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第九話 「肉食プリンセス」
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二人は新しい仲間にインタビューを決行した。

はじめまして。蝶子さん。
ーーーはじめまして。あら、あなたが有名なキチガイ、ピコル君ね。
ええ、そうです。まあ、キチガイというよりは、キッチュ=ガイですが。いろいろお伺いしてよろしいですか?
ーーーいいわよ。
まず、お聞きしたいのですが、あなたが人間を始めたきっかけは?
ーーーそうねえ。よく聞かれるんだけど、あれはちょうど献血ラッシュの時だったかなあ。
ええ。
ーーー自宅で粉末ごはんを食べてた時に・・・あ、いや、それは関係ないわ。
ははは(笑)
ーーー両親がセックス中毒だったことが直接的な原因ね。
なるほど。では、最も影響を受けた映画は?
ーーーミヒャエル・ロイド監督の「飛び出せ!弾丸ジジイ!」かなあ。あれは泣いたな。
ああ、あれはすごいですよねえ。現代社会に対する風刺が効いていて。
ーーーそれもあるけど、私はヒロインの最後の台詞に共感したなあ。「顔面セーフ!」っていう。
いいですよねえ。この映画がきっかけで、経済アナリストを目指した人って多いらしいですよ。
ーーーすごい影響力よね。
ヒロインは恋に積極的な女性でしたけど、蝶子さんはそのあたりどうなんですか?
ーーー来た来た(笑)うーん。どうかなあ。私はどちらかっていうと、恋愛に関しては白樺派。
本当ですか?意外だなあ。
ーーー本当本当。親友のお父さんに殺されかけたこともある。理由もなく(笑)
そんなあ。まるで「土器土器☆天国」の豚山豚子じゃないですか(笑)
ーーーそうなのよねえ・・・学生時代も、ヒンズースクワットとパスワード解析に夢中で、恋愛どころじゃなかったし。
そうなんですかあ。でも、今の蝶子さんなら世の男性がほっとかないんじゃないですか?
ーーーなにそれ(笑)
好きな男性のタイプとかあります?
ーーー難しいなあ。それ。よく聞かれるけど。
じゃあ、血まみれの男と、借金まみれの男ならどっち?
ーーーうーん。状況にもよるけど、血まみれの男かな。どことなく親父譲りなかんじもするし。
へえ。けっこうブラッドな感じに弱いんですか?
ーーーそうかも。でも、ティーエイチの発音がしっかりしてない男はイヤ!「through」を「スルー」とか発音されると悪寒がする。
けっこう古風なところありますねえ。
ーーーそういうところで、男として芯があるかどうかわかっちゃうと思う。
なるほど、ところで、好きな言葉とか、座右の銘みたいなものはありますか?
ーーー座右の銘ね・・・。「水兵、リーベ、僕の船」かな。
ほほう。それはどういう意味の言葉なんですか?
ーーー我々は将来的に間違いなくモルモットにされるっていう意味。私の祖父が病院のベッドでよく言ってた。
僕たちは仮装大賞に出るために生まれてきたわけではありませんからね。
ーーーまったく、そのとおりよ。
これからの活動のヴィジョンのようなものはありますか?
ーーーうーん、基本的には、キツネ目の男を探し続けたいっていうのがあるんだけど・・・
けど?
ーーー円形脱毛症にもチャレンジしてみたいかな。
エリートコースですねえ。
ーーーとりあえずそのために今、裏工作をして満州の利権を狙ってるの。
では、最後に告知と、ファンの方へのメッセージを。
ーーー来月から公開される舞台、「恋に恋するコインブラ 〜ジーコ、その性癖と仏滅マジック〜」に、知人の他人が出演します!見に来てくださいね!
蝶子さん、ありがとうございました。







