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中田敦彦さんが、ブログで小説を書いていたのをご存知でしょうか?
何年か前にブログを削除したらしいのですが、熱心な昔のファンがとっているのを発掘しました。

幾つかあるのですが、まずは、彼を語る上では外せない未完の小説「ピコル君の小さな冒険」は、記録用にここに残しておこうと思います。

2016年6月11日追記(ピコル君の小さな冒険の執筆時期に間違いがありました)

「ピコル君の小さな冒険」はデビュー前に作った作品で、学生時代にバイト仲間と作ったサークル内の活動だったようです。藤森さんは出会った頃の中田さんを「負のオーラを全身から発していたこれまで出会ったことがない人間」と称しています。その頃の中田さんの心の内を知ることができるような気がします。

この作品は、中田敦彦さんのTwitter名、そして弟FISHBOYさんの芸名の由来となりました。

彼の初期小説は、人間の悪意を前面に押し出した、暴力要素が強い作風です。そういった作品が苦手な方、「これが中田敦彦の本質だ」と思い込んでしまうタイプの方は、読まれないことをお勧めします。

読んだ感想は、また後ほど。

プロローグ 「his name
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僕がそいつに名前を聞くと、そいつは「もっと建設的な話をしよう」と言って歩き出した。
長い付き合いなのに、いつまでたっても教えてくれない。しかし僕はそいつの名を知っているのだ。でも知らないフリをしているのだ。
僕なりの、気の使い方さ。
そいつは、煙草の自販機の前でふと立ち止まった。そして釣り銭が出てくる所に10円玉を入れた。
「これが本当の募金、ね。」
僕はそいつを少し尊敬した。ピタゴラスの面影を見た。
実際、そいつからはいろんなことを教わった。
雑草を食べる方法。抽象的に歩く方法。椅子を座らせる方法。ラジオ拳法第三。脳内建築。概念体としての空間トポロジー
夕食の時間も忘れて、3時間くらい失禁しつづけたこともある。
でも、初対面の時はお互い印象はよくなかったのだ。
初めて会ったのは、僕がサ行変格活用に性的魅力を感じなくなった頃だ。もうずいぶんと前になる。
でも今でもあの時のことは忘れることができない。

あの日、僕はいつものように趣味と実益を兼ねて、父親と公園で作業をしていた。
丸いものの上に乗った四角いものを三角にしたりするような作業だ。
そこを通りかかった宮廷音楽家、それが彼だったのだ。
彼が宮廷音楽家だというのが全くの嘘で、本当は架空の人物であることが後にわかったが、そんなことはどうでもいい。
そいつが僕の作業をまじまじと見つめてきたのだ。
一瞬、こいつは宇宙心理学に興味があるのかな、と思ったが、そうではなかった。彼は周囲に人がいないことを入念に確認して、僕にこう言ったのだ。
「河童の秘密を知りたいか?」
常識のある奴は、初対面の人間に「河童の秘密」についての話などしない。
河童の話はもっと仲良くなってからだ。僕は、そいつを、危ない奴だと思いながらも応酬した。
「知っている。キュウリを食べる時は、必ずフォークとナイフを使うってことだろ。」
僕が自信満々にそう答えると、彼はニヤリと笑って首を振った。
僕はあせった。塾で教えてもらったのは一つだけだったからだ。
「知りたいか?」
僕は、知りたい、と言った。すると彼は「マキポトィー!」と言った。
だから僕は「ポルコトィー!」と言った。そして彼は「ホングトィー!」、僕が「プンルトィー!」、そして、
2時間が過ぎた。
彼は言った。
「河童は、頭の上の皿に、よくオムライスを乗せられる。」
驚天動地。僕は耳を疑った。
「誰に!?」
僕がそう言うと、彼は少し黙った。そして哀しそうな顔をして微笑んだ。僕はその時大人になった。
電子レンジのことを忘れても、彼のことは忘れない。そいつの名はピコル。





第一話「ticket to the party
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さあ、ピコル君の話を始めようか。ピコル君が生きてた頃の話。正確には、未来の話だ。
ピコル君はその日も公園に子供たちを集め、生きてくうえでの黄金律を説いていた。
「いいかい?頭の上にむやみにリンゴを乗せてはいけないよ。矢で射られてしまうからね。」
空は青く澄んでいた。ピコル君を見る子供たちの目は透き通っていた。
ピコル君の一言一句を逃さぬように、全員がハンディカムをピコル君に向けていた。
「よし、今日はだいたいここまでだ。最後に、本日の格言をさずけよう。」

