北京老学生・日本から台湾へ

2013年春、4年半ぶりに日本に帰国。2017年春、今度は台湾・台中へ。

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この記事の続きだ。


先日、『この世界の片隅に』の片渕須直監督の前作のアニメ、『マイマイ新子と千年の魔法』を横浜ニューテアトルで見た(監督のトークショー付き)というのは、既に別の記事で書いた。

『マイマイ新子』のほうも大変、ユニークな作品で面白かった。
ところで、これにも原作本があるという。
それで、どんなものかなと思って、図書館で借りてきた。

イメージ 1



これがそうだ。
高橋のぶ子という芥川賞作家(現在は、選考委員を務めている)の書かれた、『マイマイ新子』という小説が原作だ。

平成16年(2004年)にマガジンハウスから出版された単行本がもとで、この文庫本(新潮文庫)はその5年後(2009年)に出版されたものである。

昭和30年(1955年)の山口県防府市を舞台にして、9歳の少女・新子が主人公で、新子の友達の子供たちの視点で書かれている。


どうせ、子供が主人公の本なのだから、分量もあまりないのかと思たっが、330ページ以上と意外とボリュームがあった。

子供が主人公だが、『大人の世界』も一部、描かれている。
面白かったのは、映画のほうでは、必ずしも出てこなかったような話(話としてだけでも出てきたのかどうか、実ははっきり覚えていない)だが、広島への原爆投下のことも触れられていた。


(原作には、映画ではカットされていたエピソードもがいくつもあって、その一つなのだが)ある日、新子はお祖母さん(初江)やお母さん(長子)に連れられて、妹の光子と一緒に、防府から広島市まで出かける。

初江の一番下の弟やその息子が、原爆で死に息子の嫁は原爆症にかかって、『今でも歯ぐきから血が出てしまう』と書かれている。

昭和30年の秋を迎え、原爆投下から10年が経過したので、『原爆のお参り』で広島まで出かけていくという話である。


新子にとっては、これまでで、一番遠くまで出かける経験のようだ。
広島駅で降りて、バスに乗って平和公園まで行くという話になっている。
路面電車が走っていても良さそうなものだが、なぜか、バスで行っている。


8月に出来上がったばかりだという平和記念資料館を見学する。
川のそばに降り立った時に、お祖母さん(初江)は、
『……十年もたったんだ。二十年は木も草も、育たんと言われたけど、ちゃんと木は伸びとるね』と不思議そうに木を見ている。

慰霊碑の文面をお母さん(長子)が説明する。
それに対して、新子は次のように問う。


<「ねえ、あやまちって何?」

「だから、原爆のことよ」

「ねえ、誰が繰り返さないの?」

「誰がって、人間よ」

「日本人?」

「日本人もよ」>


<「あやまちって、誰があやまちしちゃったの?」

「黙って拝みなさい」>


<原爆を落としたのはアメリカだと初江が言っていた。

「……ねえ、アメリカがもう二度と原爆を落としませんって、謝っているの?」

初江も長子も、返事をしてくれない。>


原爆資料館の展示を見て、妹の光子が言う。
<「おばけ」

「おばけじゃないのよ」>

新子は考える。

<戦争が悪いって言うけど、原爆落としたのはアメリカだし、どうしてみんな、アメリカに文句を言わないんだろう。うちが大人だったら、タツヨシやシゲルやヒトシと決死隊つくって、死んだ人のカタキウチしてあげるのに!>

この章は、『しんちゃんの三輪車はグニャグニャ』というタイトルになっている。
原爆資料館で展示されている、子供が乗っていて、原爆で焼かれてグニャグニャになってしまった三輪車のことを指している。


この小説は、筆者の高樹のぶ子さんの『自伝的小説』と言われていて、高樹さんが生まれたのは、1946年だから、(新子と同じ歳で)私よりは2歳ばかり年上である。

この『マイマイ新子』には、傷痍軍人の姿も出てくる(映画『マイマイ新子と千年の魔法』にも出てきたが…)。

私もかすかに記憶しているが、白い服を着て、杖をつき、アコーディオンなどをひきながら、通行人が小銭を『寄付』するのを受け取って生計の足しにする(ように見えた)人たちが、戦後何年間は街頭にたっていた。
(私自身は、生まれは長崎だが、親が勤務先の関係で上京したので、東京・大田区か杉並区の住まいの近くで見かけたのだったのだろう。)

ともかく、『マイマイ新子』という小説も、『戦後の日本』の姿を伝えている。
もっとも、戦争の話は、その一部に少し影を落としているという程度だが…。

(これを読んでいると、同じころに呉の街で、映画『仁義なき戦い』で描かれたようなヤクザの抗争があったということが、『うなづける』ような気がしてくる。)







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