第十話 「blind brothers 2
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「うわ・・・なんだこのニオイ。」
赤く濁った川がゆっくりと流れている。ハナオは堪えかねて手で鼻をおさえた。
「死体のニオイだよ。文字通り、ここが正常と異常のレッド・ラインってわけだ。」
ミミオはその不気味な流れに耳を済ませた。
この大量の死体は、川上の処理場から流れてきているという。
ゼロエリアで、さらに点数を落とした人間たちのムクロだ。
公にはされていないが、精神異常者・犯罪者・身体障害者など
社会的なあらゆる不良品がそこで処理されているのだ。
パーフェクトクリーンをうたう独裁政治の、全ての矛盾の辻褄あわせを、
ゼロエリアとこのラー油川が背負わされていた。

「それに、有害物質のニオイも混じってるよ。ゲルニカタウンを通らずに、
このラー油川を泳いで渡るのはまず無理だね。」
「ああ、ピコルは必ずゲルニカタウンを通る。そこで待ち伏せるぞ。」
ジャリジャリと音を立てて、川沿いを歩く兄弟。
この仕事が、おそらく容易には終わらないという予感を、
二人は感じていたが口には出せなかった。
ハナオは、委員会から送られてきた点字資料をもう一度読んだ。

・・・・・排除指令(点字資料)・

標的 : ピコル・ド・オードトワレ
居住地 : ゼロエリア特別区 (99号指定重症患者隔離地域)


ミミオ・ハナオの御兄弟へ。どーもどーも。
あなたたちの評判は聞いてますよー。すごいらしいっすねえ。
目、見えないのにどうしてターゲットを確実に殺せるの?勘?勘なの?

今回が初の委員会指令ですよ。上記の人物を、とりあえず殺して、
第一エリアの委員会窓口まで届けてね。
成功の暁には、なんと10000点あげちゃう!
お望みのエリアに住むも良し、洒落たインテリアを買い揃えるもよし、
好き放題に焼肉を食うも良し、なんでもあり!
とりあえず、他の刺客も狙ってるターゲットだから、
まあ、早い者勝ちだから、そこのところはお願いね。
ピコル追跡のための「ニオイ」は、同封してあるカプセルで記憶してね。
(けっこう入手大変でした)
ただ、ちょっとここでは言えないんだけど、いろいろ事情があって手ごわいよ。ピコルは。

がんばってねー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「兄ちゃん。ピコルって、どんなやつなのかな。
ただのキチガイにしては、委員会がこだわる理由がわからない。」
「さあな。ただ、ゼロエリアではちょっとしたカリスマらしいぜ。
不思議な力を使うとか、使わないとか。」
「不思議な力?超能力、みたいな?」
「ああ。現に、今まで委員会が送り込んだ刺客どもは、誰一人帰ってきちゃいねえ。
全員、気が触れて消息不明。だ。」

不思議な力。と聞いた時に、ハナオの脳裏に昔読んだ新聞記事が浮かんだ。

「それって・・・まるで・・・。」
「そうだよ。俺は、ピコルはもともと機械児だったんじゃねえかと思ってる。」






第十一話 「君もおいでよゲルニカ・タウン」
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真っ赤な川に浮かぶ街。君もおいでよゲルニカタウン。
ここ、ゲルニカタウンには、愛以外の全てがある。
人間のクズがごったがえし、絶望的な活気に満ち溢れていた。
ピコル君一行は一息入れるために、市場をぶらりぶらりとぶらついた。
商売人たちの威勢のいい声が飛び交っている。

「安いよ安いよぉぉ!イカの塩辛で作った金剛力士像安いよ!御利益あるよ!」
「本物!プラダのネジ!」               
「ウサギ殴り、一発500円!!」             
「お兄さんお兄さん!一日5分の努力で、みるみるうちに二重まぶたになれる!
計算ドリルあるよ!」
「寄っといで寄っといで!いい娘いるよ!瀕死だけど!」
「猫舌ありまーす!先着20名様に既得権プレゼント!」
「源氏物語の新刊出たよ!」           
「ツチノコいるよ!2万匹くらい!」
「カレーライスの生写真あるよ!モザイクかかってないよ!ルーが丸見えだよ!」

キョロキョロしていた三人の前に、名医がふらりと現れた。
「診察一回50円だよ。どう?」
フィッシュボーイは、少し熱っぽかったので、50円を渡した。
お、お願いします・・・。
すると医者は聴診器を自分の鼻の穴にねじ込んだ。

