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『鏡花夢幻』 波津彬子著 白泉社文庫 あざらし。さんと月の骨さん主催の「時代もの、大好き。」参加記事の番外編第1弾です。 今回の参加記事では、日本的なものからは遠い作品ばかりになっていますが、しろねこさんが書かれた泉鏡花「天守物語」の記事を読ませていただいて、波津さんの漫画の記事を書いてみたくなりました。最初のリストには載っていなかったので、番外編ということで。 播州姫路・白鷺城。あれは美しい魔の棲む処でございます−−。美しく威厳ある妖怪たちと、彼らに魅せられ、彼らの世界に引き込まれていく人間たちを、日本情緒あふれる夢幻的世界を、波津彬子が流麗な筆致で描きつくした傑作作品集。
泉鏡花の三大戯曲「天守物語」、「夜叉が池」、「海神別荘」を完全漫画化! 波津彬子さんは、泉鏡花と同じ金沢出身の漫画家です。しろねこさんの記事によると花郁悠紀子氏の妹さんだそうです。上に貼り付けたイラストを見ていただいても分かるとおり、和風の趣のある絵柄を得意とされており、「雨柳堂夢咄」などの面白い作品を描いています。 泉鏡花について、私はそれほど詳しいわけではありませんが、その作品の特徴といえばやはり美しく気高い妖(あやかし)たちと、人としての誠実さを守り通そうとする少数の人間、そしていつしか慎み深さや信心深さを失い、妖たちとの約束を忘れ果ててしまい、破滅を呼び込んでしまう大多数の人間たちの対比にあると言えるでしょう。この、見たものを惑わすほどの美しい妖たちを絵にするとき、波津さんはまさに最適な人選であると思います。 ただ美しいだけでなく、人を惑わすような魅力を備えた妖たち。 その妖が思わず心引かれてしまう、まっすぐな心を持つ人間たち。 下っ端の妖の滑稽な容姿と言動。 併せて、彼らの棲む異次元世界の雰囲気を見事な画力で目の前に展開してくれます。 「天守物語」の富姫と図書(ずしょ)の介、「夜叉が池」の晃(あきら)・百合夫妻と池に棲む龍神の白雪姫、「海神別荘」の海神。 いずれも美しく、幽玄な雰囲気を漂わせるキャラクターに引き込まれてしまいます。 言葉遣いも現代語になっており、漫画の特徴であるパッと見たときのわかりやすさと併せて、ストーリーのわかりやすさは抜群です。古語で綴られた文章の美しさも捨てがたいのですが、わかりやすいことも大事であろうと思います。波津さんの漫画を読んで、面白いと思った方が、文章にも親しんでいただけるとより深く鏡花の世界が分かるのではないでしょうか。 元の文章にあたってみなくても、鏡花の代表作である「天守物語」や「夜叉が池」がどういう話なのかを手軽に知りたいという方にも、読んで頂きたい作品です。 天守物語のストーリーについては、しろねこさんの記事を見ていただきたいと思います。
本書には金沢に残る鏡花由来の地などを訪ねる取材記、「泉鏡花を訪ねて」も収録されています。 作中の登場人物と作者の自画像とのギャップがまた面白い短編です。 この作品を読んで、波津さんの作品に興味を持たれた方がいましたら、ぜひ「雨柳堂夢咄」もお試しください。 骨董と妖が好きな方なら、損はしませんよ。 |

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