月の☆彩り

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旅路其の二十六

ジョンファは、一緒に連れて来られた豪商の娘キム・ヘジンと一緒に奥の小屋に押し込められ不安な気持ちで父親の忠州牧使が助けに来て呉れる事を信じていたが、馬で連れて来られた時、獣道に入り込んだ事で果して父が此の場所を見付ける事が出来るか不安だった。

盗賊達が何の危害も加えずに自分達を解放して呉れるだろうか?

今まで、盗賊に係わって泣きを見た女人は大勢いるのだ。

もし、自分達に利用価値が無いと判断されると、自分もヘジンも盗賊達の慰み者にされる事は明白だった。

そんな事を考えていると不安で胸が押し潰されそうに成っていたが、そんな時一瞬チョンホ達の顔が脳裏に浮かんでいた。

自分が人質にされた為に、目の前でチョンホとソンシクが、盗賊達に無抵抗で嫌と言う程殴られるのを見た事で、怪我をしたのではないかと心配だったが、其れよりも自分との婚姻話を断っていた二人が自分の所為で盗賊に殴られたと恨まれて居たらと心が重く成っていた。


小屋の中に、入って来た盗賊が手付かずの食事を見ると、皮肉な笑いを浮かべジョンファとヘジンを舐めまわす様に見ていたが、他の盗賊に呼ばれると残念そうに食事を下げて小屋の外に出て行った。

盗賊が小屋の外に出た事で、ジョンファは少しほっとしたが、無事に小屋から出られるのか段々恐怖心が湧きあがって来るのを押さえる事が出来なかった。


ヒョニが奥の小屋に近付いて様子を見ていると、小屋の中から盗賊が食器を下げて出て来たが、手を付けて無い食事に盗賊の一人が

「如何やら俺達の作った飯は食いたく無さそうだな」

「それはそうだろう、小屋の中の二人は金持ちの娘だ。貧乏人が食す物等食えんだろう」

「民は、飯も食えずに草を食べていると言うのに、いい気なもんだ。毎日凄いご馳走を食べていれば、こんな食事等犬の餌位にしか思っていないんだろうな」

「おいおい、そう言うと民より犬の方が良い物を食べてる様に聞こえる」

「それはいけない」

「一人は、忠州牧使の娘らしいが、今朝鮮で賄賂を受けない官僚はいないだろう。民から税金を絞り取っておいて、自分達は賄賂で肥え太っている。そんな奴の娘が此の食事を食えないと言うのは、可笑しい」

「民がどれ程ひもじい思いをしているか分からないんだろう!いや、分かろうともしていない!!」

盗賊達は、小屋の中に居るジョンファに聞えよがしに、大声で話していたが見張りの男人に

「出入り口は、其処しかないから外から閂を掛けておけば逃げ様が無いだろう。焚き火に当たって酒でも飲んだ方が良い」

「それもそうだな、そこからでも此処の扉が見えるから心配する事も無いしな」

小屋の外から見張りが焚き火の方に向かうのを確認すると、ヒョニは音もたてずに素早く扉の閂を外して小屋の中に入っていた。

小屋の中には、隅の方に身を寄せている娘が二人いたが、入って来たのが顔を見知っている娘だったので安心したのか放心していた。

「チョンホ様、ソンシク様が直ぐ傍まで来て御出でです。お二人を助ける機会を待って居ますので、呉々も気をしっかりとお持ちに成って下さい」

ヒョニの口から出たチョンホとソンシクの名前に、諦めていた気持ちに希望が湧いて来ていた。

ジョンファは、最悪の状況を考え父や兄を心の中で呼んでいたが、脳裏に浮かんだのはチョンホとソンシクの顔だった。

そんな思いが通じたのか、助けに駆け付けて呉れ外で機会を待っていると聞くと、あの二人ならきっと大丈夫と思えるのだった。

ヒョニが、二人に安心する様に話し外の気配を探る様にしていると、ヘジンがヒョニの手を掴んで

「此処に居るのは嫌、一緒に連れて行って・・・」

目に涙を溜めて懇願されると、おいて行く事も出来ずに気が付いたら頷いていた。

本当だったら、一人で小屋を出てチョンホとソンシクの元に戻り、次の指図を仰がなくては成らない処だが此の儘二人をおいて行く事が後ろめたく感じたのだ。


ヒョニは、静かにする様に二人に言うと目を閉じて全神経を耳に集中させ、小屋の傍に盗賊がいない事を確認すると、千載一遇の好機を無駄にしない様に慎重に少し扉を開けて様子を見ながら、焚き火を囲む盗賊が振り向く事が無い様にと祈りつつ先にジョンファを外に出した。

ジョンファは、身体を小さく屈めると音を立てない様に素早く小屋の陰に身を寄せると、傍の茂みに入り込みヒョニとヘジンが出て来るのを待った。

ジョンファが姿を隠すと次はヘジンの番だが、ヘジンの怯えて震えている状態にヒョニは、一瞬嫌な胸騒ぎを覚えたが、今更引き返す事も出来ないので自分が先に外に出るとヘジンの手を引いて外に出していた。

怖気づく、娘の手を引いて小屋の外に出ると、流石のヒョニも緊張している自分に驚いていた。

身体を屈めて、成るっべく低く焚き火を囲む盗賊に気付かれ無い様に歩みを進めていたが

パキッ!!