「うぅ・・・む。」
「どうでしょうか、先生。僕の体、どっか悪いとこありますか?」
「あるよ。顔と頭が相当悪い。あと、人生観が甘い。
しかもなんか・・・人間として許せない。」
「本当ですか?」
「本当。っていうか、なんだろう。
存在感がないし、女にも一生モテないね。その服も似合わないし臭い。」
「どうしたらいいんでしょうか。」
「寝ろ。とりあえず。あと、一日三回、レバーを食べて号泣しなさい。
その後で、振り向きざまにサティスファクション!」
「サティスファクションッッ!」

いいぞ、その意気だ。と言って医者は去った。
するとどこからか歌が聞こえてきた。

ドンツクドンツクドゥンドゥンドゥン・・・・♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

ゲルニカタウンのテーマ 
〜う、う、あ、全身が心臓になったみたいに脈打ってるんですよ、
ほら、コメカミのところとか特に〜」

あれ?その、鼻から出てる赤いのって・・・血?
オシャレだね oh yeah !!
あ・り・え・NAI
あ・り・え・NAI
君の気持ちが、わ・か・ら・NAI
メールの返信、ZEN!ZEN!こ・NAI
あの時の笑顔は何だったの?
あ、あれカネめあて? いやちがうカラダがめあてだったんだ
そうなんだおれしってるんだ おれのナイゾウをバイバイしようとしてるんだぜったい
そうだよきっといまもマドのそとからおれのことみてるんだろ
やめてくれよ、あっ、だれだ!だれだそこにいるのは!
LaLaLa・・・
バイ・バイ・買・売・マイガール
YOU・体・離脱さマイガール

ドンツクドンツクドゥンドゥンドゥン・・・・♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪




第十二話 「K-report #41
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 No.41 異常天才、第五十七代黒田五右衛門に関する57の報告書

この文書は、現在、我がゲルマニウム・アイランドを事実上独裁支配している、
第五十七代黒田五右衛門に関する報告書である。
No.41では、ゼロエリア特別区内で調査中に発見された黒田五右衛門の
日記らしき文書の断片を公開する。


*       *       *       *       *      *

F−72年 P月48日

眼球がくるくる自転を始めたら、それが軟体動物のチギレトブ合図だ。
紫色の花が腕の端からどんどん生えてくる。生えてきたら危険だ。止まらない。
部屋の壁が全部ドロリと溶け出して、いくつもあったドアが見えない。
怖い。体に穴が開いている。
スピードが上がりすぎてまともに前が見れないカーブを曲がりきれない
曲がりきれないだめだぼくはもうだめだ。

誰の名前を呼べばいい。
僕の辞書には大切な言葉がない。

僕はこのままではいずれ壊れてしまうだろう。
だから決めたのだ。僕は僕を分断する。
肥大しすぎた脳味噌を、二つに分けて、片方をどこかの誰かに預けよう。

いつか僕と僕とが出会う時、その時に、僕Aが僕Bを
愛することができたなら、許すことができたなら。
そうさその時、僕は初めて僕になれるんだ。

*       *       *       *       *      *


以降の調査結果についてはNo.42の報告書で述べる。


ゲルマニウム開放同盟 第5エリア支部






第十三話 「溺愛フィッシュ」
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右目から後頭部にかけて強い衝撃が走った。
視界の右端から乳白色のシミが広がるようにぼやけて、
フィッシュボーイは膝から床に倒れた。
首をつたう生暖かいものは多分、血だな。そんなことを考えながら。
「ピコルはまだ、ゲルニーク・ホテルにいるね。」
公衆便所の窓を開けて、ハナオは風の中で鼻をきかせた。
「将を射んとすれば、だ。いや、海老で鯛を、かもな。」
ミミオのシャツにはべっとりと返り血がついていた。
街の喧騒が遠く聞こえる汚れた公衆便所。
フィッシュボーイがひとりでそこへ入った時、すでにミミオとハナオは中にいた。
銃の柄でまず鼻の頭をやられ、ふらついたところにもう一人の蹴りが入った。
ガムテープで両手を縛られ、殴られるたびに出るうめき声を録音された。
ピコルを直接狙うのはリスクが高い、まずは仲間を人質に。ミミオはそう考えたのだ。
「男の苦しむ声ってのはどうにもあれだな。勃起しねえなあ、オイ。」
ミミオはゲルニーク・ホテル606号室、と書いた封筒にテープを入れて、
それをハナオに渡した。

