茂木大輔:もぎ議録

クラシック音楽は理解して聴けば感動100倍!が活動のモットー。まずは自分が理解しよう・・・(笑)

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3:ベートーヴェン:7重奏曲変ホ長調、作品20
 
編成は、クラリネット、ファゴット、ホルンという温かい管楽器3種に、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがそれぞれ一人という、「名手前提」の7人衆です。このときが公開初演ですが、ヴァイオリンにはベートーヴェンにとって生涯の理想的室内楽リーダー(弦楽4重奏曲など)でありつづけたシュパンツィヒ、クラリネットには当時の記録のあちこちに名前を残す名手のベーア(ベール)など、ポスターに全氏名が掲載されている名人たちでした。
この曲は非常にヒットした作品で、おそるべき量の編曲楽譜が出版されました。作風はディヴェルティメント(軽いパーティ音楽)風の6楽章の中に各自の名人芸を聴かせる変奏曲なども含み、モーツアルトの大作「グラン・パルティータ(13管楽器のセレナーデ)」を思わせる大規模室内楽への野心も聴かれます。響きの美しさと楽しさは特筆すべきですが、興味深いのは、この演奏会ではいずれの作品でも指揮者、ピアニストという主役として振る舞っていたはずのベートーヴェンは、わざわざピアノの入らない(自分が参加しない)室内楽をここに投入することで、何を狙っていたのか、ということです。
始まろうとしていた出版文化へのコマーシャルだったのかもしれないし、もしかしたら、ただ休憩したかったのか?
多分、今ごろぼくも休憩しています。(笑)
 
4:ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調作品21
 
さて、こうして、偉大な先輩作曲家の作品を堂々と引き合いに出し、自作のピアノ協奏曲や即興演奏でピアニストとしての腕と作曲を披露し、7重奏曲では貴族に好まれるサロン音楽への能力も示したベートーヴェンは、いよいよ、文字通り満を持して、「交響曲第1番」の初演へと歩を進めたわけでした。
 
 
*交響曲のそれまで
 
 
ベートーヴェンが尊敬していた師、ハイドンは、「交響曲の父」とも呼ばれています。
速い>遅い>3拍子の舞曲>軽快なフィナーレ
という4つの楽章を定型にする「交響曲」の基本的な形は、オーケストラが単独で演奏する音楽としてのシンフォニーがまだまだ宮廷音楽会の「添え物」でしかなかった時代から、長い年月と沢山の実験を経て、ハイドンが完成してきたものでした。(珠玉の名作ばかり、合計107曲を残しています。)ハイドンがデビューしたころ(18世紀半ば)には音楽会の主役は、アリアを歌う歌手であり、協奏曲のなかで名人芸を披露するヴァイオリンなどのヴィルトゥオーゾ(名手)で、シンフォニーは幕間の休憩や音楽会の開始、終了を告げる役割でしかなかったのです。しかし、ハイドンの交響曲は次第に深刻な精神性や、大規模な楽器編成、音量をもつようになり、遠くパリ、ロンドンからも依頼が来るほどの人気作品となっていきました。
 
 
*ハイドンさんとベートーヴェンの違い
 
 
ハイドンが、生涯をハンガリーのエステルハージ宮廷で勤務して、常に領主の要求に応じて趣味、規模、内容のあったものを「注文生産」していたのに対して(当時はこれが普通でした。)、ベートーヴェンは生涯をどこの宮廷にも所属せず、自由な芸術家として送りました。このことは二人の創作に決定的な違いを及ぼしています。
ベートーヴェンの交響曲が、かつての宮廷型と全く違う世界に踏み込むには、第3番「英雄」を待たなくてはなりませんが、すでにこの「第1番」には、宮廷的メヌエットを廃止するなど、独自の芸術的実験が多数、盛り込まれていたのです。オーケストラの規模も、ハイドンの最大編成を上回る人数を始めから要求しており、当然、宮廷のサロンよりも公開の大ホール演奏会を想定したものとなっていました。
 
*「交響曲第1番」の内容
 
 
 
 
・ 1楽章:アダージオ・モルト(非常に自由に)〜アレグロ・コン・ブリオ(力強く、楽しく)
 
いきなり質問?のような、不思議な響きで始まります。これは当時の常識にはない和音でした。ここにすでにベートーヴェンの挑戦がはっきりと宣告されていると言って良いでしょう。ゆっくりな序奏(イントロ)を経て、「ジュピター」によく似た非常にがっちりしたテーマが、まず弱音で現れて、やがて疾走を始めます。管楽器の使い方が意欲的です。
 
・ 第2楽章: アンダンテ・カンタービレ・コン・モート(歌うように進みながら、活動的に)
 
 
第2ヴァイオリンがピアニシモ(最弱音)で弾き始めるテーマが次第にオーケストラ全体に広がって行く、モーツアルトがイタリア語の女性のアリアとすればこちらはドイツ語。男性的な喜びに満ちた音楽です。ティンパニが単独でリズムを刻みますが、これも当時としては実験的でした。(ティンパニは常にトランペットと同じ仕事をしている楽器でした。)
 
・ 第3楽章:メヌエット:アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ(非常に速く、そして活発に)
 
この交響曲のなかで最も野心的な楽章です。題名には「メヌエット」の言葉が残っていますが、実質的には宮廷舞曲を離れた急速な「スケルツオ(冗談)」の性格です。ハイドン、モーツアルトの交響曲までは、3つめの楽章を必ずメヌエットにしていましたが、ベートーヴェンは宮廷音楽的な性格よりも、こうした刺激的で快活な音楽を選んだのでしょう。それはその後の彼の交響曲で基本的な路線になりました。トリオ(中間部)は管楽器と弦楽器の「ぼけとツッコミ」みたいな、とんちんかんな対話になっています。
 
 
・ 第4楽章:フィナーレ:アダージオ(自由に)〜アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ(非常に速くそして活発に)
 
短い序奏を経て、全力疾走に入ります。この喜劇的楽章は最もハイドンの交響曲に類似していて、ハイドンがほとんど用いなかったクラリネットが活躍することを除けば、ハイドン作と言っても通ってしまう感じです。やや残念と言えますね。笑
その後の交響曲でベートーヴェンは、最後の楽章であるフィナーレの、新しく独自な性格造りに最も力を入れていきます(第3番、第5番、第6番)が、その頂点が、フィナーレで突然声楽が歌い出す「第九」交響曲なのは言うまでもありませんね。
 
ベートーヴェンの最初の交響曲は、こうして、強い野心と高い技術を示しつつ、ハイドンの影響下にもある若いベートーヴェンの精神をそのままに伝える音楽として、今日でも頻繁に演奏されているのです。この後、彼はどんな風に変貌して行くのか、久慈の皆様とともにゆっくり追いかけていけたらと思っております。本日はありがとうございました。
 
 
 
 
茂木大輔
 
 
 
 
 

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