|
「あ、そうだ!」 メーテルは何か良い事を思いついたように、急に活き活きとし始める。 母メーテルの発想にはついていけないベイリーは、何事かと思ってメーテルの行動を黙ってみていた。 すると、メーテルは床に散らかったランジェリーをいそいそと集めはじめた。 (もしかして…ママも遂に着る気になったとか!?やったわ私!ママをその気にさせたわっ。どうやってその気にさせようかって悩んでたのが馬鹿みたい…グッジョブ、ベイリー☆) ベイリーは心の中で上機嫌になりつつも、そんな表情を億尾にも出さないように細心の注意を払った。 ベイリーはさすがに父が哀れに思えて、何とかこのランジェリーをメーテルに着させよう、もしくは無理矢理着せようと説得しに訪れたのだ。 そして先程まで黙ってこっそりメーテルの様子を伺っていた。 メーテルも逡巡する様子をみせたものの、結局はクローゼットの奥深くにランジェリーを追いやってしまった。 母ならそうするだろうなとは思った。 そして、娘として、夫婦のそういう事に関してあんまり首を突っ込みたくないとも思ったのも事実だ。 けれど。 先日偶然目撃してしまったノートンの有様― ソレを洗面台で手洗いし、 ソレを乾燥機で乾かした後、いそいそとアイロンをかけている光景に、ついに浮気をしたのか!?と混乱しながら後をつけてみれば… 嬉しそうに夫婦の寝室に入っていき、こそこそとメーテルのクローゼットにソレを満足そうにしまいこんだノートンを見て、心底ゲンナリした。 これはさすがに何とかせねばと思ったベイリーだった。 正直、あんな光景は二度と見たくない。 問題は、どうやって母メーテルをその気にさせるか…。 しかし、目の前の母を見て、それは杞憂に終わったとホッと息をつく。 嫉妬からか、愛情からか、危機感からか…とにかく理由は分からないが、どうやら母メーテルが着てみようという気になってくれたようだ。 ベイリーは、メーテルが毎日ソレを着て欲しいと思った訳ではない。 ただ、記念日に一度位は、あのどうしょうもないノートンの願望を叶えてやってもいいのではないかと、さすがの母メーテル贔屓のベイリーも、ノートンを不憫に感じたのだった。 (良かったママが着る気になってくれて。正直、力じゃママに叶わないから、どうしようかと思ってたのよねぇ…) 「ベイリー」 ベイリーが大仕事を終えた満足感でほんわかしていると、自分を呼ぶ母親の声がしたので、満面の笑みでメーテルに微笑んだ。 「何、ママ?」 「…殺る」 メーテルが小声でそう呟いたのが聞こえて、ベイリーは背筋か凍った。 「殺る、って…?」 もしかして今までランジェリーをプレゼントし続けたノートンへの怒りが爆発して終に殺意に変わってしまったのだろうか? ベイリーは真っ青になった。 あんなノートンでも命を奪われると思うとさすがに放ってはおけない。 母は一度こうと決めたら、簡単に考えをかえる人ではない。 殺ると言ったからには、殺るのだ。 ベイリーは恐怖のあまり、ぶるぶると身を震わせた。 「だから、やる☆」 そんなベイリーの気持ちなど露知らず、メーテルは満足げに微笑んで、恐ろしいことを平然と口にする。 笑顔で人を殺すと言える元戦闘のプロの母。 ベイリーは恐ろしかったが、それでもベイリーにとっては大好きな母親だ。 だからベイリーは思わず叫んでいた。 「ママ、ダメよ!それは絶対ダメ!」 「えっ?」 メーテルが首をかしげる。 それを見てベイリーは安堵する。言葉が通じるということはメーテルの理性が残っているという事だ。 今のうちに泣き落とし作戦で追い込んでいくしかない。 「そんな事をしたら、ノートンが悲しむわっ!!」 「うっ…悲しむかな?…やっぱり…う〜ん」 メーテルが確実に困っている。作戦は効をなしている。この勢いだ。 「そうよ、それに、ノートンが悲しんだら困るのは、ママじゃない!」 ぐぅと、メーテルが息を飲むのが分かって、ベイリーはあと一息だと思ってメーテルの両肩を掴んで強く揺さぶった。 「ママはノートンが悲しむのが一番嫌いでしょ?」 ベイリーはうっすらと涙を溜めて主張した。 メーテルは女性の涙にはとにかく弱い。 パワーで無理なら、使えるものは何でも使わないとと、ベイリーはばれないかしらと不安に思いつつ、愛する母とそのおまけ=ノートンの為に、身を粉にして説得した。 「うん、分かった。じゃぁやっぱり、殺るのはやめた」 思いのほかあっさりとメーテルが諦めてくれたので、ベイリーは安堵のあまりその場にへなへなとしゃがみ込んだ。 が、しかし。 「でも、お前が要らないってなると、やっぱりコレは、クローゼットに戻すしかないなぁ…」 ふぅ、と母がため息をついて、でも安心したようにクローゼットにいそいそとランジェリーをしまい込むのを見て、何か腑に落ちないものを感じた。 「???」 殺るって…ターゲットはアタシだったの!?ノートンじゃなかったの? ベイリーはその場でカチコチに固まった。 「な、何のこと?」 ベイリーは混乱しかけた理性で自分の身守ろうと、頭の整理をはじめる。 「コレ」 そう言って、メーテルはランジェリーをベイリーに差し出した。 「この下着、捨てるの?」 さすがにこれらを捨ててしまうと思うと、プレゼントしてきた父が不憫に思えた。 「違う違う。そんな事をしたらノートンが悲しむって、今、ベイリーだって、言ったじゃないか!」 だから元に戻すんだと言って、母は淡々と下着を片付けてゆく。 「???」 ベイリーは首をかしげる。訳が分からないと思って黙って聞いていると、メーテルがとんでもないことを付け足した。 「ベイリーがこれを着てくれたら捨てずに済むし、ノートンも怒らないかなって思って、今お前にこれをやるって言ったけど、ベイリーもいらないって言っただろ?」 「ぬわんですってぇー!?」 ベイリーは顔を真っ赤にした。 (第五話へ続く) |
全体表示
[ リスト ]





殺るって、、、www
ベイリー勘違い、ありえないーーーwww
2007/9/9(日) 午後 0:51
クライシスさん
笑っていただけたようでよかったです^^;
ちなみに、メーテルとノートンの二人は、子供の頃、テロ組織の集団に拾われ、そこに属していたんです。特にメーテルは数多くの人を殺した過去があるので、ベイリーの勘違いに繋がってしまう訳でした(過去の話も時間があったら書きたいなぁ)
2007/9/9(日) 午後 1:21