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鵺が鳴く夜は恐ろしい(Night is terrible on the day when NUE calls) 第7章 白い獣(White beast in Nanatsumori) Chapter 23 鈴木美和のラボを辞した折笠真帆は、見星イブのラボに向かった 美和との話は無駄ではなかった これまでの宮崎真琴、高城遥との話しをまとめ、その目標をたてることができたからだ それは、これまでの迷いを振り払うのに充分だった イブのラボに向かっているのは、自分の意志を再確認するためのものだ 真帆は、イブが自分の師であると思っている そうである以上、師の許しを得るべきだと考えていた イブのラボは、美和のラボの隣である ドアの前に立つと、それが開いた イブのラボも他のスタッフと同様である 奥にデスクがあって、手前に応接セットがある 異なるところは、そのラボには書棚がないということだ 彼女は無限書庫の管理人であり、司書でもあるのだ 仮想現実の中で、このラボが切り離され、無限書庫の中にあると考えていいだろう 彼女は書庫の全ての書籍、データを自由に取り扱うことができる それだからこそ、書棚など必要ないということなのだろう ラボの壁は、多くのディスプレイで埋め尽くされている 四方が全てディスプレイである イブシアン、イブミラ、イブリム、ヤクシのディスプレイである そして、イブは椅子に座って、空間に切り出されたディスプレイに囲まれていた ところが、真帆が入ると、周囲のディスプレイは、重なるように1つに纏まって姿を消した イブが立ち上がって、真帆を迎えてくれた イブは、長い髪を綺麗にまとめ、スーツ姿だった 彼女は真帆に客用の長椅子を勧め、自分は主人席に座った 「今後の方針が纏まりましたので、ご報告に上がりました それに、その許しを得たくて、まかりこしました」 「そう? でも、行動開始の時期は、早まりそうね」 「はい?」 「森君の動きがね、妙だったのよ それで追っていたの」 「え? イブさんは、森さんを監視していたのですか?」 「あらん 人聞きの悪いこと言わないでよ そんなことしてないわ だって、真帆は森君にサーチャーをセットしていたでしょ」 「は、はい」 「でも、それは森君のプライバシーを考えて、フォレスト経由でしている そうなれば、森君は報告を受けている訳だから、承知の上ね」 「はい」 「森君 戦闘態勢に入ったわよ」 「え。。?」 そう言って、「愛由」と呼び出した 「フォレストの動きは。。?」 「異常なしです 通信は確立しているのですが、それ以外の報告はありません」 「どうして。。」 その言葉にイブが溜息をついた 「大方、情報操作を命じているのよ 無断で行動を開始している訳だから、全て事後報告で済ませようとしているんじゃない?」 「もう。。」と、真帆が頬を膨らませた それにイブが言う 「それも真帆を思ってのことだろうから。。 そんなに怒らないで。。 今後は、彼も自分の判断で動かなきゃならないんだから。。ね」 「それは、そうですが。。 余りにも無謀です」 「そうね 危機的状況かもね」 「どういう意味です?」 「森君は、1度出勤して、貴女の休暇を確認してから、休暇を申請している その上で、あの屋敷跡に向かった そこから森に入り込んだのよ」 「それでは、戦っている相手というのは。。」 「遥のいうところの管狐とか鎌鼬、真琴のいうところの神使ということになるかな 三狐神の残りの2柱というところかな。。」 「あの。。 直ぐに向かっていいでしょうか?」 「ええ、いいわよ 真琴は、スタンバイOKよ 貴女の出陣を今か今かと待っているわよ」 「はい」と応えると、真帆は立ち上がった そして、「真琴さん」と声をかける するとディスプレイが切り出された 「はいはーい」と写し出された真琴が応えた 「ガントリーで待っているよ」 「はい?」 「だって、空から降りた方がはやいでしょ」 「了解しました」と応えると、イブに「行って来ます」と言って、ラボを飛び出した それを見送ったイブが呟いた 「やれやれ。。 相変わらず忙しいわね〜」 彼女が背を椅子に預けると、ディスプレイが4枚切り出された 角田沙矢、高城遥、鈴木洋子、丸森海石榴が写し出される 「鴉(KARASU)と魔女(WITCH)は、現場に向かいました 森(FOREST)は、既に戦闘状態 形勢は圧倒的に不利です ですが、KARASUとWITCHの参画によって逆転します KARASUは、対話しようとしています そのためには、敵の力を消耗させなければなりません」 「そうね」と沙矢が頷いた このような強襲は、沙矢の得意とするところだ それで戦況への目算がついているという感じがする 「すると、状況は思ったより早く進行するのかしら。。?」 そう言って、沙矢が遥をチラリと見た 「はい そのようですね 対話の内容次第ですが、状況は改善に向かうと思います その点は、タイミングを見計らいます」 「そうしてください」 「ですが、現状では。。 行き先がありません。。」 遥が哀しそうに言う ところが、それに洋子が口を開いた 「その件ですが。。 美和に目算があるようです」 「この日本に開発されない土地があると。。?」 驚いたように尋ねる遥に、洋子が「はい」と応えた 「世界遺産です あの地なれば。。と それに巫女が後継者を欲していると。。」 それに海石榴が、「北伊賀谷ですか?」と尋ねた それに「はい」と洋子が応えた それに海石榴が、懐かしそうに言う 「そうか、そうですね。。 村の賢者、年老いた巫女がいました。。 あの地なら、静かに暮らせるでしょう」 「はい 美和がツナギを取っています それが纏まればと思いますが。。 