・ヴィカルが印象的です。
もう、出てきた時から、優しげなその容姿と違って邪悪な感じがぷんぷんで。



悲惨だとは書いていますが、それなりにコミカルなところもあり、
見やすい作りの映画だと思います。
人間のいろいろな部分をフラットに描いているので、
最近のへヴィな映画を見慣れていると、物足りない人も多いかもしれませんが
個人的にはそのフラットさがかえって現代的な感じがしました。
あと、フラットだから、変にノスタルジックさを感じないところもよかったです。
ダニー・ボイルっぽいと云えば、ぽい作品でしたね。
あ、そうそう、この映画を見ていると
インドの「クイズ$ミリオネア」は毎晩生放送でやってるんですね。
それは、ちょっと驚きましたw あ、これは実際ではなく脚色なのかな?

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そそ、あのオペラのシーンも印象的でした。なぜ「オルフェオとエウリディーチェ」なのかなと思ったのですが(このアリアは好きなんですよ〜(^^))、なるほど、miskaさんの記事で納得!必ず映画の中の音楽シーンには意味があるので、わかってよかったです♪(^^)
しかしインドの勢いを感じましたね〜
重い社会背景なのに、とても観やすいエンタメ映画になっていたのも又面白いと思いました。
こちらからもTBさせてくださいね♪

2009/4/23(木) 午後 9:36 choro

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【おまけさん】これは印象的な写真ですよね。
見つけた時もらっておこうwと思ってもらってきましたw
そそ、ラティカにとってあの環境は冥界そのものですよね。
このオペラのシーンは兄弟の差とか、それまでの出来事がうまく表されていたと思います。
やっぱりこの映画で兄の存在は大きいですよね。
サルマン・ラシュディはそうなんですか。彼は確かムンバイ出身ですよね。
いろいろな反発も解らなくもないのですが、この映画はおっしゃるように今の時代だからこそ描けた作品のような気がします。
イスラム教徒が主役の話がユダヤ系の力の強いアカデミーを受賞したことは、作品の質の高さ故でしょうね。
TBありがとうございました。

2009/4/24(金) 午前 6:48 [ miskatonic_mgs_b ]

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【もくれんさん】格差の表現と云う部分も大きいと思います。決して明るい話ではないし、あのシーンを見た時にやっぱり悲劇的に終わるのかな〜?なんて思ってしまいました(^_^;。
私も彼は強固にラティカ一筋と云うよりは、どこかで静かに強くラティカの事を想っている風なところがよかったと思いました。
現代の寓話的なロマンティシズムがある作品ですよね。
TBありがとうございました。

2009/4/24(金) 午前 6:59 [ miskatonic_mgs_b ]

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【おねむさん】ファンタジックさのある作品にしては、リアルな搾取部分とか貧困とかエグイ感じの描写が多いですよね。
その辺が社会派のようなそうでないような、と云う部分はすごくわかります。でも、そう云う啓発的な要素が低いところが見やすいところでもありますからね。
この題材をこれで済ませていいの?と思う人も多いと思います。
この作品はよく云えばダニー・ボイルも円熟した、と云う感じでしょうか。悪く云うと角が取れた、って感じですね。
尖った部分は「トレイン〜」とかのころに比べるとないですよね。
映像の感じとかはダニー・ボイルぽいのですが、内容としては実は真逆で、最も彼らしくない作品かもしれませんね。
個人的にはいろいろなバランスの悪さも楽しめた作品でした。
TBありがとうございました。

2009/4/24(金) 午前 7:04 [ miskatonic_mgs_b ]

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【Pumpkintaltさん】私は一応予備知識はありましたがどれでも驚きました。
え〜???みたいな(^_^;。
インドは今とてもエネルギッシュな所なんでしょうね。
それのよくわかる映画でした。
何となくですが、観ておいて良かったと云うのはわかるかも、です。
いろんな部分に見どころのある作品でした。

2009/4/24(金) 午前 7:13 [ miskatonic_mgs_b ]

