田園の標題の表記についてなぜDel Marが手書き楽譜の(時点が古い)表記を採用し、BHからの初版に印刷され200年にもわたって流通してきた有名なもの(今日一般的にはこれで知られている。いわゆる旧版のBreitkopfやそこから写されたKalmusなどの多くがそうなっている筈である。)を排除したのかについて、校訂者の考えを読むこと(校訂報告書はBAの場合別売りで、大抵取り寄せ。図書館も遠いし・・・なにより重要事項はBH新版の校訂報告にあるので。)はちょっとできないと思っていたら、おもいがけず指揮スコアの序文の中(ページⅦ)で個別に触れていた。Del Marは、その印刷表記は「全くBreitkopf und Hartel出版社の独断に帰せられる。LvBが実際に印刷された楽譜を手にしてそれを見るまで、校閲するチャンスがあったとはほぼ全く思われないし、ベートーヴェン自身からそれを変更する旨を記載した書簡などが実在しない。したがってこれはBH社が勝手に行った変更であると断定しており、手書き楽譜(自筆総譜など)に共通に書かれた
Ⅰ:
「Angenehemene ,heitere Empfindungen,welche bei der Ankunft auf dem Lande im Menschen erwachen」
(現行:Erwachen heiterer Empfindungen bei der Anlunft auf der Lande])
(Ⅱ、Ⅲは変更なし)
Ⅳ: 「Donner,Strum」(現行「Gewitter,Strum」) Ⅴ:「Hirtengesang」「Wohltaetige,mitDank an die Gottheit verbundene Gefuehle nach dem Strum」
(現行:Hirtengesang,Frohe und dankbare Gefuhele nach dem Strum」
を採用した。
無論、おおむねは同じ意味であるが、重要な相違を幾つか含む。
まず第1楽章。本来は> 田舎に到着したときに「人間の心に目覚めてくる」、「心地よい」、愉快な感じ。
(「感じ」が主。)であった。 ものを出版社は、「田舎に着いた時の愉快な気分の目覚め」とした。
ここでは「目覚め」が主であり、文意が相当違ってしまう。 第4楽章の「雷、嵐」が、間が抜けていると思ったか、音からくる豪雨の感じ(弦楽器の反復16分音符の強奏)からのことか、出版社は「夕立・嵐」とした。雷鳴のような低音域のどん!はあまりない(ティンパ二がF音で低過ぎるため?)こともあるかもしれない。でも本当の題名は「雷」であった。
第5楽章は最も厳しい変更を受けてしまった。 本来は「羊飼いの歌」(別項に。)として、「嵐の後の、有り難い、神性への感謝に結びついた幸福な気分。」であった。
これを、 「羊飼いの歌、(そのまま続けて)嵐の後の、喜ばしい、感謝に満ちた気分」にしてしまったわけである。 当然重要なのは、「神性への感謝と結びついた」が消されたことだ。現状では「感謝」は漠然と、「神様、有り難いことでごぜーますだ!」的な雰囲気(自然現象への畏怖から、超自然への感謝)になっているが、原文はもっとはっきりと「神性」を歌っており、(ここでは「神への感謝」と訳しても問題無いだろう。)具体的である。Del Marの判断はこの問題については英断であったと個人的には思う。新潟での「田園:徹底解説」では多くの情報を演奏と同時に投影してゆくが、今回はこちらのテキストに準拠して投影する。お楽しみに。 http://www.ryutopia.or.jp/schedule/11/1119c.html
今回もがんばって新潟までお伺いしようかと画策中です。
楽しみにしていますが、楽譜の版の名前や、出版社や研究家の名前は少しバックグランドの説明があれば助かるのですが・・・。
とっても難しい話になるのかなあ?って思ってしまいました。
2011/11/6(日) 午後 8:40 [ kei*si*houe**e ]
ありがとうございました!これは自分のためのメモのようなものですから、現場の話はもっとはるかに解りやすいと思います。関連作品の演奏も多数行いますので、聞くだけでも楽しめると思いますよ。遠方から来て下さるのを感謝いたします。
2011/11/6(日) 午後 11:44 [ 茂木大輔 ]