後は、本人次第だと思います」 すると、沙矢が「そうなると、いいですね」と微笑んだ 「はい」 それに全員が応え、会議は終了した 一方、七ツ森では、森真一と白い獣達との戦闘が続いていた 擬人化された狐。。 それが森が受けた感想だった それは鋭い鎌のようなものを使う カミソリの刃のように薄く大きな鎌だ 森が受けた印象は、吉村修一を殺害した凶器に近いということだ もしかすると、これが折笠真帆鑑識官のいう片倉二三子に取り憑いているものと同質のものということになる だとすれば、三狐神の残りの2体ということになる そうなると、これは神との戦いになるのか。。と、考えてもおかしくなかった だが、森の会得した拳法が功を奏していた 形意拳と呼ばれる拳法は、動物の形態を模倣することで攻防を行うものである それが形と意となって現れるのである 「虎形拳!」という森の言葉が、意志となり形となって見せている 襲いかかる雄の白い獣に、虎が振るう前足となって打ち据えられた その猛烈な攻撃に、白い獣が吹き飛ばされ、地面に転がった 「兄者!」と雌の獣が叫んだ それに森が構えて見つめた その姿に、獣が戦いていた 「虎。。」 森が「ウォー」と吠えて突進していく 迫り来るそれに怯えるように、風を纏って樹上に逃れた 虎がそれを見上げて牙を剥いているように見えた それに雄の獣が、横から襲いかかってきた 大きな鎌を振り上げ、疾風のように向かって来る その鎌を振り下ろした それを猫族のように躱して、その腕を巻き込むように拳を放つ 「蛇(じゃ)!」 それに伴って、虎の前足は蛇となって、そののど元を襲った からくも獣はのけぞって躱すと、ザッと後方に退いた それに森が舌打ちをした 「やれやれ。。 相手も手練れ揃いってか。。」 森は、構えなおした その時には、元の人の姿に戻っていた それに雄の白い獣が言った 「お前。。 お前は、鵺(ぬえ)か。。」 「ぬえ。。」 その言葉に森が身を固めた そこに隙が生じた それを狙ったかのように、疾風の勢いで飛び込んできた それを躱すように飛び退いたのだが、その鎌が左の外ももをかすった スラックスが裂け、肌が見えた その肌に一筋の赤い線が見えている そこから血が流れている それで森はガクッと膝をついた 「しまった。。」と、呟いた 「フォレスト。。 バトルスーツに。。」 『了解』という返事と共に、彼を光が包んだ それとともに、彼の服がウッドランドのスーツに変わっていた その迷彩が、彼の姿を隠した そして、身を隠しながら、負傷した足に布を巻いた 「オレが。。 鵺ってか。。 拳法の型が、動物の姿に見えた。。ということか。。 鵺は、そんなもんだったろうな。。」 ザッと身を翻し、頭上の枝の上に乗った 「あれは。。狐か。。鼬か。。? 狐っていうのは、犬族だよな。。 鼬って。。あれ?」 『鼬はネコ目です』とフォレストが応えた 「そか、ありがとうよ ちょっと、こいつはやばかったな 迷彩で姿を隠せても。。 血の匂いは隠せないな。。 犬って鼻がきくんだよな。。」 そう呟いて、森は視線を感じていた 「やれやれ。。 これはヤバイかな。。」 『そうでもありません』 上空をサイエンス・アカデミー・プロジェクトの戦略ヘリコプター「ヴェルダンディ」が横切った 社屋から離陸したヴェルダンディは、真っ直ぐに七ツ森に向かった 宮崎真琴と折笠真帆は、その貨物室にいた サイエンス・アカデミー・プロジェクトからこの地点までは、数分もかからない まもなく、後部ハッチが開いた 貨物や乗員を積み込むためのハッチだ 眼下に七ツ森が広がっている 「まもなく、目標地点」 「了解」と真琴と真帆は応えた イブミラのカウントダウンが始まっている それに会わせるように、開いているハッチに向かった そして、そこから飛び降りたのだった 真琴と真帆は、両手両足を広げて落ちていく 真帆が「愛由!」と言った 『スタンバイ。。ブート』 すると、真帆の身体が光で包まれ、黒のバトルスーツに変わった 顔には大きなサングラスがつけられている 「KARASU」と呼ばれる姿である その姿で、両手両足を広げたまま落下していく 落ちながら、真琴も言う 「プルー」 『にゃんにゃーん』 それに伴って、真琴が光に包まれる その光を抜けると、彼女はパープルのバトルスーツに包まれていた 同様に大きなサングラスをかけている 「WITCH」と呼ばれる姿である 空気抵抗を大きくするために、両手両足を広げて、気流に乗るように落下していく 「気持ちええなぁ〜 これじゃ。。 イブさんもしたくなるわ」 「へぇ〜 イブもしたんだ」 「それがミニのスーツのままで。。」 「まったく。。 お転婆だよね〜」 「そうですよね〜 いいな〜 美和さんは、いつもこんな気持ちで飛んでいるんやろな〜」 「そうだね」 「鴉なのに、飛べへんちゅうのはなんやろな〜」 「人には、向き不向きというのがあるのよ」 「そうやね」 などと言っている間に、鬱蒼とした森が眼下に近づいてくる 2人は、身体を丸めて、方向転換すると、落下が横向きになるように仕向ける そうすることで、落下する重力加速度を低減して、大きな幹を足をつけた それで幹がたわみ、その反動利用して、回転すると大きな枝に着陸した 「2人とも、何をしているんですか 無茶苦茶じゃないですか!」 森の悲鳴のような声が聞こえた 「そうか?」と真帆が応えて続けた 「しかしな、森さんほど無謀やないで。。」 「それは。。」 返事につまる森に真琴が尋ねる 「大丈夫? 森君」 「は、はい なんとか。。」 「そか。。 なんとか、間に合ったようやな」 高い木の枝に立つ真帆と真琴は、見下ろしていた 眼下には、森の姿があった それを狙うように白い獣の姿があった 20130606 |

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