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当初のスケジュールでは、「英雄・徹底解説」のあとはしばらく静かな日々を過ごし、ゆっくりとバッハカンタータの勉強をして、この愛知の本番にむけてたおやかなる準備を行い、健康かつ機嫌よく(昨年は高血圧のため異常なほど体調悪く、ほとんど会話不能な状態で毎晩宴会をするというバカな状態であった)上演に向けたリハーサルを行う、というプランであった。
ところが、ちょうど、愛知に出発しようというつもりの日程に、「N響カンタービレ」(5/4:東京文化会館)での、モーツアルト協奏曲のソリストが命じられた・・・自分はN響と協奏曲(独奏)を吹いたことがなく、一度はやってみたいと思っていたので、大変嬉しいことであったのだが、同時に、眩暈するほど緊張した。
「英雄」の解説の準備中もリハの日々も、すべてオーボエの練習も行っていた。今回は、以前と違い、少しでも自分の勉強してきたことを生かせるように、楽譜の見直し、記号の意味の見直し、フレージングや装飾、アーティキュレーションも変えて、音もいくつも変えて演奏しようとしたので、考えることも多かった。
もちろん、英雄新潟公演の直後からは、フル練習期間になった。5分の協奏曲がのしかかるプレッシャー、N響との、最初で、おそらく最後の協奏曲独奏という人生の一大事件、年齢から来る衰えの自覚やベテランだから許されないくだらないミスへの恐怖、10日間も禁酒して練習したのはもしかしたら初めてだったかもしれない。金さんの振った「マーラー1」の直後には楽器が割れていたことも気付かずに夢中で吹いていたと言うわけだろうか。広い空間でリードを決めるために、夜、N響の大スタジオや三鷹の大リハーサル室にたったひとりで立っていると、若い頃オーディションを準備していたときの興奮や熱意が、同じモーツアルトの協奏曲から蘇って、あのころより全然太ったメタボリックな身体を包んでいた。
結局、5/4に第1楽章だけとはいえモーツアルトを吹いたわけで、さらにオケ中でベト7も吹いて、普通ならその晩は上野でヤキトリ打ち上げ焼酎タバコ、朝までコース(!)なはずが、すぐ帰宅して旅行準備、翌朝は早朝起床で、自分で運転して名古屋に入った。
このバッハカペレは、音楽学の中村先生という大変優秀な若い女性学者さんが世話役になっていて、あらゆる準備を完璧に行ってくれる他、こちらが必要とするあらゆる資料を即座に送って下さるという素晴らしいことになっている。「せっかく素晴らしい公演を作るのだから、御一緒に歌われては?」と提案したら今年から全部のリハーサルでも(本番も!)歌っていた。おそらく数年後には高名な音楽学の先生になって研究活動を発表されてゆくのだろうが、こうした現場を作ったり、バッハを一緒に歌った経験をお持ちの方であることが心強く思われるのは演奏家の勝手な考えかなあ・・・ワガママ指揮者を幾度もなだめて下さり、完璧な御準備ありがとうございました。
オラトリオの準備で一番大変なのは、リハーサルプランを作ることである。カンタータなどのオラトリオは、すべての楽章の出演者、楽器編成、声楽編成が異なっている。ましてこのような団体では、2つあるソプラノの出番を別々の学生が歌うと言うようなことも、片方が先生であることも平気でおこる。さらに、それぞれの都合はめちゃくちゃに食い違っているだけでなく、オルガンやピアノなどがあり、合唱も独唱も練習できる空間を使える時間は限られているし、講義があれば練習は夕方しかできなかったりもする。昨年はすべての学校の事情と、人員編成を伺ってなんとかこっちでプランを作ったが、今年は英雄モーツアルトの連続でギブアップになり、これも中村さんに作って頂いた。現場で順番を変える程度のことはあったが、この作業の大変さを知る人間としては、よくぞここまでスムースかつ合理的に、ワガママ指揮者(今年のあだな)の要求通りに人間と楽器と空間と充分な練習時間と休憩時間がそこに揃ったものだ、と感激感謝いたしました。
