もっちょの小部屋

今後について思案中(仮閉鎖)

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★登場キャラ★
メーテル23歳、ノートン18歳、アイデン5歳 (+夫婦=ラフロイグ&アベラゥア 共に26歳)

★シーン★
メーテルのことが好きだと気づいたノートンだったが、メーテルに告白も出来ない日々。そんな時、幼児アイデン5歳に先を越されてしまった!?どうする…ノートン!?どうなる…アイデン!?そしてメーテルの反応は!?

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夕暮れの台所に、トントンと小刻みなリズムが刻まれる。
その横には、ぐつぐつと美味しそうに湯気をたてる鍋がかけられていた。
その鍋の中に、アベラゥアは慣れた手付きで刻んだ具を入れる。
鼻歌まで聞こえてきそうな、楽しそうな表情をしながら。

手付きが慣れていて当然だ。
彼女は結婚してもうすぐ10年になろうかという熟練した主婦である。
愛しの夫との間には、アイデンというもう1人息子もいる。
彼ももうすぐ5歳の誕生日を迎える。

月日の経つのは何と早いことだろう、とアベラゥアは思った。

彼女は、夫も息子も大好きだった。
彼らもまた、同じ様に、自分の事を愛してくれている。
そう実感しながら過ごしたこの10年間は、彼女にとってかけがえのない宝物だ。

アベラゥアは手を伸ばして、今度は水々しい葉をした青い葉物をとった。
そして、こちらもシャキッシャキッという音を立てて刻んでいく。

幼い頃の約束を果たし、夫であるラフロイグと結婚出来たこと。
それは、今でも彼女に穏やかな幸せを与えてくれる。
優しく穏やかに見つめる彼の視線に、彼女は毎日のように頬を染めてしまうのだ。
彼は、日々を楽しく生きる源を彼女に与え、時には強い希望さえも与えてくれる。
私は、そんな彼にちゃんと応えられているのだろうか?一方的な重荷になっていたりはしないだろうか?と彼女は思った。

(ラフロイグにも、この気持ちと同じような幸せな気持ちを、私が与えられているといいな)
もうすぐ帰ってくるだろう夫の事を想像してしまい、アベラゥアは手元がおろそかになってぶんぶんと頭を振った。
(いけない、いけない、今は手元に集中しなきゃ…)
そうして、手元に集中しようとしたのだが。
ザクッという大きな音がしたかと思うと、彼女の手元はピタリと止まった。
後には、包丁の音が鳴り止んだ台所には、鍋の中の野菜が煮詰まるぐつぐつという音だけが響いている。

この10年。
幸せであったことは、確かなのだ。
けれど。幸せなことばかりではなかった。

何よりも大切な人を−皆が失ってしまった。

『あいつらのこと、頼むな…』
それは、最初で最後の、彼との約束。
もう二度と戻らない、失ってしまった大切な人との、唯一の約束。
アベラゥアが生きている限り、生涯果たしていこうと決めた約束でもある。
日々、弛まぬ努力で、守り通すことを、心がけては…いる。
皆が、笑える日がくることを願っては…いる。
けれど、約束を果たそうとすればするほどに、その度に、自分が出来る事が、余りにも。余りにも少ないと感じ、彼女にしては珍しく、はぁと一つ、ため息をついた。
(ため息をつくと、幸せが一つ、逃げてしまうのになぁ)
彼女にしては珍しく、少し浮かない顔をしていた。


そんな彼女の後で。
ちょこちょこと動く一つの影があった。
その影は、かろうじて少年と呼べる位の姿でしかない。まだ幼児と呼んだ方がふさわしいかもしれなかった。
彼は、いつもと違う母親の様子を敏感に感じ取ったのか、声をかけようとしては何度も躊躇っている。
が、その割には、顔が赤い。何か照れているような、もじもじとした表情を浮かべていた。
闊達なこの少年にしては、珍しく控えめな様子であった。
勇気を出して、母親に声をかける。
「ママッ!!!」
すると、彼が思っていたよりずっと大きな声を出てしまい、彼は戸惑った。
緊張していたせいもあって、音量を間違えたようだ。
その声に、彼が後にいることすら気づかなかったアベラゥアは、驚くほどの勢いで、びくりと竦み上がった。

やってしまった。
やりすぎてしまった。
少年は小さな心で反省しながら、母親が振り向くのをじっと待っていた。

「あぁ…びっくりさせないでくださいな」
彼の母親は、穏やかな笑顔と共に振り向いた。
「アイデンがいることに全く気づきませんでした、ごめんなさい?」
失ってしまった彼と、全く同じ名前を持つ少年。
そんな彼にアベラゥアは優しく微笑みかけた。
「うん。僕もママのこと、おどろかせてしまって…ごめんね?」
アイデンはしゅんと反省し、俯いてしまったかと思うと、またもじもじとしはじめる。
「大丈夫ですよ。それより、何かあったですか?」
「え?」
その声に、勢いよく顔をあげてしまったアイデンだった。が、何を思ったのかまた顔を伏せてしまった。
「あら?アイデンにしては珍しいですね…言い淀むだなんて」
(そういえば、アイデン様も、不得意なことがおありになったわね…)
同じ名前を持つものは、その名だけでなく、魂も似ているのだろうか?と、アベラゥアは苦笑しながら、アイデンと目線に合わす為ににしゃがみ込んだ。
それを待っていたかのように、アイデンが言葉を口にしようと四苦八苦する。
「えっとね、その…あのね」


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閉じる コメント(5)

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すみません。長くなったので一旦ここで区切ります。まだメーテルもノートンも出てきてないのでなんだか長くなりそうです。語りがラブコメとは違って少し固い。アベラゥアが出てきてるので明るくなっていると思うのですが、多少暗いかも…。

2007/6/2(土) 午後 8:11 もっちょ

キャラ紹介も一緒に拝見しましたが、サーシュ家ってかなり複雑そう。アベラゥア夫人は良妻賢母って感じで好感が持てます。物語の良心的存在なのでしょうか???続きを楽しみにしてますけど、無理しないように、ご自分のペースで更新していってくださいね〜♪

2007/6/4(月) 午前 8:28 [ ]

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さっそく遊びに来ましたよ!!いつもより、まじめ感じですね〜。ここから話が展開していくんでしょうか。続きを期待しています!

2007/6/4(月) 午後 5:39 cri**s091*

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ユエさん、ありがとうございます。アベラゥアさん好きだー!(自分で書いといて、うぉぃ!!)アベラゥアが唯一、良心的というか、常識的というか、最強というか、明るいキャラで彼女がいないと救いようのない暗い話になってしまうので非常に有難い存在です!!(涙)気ままに更新します。ぜひ読んでください〜♪

2007/6/4(月) 午後 7:30 もっちょ

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クライシスさん、ありがとうございます。いつもより文体が固いのは敢えて意識して書いています。良かったらまた続きを読んでください〜。

2007/6/4(月) 午後 7:36 もっちょ


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