|
『AQUA/ARIA』 天野こずえ著 マッグガーデン 「時代もの、大好き」参加記事の第3弾です。 今回は前回の「ローマ人の物語(正確には「痛快!ローマ学」ですが)」から、イタリアつながりということで天野こずえさんの『AQUA/ARIA』をご紹介します。前作の「AQUA」が全2巻、雑誌を「月刊コミックブレイド」に移して再開された「ARIA」が現在連載中で第9巻まで発売されています。 今まで「時代もの、大好き」参加記事として、架空の歴史物語、現実にあった過去の歴史、とご紹介してきましたが、今回は架空の近未来のお話です。前回よりさらに、「時代もの」のイメージからは遠く離れてしまいますが、ARIAの舞台は古き良き時代のヴェネツィアを模して作られたネオ・ヴェネツィアという街だということでご容赦ください^^) 以前にもご紹介していますが、お話の舞台は地球化された火星です。テラ・フォーミングから150年を過ぎた火星は、地表の9割が水に覆われており、水の惑星「AQUA」と呼ばれています。 その惑星には、古き地球に存在した様々な都市を模して街が作られています。 主人公である少女「水無灯里(みずなし あかり)」は地球出身ですが、ネオ・ヴェネツィアのアイドル的存在であるゴンドラ漕ぎ『水先案内人(ウンディーネ)』に憧れてAQUAにやって来ます。そして、ネオ・ヴェネツィアの歴史上もっとも有名なウンディーネであった天地秋乃(あめつちあきの、通称グランマ)が創立した「ARIAカンパニー」に見習いとして入社し、一人前のウンディーネ『プリマ』を目指して日々研鑽を積む毎日です。 ネオ・ヴェネツィアには「姫屋」と「オレンジぷらねっと」という2大水先案内店がありますが、それぞれのトッププリマが晃(あきら)とアテナです。この二人は、ARIAカンパニーのアリシアとともに、ネオ・ヴェネツィアでもっとも実力・実績のあるウンディーネとして、尊敬を込めて「水の3大妖精」と呼ばれています。 灯里はその一人のアリシアに直接教えを受けているという比較的恵まれた環境にあります。また、晃の後輩で姫屋の跡継ぎ娘の「藍華(あいか)」、アテナの後輩の「アリス」と仲が良く、しばしば3人で合同練習をしています。3大妖精も仲良しなのですが、その後輩達も実は仲良しという、ある意味「ぬるい」環境ですが、そのぬるさがこのAQUA/ARIAの特徴でもあります。 ネオ・ヴェネツィア(というかAQUA)には地球化に伴って生まれた職業がいくつかあり、それぞれ妖精の名前で呼ばれています。すなわち、気候を制御している『火炎之番人(サラマンダー)』、重力を制御している『地重管理人(ノーム)』、ほとんどが水で覆われているAQUAにはなくてはならないエアバイクによる配達屋『風追配達人(シルフ)』。これらの職業には主に男性が従事しているようで、女性は『水先案内人(ウンディーネ)』を目指すようです(完全に分かれているわけではないようですが・・・)。 設定こそライトSFの様ですが、お話は灯里を中心にその周りの人々(とネコ達)との交流と季節の移り変わりを中心に進んでいきます。1年が地球の倍(24ヶ月)という事もあり、また地球と違って何でも便利に合理的にできているわけではなく、あえて不便さを残し、それを楽しんでいるという街の中で、ゆったりと過ぎてゆく日常の些末な出来事と、それでも少しずつ成長してゆく少女達の姿が、温かい視線で描き出されてゆきます。 象徴的なお話がいくつかあります。 「ARIA」第1巻の第1話「ネオ・ヴェネツィア」 すべてが合理化され時間を無駄にしないことが美徳の地球からきたおじさんが迷子になります。自分が迷子になったとは恥ずかしくて言えなかったらしく、娘夫婦が迷子になったと偽って、偶然出会った灯里とともにゴンドラで探しに行きます。 ネオ・ヴェネツィアはちょうど秋真っ盛り。水上でじゃがバターを食べ、風に吹かれて一斉に落ち葉が舞い散る様を体験し、ゆったりとした時間の流れを楽しむことを思い出します。 このお話がなかったら、私がARIAに嵌ることはなかったでしょう^^) 「ARIA」第3巻の第13話「街の宝物」 同じく第3巻の第12話「満開の森の桜の下」も捨てがたいのですが、半人前の3人娘の関係が深まったという意味でも「街の宝物」の方が良いかと。 ゴンドラの修理の間、代車(代ゴンドラ?)として借りた船には小さな扉が付いていて、その中にはある場所を記した宝の地図が隠されていました。