茂木大輔:もぎ議録

クラシック音楽は理解して聴けば感動100倍!が活動のモットー。まずは自分が理解しよう・・・(笑)

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Beethoven,op16:ピアノと管楽器のための5重奏曲変ホ長調

スケッチ研究(紙)から、ベルリンの紙にスケッチされていると判明。1796プラハ、ベルリン旅行の途次にスケッチ、(あるいは完成も)
この作品をプレゼントとして送りますがどなたにも見せないで頂きたい、という、宛先不明の手紙の下書きを伴っている。
この作品はこんにち、ピアノ、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンのための五重奏曲として一般的に知られている。(この週末に名古屋で演奏します。)
無学にして全く恥ずべきことに(解説などしている癖に)知らなかったのだが、この作品16には、全く同じピアノパートに、バイオリン、ビオラ、チェロという編成の、四重奏曲版の異稿が存在していた。この弦楽器版は、一般的には管楽器版の編曲とされてきていたらしい。それで多分状況から推測してほぼ正解なんだが、実は、本作品が初版のとき、すでにピアノパートは共通のまま、パート譜が4+3の七枚つけられて、どちらでも演奏できるセットとして売られていたという。
このことは、今日で言えば、木管五重奏曲だがサクソフォン四重奏曲としても演奏できます、という、ミュージックエイトみたいな、売り上げを狙ったコンパチな作戦であるのは明らか。シューマン唯一のオーボエとピアノのための作品である「3つのロマンス」を買うと、バイオリンやクラリネットのパート譜がついてくる、あるいはその音が印刷されているという具合で、管楽器はやはり奏者が少なかった時代の、出版上の販売向上戦略と考えて多分正解なのだ。しかし学問はそれで結論にしないところがおもしろく、ヘンレ版新全集の校訂者は、可能性として弦楽器版がオリジナルであったかもしれない、という部分を否定せず、改めて検討している。
1:
そもそも初版(モロ社)の段階から管楽器の5重奏と弦楽器との4重奏の一緒になったものが販売され、別に発売された場合のような順序がない。続行するジムロックでも同梱(ただし、表記は「ピアノとオーボエ、クラリネット、バソン、コルのための5重奏曲」が先)

2:
リース証言:「師の名のもとに、自分で編曲したとされる楽譜が多く出版されているが真正なものは4つのみ、(そのうちひとつが)管楽器との5重奏を弦楽器とピアノに直した物だ」
3:
シュパンツィヒの演奏会(ノート参照)はヤーンのレストラン、演奏したのは「5重奏曲」(ヴァイオリン奏者であるシュパンツィヒがいるのに:管楽器との5重奏)。
4:
同じベルリン旅行中(おそらくプラハで書き始めた)「ピアノと管楽器のための4重奏曲(5重奏ではない)ト長調(変ホ長調ではない)の草稿が存在する。ピアノと管楽器のための室内楽を模索していたと思われる。


「どちらがオリジナルか」を時代状況、蓋然性からの推定だけでは済ませずに、可能な限り事実を立証しようとする試みであって、そのこと自体もだが、こうしたベートーヴェンの周辺状況を知る事が出来るのがこうした校訂報告や序文の面白いところだと思います。
まあ、スケッチが管楽器版なら普通はそっちだよな。笑。(>というのが「状況による推定」。もしかしたら知られていない弦楽器版室内楽の成立があって、管楽器のための室内楽の依頼に、急いで編曲で答えた、という可能性も(モーツアルトなどにあるように)否定できないからだ。)


プラハを旅するベートーベンが、当地の管楽器奏者から依頼されたか、モーツァルトの同じ編成の作品に刺激された可能性を示唆する学者もいる。後年、近郊以外には旅行できなかったベートーベンを思うと、結果として最後となったプラハ、ベルリンまでの旅を彼が楽しんだことを強く願いたいが、この作品は、その旅行の空気を我々に伝え、誰にプレゼントするつもりだったのか、無限の空想に誘ってくれる。ベルリンの楽譜商に、若く元気で意気揚々たるベートーベンが入ってきて、五線紙を購う姿、やりとりが目に浮かぶ。


演奏会:2/8:愛知県立芸術劇場
http://www.aac.pref.aichi.jp/sinkou/event/rakuen2013/index3.html

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