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「ママ♪」 ベイリーがご機嫌な様子で話しかけてきたので、メーテルはがばりと起き上がる。 昨晩、嫌いと言われ、かつ泣かせてしまった娘のことで、メーテルの心は地底の底より落ち込んでいたからだ。その相手であるベイリーが何やら嬉しそうに自分に語りかけてくれているんだと思うと、それだけでメーテルは泣けてきそうになった。 「ベイリー…昨日は本当にごめんな」 捨てられた子犬のような目をして俯いている、母。 昨日の事など、もはやほとんど気にしていないベイリー。 しかし、母の落ち込みようをみると尋常ではなく、我ながらえらいことを言って、してしまったんだなとベイリーは反省した。 今朝、何度ノートンが呼びかけても母メーテルは反応すらしなかったのに、こうやって私の呼びかけに反応してくれていると思うと、何故かうっすらと優越感が湧き上がってきて、思わず頬が緩みそうになる頬をベイリーは必死に引き締めた。 普段なら、明るく気にしてないわと告げて、抱きしめて水に流す所なのだが。 今日はパパのプランに従わねばならない。 ごめん、ママ!とベイリーは心の底で謝り、心を鬼にし、私は女優!と3回唱える。 「ママにあんな事言われるなんて…びっくりしたわ」 「ごめん、もうあんなこと言わない」 メーテルの声は今にも泣き出しそうだった。 母のか弱い姿を見ては、ベイリーも気にしないで!と叫んでしまいそうになったが、パパのプランを実行するためと思い、何とかぐっと堪えた。 「本当に…反省してる?」 こくり、とメーテルが頷く。 「じゃぁママは…その証拠を見せてくれるわよね?」 ベイリーが探るように言うと、メーテルはこくこくと頷いた。 「分かったわ」 ベイリーは実に満足そうに微笑んだ。 その時、メーテルは違う事で覚悟を決めていた。 おそらくは、ずっと避けていたソレを遂に着なくてはならない時がきたのだと。 「じゃぁ、ママにこれあげる!」 あのランジェリーを身に付けてくれ、と頼まれるのだろうと思っていたメーテルは、一瞬ぽかんとした。 しかし、ベイリーから受け取った封筒を恐る恐る開いて手紙に目を通すと、メーテルは最後には声を出して泣き始めてしまった。 「あらあら…ママ、泣かないで、ね?」 ベイリーはまるで子供をあやす様にメーテルを抱きしめた。 メーテルは必死に泣き止もうとするのだが、溢れ出る涙を止めることが出来ずにいた。 「ノートン!!ママが泣いてるわよ」 居間に向かってベイリーが叫ぶと、数秒でノートンが飛んできた。 まるでメーテルの傍らに寄り添う機会を狙っていたかのようだった。 そんないつもの風景にベイリーは微笑む。 二人を部屋に残し、こっそりと出て行った。 「ノートンとママへ 結婚記念日の…プレゼントぉ?」 娘がメーテルに手渡したという封筒を、ノートンは恐る恐る開いてみる。 たかが封筒を恐れてしまうのは、娘の逆襲期間にえらく怯えているからだ。 ただでさえ、二度とママの下着は買ってこないという誓約書を無理やり書かされたのだ。 これにも何か裏があるのでは…と、思わず文面を透かしてみてしまう。 「ノ、ノートンはぁぁ、ううぅ、うれし、ひっく、ぃのか?」 ノートンは嬉しくないのか?と言いたいらしい。 メーテルはベイリーが許してくれた事と、子供たちからの思いがけないプレゼントに喜びを隠しきれないらしく、先程から涙が止まらなくなっている。 そんなメーテルを愛おしいと思いながら、なだめようと抱き寄せつつ、どうしても愛娘の行動に裏の企みがあるような気がして、いまいち素直に喜べないのだった。 「そ、そりゃ、嬉しいけど…」 「私は、嬉しいぞー」 と言ってはボロボロと泣くメーテルを前にしては、娘の企みは放っておくしかなさそうだ。 とにかく、この愛おしい人に一刻も早く泣き止んで貰わねば。 ノートンはメーテルをぎゅうと抱きしめる。 「うん、俺も嬉しいよ」 「ほ、本当か?」 「うん。メーテルと二人きりになれるんだからね、2人の公認で」 そう言って、ベイリーがよこした封筒を見つめた。 『結婚記念日に、二人で旅行に行ってきてね』 どうやら、メーテルにあの下着を着せないかわりに、二人きりにはしてくれるつもりらしい。 これではさすがに俺の願望は諦めるより仕方がないかと諦めつつ、俺は密かに子供達の粋な計らいに感謝した。 「すごく、楽しみだな、俺」 「私も」 そう言って泣きじゃくるメーテルに、俺は優しく口付けた。 (第十話へつづく) |

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おおお
これはほのぼのとしますね、、、。
いい話だーー。
2007/10/27(土) 午前 1:09
クライシスさん
ありがとうございます。この回はほのぼのしてますよね〜。
残すところあと一話!さてさて、どうなることやら…!?
(なんたって、もっちょ著作ですから…)
2007/10/27(土) 午後 2:59