暖房の温度を2度下げるだけで、電気代は随分ちがうよなあ。
でも、それってさ、恋愛と一緒だよね

「この台詞を毎朝、鏡に向かってつぶやき給え。みるみるうちに顔が猿に近づいていくよ。見違えるほどにね。」
子供たちは、目に涙を浮かべていた。
そんなありふれた朝。全身をコンクリートスタイルでびっしり固めた、いなせな男がピコル君に近づいてきた。
「ピコル・ド・オードトワレさん、ですね?」
緊張が走った。ハンディカムが一斉に謎の男に向けられた。しかしピコル君は動じずに答えた。
「ああそうだ。どこの国でも人間国宝、ピコル・ド・オードトワレとはこの俺だ。」
「パーティの紹介状です。」

ピコル・ド・オードトワレ様

前略、窮鼠猫を噛む季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。逆上していますか?
来たる2月29日。うるう年フェチを集めての骨折パーティを企画しております。
いろんな骨を用意しましたので、思う存分折っていただけます。
なお、優勝者には徳川家康のぬいぐるみをプレゼントします。
ぜひ、お越しください

黒田 五右衛門
                                   
「なるほどね。」
ピコル君はつぶやいた。
そして、携帯のストラップにしていた自分のヘソの緒を、引きちぎった






第二話「start with fish-boy
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その手紙は「神という装置」で特許をとった天才、「第五十七代 黒田五右衛門」からの挑戦状であった。
俺は幸福にはなれないというのか・・・。                
かといってこのまま黙っているピコル君ではなかった。彼はモソラ族の古い習慣をふんだんに取りいれて踊った。
子供達はすでにゼリー状になってはいたが、その中にでひときわオーガニックな輝きを放つ者がいた。
「ピコルさん!この挑戦受けましょう!」
無類の魚好き、フィッシュボーイであった。
「フィッシュボーイ。お前にプライドを捨てる覚悟はあるのか?」
「僕は僕は、ひとり相撲では横綱クラスです!!」
「男だね。安土桃山時代を、彷彿させるぜ。」
フィッシュボーイは、招待状を持ってきた男に殴りかかった。
「ト音記号!ト音記号!!」
フィッシュボーイが叫ぶと同時に、男にとびかかる子供達。男を殴るリズムがやがてダンサブルにリミックスされていく。
「お前は!お前はピコルさんの、そしてビフィズス菌の気持ちを考えた事あんのかよっ!」
フィッシュボーイは涙を流していた。それは男の涙というやつなのだろう。

俺に俺に善玉菌の資格なんてあんのかな
好きな女も、守れなかった俺に。

ピコル君が初めて吐いた弱音は、フィッシュボーイの心に今も突き刺さっていた。
「もうやめろ、フィッシュボーイ。そいつ死ぬぞ。」
男は完全に気を失い、頭はピスタチオのようになっていた。
フィッシュボーイは、男に向かって吐き捨てた。
「お前の戸籍、ヤフーオークションに出品しといたからなっ。二度とツラ見せんじゃねえぞ。」
ピコル君とフィッシュボーイは、目を合わせて少し微笑み、太陽に向かって歩き出した。
旅が、地獄の季節が始まるのだ。
「さあ、青い鳥を撃ち殺しにいこうか。」
ピコル君は指で作った銃の形を太陽に向けて「バン」と言った。







第三話 「K-report \#23
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異常天才、第五十七代黒田五右衛門に関する57の報告書 No.23 
この文書は、現在、我がゲルマニウム・アイランドを事実上独裁支配している、第五十七代黒田五右衛門に関する報告書である。
No.22の報告書にひき続き、黒田五右衛門の抹消された経歴の一部について調査結果を報告する。


