北京老学生・日本から台湾へ

2013年春、4年半ぶりに日本に帰国。2017年春、今度は台湾・台中へ。

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この記事の続きだ。

『前篇』にも書いたように、私が本日(14日)の新聞3紙(朝日、毎日、日経の3紙、産経はなかった)朝刊の米朝会談に関する座談会記事のなかで、最も面白いと思ったものは次の座談会である。

『毎日新聞』朝刊(デジタル版)の9面に掲載されている。タイトルは、『米朝首脳会談・識者座談会』。
慶応大学名誉教授の小此木政夫氏と、中西寛・京都大大学院教授が二人で話している。

なお、中西教授は、プロフィールのなかで安倍首相の『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の委員を務めたことが紹介されている。
(なんだ、『安倍支持』の学者じゃないか、という声が聞こえてきそうな気がする。
問題は、そういうことではなく、この人がどのような発言をしているかである。)


この記事を面白いと思ったのは、『安倍首相にとって、損か得か(あるいは、その逆で、『反安倍』である我々にとって損か得か)』といった狭い党派的な視点ではなく、率直な感想とか疑問が発言されている点である。
どうしても、北朝鮮などがからんだ、こうした問題では、『党派的』な発言をする人が、政治家であるか否かを問わず多い。

あるいは、いわゆる『左派的な傾向』のある人々−−私自身も或いは、そうかもしれないが−−は得てして、『平和』という言葉に弱い。『平和のため』『反核のため』と言われると水戸黄門の印籠を前にしたかのように、ある種の『思考停止』状態に陥ってしまう場合がある。

そのような『偏向』からは、比較的フリーな、『原初的』(党派的に修正されてしまう前の)見解が比較的多く表明されているように感じたのが、この『座談会記事』を推奨する理由である。


それでは以下、具体的に『面白い』と感じた部分を列記する(おおよそ、5つの柱に区分することができる。もちろん、これは私の関心による分け方であり、適宜取捨選択してまとめたものである)。

<1 冒頭の評価>

座談会冒頭の『事前の期待と比べた評価を聞かせてください』という質問に対して、それぞれ次のように述べていた。

(小此木)
<トランプ流の「ディール外交」への期待感があったのは事実だ。実際は「我々に期待させたものとはちょっと違うんじゃないか」という印象を拭えない。
共同声明の論理は、北朝鮮側の主張である「朝鮮半島の平和体制を構築することで非核化が導き出せる」という構造になっている。「非核化を実現すれば平和体制が訪れる」という米国の従来の主張とはずいぶん異なる。>

(中西)
<共同声明には一般論しか書いていない。最初に見たときはあっけにとられた。トランプ政権は共同声明をそれほど重視しておらず、とにかく日程を決め、首脳会談を開き、署名式を行うのが重要だったのではないか。声明は、事務方が当日にまとめても作れるような内容だった。CVIDなど具体的なことに次の段階で合意できるかが重要だと思う。>

<米国側にとっては、厳しい評価をする専門家が結構いると思う。しかし、トランプ氏は「従来の米外交を変える」という立場を打ち出している。彼の頭の中では、カナダで8〜9日に開かれた主要7カ国首脳会議と今回の首脳会談は、一連の流れの中にあった。G7では「6対1で孤立しても米国第一を貫く大統領」、米朝首脳会談では「大胆にも、これまでの米朝関係を突破した大統領」とのイメージを作ることが最優先課題だった。こうしたスタイルをトランプ氏の支持層は評価している。>

この中西氏のトランプ大統領の頭の中で、『G7と今回の首脳会談は一連の流れの中にある』との指摘は、『なるほど』と感じた。

アメリカ国民の目から見て、トランプ大統領が、どのように(荒療治をも決行しながら)『アメリカ第一』を守ってくれているのか、そこから見れば、彼がサミットで孤立しているかのように見えることも、『悪い話』ではない、ということになるのだろう。


<2 米国一極構造からの変化>

(中西)
<(1994年の−−引用者注)枠組み合意は「北朝鮮の非核化ありき」が前提だった。背景には冷戦後の米国一極構造があり、北朝鮮を支援できるのは日米韓という西側諸国だけという事情もあった。>

