日々雑感

趣味や日々感じたことなど、ときどき愚痴かも---

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全11ページ

[10] [11]

[ 前のページ ]

希望格差社会 山田昌弘著 筑摩書房

「パラサイト・シングル」という言葉を最初に提唱した社会学者の本。
図書館で借りてきて読んでみました。
「下流社会」と同じく現在の社会は2極化しているという趣旨のようです。
2極化した結果、努力してもどうせだめと希望を失った人々がフリーターなどに
なって結論を先送りし、たとえば10年後に彼らが社会の不良債権となりかねない
と警鐘を鳴らしています。
東京学芸大学教授という筆者の職業柄か、「下流社会」のように数字を
並べてこうだと言うよりも、理詰めでこうだからこうに違いない、という
形で進んでいきます。
私にはこちらの方が読みやすかったのですが、人によっては違和感を
感じるかもしれません。
また、たとえば女性は収入のある男性の奥さんになって生活の安定を
求めている、と決め付けているかのような論調には、少し違うのでは
ないかという気がして、特に女性には受け入れがたいかもしれません。
アンケートや世論調査などをベースに議論する際には、どうしても
マスで考えざるを得ないので、仕方のないことかもしれませんが。

「下流社会」では、中流にとどまろうという意欲のない人々が下流に
転落するという話でしたが、本書ではその意欲をなくす理由は、社会
構造が変わったことからくる”どうせ努力してもダメ”という希望の
喪失なのだ、という趣旨なので、「下流社会」とあわせて読むとより
良く理解できるかもしれません。

エンブリオ  帚木蓬生著  集英社文庫

この本も文庫化を機に読んでみました。
やっぱりハードカバーは高いのであまり頻繁には買えないです。

ストーリーはサスペンス仕立てのフィクションで、生殖医療に関する
問題を扱っています。最先端技術+ちょっと未来には可能になるかも
しれない技術をふんだんに盛り込んで、日本における法の不備や
医療倫理の問題に切り込んでいます。
著者の帚木さんは、ご自身も医者であり、最先端の技術や医療に
関する法律にも通じていることが随所に見られます。
それだけに、この本に書かれていることがすでにどこかで実施されて
いるのではという印象を受け、背筋が寒くなります。

主人公は九州の海岸に立つサンビーチ病院の院長「岸川卓也」。
生殖医療の最先端を目指すべく、自分の病院の中で研究に取り組んでいる。
彼にとっては、患者の要望を満たすことが最大の善であり、そのためには
タブーは存在しない。
世界で彼(と彼の病院)だけがなしえる技術は非常にレベルが高く、
宣伝をしなくても彼の病院には患者がひっきりなしに訪れる。
たとえば、人工中絶胎児や死亡直後の人体から取り出した臓器を
培養・凍結保存しておき、必要に応じて解凍して患者に移植したり、
男女の産み分けなどは日常的に行われている。
中絶や出産の際にでる胎盤は産業廃棄物(!)であるため、彼はそれを
再利用して「プラセンタ」なる美白化粧品を作り、知人に配っている。
彼が最近挑んでいるのは、男性を妊娠させること。
もちろん男には子宮がないので、人工的に腹腔内に受精卵を移植して
18週まで育ててから人工子宮(これも彼だけの技術)に移して育てようと
いうもの。ホームレスの男性を騙して被験者にしているが、彼らの命や人権は
主人公にはまったく興味のないものであるらしい。
彼の技術を狙って、海外の大企業がスパイを送り込んできた。
自分の研究の妨げになるものはどんな手を使ってでも取り除こうとする
彼の行動は、読者に薄ら寒い思いを抱かせる・・。

本書の最初の方で、パーキンソン病の患者の脳に患者の子供(人工中絶した胎児)
から取り出した脳細胞を移植する場面が出てきます。確かに自分の子供であれば
半分は自分の遺伝子を受け継いでいるわけですから、拒絶反応は少ないかも
しれません。日本では12週以前の胎児は人間とはみなされないため、その前に
故意に中絶をしても殺人にはならないのです。しかし、治療のためだけに子供を作り、
人工中絶することは法律的には問題なくても、倫理的には許されるのでしょうか?
また、夫も妻も子供を望めない体であった場合、卵子と精子の両方を他人から
もらって妊娠することは、やむを得ないことでしょうか?
この精子の提供主の情報はもちろん患者には知らされないのですが、それが目の前の
医者のものであったら?そのことを医者は知っていたとしたら?
多くの患者の不妊治療に医者が自分の精子を使用していたとしたら、その医者の子供が
数多く誕生し、しかもその事実は治療した医者しか知らないということになります。
産婦人科学会の会告が治療の指針として出されてはいるものの、学会に参加して
いない医者にとっては何の関係もありません。
患者は喜び、医者も満足する。誰も困らない。
ではいったい何が問題なのでしょう?
先端医療についての問題点を考えさせる本でした。

「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」 塩野七生著  新潮文庫

文庫化を機に読み始めたのですが、すっかりはまってしまいました。
単なる歴史書ではなく、塩野さん独特の想像を働かせて、当時の
ローマ人たちがどんな状況下で何を考えて行動したのか、をつづった
本です。ずーっとイタリアに住んでいらっしゃるという塩野さんですが、
日本の世相もたまに出てきます。当時のローマ人も、現代と同じ人間で
あったことには変わりなく、やっぱり私たちと同じように悩んだり
人間関係に疲れたり、ちやほやされて有頂天になったりしたんだなぁ
ということがよくわかります。

