宮口善通のBlog

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マルセル・プルーストの植物(最終回)



小生が初めて「Yahoo!ブログ」にこの
「マルセル・プルーストの植物」を掲載した
のは今から3年ほど前のことであった。
その掲載日時と表題は以下の通り。
・日時:2016/7/7(木) 午後 3:41
・表題:マルセル・プルーストの植物
    (マホガニー、acajou)
随分、長く続いたものである。既に3年間の
月日が経過している。

ところで、
小生がマルセル・プルーストの「失われた時
を求めて」を読むようになったそもそもの
トリガー(trigger、切っ掛け)はシャルル・
ピエール・ボードレールの「悪の華」を読ん
でいたことによる。


今から44年前の1975年の秋に、小生はボード
レールの「悪の華」をフランス語の原文で読
んでいた。その中でも特に、以下の3つの詩
が素晴らしかった。

・バルコニー(露台)「Le balcon」
・旅への誘い「L'invitation au voyage」
・敵「L'ennemi」

これらのボードレールの詩の中には、確かに、
「時間意識」が入っている。マルセル・プル
ーストの「失われた時を求めて」の「時」も
この「時間意識」である。

これら3つのボードレールの詩の「時間意識」
についての詳細説明を本ブログに掲載すると、
大変長くなってしまうので省略する。

マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」
をよく読んで見ると、つまり、精読して見ると、
その中に、「ボードレール」の名前が全部で
15回出てくる。そして、「悪の華」の詩は
全部で9回、「パリの憂愁」は1回出てくるのだ。

また、プルーストは1921年6月、彼が50歳の
時に、新フランス評論に「ボードレールにつ
いて」という評論を書いている。

このように、マルセル・プルーストは明らか
にボードレールの影響を受けているのだ。


先ほども述べたように、マルセル・プルース
トの「失われた時を求めて」の「時」は明ら
かにボードレールの「悪の華」の影響である。
プルーストはボードレールの「悪の華」を読
んで、この「時」を書こうとした。それは
プルーストが「失われた時を求めて」を書こ
うとしたいくつかの動機の中の一つなのである。

ボードレールの「悪の華」もこのマルセル・
プルーストの「失われた時を求めて」も共に
「時間の観念」「時間意識」を持っていた。

古代人は「円循環的な時間意識」を持ってい
た。ところが、フランス・ロマン主義の巨頭
であるシャトーブリアンの「ルネ(René)」
のように、大方の西洋人はキリスト教徒であ
るがゆえに「直線的な時間意識」を持っている。
だから、「世紀末」「世紀病」という言葉が
出てくるのだ。これが若いフランスの青年たち
に孤独感、厭世観をもたらしたのであった。

・「円循環的な時間意識」
 「生」➜「成長」➜「老」➜「死」➜「再生」➜「生」
  時間が円を描くようにくるくる回転している。
  太陽は東から登って天頂に達し、
  西へ沈んで、明日また東から登る。

・「直線的な時間意識」
 「生」➜「成長」➜「老」➜「死」➜「消滅」
  時間は真っ直ぐ直線的に進んで行って、
  決してもとにもどってこない。
  それは「時間の不可逆性」を意味した。


それで、ボードレールもマルセル・プルース
トも「直線的な時間意識」の中で「時」と言
うものを「敵対視」していたのだ。ボードレ
ールの「悪の華」の「敵」という詩の中に、
そのことがはっきりと表現されている。そし
て、彼らはそうした「時」の呪縛から逃れた
いと考えた。そこでプルーストは最後の「見
出された時」で述べているように、「過去と
現在に同時に共通しながら、しかも過去と現
在を超越したもっとはるかに本質的なもの、
つまり、過去でもなく、現在でもない、物理
的時間を超えた「永遠の時間」を無意志的記
憶によって蘇らせようとしたのである。

つまり、彼らは古代人の「円循環的な時間意
識」を取り戻そうとしたのであった。それは
「輪廻転生」の無限を読み取ろうとする一つ
の試みであった。やがて「死」が訪れるであ
ろう「時」の不安と恐怖と苦悩から逃れたい、
そしてその「時」の呪縛から解脱したい、開
放されたいと考えたのだ。

次に、
マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」
の中で、小生が最も好きな部分を以下に掲載する。
それは「見出された時」の中の次の一節である。

Enfin cette idée de temps avait un dernier prix
pour moi, elle était un aiguillon, elle me disait
qu’il était temps de commencer si je voulais
atteindre ce que j’avais quelquefois senti au cours
de ma vie, dans de brefs éclairs, du côté de
Guermantes, dans mes promenades en voiture
avec Mme de Villeparisis et qui m’avait fait
considérer la vie comme digne d’être vécue.

これをごく簡潔に要約すると、

「時」の観念は人をおおいに奮い立たせるも
ので、もしも、自分の人生の過程で、人生を
生きるに価するかのように思わせたもの、そ
のようなものに到達したいと望むなら、今こ
そ直ぐに始めるべき「時」だ。

このことを言い換えれば、

もしも、失われた「時」の「過去」の出来事
が、多くの人々のためになることがあると思
われるのであれば、「今」この「時」こそ、
一冊の書物を書くという「仕事」を始めるべ
き「時」である。そのような「時」の観念は
一冊の書物が完成されるであろう「未来」のあ
る「時」に向かって、「今」この「時」に、
行動を起こさなければならないという強い意
思表示を表わすものであった。

つまり、
「過去」➜「今現在」➜「未来」
という「時」の流れの中で、
今、この時、この場所で、自分は何をなすべ
きか?もしも、それが解っているのなら、直
ぐに行動すべきである。と言っているのである。


次に、なぜ小生は「マルセル・プルーストの
植物」という表題に絞ってブログを掲載した
のであろうか?