F−65年  ファーストフォトエッセイ「髪の毛をおいしく食べて、みるみる視力が回復する!」300万部突破

サードシングル「ねえ、結婚してよ。僕の飼い犬と。」オリコン初登場1位
             

F−68年  「悲しみの面積の求め方に関する21の定理(通称メロンパン定理)」により感情数学の先駆者となる

テレビ出演時に発した言葉、「前歯折れても痛くなーい!」がF−68年度流行語大賞となる
        
ゲルマニウム・オリンピック「男子 6000m無呼吸歩行」で金メダル

        
F−69年  名画「モナリザ」に放尿。現行犯逮捕、実刑判決。だが、それが新たな芸術流派を生み出し各方面から絶賛を浴びる


F−70年  獄中における度重なる暴力事件、怪奇行動、言語障害の兆候発現により、第9エリアからゼロエリア特別区の隔離収容所へ移送

脱獄、失踪
        

F−74年  ゼロエリア特別区内の某所で108回に渡る美容整形と身体矯正を行い、まったくの別人となる

実名「セニョール次郎」を捨て、ゲルマニウム史上の英雄「黒田五右衛門」の名を語る
               

F−75年  ゼロエリア特別区内で新興宗教「大ゲルマニウムしあわせ教」を発足。信者数が数ヶ月で約2万人にふくれあがる


F−77年  信者から集めた布施をもとに有限会社「ハッピーコーポレーション」設立。各部門(主に医薬品)で業績を伸ばし、第7エリアへ


F−78年  兵器開発に着手。ペットボトルロケットの化学兵器化に成功。軍需部門でゲルマニウム内80%のシェアを誇る

第2エリアへの移住を許可される

        
F−80年  ゲルマニウム最高議会員に立候補、当選。第1エリア進出


以降の経歴についてはNo.24の報告書で述べる。
ゲルマニウム開放同盟 第5エリア支部 







第四話 「taxi
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この場所になにかが起ころうとしている。僕たちには時間がない。
ピコル君とフィッシュボーイはサイバータクシーにアクセスし、目的地を告げた。
「黒田五右衛門のところへ」
運転手は一瞬うつむいたあと、大胸筋をピクピクさせた。そしてアクセルとブレーキを同時に、思いきり踏んだ。
サイバータクシーは箱型からネズミ型に変形し、ものすごい速さで、そしてものすごい異臭を放ちながら、空へと浮上した。
デビッドマンズ・ハイウェイを軽快に飛ばすサイバータクシー。風景が窓に溶けていく。

この先、脱臼街

見たこともないような大きなティッシュに、豚の鼻血でそう書かれていた。
セーラー服を着た老婆がそのすぐそばで、手を振っていた。地球上ではありえないぐらいの笑顔だった。
「脱臼街?ちょっと運転手さん、方向がちがう・・・。」
フィッシュボーイが言うのとほぼ同時に、タクシーが止まった。
「・・・猫を殺して五千円。チクタクポーズで六千年。七つ道具を八つに増やす・・・」
運転手が異様な歌を歌いだした。呪文のようだ。するとアレヨアレヨと言う間にピコル君とフィッシュボーイのアゴがしゃくれ出した。
「うあ、うあああ。」
フィッシュボーイは必死になって股間をガードした。(原始的な方法だ。)
しかしそんなことは無駄なことだと思ったピコル君は、運転手に向かって送りバントのサインを出した。

スクイズだ・・・田村・・・お前のことをボロ雑巾のように捨てた女にスクイズを決めてやれ・・・!
そうだ、田村、スクイズで女の体をスクイズするんだ!いや、むしろスクイズだ・・・!

運転手は白目をむいて、地面を掘り始めた。
「甲子園の土を持って帰らなきゃ・・・。持ってかえって、病気のおばあちゃんに食べさせてあげなきゃ・・・!」
その隙にフィッシュボーイが、運転手の頭からハチミツを浴びせ、大量のカブト虫を放った。
ぎゃああああああ!!!
カブト虫が運転手の全身に吸い付き、ゆっくりと死に至らしめる。
「ピ・・・ピコル!お、お前が黒田様にかなうと思うなよ・・・ぐ・・・。特別区から出ることさえできんさ。」
ピコル君とフィッシュボーイは、運転手をバックに、デジカメで記念撮影をしている。
「ピコル。なぜ、お前は黒田様に歯向かう。お前は何がしたいんだ!」
ピコル君は振り向き、運転手の頭にボウリングの球を落として、言った。
SEX IN THE SKY.






第五話「germanium island
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教育用小冊子「この島のれきし」より抜粋

かつてこの国には
ゴミとガレキから作られたとても大きな島がありました
国じゅうのいらないものをそこに集めたために、山よりも高く高くなった島でした
その島のまわりはとてもいやなニオイで満ちていました
そこに近づくのは、虫と、カラスと、ゴミを捨てに来る人だけ
だれも、その島のことを見ようとはしなかったのでその島は、目には見えない島と呼ばれていました

しかしある時
空に大きな穴が開いて火の雨が降ると
南極の氷がとけて
わたしたちの街は海に沈みました
たくさんの命が海に沈みました
この国のすべてのものが海に沈んだのです

しかし沈まなかったものがひとつありました
この国で最も高い場所
ゴミでできた島、目には見えない島でした
生き残った人々はその島に住み
ゴミを頼りに、ふたたび生きていくことにしたのです
捨てられたものから、全てをふたたび生み出そうとしたのです

誰かがその島をこう名付けました
うすぎたない、はかない、しかしそれでも輝こうとする
灰白色のもろい結晶
ゲルマニウム・アイランドと








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    ブログで書いていた小説はピコル君じゃないです。
    そしてそれらは単発の超SSです。(繋がっていると思っている人もいる。確かに一部繋がっているかもだけど、私は全部は繋がっていないと思っています)

    ブログ「WORLD IS MINE」にたまに書いていた小説ら↓
    http://ifs.nog.cc/picoler.hp.infoseek.co.jp/shihen/world_is_mine.htm

    ちなみにこの頃慎吾のブログ名は確か「しんごりら日記」だったかなぁ。

    [ not*ebu*mei ]

    2016/6/10(金) 午後 10:16

    返信する
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    ありがとうございます。さっそく訂正します。
    新参のため、いろいろ間違いがあると思いますが、チェックしてもらえると嬉しいです。

    [ もきゅ ]

    2016/6/11(土) 午前 9:04

    返信する

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