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【くるみさん】そうなんですよね。けっして堅苦しくなく、見やすい作りの映画でした。
一見、地味なようで、結構波乱がいっぱいある映画って感じでした。
音楽はとてもインド的でしたね。それがまたうまくマッチしていました。
TBありがとうございました。

2009/4/24(金) 午前 7:16 [ miskatonic_mgs_b ]

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【Kaz.さん】なんとなく技術的に回帰した、って感じはわかります。そそ、さりげないワン・ショットがすごく考えられてたりするんですよね。
編集もうまかったですね。
実は今あまり作られないタイプの映画なのかもしれませんね。
それをインドを舞台にしたことで描いたのはアイデアの勝利だったと思います。
それをユダヤ系の力の強いアカデミーが受賞させたってことは、この映画の持つベーシックな魅力が評価されたんでしょうね。
TBありがとうございました。

2009/4/24(金) 午前 7:20 [ miskatonic_mgs_b ]

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【Choroさん】あのオペラの舞台は、舞台の演出もとても印象的でした。いきなり出てきてびっくりしましたが、とても効果的なシーンだったと思います。私は騙されそうになりましたよ(笑)。
あのアリアもいい曲ですよね♪常にインドチックな曲がかかってる中、ここだけクラッシクの曲を流すのもおもしろいですよね。
最近他にもインドのドキュメンタリーを見たのですが、本当にエネルギッシュですね。
社会派的な題材を扱っていながら、寓話的要素も強いので、そう云う意味ではとても見やすい作品に仕上がっていたと思います。
TBありがとうございました。

2009/4/24(金) 午前 7:30 [ miskatonic_mgs_b ]

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お久しぶりです。
この映画のあと、主人公の親御さんがひと悶着起こしてしまったようで・・・
オスカーが悪いほうに使われてしまったことが残念です。

2009/4/24(金) 午後 5:46 しゅう

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あ〜あのオペラ。私も気になっていたのですが、わかりませんでした。グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」だったのですか。そしてギリシャ神話に題材をとっているのですね。
なるほど。そんな風に神話的な要素が意識されているとは・・
前半スラム街の姿がよくわかりました。
TBさせてくださいね。

2009/4/24(金) 午後 11:11 car*ou*he*ak

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【しゅうさん】おひさしぶりです。
そうなんですよね。せっかく結構あちこちで話題になっているのに。
話題になっているからそう云う話も出るんでしょうけどね(^_^;。

2009/4/25(土) 午前 9:48 [ miskatonic_mgs_b ]

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【Cartoucheさん】あのオペラのシーンって短いですよね。あっという間に終わると云うか(^_^;。
神話チックな感じは意識されていると思います。あの、ラーマ神の問題とかもそう云う感じですね。
この映画はけっこうリアルチックですが、寓話的要素も強いと思います。
スラムの様子は映像的にもうまく描けてましたよね。
その辺のバランスで好き嫌いはわかれるかもしれませんね。
TBありがとうございました。

2009/4/25(土) 午前 9:52 [ miskatonic_mgs_b ]

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まだ未見ですが、インドを舞台に低予算で撮ったダニー・ボイル監督は、いたくインドが気に入ったみたいで、今後もインドで撮るそうですね。またヒロインの女の子も、ウディ・アレンの映画に出演が決まったとか聞きます。
インドでの子供の労働搾取問題は、本当にひどいようですね。友人のオーストラリア人があるNGOの団体で、働かされている子供達をアートスクールで教えている活動をしています。子供達は、親公認で、小さな時から労働に借り出され、学校に行けない子がたくさんいると聞きました。イギリスのドキュメンタリー番組でも、イギリスの子が着る学校の制服を、インドの学校にいけない子供達が働いて、作っているという内容です。こういった問題が、この映画で少しでも浮き彫りになったのでしょうか?