口の中で折れた歯を転がしながら、フィッシュボーイの意識は遠のいていく。




いてえな・・・              

      死ぬなこれは

   ピコルさんに迷惑かけるなあ・・・

畜生、なんだよ
                      いてえなホントに

                      

第十四話 
「夢見☆GOKOCHI」
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みなさんごきげんよう。組立式人間のラブリーアンドガブリエル蝶子でございます。
年収三千万以上の男とファッションと海外旅行と
水虫の治療法にしか興味のないワタクシではございますが、今日は語らざるをえません。
ピコル君の深い悲しみと絶望を。
そう、私とピコル君がゲルニーク・ホテルの部屋で、実家に執拗なイタ電をしていたときのことでございます。
ベルを鳴らしてホテルのボーイが届け物をしてきたのです。妙な封筒でした。
私がそれをおそるおそる開けてみると、中から一本のカセットテープが出てまいりました。え?それ女子限定?男子禁制?とニヤニヤしながらピコル君はそれを私から奪い取り、古いウォークマンに入れてテープを回し始めました。
ヘッド・バンキングを始めるピコル君。私も負けじとポジティブ・シンキングを始めました。

ポジティブ・シンキング・・・。ポジティブシンキング・・・。明確に思い描くのよ・・・。

退屈な毎日→この先老いていく自分→きっと若い頃のように男にチヤホヤされない→人間が信じられない→引きこもる→紫外線に当たらないので美白効果→より美しくなる→いい男に言い寄られる→唾を吐きかけて蹴りを入れる→優越感→自分に自信が出る→より美しくなる→政治家の愛人になる→金と人脈を奪い取り捨てる→それを元手に選挙に出馬→美しすぎて当選→あまりにも美しすぎて首相に→究極の美に国民がひれ伏す→美男子だけを集めて朝から晩まで大はしゃぎ→チャクラが体中に満ちてさらに美しく→人間の領域を超える→不老不死→永遠の美→神となる→宇宙空間の中に大いなる愛を感じる       

私が具体的な構想を練っている間に、テープを聞いていたピコル君の顔は青ざめていました。
心配になり、私はピコル君のヘッドホンを外して声をかけたのです。
「ごはんにする?お風呂にする?それともシベリアで強制労働?」
ピコル君は私の問いかけには応じず、ウォークマンを床に叩き付けてこう言い放ちました。

あかん、おばあちゃんの知恵袋の緒が切れたわこんなコケにされたのは初めてや
彼はそのままエプロンをつけてキッチンに向かうと、フライパンに油をひいて一心不乱にウォークマンを炒めはじめました。
そこに豆板醤をかけて、いい匂いがしてきたところで一度そのことをスッパリと忘れて夏休みの計画を秒刻みで立てました。
フライパンの火が天井に達した頃に、改めてそこに消火器をぶちまけて、醤油を目薬のように目にさし「目ぇさめるで」とつぶやきました。
最後の仕上げとして部屋中の壁に「死ね」と書き、冷蔵庫を蹴り倒して転げ出てきたハムを指差して私に言いました。

「どや、うまそうやろ。俺が本気だしたら料理くらいなんぼでも作れんねん。食ってみ。」

ピコル君があまりにも爽やかにそう言うので、私は「ポオ」と一言お礼を言った後、警察に連絡しました。




第十五話 「廊下を走らないで下さい。そんな病み上がりの体で。廊下を走らないで下さい。こんな僕なんかのために。」
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「全く意味はわからない。けれどお前の気持ちはよくわかる。
ほら、その証拠に、ほら、ここのここらへん見てよ。
破裂しそうでしょ?なんかもう、怖すぎて笑っちゃうでしょ。」

