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ボウモアが家に帰ると、今日は珍しく家が静かだった。 いつもなら、母にべったりのノートンと、二人のラブラブっぷりを逐一報告してくる姉ベイリーがいてうるさくて仕方ないのに。 これは何かあったな、とボウモアは思った。 何かあったとしても、幸いというか何と言うか…我が家では大概、下らない事が多い。 ノートンが母さんの着替えを覗いたとか、 ノートンが母さんの風呂を覗いたとか、一緒に風呂に入ろうとしたとか…。 それを阻止しようと立ち向かう姉ベイリーとノートンとの喧嘩とか。 本当に、どうでもいいことばかりだ。 父もどうしてあんなに母に夢中になれるのかと、正直少し呆れるというか、羨ましく思えることもある。 姉も、なんだかんだといつも何かに夢中になってはしゃいでいる所は父譲りだと思うし、正直あの弾けっぷりはオレには出来ないのでいいな、と思う事もある。 何より、何故か世間ズレしている母が、笑っているのがいいと思う。 だから、今日みたいに静かなのは何だか不自然で、俺は嫌だ。 居間に行く。 いつも賑やかなそこには、ぽつんと父親の姿が残されていた。 「二人は?」 「メーテルは寝室に鍵を掛けて、今日は早々、不貞寝してる。ベイリーは実家に泊まりに行くって、急に出てった」 ノートンは淡々と口にした。 「で、今度は何やったの、ノートン?」 どこの家庭でも、普通は父やパパと呼ばせるのだろうに、ノートンは自分のことを父やパパと呼ばれることをあまり好まなかった。 「やっぱり、オレのせいか…あぁ〜」 そう呟いて、ノートンは一気に机にうつ伏せになってしまった。 「俺が家に帰ったら、メーテルが凄い落ち込んでてさ」 ボウモアは黙ってノートンの言葉を聞いている。 「だから、元気付けたくて、ベイリーに何かあったのか?って聞いてみたら、ママにムカついたから喧嘩した、ノートンはいつもママの心配しかしない、アタシはどうでもいいのか、ってえらく不機嫌だったんだ」 「姉さんが?珍しいね」 あのマザコン姉が母メーテルに対してムカつくとは珍しい。 しかも、父に対して同情を要求するのも、これまた非常に珍しい。 「だろ?ベイリーもイラついてたけど、俺に似て気分屋なところがあるから、言いたい事言ってスッキリしたみたいだし、放っておいても大丈夫かな…って思ったんだ」 「実家に行ったんなら、アベラゥア伯母さんやアイデンに色々聞いてもらいに行ったんだろうし、フォローも入るだろうし、姉さんの方は大丈夫だと思うよ。それで、母さんは?」 ノートンは触れたくない所に触れられたようにして、うっと息を詰まらせた。 「それが、メーテルの落ち込み方がひどくてさ。いつもと違うんだ」 まるで自分の事のようにノートンが落ち込んだ。 「だからベイリーに問い詰めたんだ。何があったんだって」 それは火に油を注ぐような行為だと思った。 が、その場にいなかったので何ともしようがなかった、とボウモアは諦める。 過ぎてしまった事は仕方がない。 「そしたら、そもそもノートンが悪いっ!て、ベイリーがブチキレて…」 予想通りの展開過ぎて、ボウモアは苦笑した。 「で、ノートン、何をしたのさ?」 いつもは饒舌なはずのノートンが口ごもる。どうやら素直に話す気がないようだ。 「寝ている母さんを起こすのは、俺にも至難の業だよ?」 「わ、そ、それは…今日はそっとしといてやってほしい。多分、凄く落ち込んでそのまま寝たと思うし」 何も出来なかったのが悔しいのだろう、ノートンは机をトントンと叩いていた。 「母さんを落ち込ませる原因を、ノートンが話さないなんて珍しいね」 「だって、それは、う〜」 何やらノートンが唸っている。と思ったら、お前今いくつだっけ?などと思いっきり場違いな事を聞いてきた。16と答えたら、心底慌てたようにうつ伏せた。 「お前に話してもいい内容なのかなぁ?分かんないなー。またメーテルに怒られるかなぁ??」 ノートンははぁとため息をつく。そして、ふと思いついて俺に聞いた。 「なぁ、ボウモアは、誰かを好きになったことがあるか?恋をしたことがあるか?」 年中恋をしているノートンの口からそう言われると、ちょっとおかしく感じられてしまうのは気のせいだろうか? 「まぁ、俺にだって、あるよ」 「そうか。じゃぁ、キスしたことは?あるか?」 「ノートン…母さんが落ち込んでいることで、どうして俺が暴露話をしなきゃいけないの?」 俺は気恥ずかしくて誤魔化そうとすると、ノートンは大真面目に言った。 「えー?重要なことなんだ。お前真面目だし、16だと、俺の話を聞いたら嫌悪感を抱かれそうだし。ベイリーみたいに…嫌われてもなぁ」 そりゃ俺はさ、父親としては落第だけど…と言ってノートンは落ち込んでしまった。 「…下着、どこで買ってきたの?」 途端、ノートンががばっと起き上がり、耳まで真っ赤になって叫んだ。 「お、お前っ、どうしてそれを!!」 「喧嘩の原因って、それしか思い浮かばない」 「あああ、えっと、その…お、お前も欲しいのか?」 ノートンでも恥ずかしいことがあるらしくてそう言って恥ずかしさを誤魔化すつもりだったのだろうが、俺が思いっきりノートンを睨んだので、ノートンは冗談だよっ、と言った。 。 「何で知ってるんだ??」 恐る恐る俺を見る。 「姉さんが…ノートンが女物の下着をノートンが洗ってる!浮気したわ!って…」 浮気じゃないっ!!っと女性の悲鳴のような声でノートンが叫ぶ。 ベイリーめぇ、そんな事までボウモアに話すなよな…と、ノートンはボソボソと言っている。 「母さん、困ってたってさ?」 「えええー?」 っていうか何もかも筒抜け?モロバレじゃんか…とノートンは観念した。 「お前の言う通りだよ。結局、俺が原因になったらしい」 「………俺、さすがに実物は見たくないから断ったけど、ベイリーが、あれは絶対やりすぎっ!ってめちゃくちゃ引いてたよ」 「わ、悪かったな!俺もちょっとやりすぎだと思ってたけど、メーテルが何も言わないから…つい」 「何も言わないんじゃなくて、言えなかったの間違いじゃない?」 「うっ…。だって」 そういうと、ノートンは机にうつ伏せて、しくしくと泣き始めてしまった。 「観たいじゃん…着てるトコ…」 自分の欲望に忠実な父が正直に呟く姿に、俺はため息しか出なかった。 (第七話へ続く) |

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反省してるのかと思ったら見たいのかよ!!
と突っ込みいれてしまった!www
いいオチですね!!
2007/10/7(日) 午後 8:33
クライシスさん
わぁ〜、2話連続コメントありがとうございます♪そしてナイス突っ込み☆
欲望に忠実なノートンは妻の下着姿を見たくてたまらないようで…一体変態ですな。
2007/10/7(日) 午後 8:44