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「じゃぁ、行ってくるな〜」
メーテルはこの日をずっと待ちわびていたようで、1ヶ月前からすこぶる機嫌が良かった。
指を折って日を数えてるまるで子供のような母親を見て、父と娘は喜びに湧き、息子は何故か悲痛な表情で顔を歪めてる日々が続いた後でのことだった。
「ママ、楽しんできてね♪」
「もちろんだ、お前達がくれたプレゼントだからな〜」
母メーテルは、まるで遠足に行く子供のような表情だった。
「私とボウモアのバイト代から費用を出したんだから、気に入らないとか、同行者のノートンが嫌だからって途中で帰ってきたら、アタシ泣くわよ!?」
ね、ボウモア?とベイリーは心底悲しそうに俯いた。
「そんな訳ないだろ!??楽しんでくるからな〜」
遠くの方で、メーテル、準備できたからそろそろ行くぞ〜、というノートンの声が聞こえる。
「いってらっしゃい☆あ、荷物はさっきノートンに運んで貰ったから、そのまま車に乗ってね〜」
ベイリーは心底嬉しそうに手を振っている。
エンジン音をふかすノートンの車が玄関の前に止まる。
メーテルは何も躊躇わずに助手席に笑顔で座り、そのまま二人は旅立って行った。
ベイリーは母親の姿が見えなくなるまで満面の笑顔で手を振った。
車が視界から消えていなくなると、いつになく落ち込み気味のボウモアがポツリと呟いた。
「なんか…すごい罪悪感を感じる」
そして、意気消沈しては、ふらふらと家の中に消えていったのだった。
「そんなことないわよ!必要なのはサプライズなんだから!」
ベイリーは胸を張ってそう言い、さってと、一仕事やり終えたわ〜と楽しそうにその後に消えた。
その夜のことだった―。
「ああーーーー!!!!」
静かな山奥の温泉宿に、凄まじい悲鳴が響き渡る。
これにはさすがにびっくりして、入浴中だったノートンは思わず浴槽の底に沈んだ。
愛妻の身に何かが起きたらしい。
手直にあるバスタオルを巻きつけただけの格好で急いで温泉から上がった。
「メーテル!?」
部屋に備え付けられた外風呂の二人用の小さな浴槽から上がると、メーテルが真っ赤になって床に固まっていた。
「どうした?何があった?」
「な、何でもないぃぃ…」
明らかにあのメーテルが動揺している。
不審に思ってメーテルの前にしゃがみ込んで目線を合わせると、メーテルは必死に視線を逸らした。
「ノートン、いいから、そ、そんな格好でうろつくな!さっさと風呂に戻れー!!」
メーテルは真っ赤になりながら、兎に角ノートンを浴室に戻した。
ノートンが浴室に消えると、やっぱり一緒に入るの嫌なのかなぁ?…と沈んだ声が聞こえてきたが、今のメーテルにはそれどころではなかった。
はぁぁ…。
メーテルが思いっきり深呼吸をして、見つめる先にあるもの。
メーテルは、覚悟を決めた。
再び、旅行鞄を、開ける。
「………!!」
彼女は魂が半分抜けかけたフラフラの状態のまま、一番上にあった封筒を取り出して、恐る恐る開いた。
『ママへ
旅行に行くのに着替えがないと困るわよね?
困らないようにアタシが選んだ下着を入れといたから
着てね☆
ベイリーより』
「…………」
自分が詰めたはずの男物の服や下着がどこにもなく、代わりにヒラヒラとしたレースのソレが、一泊二日の旅行鞄一杯に、ぎゅうぎゅうに詰められているのをみて、メーテルは絶句する。
(もしかして…ハメられた?)
双子には甘すぎる母親が、ようやく事に気づいた時には、既に引くに引けない所まで来ていた。
その後。
いつもなら男物のTシャツに短パンという格好の妻が、珍しく旅館の浴衣などを着ていた。
そして、下着は忘れたと言い張る妻を不審に思ったノートンが、パンパンに膨れたメーテルの鞄を明けてみると、中にはたくさんのソレが詰め込まれていた。
あっけなく、ソレの存在はバレた。
ノートンは、ごくりと喉をならす。
そして、ありったけの期待を込めてメーテルを見つめた。
ソレを着ないで帰ったら、きっとベイリーが何か言うだろう。
そう思うと、意外と押しの弱いメーテルは、ノートンの視線から逃げ切ることが出来なくなった。
メーテルは観念して、その夜、とうとうソレを身につけることとなった。
(完)
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こんばんは、もっちょさん。一気に更新なんて、本当にお疲れ様!
おかげさまで久しぶりのノートン一家、楽しませていただきました。
ノートンおめでとう(号泣)ようやく望みが果たされるのねv
・・・っていうか、メーテルさん、浴衣の下はひょっとして何も身につけていないのでは??ノートン的には、そっちの方がいいんじゃないかな?なんて思いましたが、下着に執念を燃やすノートンらしいですね(笑)
あいかわらず愉快な一家でしたが、ベイリーとボウモアのサプライズにはなんだか愛が感じられました。ちょっと歪んでいる気もするけど、彼らなりにノートンの事を考えているのねー♪
前半の、まるで坂を転がり落ちていくようなベイリーとメーテルのすれ違いは爆笑ものでした。パソの前で「違う!ベイリー、それは違うぞ!」と何度さけんだことか。楽しい話をありがとうございました♪
2007/8/25(土) 午後 10:05 [ 月 ]
ユエさん
一気読み(笑)ありがとうございます!!!楽しく読んでいただけたようで、私も満足☆ノートンに至ってはさぞかし満足していると思います。なんたって『寝袋蓑虫』になるヤツですし^^;
ノートンは乙女心を持っているんです、雰囲気やムードを重視している繊細屋さんで、だから男湯時代に真っ裸で豪快に風呂に入っている姉御肌メーテルを見ていても…やっぱり恥じらう女性としてのメーテルがみたいようですなぁ。
ちなみに下着ですが、ノートンの学生時代の女友達のうちの一人が下着屋に就職して、フランス産のレースで何十万円もするものを記念日までに発注しているようです(え?)
双子ちゃん…マザコンボウモアには辛い試練でしたが、ベイリーにはノートンに反撃するよい機会になったようで、まぁ良い意味で両親のフォローもしてますね♪双子ちゃん心の父は勿論ラフロイグ!!ベイリーの「パパ」ボウモアの「父さん」は、策士ラフロイグですよ〜。
2007/8/26(日) 午後 2:04
面白かったですー! いったいどんなデザインなのか、興味津々です。
ラスト、ノートンがこんなに幸せで良いの(笑)?
2007/8/31(金) 午後 1:22 [ - ]
イトーさん
確かにノートンが幸せすぎですねぇ。
その分、普段はメーテル以外にも双子やら夫妻やらに、へなちょこに打ちのめされていると思ってやって許してやってください!
デザインはそんなに過激なものではないと、私も信じたいです(え?)
2007/9/8(土) 午後 6:13
よかったねーノートン。
かばんにいっぱいつまったランジェリーで今夜は下着のファッションショーでしょうか。。。。
最後まで楽しめました。家族愛がつたわってきましたよ!
2007/11/3(土) 午後 7:49
クライシスさん
楽しんで読んでいただけて良かったです。
そうですね〜、きっと今夜はファッションショー…そしてそのうちノートンが我慢できなくなるのでは(自己規制)
2007/11/4(日) 午前 10:33