誰の言葉だったか、うまく思い出せない。
ただ、それが自分にとって重要な言葉だったことだけは思い出せる。
警察との猥談に華を咲かせていた蝶子をホテルに残し、
ピコル君は脳味噌に引っ張られるように走った。
走り出すや否や、ピコル君はランナーズ・ハイに突入した。
景色が色を失い、思考がドロリと溶け出した。
体内時計の時針がポキリと折れ、秒針が赤黒く肥大化していく。

・・・があ、があ、があ・・・

シェフを。シェフを呼んでくれるかい?
かしこまりました。長雨のせいで、右側が多少、裏返っているかもしれませんが、
失笑していただけますか?
いただけるも何も、それはこっちの十八番だよ。お礼が言いたくてね。
さあ、呼んでおくれ。
はい。それではお呼びいたしましょう。当店のナンバーワンシェフ。
猫舌・毒舌・二枚舌でおなじみの「黒佐藤みりん」さんです。はりきってどーぞ!
どーもー。黒佐藤みりんでえす。何の御用でしょうかお客様?
ああ、あなたが、この料理・・・いや、この・・・料理?うん。なんだろう、この、
あれだ・・・ええと・・・この・・・この・・・ええと、これを作ったシェフですか?
いかにも。いかにも私が作ったものでございます。どうでしたでしょうか?
物理的にありえる範囲内でしたでしょうか?
いやあ、もうとにかく最高だよ。最高。
まあ、最初はビックリしたよ?なんていうか、ちょっと・・・うん。カチンと来たけど。
ええ、ええ。そうでしょうそうでしょう。
こちらとしても、計算外なことになる、ということは予想していましたので。
そうなんですか。でも最終的にはあちら側とも相談して、
シャレにならない感じでうまくまとまったと思うし。うん。
個人的には、なくもない印象だった。
あはは。そう言って頂けると、冗談半分で撲殺された孫も、浮かばれると思います。
まあ、そのあと沈みに沈みますが。
それはそうと、これは何を材料にして作ってらっしゃるんですか?
材料?ああ・・・これはまずですね、無から有を作りますね。
是が非でも折り曲げたい感じで。そのあと14乗して7を引き、そこにゴマ油を加えます。
ほお・・・、ええと、中華ですかね。
中華?まさか。中華ではないですよ。むしろパンクロックやメロコアに近い。
でもそこに否定的なニュアンスが含まれているので、もはや中華です。
だから中華ではありません。
なるほど。おっしゃっていることがよくわかりません。
でも、とにかく完璧なアチチュードであると言わざるを得ませんね。
当然です。そしてですね。そこに隠し味として性的暴行を加えます。
もうこれでもかっていうほど合法な感じで。ええ。
ああ、そのことによって隠し味が隠れる側から隠す側に回るわけですね。
ええ、そのとおりです。全くの正解です。大正解です。
では、最終問題はポイントが倍なので、みなさんよろしくおねがいします。
倍・・・ですか。なんだか急にしんみりしてしまいましたね。
そうですね・・・。あ、どうですか?これから一緒に18階のダーツ・バーに行くというのは。もう、予約してあるんですよ。
えっ?いや、ちょっと待ってくださいよ。
そんなみっともないこと・・・今日は僕の親戚も見に来ているんですよ?
それをそんなふうに・・・。
そんなふうって・・・ふふ。具体的にはどんなふうになっているんだい?
いや・・・その・・・。
ねえ。ほら、ねえ。今、どこをどうされているんだい?ねえ。
そんな・・・。
ねえ。ほら、ねえ。この気持ちを、そう、今のこの気持ちを、誰に伝えたいんだい?
じゃあ・・・。この店の・・・ナンバーワンシェフに。
・・・。
・・・伝えたいです。
お、お、お客様・・・!!