2009/5/7(木) 午後 5:30 [ nomad ]

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【nomadさん】ダニー・ボイル監督はインドのパワーがすごく気に入ったみたいですね。
ウディ・アレンの映画ですか。それはまたおもしろい組み合わせですね。
本当にこの映画でも描かれていましたが、子供に対する搾取はひどいものでした。
でも、この映画は実はそう云う部分を啓発する映画ではないんですよね。社会的な部分には意外と切り込まないんですよ。そこが、評価を分けるところでもあるようです。
どこかファンタジックな映画だと思います。
インドの子どもたちの問題だと「未来を写した子どもたち」と云うドキュメンタリー映画があるのですが、そちらを見た方がかなりわかるかな、と云う感じがします。
「スラムドッグ〜」は、今こう云う映画が求められているんだろうな、と云う感じがすごくして、ちょっと複雑な面持ちになる部分もあることはありますね。

2009/5/8(金) 午前 0:04 [ miskatonic_mgs_b ]

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発展著しいインドの中にはまだまだこんなにもスラムがあってそこから生き抜くために毎日を必死に過ごしている子供達がいるからこそこういうすばらしい作品ができたわけですが、そう考えると見る僕らも心してみないといけないなと感じました。
TBさせてください。

2009/6/22(月) 午前 7:27 かず

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【かずさん】急激な経済発展中の国だからこう云うひずみがまだまだあるんでしょうね。
インドは今エネルギーのすごい国ですよね。
グローバル経済が世界を席巻している中、こう云う映画はとても興味深いですね。
TBありがとうございました。

2009/6/23(火) 午前 2:09 [ miskatonic_mgs_b ]

今頃コメントさせていただきます。ごめんなさいね。
miskaさんオペラにも詳しいんですね〜。流石です。
そういう知識があると作り手の意図的な部分も理解できて、いっそう深く楽しめますね。
芸術を楽しむことも知らず、日々の暮らしのために置き引きをしたりする子供に涙が出そうになった‥と書かれてることに感動しちゃいました。ほんと気付かなかったけど切な過ぎますね。
厳しいインドの社会で生きる青年だからこそ夢実現の感動が大きく素晴らしい作品でした。
遅くなりましたがTBさせてくださいね。

2009/6/27(土) 午前 3:11 pu-ko

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【PU-KOさん】いえいえwコメントありがとうございますw
オペラは割と最近興味を持ったジャンルなので、まだまだ浅く広く〜みたいな感じなのですよ(^_^;。
最近、割とオペラを使ったシーンのある映画が多いですね。
オペラやバレエってやっぱり日本ではまだまだ敷居が高い感じなのですが、ダニー・ボイル監督も子供の心の豊かさ、に関心がある人ではないかと思います。
先進国、過剰な消費社会にいるとそう思う人も多いかもしれませんね。
でも、消費ってなかなかやめられないんですけどねw
そう云う意味でも、おっしゃるように、今、急激に発展途上にあるインドを舞台にした意味は大きいかもしれませんね。
TBありがとうございました〜w

2009/6/27(土) 午前 3:53 [ miskatonic_mgs_b ]

オペラの部分も内容と重なったところがあったんですね。
細かいところまで隙なく作ってあって、疾走感がとぎれず、面白く観ることができました。
出来すぎた脚本の構成がかえって良かったと思いました。
子ども達のシーンも、ダニー・ボイル監督は撮るのが巧いですね!
辛い境遇でも、活き活きと頑張ってみんな生きてて、今の時代に勇気を貰ったような気持ちになりました!
遅くなりましたが、TBさせてくださいね。

2009/7/10(金) 午前 8:32 かりおか

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【かりおかさん】とても細部まで完成度の高い映画だったと思います。インドと云う事で視覚的にも音楽的にも新鮮だったという部分はあるかと思います。
それで出来すぎなのは気にならなかったというか、逆にあるかも?的な部分はあったかもしれませんね。
子どもたちのシーンもとても印象的ですよね。
なにかある意味元気が出る映画ではありましたよね。
TBありがとうございましたw

2009/7/11(土) 午前 0:17 [ miskatonic_mgs_b ]

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