月の☆彩り

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旅路其の二十四

グンソクが二人の行動に唖然としていると、ヒョニもチョンホ達の後を追う様に塀に飛び乗って中に消えていた。

ヨンウンとグンミンが急いで門の方に向かうのを見ていると、中からヒョニが門を開けたのか、二人は門の中に飛び込んで行ったのだ。

取り残された形に成ったグンソクとジョンファは、何事が起ったのかそっと門の中を窺うと、盗賊に立ち向かっているチョンホ達が見えたのだ。


チョンホとソンシクは塀に飛び乗ると庭に飛び降りて、中の様子を窺い悲鳴が聞こえた方向に静かに走り出していた。

屋敷の使用人達が、覆面をした盗賊達に庭の一か所に纏められて刀を突き付けられて居るのが見え、傍で主夫婦と若い娘が盗賊に囲まれ脅されている処だった。

盗賊は、屋敷や蔵から財宝を持ち出して庭に積み上げて屋敷の主を見据えていた。

「金は遣る、だから殺生だけはしないで欲しい」

「ほう、物分かりが良いな!しかし、此処に出した財宝だけでは有るまい!後は何処に隠したんだ?」

「此処に在るだけだ、他には無い」

「信用出来んな、相当貯め込んで居る筈だ!!それに今日財宝を積んだ荷車が此の屋敷に運び込まれたのを見て居るんだ!!」

主が隠し場所を言わないので盗賊の一人が、主夫婦の傍から娘を引き離して後ろから抱き締めると、首筋に舌を這わせていた。


キャー!!!

怯える娘の首筋を舐め、頬擦りをすると薄笑いを浮かべている仲間の盗賊を見ながら、頭目らしい男人が

「隠して有る財宝の在りかを言わないと、此の娘が如何成っても知らんぞ!」

そう言うと、娘を抱きしめている盗賊に目配せをすると、その盗賊が娘のチゴリのオッコルム(紐)に手を掛けて解いていた。

「止めて呉れ、たった一人の娘なんだ手を出すな!!!」

主の悲痛な叫びに、盗賊達が面白そうに見物仕様と刀の切っ先を下げた時、刀を持った手に石礫(つぶて)が立て続けに飛んで来て、盗賊は痛さの余り刀を取り落していた。

「誰だ!!!」

石礫(つぶて)が飛んで来た方向に盗賊達が一斉に向くと、側面からチョンホとソンシクが飛び出して来て、其々盗賊に飛び蹴りをくれると盗賊の身体が建物の壁に激突して崩れ落ちていた。

石礫(つぶて)はヒョニが投げた物だった。

一瞬に二人の盗賊が吹っ飛んだ出来事に、茫然としていた他の盗賊達が我に帰ると、目の前に現れたチョンホとソンシクに斬り掛っていた。

チョンホは、斬り掛かって来た刀の切っ先を避けて拾った刀を盗賊の首筋にぴたりと付けると、盗賊の手から娘を引き離しヨンウンに託して、その盗賊の鳩尾に刀の柄を打ち込んでいた。

盗賊の目が、一斉にチョンホとソンシクに向いた事で、主夫婦と娘そして使用人達を守る様にグンミンとヨンウンが立ちはだかる様にしているのだった。

ヒョニが盗賊達に見られない様にしながら、何処からか縄を持って来てヨンウンに手渡すと、ヨンウンは最初に伸びた二人とチョンホに鳩尾を強かに刀の柄で強打されて伸びた盗賊を縄で縛り上げ、庭の片隅にころがしてチョンホとソンシクの様子を見ていた。

その様子を門の陰から見ていたグンソクとジョンファは、驚いて動く事も儘ならずに其の儘、息を殺して成り行きを見ていたがジョンファが気が付いた様に

「お父様に知らせなくてわ!如何しましょう?」

ジョンファの言葉にはっとしたグンソクだったが、急いで忠州牧使に知らせに走るには女人のジョンファを連れて走ると足手纏いに成るので、如何しょうかと思案したが、事は一刻を争う事なので近くの民家にジョンファを預けると一目散に忠州牧使の屋敷に走り出していた。

グンソクの知らせを受けて直ぐさま、忠州牧使が屋敷に居た役人を引き連れ馬で盗賊に襲われた屋敷に駆け付けると、其処に唖然とした様に座り込んでいる主夫婦と使用人達がいて庭には財宝が積んだ儘だった。

屋敷の主夫婦は、忠州牧使を見ると

「如何か・・・如何か・・娘を助けて下さい!!」

泣き崩れる妻を、支えながら屋敷の主が忠州牧使に懇願して来たのだ。

屋敷の主夫婦が動揺しているので使用人から話を聞いていると、グンソクが青い顔をして忠州牧使の傍に来て座り込んでしまった。

一緒に付いて来た忠州牧使の息子のソンジンが、グンソクの様子が可笑しい事に気が付き如何したのか問い正すと

「ジョンファが・・・ジョンファの姿が見えないんだ」

「何だと!お前一体ジョンファを何処に置いていたんだ!!」

「此の屋敷の傍の民家に預けたんだ」

「先に屋敷に戻ったんじゃないのか?」

「迎えに来るから待って居る様にと、言い含めていた。其れに自分の屋敷に帰るなら途中で会う筈だし、民家に居た老人と娘の姿も消えて居るんだ」

グンソクの言葉に、ジョンファを預けたと言う民家にソンジンと取り巻き達は行ってみたが人の気配がしないので、隣の民家に行き話を聞く事にした。

ジョンファを預けた民家は、暫らく空き屋に成っていたが、一月程前に老人と若い娘が越して来て暮らすように成っていたが、近所付き合いを仕様ともせずにいるので不思議に思っていたと話していたのだ。

ソンジンは、父親が牧使を勤めるだけあって何か感じたのだろう、隣の民家に人の出入りを聞くと時々行商人が尋ねて来ていたと言うので、役人を呼ぶと老人と娘の似顔絵を描く様に指図して、父親の傍に行くと自分が調べた事を報告していた。


父親の牧使は、ソンジンの話を聞くと

「如何やらジョンファは、人質にされた様だな」

「人質ですか?」

「ああ、チョンホとソンシクが此の屋敷に乗り込んで盗賊相手にかなり優勢だったらしいが、盗賊がジョンファに刀を突き付けてチョンホ達の前に連れ来たので、チョンホ達は大人しく盗賊に殴られて縛られた様だ。盗賊共は、私達が来る前に持てるだけの銀塊と金子や手形を持つと、ジョンファと此の家の娘を人質に取って逃げたという話だ」

淡々と話す忠州牧使だったが、大事な娘が連れ去られた事の心痛は計り知れなかった。

「チョンホ達は?」

ソンジンは、チョンホ達が盗賊に殴られて縛られたと聞いたが、チョンホ達の姿が見えない事を疑問に思い父親の忠州牧使に問い掛けると

「如何やら盗賊の後を追った様だな」

忠州牧使は、そう言うと使用人を呼んで見た事をソンジンに話す様に言うと、官営から呼んだ役人達に事の次第を話し盗賊の後を追う様に指示を出していた。

暗闇の中で盗賊の後を付ける事等、至難の業だったが今はチョンホ達にジョンファの運命を託す事しか出来ないもどかしさに苛立ちを隠せないソンジン達だった。


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