・・・があ、があ、があ・・・

気がつくとピコル君は走りながら涙を流していた。
しかしそれが頬を伝うよりも早く蒸発してしまったために、ピコル君は自分が泣いていることに気づかなかった。




第十六話 「獏の胃袋の中で」
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ハロー、ミミオ。頭の中がジャリジャリするだろう?
でもそれでいいんだ。気にしなくていいんだ。普通なんだからそれが。
ふふふ。まあるい箱の中へようこそ。
僕はそう、青くて青くて青い鳥、ピコル・ド・オードトワレ。
初めに言っておくけど、君を殺したりはしないよ。
もっと酷い目にあわせてあげる。幸せのどん底にたたきこんであげる。
ほんとうの世界に連れてってあげる。
それじゃあ踊ろうか。君と僕と、金色の動物と。

ピコル君の声が聞こえると同時に、ミミオの周りの世界は
ミミオを中心にグルグルと回転し始めた。
五感の全てに亀裂が入り、その亀裂が青くにじんでいく。
「ピコル・・・!」
遠くでバイオリンの弦が切れる音が聞こえた。
その瞬間、ミミオは大きな金色の獏に飲み込まれた。

無音。暗闇。しかし目が見えないはずのミミオは目が見えるようになっていた
(少なくともそう感じた)。
白い立て看板があった。
「ひとつでは足りないけれど、ふたつだと多すぎるものって、なーんだ?」
と書いてあった。
ミミオが首をかしげると、その首の上に金色の蛙が飛び乗った。
冷たくてヌルリとした感触だったが、ミミオはびっくりしなかった。
自分がびっくりしないことに少しだけびっくりした。
「ミミオくん。この世には、すっぱいブドウしかないんだよ。」
蛙はそういうと消えた。ミミオが上を向くと、
手の届かない場所に美味しそうなブドウがたくさん実っていた。
ふと、目線を降ろすと、手の届きそうな場所にもブドウが実っていた。
しかしそれは腐っていた。
ミミオはどうしても美味しそうなブドウの方を食べたくなり、高くジャンプをした。
しかし届かないどころか、着地するときに足を痛めてしまった。
悲しくなって涙が出てきた。
「ははははは、醜いな、ミミオくん。なんで君には翼がないのかな。
なんか、すごく不恰好だ。ははは。」
金色の鷹が上空で笑っている。笑いながら美味しそうなブドウを食べている。
ミミオは、その鷹が美味しそうなブドウを全て食べきってしまうのではないかと
心配でしょうがなかった。そしてまた涙がこぼれた。
するとその涙が地面で金色のミミズになった。ミミズは言った。
「僕を神様にしてください。」
ミミズは分裂を繰り返し、異常な速さで増殖していく。
僕を神様にしてください、僕を神様にしてください、僕を神様にしてください・・・
ミミオの心が有刺鉄線でぐるぐる巻きにされていく。
気がつくとミミオは足で全てのミミズを踏み潰していた。ミミオの息は乱れている。
するとミミオの目の前にヒラヒラと金色の蝶がやってきた。

「あなたに薬をあげるわ。薬は二つ。でも選べるのはどちらか一つだけよ。
ひとつは、高く高くジャンプできるようになる薬。
でも、高くジャンプしてもブドウは取れないかもしれないし、
着地した時には十中八九、死ぬわ。
もうひとつは、腐ったブドウを美味しく感じられるようになる薬。
どちらかといえば後者がオススメね。みんなそっちを選ぶわ。
でもね、後者の薬は、毎日飲み続けなきゃだめよ。
そうでないと、腐ったブドウの毒で一生苦しむことになるから。」

