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 19日東京地裁は、ニッポン放送株を巡るインサイダー取引事件で、証券取引法違反の罪に問われた村上ファンド前代表の村上世彰被告に対して、懲役2年の実刑判決を下した。村上被告は、自ら「プロ中のプロ」を自認し、「もの言う株主」として証券取引市場を騒がせていた。

 高麗邦彦裁判長は、「ファンドマネジャーという特別な地位を利用し、『不公正な方法で一般投資家を欺』いた。『利益至上主義には慄然』とせざるを得ない」と述べ、懲役2年、罰金300万円、追徴金約11億4900万円(求刑・懲役3年、罰金300万円、追徴金約11億4900万円)を言い渡した。

 我が国の経済事犯は一般的に量刑が軽く、この種のインサイダー取引では、ほとんどが執行猶予とされており、実刑判決は異例と言えるのかもしれない。追徴金についても過去最高である。
 本件の場合、村上被告のライブドアに対する教唆或いは偽計という側面があり、単なるインサイダー取引の枠を超えている。この点も、考慮した判決なのだろう。

 逮捕前、村上被告はライブドアのニッポン放送株取得について、「聞いちゃったのだから仕方がない」などと説明していた。この様にあたかも偶然居合わせたかのような態度に対して、判決は 「ファンドの利益を上げる戦略の一環として、自らライブドアを勧誘してその気にさせた。・・・聞いちゃったのではなく、言わせたともいえる・・・」 として、村上被告の主張を退けた。

 「もの言う株主として社会の耳目を集める一方、その裏では犯罪を犯していた。」また、「ファンドなのだから安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」とも述べた。

 判決後、村上被告は「判決は不当である」として、即日控訴した。


 この判決理由の朗読中、法廷に批判のどよめきがどよめきが起こったらしい。「・・・このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない・・・」と言われ点についての批判なのだろうか。
 この言葉は、(特に金融証券関係者にとって)到底受け入れられない不当な判決と写るのだろうか。

 バブル経済では、巨万の富を得る者がいる一方で、一瞬のうちに全財産をなくした者もいた。マイロン・ショールズやロバート・マートンそしてブラックらノーベル賞を受賞した学者を擁し、デリバティブ理論を応用した金融工学によってリスク・ヘッジを試みたLTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント)も、結局は破綻した。エンロン事件の記憶もまだ新しい。
 リスク・ヘッジとは、容易なものではないようだ。村上被告のような不法なインサーダー取引は別として。

 かつて、1977年に、ハーバード大学名誉教授のジョン・K・ガルブレイスが書いた「不確実性の時代」という本が、世界中で大ベストセラーとなり、日本でも50万分を超える売り上げを記録した。
 「真に豊かな社会とは」どうあるべきか、改めて読んでみたいところである。

 我が国にも、宇沢弘文という経済学者がいる。経済学にヒューマニティを持ち込む博士の広い見識には共感を覚える者も決して少なくないのではないだろうか。

 経済学の前提として人間性を考える両氏だが、実は経済学界では異端の存在らしい。
 「・・・このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない・・・」この判決を聞いて、ふとジョン・K・ガルブレイスや宇沢弘文、ふたりの経済学者のことを思い出した。

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