|
今日の演奏曲目について;
1: モーツアルト:交響曲第41番ハ長調 「ジュピター」K551
*「大交響曲」とは?
実は、ベートーヴェンのデビューコンサートの冒頭に演奏された曲は、「モーツアルト:大交響曲」としか、わかっていません。
この演奏会の選曲は、残っている広告と新聞記事からしか解らず、そこに載っていない情報はもはや復元のしようがないのです。
ケッヘル何番だ?と聞きたい所ですが、この当時はまだモーツアルトの交響曲には、今日のような1〜41の通し番号や、もちろんケッヘル番号(初版は1862年)は打たれていませんでした。
(今日でさえもドイツなどの演奏会の予告はこの程度の情報しか掲載していないことがあります。)
とはいえ、モーツアルトの交響曲はほとんど規模が小さいので、「大交響曲」として候補に上がってくるのは、そう多くはないのです。そこで、今回は第41番ハ長調の「ジュピター」を選びました。
理由は、「モーツアルト最後の交響曲>ベートーヴェン最初の交響曲」という比較がとても意味深く思えるからですね。同じ「ハ長調」というのも、比較しやすいと思います。
*モーツアルトさんについて:
モーツアルト(1756−1791)についてはここで詳しく書いていると大変なので、極く簡単に。
オーストリアのザルツブルクに産まれて、宮廷音楽家の父親に幼少のころから英才教育を受けて「神童」となり、全ヨーロッパを演奏旅行して大変なセンセーションを起こしました。ことにピアノ、作曲、即興演奏にたけていて、オペラの本場イタリアからもオペラの依頼が来るほどでした。しかし就職には失敗して、故郷ザルツブルクを捨ててウィーンに移住、主にオペラとピアノ協奏曲の分野で大成功を収めました。それも長くは続かず、貧困のうちに若くして亡くなりました。
その、少年期から続く膨大な作品の中で、交響曲の最後を飾っているのが「後期三大交響曲」と呼ばれる3つのシンフォニーで、第39,40,41番がそれに当たります。今日演奏する第41番(「ジュピター」)は文字通り、最後の交響曲ということになるのです。
ちなみに「ジュピター」(木星)という愛称は、ロンドンで活躍したヴァイオリニストのザロモンが付けたと言われています。ザロモンはなんとベートーヴェンと同じ家に住んでいたというドイツ人で、ハイドンを二度にわたってロンドンに招聘したほか、モーツアルトやベートーヴェンにもロンドンへの旅行をオファーしていましたが、結果的には実現しませんでした。
*「ジュピター」交響曲の内容
・ 第1楽章;アレグロ・ヴィヴァーチェ(活発に、楽しく)
軍隊調のファンファーレ、行進曲と、アリアや笑い声などがどんどん現れては組み合わさり、時には突然の静寂や衝撃など、目まぐるしく雰囲気が変わりながら、大きな興奮に導いていきます。それらの全てが非常に高い気品と香気のなかに完結しているのが天才的です。
・ 第2楽章:アンダンテ・カンタービレ(歌うように、進みながら)
弱音器をつけたヴァイオリンが、イタリア・オペラのアリアのような静かな雰囲気で歌い始めます。翳りや悩み、心の揺れ動きなどを管楽器が綾なすように歌っていきます。
・ 第3楽章:メヌエット:アレグレット(少し元気に)
溜め息をつくヴァイオリンと、受け答えるようなホルン。二つの材料がいろいろな楽器、音量に拡がって行きます。トリオ(中間部)では、音楽の始まり方や終り方を忘れてしまったようなユーモラスな音が続きます。
*宮廷舞曲であるメヌエットでは、中間部を挟んでダ・カーポ(もう一度冒頭に戻る)のが決まりごとです。
・ 第4楽章:フィナーレ:モルト・アレグロ(とても楽しく)
この交響曲のフィナーレであるだけでなく、3つの(39−41番)交響曲セット全体のフィナーレとしても計画されていて、非常に充実したものです。結果としてモーツアルトの交響曲全てのフィナーレともなったのは悲しいことでもあります。最初にヴァイオリンでそっと示される4つの音(ドーレーファーミー)はモーツアルトの最初の交響曲(第1番)でも使われていたもので、やがて音楽全体を圧倒して宇宙を思わせる壮大なクライマックスを作ります。
2:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15
*ベートーヴェンとピアノ協奏曲
ヴァイオリン協奏曲には古い歴史が有りますが、ピアニストが、ピアノ1台で交響楽団と張り合う(笑)という、非常に面白い音楽は、実はあまり歴史は古くなく、ピアノと言う楽器が今日のような音量を持った19世紀、まさにベートーヴェンの頃から急速に発達したジャンルです。
モーツアルトはこのジャンルの天才で、20曲以上もの名曲を残し、可憐で絢爛、深みのある歌う第2楽章や、真珠のように転がって行く音階を自分自身が各地で演奏して大評判を取っていました。同じくピアノの名手であったベートーヴェンも当然このジャンルに興味を持っていましたが、モーツアルトの作品を超えた世界を目指したのか、オーケストラの規模も大きく、また曲全体も重厚なものが多くなっています。
ベートーヴェンは生涯に5曲のピアノ協奏曲と、ヴァイオリン協奏曲をピアノ用に編曲したものを創作しています。
*今日聴いて頂く「第1番」は実際には第2番のあとに書かれました。
・ 第1楽章:ひそやかに始まるシンプルなリズムの、美しい音色を持つ主題。のちに大爆発するこの主題を、ソリストは一回も弾かないという破天荒な構造になっています。大建築のようなオーケストラ主題と、その柱の中を超絶技巧で駆け巡るようなピアノとの音色・役割的なコントラストがこの楽章の主要ポイントかもしれません。
・ 第2楽章:青春の陽光のようなどこまでも憧れに満ちた音楽です。クラリネットはあまりにも美しく音楽を彩ります。ちょっと難しい話になりますが、この楽章が始まる主題の伴奏部分は、第1楽章のテーマの拡大。ピアノが紡ぎ始める旋律は第1楽章でソリストが立ち上がったときの旋律そのものです。楽章を超えた統一が図られていて、緻密な作曲がされていると言えるでしょう。
・ 第3楽章:リズムの遊びに満ちています。ぼんやり聴いていると、小節の頭はどこかわからなくなります。楽章の後半ではもっとわからなくなります。オペラのようなファンファーレに導かれて、ピアノ独奏が一人で2重唱をするようなシーンや、「トルコ行進曲」のような場面も出てきます。
休憩
|
全体表示
[ リスト ]