<冷戦終結から30年近くたち、北朝鮮は中国や韓国、ロシアとの関係があれば、経済的には基本的なニーズが満たされる状態になった。今回の米朝のディールは冷戦構造をすぐに変えるものではないが、北東アジアにとって一つの変化だ。北朝鮮は、米中のバランスの中で体制存続を図れるようになっているのだ。>


この中西氏の指摘も『新鮮』に感じた。つまり、以前の『米国一極構造』は大きく変質し、北朝鮮は中露、韓国との関係があれば『経済的には基本的なニーズが満たされる状態になった』としているのである。



<3 リビア方式の忌避 イスラエル方式を狙っている?>

(小此木)
<北朝鮮が最終的に目指すのは独立した核保有国であり、(核保有を宣言していないが、事実上の核保有国とみられている)「イスラエル方式」というようなものを狙っている可能性がある。「核兵器を持っているのではないか」という疑念を持たれることは自分たちの安全につながる抑止力になる。
……そうなると、韓国や日本が米国の核の傘を再確認せざるを得ない部分も出てきて、核抑止に依存する世界になっていく。米国と中国が朝鮮半島の均衡をとり、南北朝鮮が共存する状態でも北朝鮮は核を持つという、いびつで複雑な均衡状態が出てきそうだ。>

(中西)
<北朝鮮が一番嫌だったのは「リビア方式」という言い方ではなかったか。大量破壊兵器計画を放棄して一度は国際社会に迎えられたが、惨めな最期を迎えたカダフィ大佐を想起させるからだ。CVIDや朝鮮半島の完全な非核化は最終到達目標だが、実行は非常に困難だ。北朝鮮は現在の体制が保証されるかどうかの不安がなくなるまで、核を放棄しないスタンスではないか。>


『リビア方式』という言葉を北朝鮮が嫌がるのは、あまりにも当然だが、それに対する『イスラエル方式』というのは、非常に不気味である。
このような状況になった場合、『日本』はどのような道を指向するのだろうか?


<4 トランプも金正恩も国内政治を意識している>

(中西)
<トランプ氏の思考は「それが米国にとってどれだけ得になるのか」ということだ。北朝鮮が米国を直接狙える核ミサイルの実験を重ねないとか、ミサイル実験場を破壊するということで十分だ。北朝鮮がある程度そう動くという感触を事務方の交渉でつかんでいるのではないか。>


(小此木)
<今後、米朝首脳会談が何回行われるかは、北朝鮮が非核化をどこまで誠意を持ってやるかによる。非核化を進めてくれればトランプ氏の功績になり、大統領選のキャンペーンにも使えるから、2回でも3回でも会うだろう。だが、北朝鮮側の意思が疑われれば、最初で最後の会談になるかもしれない。>

<北朝鮮が非核化を進めていくとしても、「核による自衛」を目指している以上、最後には小規模な核が残る。これは彼ら自身に廃棄してもらうしかない。経済改革が成功し、さらに、南北が長期にわたって安定的に共存して体制が外から脅かされないと安心しない限り、少数の核が残る可能性は拭えない。つまり、関係国は北の体制を助けて、改革を成功させないといけなくなったということだ。>


(中西)
<金委員長は国内政治をかなり意識しているのではないか。体制にとって最大の脅威は米国の軍事力だが、より長期的に考えれば人民の反抗を防ぐことの方が重要だ。
「3代目」という低い評価へのイメージを打ち壊したいのではないか。一連の首脳外交を30代の若者が中心になってやっているのは、驚くべき外交手腕と言っていい。最大の敵であるはずの米国と対等の形で首脳会談を行ったというのは、北朝鮮人民の金委員長に対するイメージを変える材料になる。

金正恩体制の下で今後行われるかもしれない経済改革に従っていくほうが、体制を倒すより都合がいいと庶民が考えれば、体制は強固になる。>



小此木氏のいう、『少数の核が残る可能性は拭えない』との指摘は、不気味である。
そうすると、逆に『国連軍』としての米軍は朝鮮半島から撤退したとしても、韓国の同盟軍としての米軍が韓国の近辺に駐留すること、少なくとも日本列島に居残り続けることは、十分考えられる。