藤ケ丘と言う場所のホテルに7泊し、毎日朝は楽器を吹いたり、昼寝したり、スコア見たり、テレビ見たりしてすこしでもモーツアルトの疲れを取り、午後から車で大学に(ようやく道を覚えた)行き9時までのリハ。歌って聞かせる汚い声のせいでどんどん声が嗄れてのどが痛む。
宴会は今年は1度だけにして、藤ケ丘駅前にできた輸入食料品のスーパーでパン、チーズ、ハムやワインを買い込んで、一人で部屋食いばかりしていて、体力温存。缶ビールにワイン。食ったらすぐ寝てしまう。フォアグラ食い過ぎて太りました。大好きなのはカンパーニュの田舎パンに、生ハムにトマト、いちごを載せて食うこと。イチゴと言うのは本当にあらゆる肉と相性が良く、ドイツでは鹿など(チエルノブイリ事故以前は)野生動物をよく甘い果物と食べたものだが、うまい。
それでも風邪は忍び寄り、本番前日あたりから発熱。本番当日は道に迷って犬山まで行ってしまい、演奏中止かと皆様を大心配させました。申し訳ない。
演奏は本当に素晴らしかった。プロも、教授も、学生も、OBも、器楽も、声楽も、みんながやっていて楽しい、感動できる、美しい、快感の大きなバッハの音楽。指揮はつたなく、またしても自分の無能と限界を思い知らされつつ、それにしてもかっこわるいなあと、照明で譜面に映る自分の指揮に絶望しつつも、音楽の素晴らしさと若い皆さんの熱意の視線に感動して本番を終えた。
昨年につづき、チェロの天野武子先生が、教授という重職にありながら、もぎごときの言うことも熱心に聞いて下さって真心のこもった通奏低音を弾いて下さったこと、そのオクターブ下にいて言うべきことは言う、という誠実な態度と演奏を貫く丹治君も有り難い支えであった。オルガンの北住先生は、御自身もぎなどよりはるかに見識をお持ちなのに、控えめに振る舞って楽しげに弾いて下さるのも感謝である。和久井門下、オーボエの新田祐子さんの一年での成長は目覚ましく、あの難しい21番のカンタータを、あまりにも美しい音と精神性、完璧な技術で演奏してくれた。感激して帰路から和久井君に感謝メールをしておきました。
本番演奏にさきだっては、カンタータの歌詞内容とその音楽化について楽章ごとにワンポイント解説を。自分が22でリリンクのもとにいて、理解できないドイツ語ながら少しづつカンタータに近づいて行ったころの立場で、一人でもカンタータ、バッハへの興味を持ってくれればと話すが、自分はそれにはあまりにも何も知らず、あまりにも音楽家・人間として卑小なのである。しかし、行う。行わないよりも行ったほうがよいということだけは、信じることができるじからだ。
風邪で体調悪いはずなのに、バッハの音楽はとても楽しく、それについて話す事も楽しめた。プロテスタントなのに「ミサの音楽」とか言ってしまったりいたしましたが・・・(本当は「礼拝」)お恥ずかしい。
歌手(学生)それぞれの個性と、バッハ音楽への深い愛情は独唱も合唱も、リハを重ねて音楽がひとつにまとまって行く中で急速に深まって行ったように思います。一緒に歌っている教授陣の歌がこれまた本当に凄く、歌う先生もプレッシャーかかるだろうし、しかし聞いている学生には凄い勉強だし、カンタータはいいなあ・・・と。
本番を終え、打ち上げにもいけず、(本当に残念であったし、申し訳ない)すぐに会場から高速に乗り、6時間半かけて、途中幾度も休憩して眠りながら、深夜帰宅。
楽しい仕事であった。合唱団の成長が素晴らしく、もし1年後にまたチャンスがあるのなら、とても楽しみです。
関係者の皆様と共演者に、また熱心に喝采して下さった聴衆の皆様に深い感謝を。
もぎぎ
一日を寝込んで今日からすでにN響で仕事。まだ本調子でなく文章はあとから整理します。
写真は中村先生、もぎぎ@顔色最悪、佐々裕子(ソプラノ独唱)、新田祐子(オーボエ)
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三鷹英雄、オーチャード巨人、上野カンタービレ、と、追っかけました、私にしてはよくやりました(笑) しばらく休みまして(追っかけるほうは勝手に休めるわけですが)7月の丸の内慶応に伺います。お体の完全復調、お祈りしております。
2007/5/15(火) 午後 2:04 [ kot*toi** ]
