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「え?ママ、今でも男物の下着着てるのぉ!?」 信じらんない! と、昨日の事など嘘かのように、ベイリーはすました顔で叫ぶ。 そういえば最近はママと一緒にお風呂に入っていなかったから分からなかったわ、とごく普通に言った。 この姉のとりえは、どんなに怒ったり悲しんだりしていても、は翌日にはケロッとしている所だ。 昨日、怒りを爆発させてスッキリしたのか、ノートン可哀想〜などと、素直な感想を述べていた。 「それって、脱がしてみたら男物の下着着てたってことよね!?」 目をキラーンとさせて、ニヤリと笑う姉ベイリー。 っていうか、そこまでハッキリと口に出して言わなくてもいいだろう、仮にも俺達は年頃の娘と息子だろう…と俺はため息をついた。 「男として、脱がしてみたら男物っていうのは、それはどうなの?」 ベイリーはあっけらかんと一番聞かれたくないことをナイフのように俺に突きつけた。 そんな俺の気など露知らず、ねぇ、どうなの?などと返事を急かす。 きっと俺が答えるまで容赦がないだろうなと腹をくくった。 「ちょっと…引くかも」 ちょっとなの? ベイリーが大真面目で突っ込んでくるが、正直に言えば、これ以上その事について考えたくはなかった。 その事について考えると、どうしても恋人同士としての母とノートンのイメージがチラついてしまうから。それだけならまだしも、密かに気になっている隣のクラスのバーナの姿を想像してしまい、罪悪感が募るのだ。 俺がこれ以上は勘弁してくれ、と言うと、姉はしぶしぶ黙り込んだ。 「にしても、まさか母さん…アレを」 俺は意外性のあまり、声に出していたらしい。 「そうなのよ!私にアレをくれようとするなんて、何考えてるのかしらね…」 エラい災難にあったわ、と、ベイリーはがっくりと項垂れた。 昨日ベイリーが怒ったと聞いた時は、またいつものようにベイリーが母さんにしつこくアレを着せようとして怒らせたのだろうと思った。 が。 まさか…母さんがアレを娘にやるという発想を持ち出すとは思わなかった。 さすがに今回はベイリーに同情せざるおえない。 「これも全て…変態ノートンのせいだわっ!!!」 …半分くらいは、男物の下着を見につけている母さんのせいでもあるんじゃ?とも思ったが、そう突っ込むと間違いなく怒りの矛先が俺に向いてくると思ったので、そのまま流す。保身は大事だ。 「とにかくっ、これ以上、ノートンにあんなもの買わせないようにしないと!」 ベイリーがどんっ!と勢いよく机を叩いた。 一体どこであんな物を買ってくるのよ、あんなものを着るなんてまっぴらごめんだわ! と姉さんには珍しく、昨日の怒りが少しずつ蘇ってきたようで、俺は慌ててフォローする。 「まぁ確かに、母さんが着ない以上、それが一番、懸命だ」 俺にはほとんど被害は及ばないが、結果的に最大級の二次被害がベイリーに及んでしまうことになる−と分かり、とにかくノートンを説得するのが一番いい、とため息をついた。 けど、昨日のノートンを想像するに、そんな事出来るのだろうか?と俺はふと不安になった。 「ふふ、今あんた、そんな事出来るのかって思ったでしょ〜?」 姉は意地悪そうに笑う。 「まあね…」 すると、取って置きの隠し事、さぁ驚け!と言わんばかりに身を乗り出して言った。 「実はねー、もうノートンと約束してきちゃった♪もう買わないって約束!!!!」 「…良かったね」 俺は非常に正直に感想を口にした。 これで姉への被害もなくなるのだろう。 ノートンは涙を呑むのかもしれないが。 「えぇっ!?もっと驚いてよ!相変わらず冷静ね…つまんない!」 姉は俺の反応が不服だったらしく、ぷくりと頬を膨らませて怒った。 これが俺ですから、と流すと、続きがあったようで、今の反応はどうでも良かったらしく、目をキラキラさせながら次の話題へ移った。 「ねぇねぇ、どうやって説得したと思う?肝心なそこ、知りたくない?」 知りたくない、どうでもいい。 と言えば姉が怒り出すのが分かっていたので、興味があるとだけ告げる。 「ノートンが買ってきてもママが着ないと、あれをアタシが着ることになるのよ、想像して見なさいよ!?って言ったらね♪」 「…泣き出しただろうね、ノートン」 「当たりー☆」 心底嫌そうに涙を呑んで固まっていたわ、とベイリーは愉快そうに笑った。 「でもね、ちょっと可哀想よね、ノートン…」 と思えば、次の瞬間には、シュンと落ち込む。 「まぁ、ちょっと、ね」 目の前に有り余るほど落ち込むノートンの様子が想像できて、俺はノートンが哀れというか可哀想というか、なんというか、苦笑するしか出来なかった。 「じゃぁさ、アンタも協力してくれる!?」 ぱぁぁっと、ベイリーが笑顔になった。 「え?」 思わぬ展開に俺は驚きの声を出す。 協力?? …もしかして。もしかすると。 「母さんに、アレを着せるの?」 「え?よく分かったわねぇ…さすが♪」 アタシと違って頭が冴えてるわねぇ、と感心した様子で言うが、俺はと言うと心穏やかではなかった。 正直、母さんがアレを着るのは…絶対嫌だ。 しかし、ベイリーが半泣きになりながら、一度はアレを母さんに着せないとノートンはきっとまた買ってくる、その時犠牲になるのは自分だ、アンタはいいわよね…などと言い始めたので、俺は渋々協力せざるおえなくなった。 心の奥底では、母さんが絶対にアレを着ようとは思わないだろうからと納得させ、ともかく俺の出来る範囲でベイリーに協力すればいいだけだと考え直した。 「分かった、協力する」 「やったー☆絶対に母さんが反対出来ないプランがあるのよね!」 姉の考えたプランのことだ、どこかに破綻があるだろうと安心しかけた時、トドメの一言が聞こえた。 「あ〜、イライラしたから昨日は実家に行ったけど、実はね、パパと一緒に実行計画を練ってたのよ。行って良かったわ♪」 パパって…俺達の心の父で…ラフロイグさんか? 「………」 そのプランって、破綻がない。 あの人が係わってきたことで、姉の妄想は完全無欠の実行予定になったのだ。 俺は真っ青になった。 昨日、たった1日家にいなかったことで、後になってこれほど後悔するとは思いもしなかった。 母さんがノートンの餌食になるのを見届ける…。 複雑な気分。 俺の心は真っ暗闇になった。 対照的に、ベイリーは晴れ晴れとした様子で微笑んでいる。 それが無性に恨めしかったが、俺はそんな気配を億尾にも出さなかった。 それは…悲しすぎるから。 (第九話へつづく) |

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ついにノートンの悲願が達成される!???
2007/10/13(土) 午前 9:16
クライシスさん
読んでくださってありがとうございます。
達成されるのかな〜どうなのかな〜(ちょっと引っ張ってみる)
のこり2話で結果が明らかに!?
2007/10/13(土) 午前 11:39