先ず第一に、プルーストは文学研究家クルテ
ィウスなどから「フローラ系の作家」と評価
され、その作品中で描かれる人物に関するも
のが植物にたとえられていることが多いと言
われている。

例えば、
マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」
の中の登場人物と植物との関係は以下の通り。


・ジルベルト➜サンザシ(サンザシの垣根の
 前に立っていた可愛らしいジルベルトの姿)
・オデット➜バラ(バラ色の絹のドレスの婦人)
・オデット➜菊(オデットの自宅前の小さな
 庭に咲いている彼女の好きな菊の花)
・ラシェル➜梨(サン=ルーの愛人ラシェル
 が住む郊外の村の美しい梨の花)
・ゲルマント公爵夫人➜矢車菊(公爵夫人の
 大好きな矢車菊の帽子)
・ノルポワ氏➜オーク(オークの根本で裁きを
 下す聖王ルイのような風貌)
・ゲルマント公爵➜白いカーネーション(燕
 尾服の胸に純白なカーネーションを付けて
 いる公爵)
・ジュピヤン➜キバナノクリンザクラ(キバ
 ナノクリンザクラのような亜変種の倒錯者)
・アルベルチーヌ➜バラ(バルベックの海辺
 に咲くバラの花のような姿のアルベルチーヌ)

まだまだ、多くの事例があるが、その他省略。


実はこのことが小生に大きな影響を与えた。
特に「作品中で描かれる人物に関するものが
植物にたとえられていることが多い」という
部分である。この一文が小生にある作品を瞬
間的に思い浮かばせたからだ。それは紫式部
の「源氏物語」である。紫式部もまた、プル
ーストと同様に「フローラ系の作家」である
と思ったからである。小生は今から48年前の
1971年の高校生時代から紫式部の「源氏物語」
に親しんでいた。それで日本古典文学に出て
くる「植物」について以前からかなり興味が
あったのだ。

例えば、源氏物語の中の植物に例えられる登
場人物を列記するとすれば、以下の通りである。

・桐壺帝
・桐壺の更衣
・藤壺
・葵上
・夕顔
・朝顔斎院
・柏木
・紅梅右大臣
・桃園式部卿宮
・槿(むくげ)斎院
・軒端荻
・蓬生君(末摘花)
・藤大納言
・藤宰相
・藤中納言

さらに、「源氏物語」54帖の帖名の中で、
植物に関する帖名は以下の通り。

・桐壺
・帚木
・夕顔
・若紫
・紅葉賀
・葵
・賢木
・蓬生
・朝顔
・藤袴
・梅枝
・藤裏葉
・若菜上下
・柏木
・紅梅
・早蕨
・寄木


このように、
「作品中で描かれる人物に関するものが植物
にたとえられていることが多い」という点で、
マルセル・プルーストの「失われた時を求め
て」と紫式部の「源氏物語」には類似点が多
いのだ。

それでは、植物の花はいったい何を意味する
のであろうか?それは今を生きる「生」の美
しさ、未来の種の保存のための「生」の美し
さを表現しているのだ。今、花が咲いて、雄
蕊と雌蕊が合体することによって、未来へ種
をつないでいくのである。そこには、「今」
という「時」と「未来」という「時」の2つ
の意味が隠されているのである。美しい花は
失われた時のためではなく、未来のために、
今、咲いているのである。


以上のように、
小生が「Yahoo!ブログ」に
「マルセル・プルーストの植物」を
掲載した理由は

.棔璽疋譟璽襪痢岼の華」の「時間意識」

∋膽杏瑤痢峺算疂語」の「植物意識」

これらの2つの「意識」の影響から小生は
「マルセル・プルーストの植物」という表題
のブログを作成したのである。


そしてさらに、もう一つの理由がある。

Gβ冦呂抜脅性(感性)を磨くための訓練

それは自分自身の忍耐力と感受性(感性)を
磨くためである。マルセル・プルーストの
「失われた時を求めて」や紫式部の「源氏物
語」のような長編小説を読みながら「植物」
だけを抽出するという作業には「忍耐力」と
鋭い「感性」が必要なのである。


●悪の華(Les Fleurs du mal)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E3%81%AE%E8%8F%AF

●シャルル=ピエール・ボードレール(Charles-Pierre Baudelaire)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB

●フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン(François-René de Chateaubriand)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%AF%EF%BC%9D%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3

●エルンスト・ローベルト・クルツィウス(Ernst Robert Curtius)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%84%E3%82%A3%E3%82%A6%E3%82%B9

●紫式部
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%AB%E5%BC%8F%E9%83%A8

●源氏物語
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%90%E6%B0%8F%E7%89%A9%E8%AA%9E

●À la recherche du temps perdu
https://fr.wikipedia.org/wiki/%C3%80_la_recherche_du_temps_perdu
https://en.wikipedia.org/wiki/In_Search_of_Lost_Time
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%99%82%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6
https://beq.ebooksgratuits.com/auteurs/Proust/proust.htm
http://www.ac-grenoble.fr/PhiloSophie/a-la-recherche-du-temps-perdu-de-marcel-proust-dans-une-excellente-edition-numerique-gratuite/

●Marcel Proust
https://fr.wikipedia.org/wiki/Marcel_Proust
https://en.wikipedia.org/wiki/Marcel_Proust
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88



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今日はここまで。


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