それだけでなく、『日本の核武装化』という選択肢を現実化しようとする勢力が伸長することも考えられる。
小此木氏は、関係国が北朝鮮の『(経済?)改革を成功させること』の重要性を指摘するが、『経済改革』が逆に、中西氏の言うように、(北朝鮮の)『体制の強化』につながっていく可能性もある。



<5 問われる日本の覚悟?>

(小此木)
<今の日本は、拉致問題、核とミサイル問題を解決してから国交正常化という方針だ。核・ミサイルは北朝鮮が行動に移さないと解決にはならない。拉致問題は被害者家族の要請が非常に強い。間違いなく難しい状況になってゆく。
北朝鮮は、日本と優先順位が逆で、国交正常化をまず先に要求する。日本が優先順位を再調整するくらいの覚悟が必要だ。>

(中西)
<北朝鮮を信用できないから拉致被害者の生存を前提にする交渉手法も分からなくはない。だが不幸にも死亡していた場合はどう決着するか、日本の外交関係者は明確にする必要がある。結局、日朝平壌宣言の基本趣旨である、懸案を解決して国交を正常化するとの方針に立ち返ることになるだろう。国交正常化交渉と並行して、非核化で日本が一定の役割を果たすというのが、今考えられる最善ではないか。

拉致の解決なしに経済支援をすれば世論の反発も強いが、非核化は正当性があり、朝鮮半島に関わる重要なチャンネルになる。>

<(日朝平壌宣言の−−引用者注)当時と比べて日本には巨額の資金を出す余裕がない。また、中国や韓国、ロシアの存在感が北朝鮮にとって随分と大きくなっており、日本からの支援がなければ先が見込めないという状態ではない。>

(小此木)
<日本が経済協力することは今も北朝鮮に対し意味があると思うが、中国や韓国と協力しながら、国際的なプロジェクトとして北朝鮮のインフラを整えていく、というような新しいやり方を考えた方がいい。>


ここでは、『拉致問題』について、両氏が率直に発言していることが印象に残る。
『拉致被害者の家族』が『全員を戻せ』ということは、ある意味で当然であるが、その中に『死者がいる場合』も想定しなければならない。
安倍首相は、これまで、むしろ『拉致問題』について具体的な交渉の進展につながらないような形の対応しかしてきていないと感じるが、そういう『対応』ではすまない局面が出てくる可能性がある。

また、日本はどちらかというと、『日本の経済力、カネ』が絶対的にモノを言うような状況を、(昔の延長で)想定しているが果たしてそうなのか?
『国連からの制裁』という制約がなくなれば、朝鮮半島はむしろ、各国から投資資金が流入するエリアに生まれ変わる可能性もある。

あまり、『昔の日本のカネの威力』にばかりこだわっていると、ここでも、日本は『勘違いしていたこと』を露呈するはめにもなりかねない。


なお、私自身は、現段階では安倍首相のもとで、『日朝国交回復交渉』などできるのかどうかを含めて、やや懐疑的である。
(まあ、『交渉』自体はどこかでやらねばならないのかもしれないが…。)

現在の北朝鮮のレジュームが果たして、今後、起こりうる変動に耐えうるのかどうか、という疑問もある。


それに、この座談会のなかで両氏も語っているが、今回の『米朝会談』というのは、トランプ大統領という『特異な大統領の存在』が、いたからこそ起こりえたこととも考えられる。

あまりにも『特異な大統領』であるから、果たしていつまで、大統領の座にいるのか(再選もありうるのか?)、不透明な部分も多い。
また大統領を続けていても、『気が変わる』可能性も決してゼロではない。
(その点、金正恩委員長にとっては、気がかりなことであろうが…。)



このほかにも、この記事にはいろいろ面白い指摘とか、論点とかが示されていた。

興味のある方は、図書館などで記事自体をご覧になれば、と思う。
なお、『毎日新聞デジタル』では、『ワンデー100円』(1日、読み放題?で100円。ただし、制約もありそう)といった(お試し?)プランも、新しく始めているようだ。









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