枝を踏む音にヒョニの動きが止まった。

全神経が盗賊の方に向いていた為に、ヘジンの足元の注意まで気が行かなかったのだ。

枝を踏む音に、焚き火を囲んで酒を飲んでいた盗賊達が一斉に此方を向くのが分かり、緊張感が最高潮に達した時だった。

「何だ、お前か・・・驚かせるなよ!人質が逃げたと思っただろうが!!」

小屋の傍で、ヒョニの後ろに立つ女人の姿が有った。

その女人は、動きを止めて様子を窺うヒョニとヘジンを見ていたが、焚き火の傍の盗賊達に向かって

「兎を見付けたから、追い掛けて来たんだけどね。逃げられちまったじゃないか、変に声を掛けるんじゃ無いよ!!」

「そりゃ残念だったな、精々追いかけまわしな!」

ワハハハ!!

張りつめた緊張感が一瞬で消え去っていた。

盗賊達は、焚き火の傍を動こうともせずに、その女人をからかっていたのだ。

その女人は、盗賊達の様子を見ているヒョニの傍に近付いて来ると、小声で

「今のうちだよ、早くお逃げ」

「助けて呉れるんですか?」

「ああ、二人を逃がそうと思って来たんだけど先客が居るとは、思わなかったんでね。早く此処から離れた方が良い」

「貴方は?」

「私も逃げるよ。好きでこんな処に来た訳じゃないからね」

茂みの中で、先に待っていたジョンファが心配そうな顔で見ていたが、その女人はお構いなしに

「こっちの方なら誰も居ないから、あいつ等時々小屋の周りを遠巻きに見回っているからね、見つかると厄介だ」

そう言うとサッサと歩き出したので、ヒョニ達も追い掛けていた。

盗賊達に見つからない様に、茂みの中を抜けると何時しか森の外れに出てチョンホ達の傍まで来ていたのだ。

チョンホは中々戻らないヒョニの身を案じていたが、ヒョニの姿を見て安心した顔を向けた時、ヒョニの後ろからジョンファとヘジンの姿を見付けると驚いて

「良く助け出せましたね。見張りが居たのでは?」

「見張り達に、たんまりと酒を出して遣ったからね。今頃ご機嫌で酒盛りをしているさ」

ジョンファ達の後ろから、女人の声がしたので用心深くその方向を見ると、暗闇の中から現れた女人は蓮っ葉な感じのする女人で、如何見ても盗賊達の仲間にしか見えなかったが、ヒョニの話でジョンファ達が無事に戻れたのは此の女人のお陰だと言う事だった。

その女人は、チョンホとソンシクが両班だと気が付くと一瞬嫌な顔をしたが、今更戻る事も出来ない状況に成っていたのだ。

「助けて呉れたそうで、礼を言う」

ソンシクの言葉に、女人は照れた様に

「お嬢さん達は、既に小屋から出ていましたからね。私が居ても居なくても助かったと思いますよ」

「いや、幾ら見張りが酒に負けて持ち場を離れても、神経は小屋に集中していた筈です。気配で気付かれたでしょう」

「ええ、枝を踏む微かな音に気が付いて、焚き火を囲んで居た盗賊達が私達の方を向いていましたから、此の方が注意を逸らして下さらなければ今頃捕えられていたと思います」


ヒョニの言葉に、チョンホは今更ながら危ない橋を渡っていたと思うと冷や汗が出て来るのだった。

「もう直ぐ役人が来るが、お前は如何する?」

「元々、此処に居る盗賊の仲間では無いですからね。私もお嬢さん達と同じく攫われ来たんですよ」

その女人の身の上は、悲しい物が有った。

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彩さん、こんばんは。お久しぶりです。

やっと続きを拝見しました。

わがままそうで、KYなヘジンのせいでどうなるかとハラハラしましたが、事なきを得ましたね。よかったぁ。

2010/5/20(木) 午後 8:13 [ トモコ ]

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トモコさん、今晩は。

マイペースのヘジンに足を引っ張られるヒョニです。

脱出成功!

2010/5/21(金) 午前 0:57 彩


.
彩
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