たまたま通りかかったアリスをつれて、灯里と藍華がその場所まで行ってみると、次の場所を記した宝の地図が。 興奮して先に進もうとする灯里とアリスに比べ、藍華は面白くなさそう。街の地理に詳しいアリスと楽しそうな灯里に対して軽い疎外感を抱いてしまったようです。ところが、たまたま入ったレストランでさらに次の地図を発見してしまったため、藍華も宝探しに引き込まれていきます。 最後にたどり着いたのは、いつも通っている街路にありながら見落としていた細い小径。階段を下りると急に視界が開けて、ネオ・ヴェネツィアが一望できる場所に出ます。そして、そこには「GOAL!」の文字が。 灯里の、普段見慣れたものの素敵な一面を発見する能力を認識するとともに、半人前3人娘の絆が深まったお話です。 「ARIA」第5巻の第25話「影追い」 ゴンドラ協会のミーティングに参加しているアリシアさんを待つ灯里の話。 このミーティングは、サン・マルコ広場に面したカフェで行われています。ちなみに、ヴェネツィアに実在しているカフェ・フロリアン(創業1726年、カフェラテ発祥の地だそうです)を移築したという設定になっています。 突然できたぽっかりあいた時間 何でもできるまっしろな時間 そんな素敵な空白の刻が 私はたまらなく大好きです こういう時間は何をしようか考えているうちに 終わってしまうこともままあるのですが それはそれでまた 一興だったりします店外のテーブル席に座ってアリシアさんを待つ灯里。たまたま目があった隣の席の紳士と一緒にのんびりと時間をつぶします。太陽が移動するに従って日陰も移動するため、影を追ってテーブルを動かします。これがタイトルの「影追い」。実在するカフェ・フロリアンでは残念ながらこの風習は廃れてしまっているとか。 かつてナポレオンが「世界で一番美しい広場」と言ったというサン・マルコ広場でのひとときを、灯里は自称「サン・マルコ広場を楽しむ達人」の紳士とともに満喫します。 実はこの紳士はカフェ・フロリアンのオーナーで、灯里は別れ際に「幸せの達人」の称号(?)を頂くことになるというオチ。 長くなってしまいました。まだまだありますが、キリが無いのでこの辺で。。。 普段の生活に追われて、ゆっくりと周りを見られずについ見逃してしまっている素敵な事柄を、主人公である灯里の目を通して描く物語です。 忙しい日常を一時忘れて、ゆったりとした気分になりたいときに最適ですよ。 |

- >
- Yahoo!サービス
- >
- Yahoo!ブログ
- >
- 練習用




設定はライトSFのようだけど、中身は、ちょっと違うぞということなんですね。確かに、「第1巻の第1話」についてのていねいな紹介を読むと、その「調子」がわかるような気がしました。ゆったりとした気分になりたいときに、という感じなんですね。
2006/10/9(月) 午前 9:34
月野さん>ちょっと長くなってしまいました。。そうなんです。ゆったりと寛ぎたいときに一度読んでみてくださいね。
2006/10/9(月) 午後 7:15
今、楽しいと思えることは今が一番楽しめるのよ。これ真理ですね。人間には時期ってありますから。じゃがバターやカフェにも惹かれます^^。えむこぶさんの紹介でまるで「ネオ・ヴェネツィア」にいるような気分になりました。ゆったりとしたい時に浸りたい世界ですね。
2006/10/9(月) 午後 10:35
しろねこさん>「昔は楽しかった」じゃなくて、「昔も楽しかったし、今も楽しい」ですよね。昔は昔の、今は今の楽しみがある、こういう感じ方を忘れたくないものです。「ネオ・ヴェネツィア」にいる気分になった、なんて過分なお褒めの言葉をありがとうございます。少しでも作品の素敵な空気が伝われば良いのですが。。
2006/10/9(月) 午後 11:09
えむこぶさん、ご訪問が遅くなってスミマセン。いいですねえ。時間は十メルコとができないものですから、その中で少しでもたのしく生きてゆきたいですね。しみじみ。。。
2006/10/22(日) 午後 1:44
あざらし。さん>いえいえ、ご訪問ありがとうございます。そうですね。止められない今という時間を、大切に、楽しんで生きていきたいと思います。
2006/10/22(日) 午後 6:22
ARIAのまったり感が大好きです。天野先生みたいな素敵な作品を書けるといいのですが、上手くいきません。もっと感性を磨く必要がありそうですね。頑張ります。
2015/8/18(火) 午前 5:48 [ わしこ ]