もともとはハードカバーの厚い本ですが、文庫化に当たって
塩野さんの意向から、ポケットに入るぐらいの薄い本になっています。
分冊になっている分、割高になるのはしょうがないのか・・・。
また、塩野さんの文体は好き嫌いがあるらしく、合わない人はまったく
受け付けないようです。最初は少し立ち読みしてみるか、持っている人に
借りて読んでみて、もし面白かったら是非通読してみてください。
まだまだ続くシリーズなので、これから先も楽しみです。

「下流社会」 三浦展

「下流社会」 三浦展著 光文社新書

最近はやっているらしいですね。なかなか刺激的なタイトルに負けて読んでしまいました。
社会が2極化しているというのはいろんなところで言われていますが、この著者は
マーケティングの専門家としての視点から書いているところが新しい、ということの
ようです。首都圏の人々に消費行動や欲求などをアンケートして、そのデータをさまざまな
角度から見た結果として、「下」とはどういう人々かを論じています。
あまりにいろんなデータが出てきて、数字が羅列されている部分は正直言ってだれて
しまいますが、タイトルだけでなく本文にも刺激的な文章が多く、ハッとさせられることも
しばしばです。

ちょっと抜き出してみると・・・

「下流」とは単に所得が低いというだけではない。(中略)総じて人生への意欲が低いのである。

みんながそこそこ豊かだ。(中略)だから「下」から「中」へ上昇しようという意欲が根本的に低い。

渋谷は階層論的にはもはや最も下流の若者が集まる街とすら言える。

現在の30歳前後の世代は、少年期の消費生活が豊かすぎたために(中略)将来の消費生活の向上が確信できないのだから、階層意識が一気に低下するのもやむをえないであろう。

年収が少ないと結婚率も低いことが明らかになったのだ。

自分らしさ志向は「下」ほど多い

男性であれ女性であれ、コミュニケーション能力という性格によって、上流と下流に分かれていくのだ。

ほら、ドキッとくるでしょう?
私はドキッとしました。

そして最後は
いつか、上流や中流は下流を慮ることがなくなる。

そうならないために、という警告の書として読むべきかもしれませんが、そんな肩肘張らなくても
十分おもしろく読めるので、ドキッとした方はぜひ読んでみてください。

「いのち」 最相葉月

本は好きなのですが、なかなか読む時間がないのと、読む本がかなり偏っているので
ほかの人にお勧めするのをためらっていたのですが、気に入った本があったら少しずつ
紹介していこうと思います。

「いのち」生命科学に言葉はあるか    最相葉月著 文春新書

最相葉月さんといえば、小学館ノンフィクション大賞を受賞した「絶対音感」や
バイオテクノロジーと伝統的な育種との対比を描いた「青いバラ」など、圧倒的な
取材量と深い洞察で知られるノンフィクション作家ですが、ここ数年は生殖医療や
再生医療などに関心を寄せているようです。
この本は哲学者や宗教学者、バイオの研究者、宇宙生物学者、プラントハンターなど
各界の著名人12人との対談をまとめたものです。最後に、対談を終えてのとりあえずの
著者の意見もついています。
生殖医療や再生医療は本当に難しい問題で、今すでに苦しんでいらっしゃる患者さんと
その苦しみと間近で接している医者や看護士にしてみれば、この苦しみを治せるもので
あれば何でもやりたいというのは、ある意味自然なことであると思います。
しかし、そこに他者のいのちが絡んでくるとなると、第三者としては何でも良いという
わけにはいかなくなります。
人間の受精卵から作成した万能細胞といわれるヒトES細胞については、受精卵は果たして
人間か?といった問題がありますし、受精卵の核をほかの細胞の核と置き換えることで
技術的にはクローン人間を作ることが可能であるなど、様々な未解決の問題をはらんで
います。
技術的に可能であることと、実際に実施することの間にどれほどの深い溝があるか、
それを気づかせてくれる本です。
最近の世界の傾向は、クローン人間は作ってはいけないが、医療のためのES細胞の
研究は継続しても良い、というもののようです。日本もこの傾向で動いています。
しかし、ES細胞は受精後の胚に戻して、女性の子宮に着床させれば子供になります。
では、ヒトのES細胞をたとえば牛や豚の胚に入れて動物の子宮に入れたら、どんな
子供が生まれるのでしょうか?その逆は?もちろん日本では法律(指針だったかも?)
で禁止されているのですが、禁止されていない国も世界にはあります。小林泰三著
「人獣細工」のようですが、本当におこるかもと考えるだけでちょっと背筋が寒くなります。

最近、再生医療について勉強する機会があったので、この本はいろいろなことを
考えさせてくれるきっかけになりました。骨髄細胞を心臓に移植したら心筋梗塞が
良くなったなどのニュースを聞くと、良いことずくめのようですが、その裏には
考えなくてはいけない問題がたくさんあるようです。
知らないうちに実施例だけがなし崩し的に増えていくことだけは避けたいものです。

全11ページ

[10] [11]

[ 前のページ ]


.
mmmkob
mmmkob
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事