体調不良の中(御自愛なさいます様…)、指揮だけでなく分かりやすく楽しい演奏付き解説もしていただきありがとうございました。県芸大の演奏会はいつも本当にすばらしく大満足のバッハでした。ますまずバッハの世界に惹かれました。無理やり連れて行った友人達も大変感動してくれて「また、クラシックのコンサートに連れて行け!」といってくれました。次は、6/1春日井でのクラシック解説!楽しみにしております。
2007/5/15(火) 午後 8:07 [ gur**oviti ]
茂木さん、久しぶりのコメントです。体調最悪の中とても有意義な時間を過ごされたようで、ゲッソリ顔色最悪のお写真からも「楽しかったのだな」と感じました。8月にN響の公演が四国であるのですが、松山、高松とはしごする事になりました。ベト7なので楽しみです。茂木さんはこられますか?くれぐれも、お体ご自愛くださいね。愛媛のkaori
2007/5/17(木) 午前 0:06 [ scp*b80* ]
Kaoriさま、風邪もすっかり治りまして、文化会館での本番(N響の)初日終えてビール飲んでおりました。8月は、西ノ宮、名古屋で「のだめ音楽会」があるほか、広島交響楽団でお話しつき音楽会(ドイツ音楽:ブラ1など)をやらせて頂ける、とても楽しみにしている仕事、さらに、親愛なアマオケ「京都シンフォニカ」の定期で「田園」などがあります。そのため7月に出番を集中して8月後半のツアーはおやすみをいただいています。四国非常に好きなので行きたかったですが・・・それにしても今年はベト7(レコーディングも含め)多い・・・またよろしくお願いします。
2007/5/17(木) 午前 4:27 [ 茂木大輔 ]
午前4時27分。朝までコースだったのですね。お疲れ様です。8月はN響のお仕事はお休みなのですね、残念です。でも、いつかどこかの演奏会で必ずお会いしたいです。ところで、今度7月に習志野であるN響金管五重奏サロン・コンサートに行く事になりました。一人で。お話はクラの横川さんです。ステージ上で演奏が聴けるということで、思わず飛びついてしまいました。成田空港以外の千葉に行くのは初めてです(笑)楽しんでまいります!…続く…
2007/5/18(金) 午前 0:09 [ scp*b80* ]
茂木さんのお話つき音楽会、愛媛でも是非やってくださいね!(簡単に言ってスミマセン!)実現の際には微力ですがお手伝いさせてください!それでは。愛媛のkaoriより
2007/5/18(金) 午前 0:10 [ scp*b80* ]
しゅpふぶさま、ありがとうございました。習志野の横川さんの演奏会、天才池田昭子も出演する(前回)ものすごいものですよね。それは全国から駆けつけるべきでしょう。素晴らしいことです。一億分の確率というものがあるならば、愛媛でもぎぎの会があったら、ぜひお手伝いお願いします。もぎぎ@自分のモーツアルト(カンタービレ)聴いて自殺寸前
2007/5/18(金) 午前 0:16 [ 茂木大輔 ]
やっぱりそうですか〜!!金管アンサンブルのために飛行機で千葉。いいのかなぁ〜そんな贅沢。とちょっと思ってたので、安心しました。一億分の確率でも茂木さんの演奏会愛媛であったらお手伝いします!!余談ですがオケにかかわる仕事だったら私は奏者ではなく絶対ステマネだろう、と思っています。裏方肌なんです(笑)それと、自殺しないで下さい(笑)私は茂木さんのオーボエ大好きですから。愛媛のkaori
2007/5/18(金) 午前 2:02 [ scp*b80* ]
写真の中に見覚えあるお顔を見つけました(笑) お懐かしい・・・行けなくて本当に残念です。それにしても昨日は私の勝手な思い込みで本当に失礼いたしました。もう忘れてください(恥) ところで模型の番組見ました〜。知り合いにビデオ録ってもらって。すっごい楽しかったです。彼がかぶりついて観てました(爆) でき上がった写真の中ですごく良いなあと思うのがあったんですが、VTRではサーッと流されてしまってじっくり観られず、残念。またこちらでのアップを楽しみにしています。
2007/5/18(金) 午後 11:33 [ kla*i*rchan ]