蝶はミミオに、さあどっち?と聞いた。
ミミオは悔しかった。自分に翼はないのかと、何度も背中を確認した。

「やめなさい。あなたには翼はないの。いい?
私は優しいから本当のことを言うわ。あなたには、翼は、ないの。」

ミミオは鷹のことを羨ましく思った。嫉妬し、ねたみ、憎く思った。蝶は言った。

「あなたは鷹じゃないの。それはもうどうしようもないことなの。
ミミズがあなたではないことと、同じように。」

ミミオの足元で、まだ数匹のミミズが生き残っていた。ミミオはそれをまた踏み潰した。

「もう一度言うわ。あなたには翼がない。さあ、どっちの薬を選ぶ?
選ばないのなら、私はもう消えるわよ。」

ミミオは天を仰いだ。どちらを飲めばいいんだろう。どちらの薬を飲めばいいんだろう・・・。


第十七話 「空中のマリ子」

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第二エリアの中空に浮かぶ大きな鉄の塊
それが「ブエノスアイレス委員会」本部の空中要塞である。
D世紀後期からE世紀初頭にかけて活躍した、かの有名な建築家コンビ、
「マンチェス太郎・ユナイ哲郎」によってデザインされたその要塞には
現代建築の様式美の粋が集められている。
だまし絵などによく使われる無限回廊や、
「新約!爆笑聖書」などにも出てくるクラインの壷が随所にあしらわれており、
ガラパゴス風の庭園には3−5−2の配置で植物人間が栽培されている。
また、老婆のミイラをそのままドアノブとして使用した扉、
コンソメのブロックを積み上げて作った壁、
大量の猿が放たれたエントランスなども有名であり、
よくドラマのロケなどにも使用される。
「意図的に排除された機能性」「完璧に無視された風水」「あきらかに度を過ぎたノリ」。
全ては計算されつくした破綻そのものであり、
後の建築は全てこの空中要塞の模倣に過ぎないとも言える。
言わばそれは空に浮かぶ一つの怪奇現象であった。
完成披露の際、そのあまりにメタ・メランコリックな情景を目の当たりにした貴族が、
したたる鼻血をぺロリと舐めてこう言ったそうだ。
「時代は今、僕の大気圏に突入した。」

空中要塞の中心部。委員会会長室からは今日も耳をつんざくほどの金切り声が聞こえる。会長の声だ。
「もっと!もっとよ!もっと強く強く踏みつけて頂戴!
私のいいところを3つ言いながらッ!」
従者、イシナシ君は会長の頬肉を血が出るほど踏みつけながら、
「いいところ」を3つ答えた。
「えーと、会長はIQが3770あります!そして、えーと、長者番付の6位です!
そ、そしてなによりも・・・じゅ、純粋な心の持ち主です!」

嘘ではなかった。たしかに会長はIQ3770という人間離れした知能指数を持っていて、
長者番付に常にランクインする資産を持っていて、
ある意味とても純粋な心の持ち主であった。
しかし、醜かった。それはそれは醜かった。
カエルとブタとゴリラとフグとミミズを足して3で割った余り、のような醜さだった。
何のコネも持たない、一介の清掃員に過ぎなかったイシナシ君が
会長付きの従者にまでなれたのは、ただ単にその容姿を見て嘔吐しなかったからである。逆に言えば全ての委員会勤務者が会長の姿を見て嘔吐し、
側近になることを辞退したからであった。
会長の名は「クリスティーナ・レイン・スメルズ・ライカ・ローズ・マリ子」。
視覚からは判別し難いが、女であった。
部屋中に敷き詰められたコンピュータを駆使して
ゲルマニウム島全土の治安維持を行う、いわばマザーコンピュータである。
彼女はその生活時間のほとんどを仕事に専念し、
その合間を見てイシナシ君とのプレイに興じるのであった。
そのプレイとは・・・

1.イシナシ君が会長を張り倒し、罵倒しながら踏みつける(特に顔を中心に素足で)
2.イシナシ君が会長の「いいところ」を3つ誉める
3.今度は逆に会長がイシナシ君の体を蹴り上げ、
こころゆくまでしばきあげる(体全体を木製バットで)
4.そして会長がイシナシ君の「いいところ」を3つ誉める
5.二人で紅茶を飲みながら雑談

という流れで行われる。

「イシナシ!あんたのいいところはね、意思がないところ!
体が異常に丈夫なところ!そして、人の心が読めるところよ!」

イシナシ君は蹴り上げられて宙を舞った。
イシナシ君の本名は「タケダ3号」である。
まったく意思がない(ように見えるほど従順)であることから
勝手に会長がイシナシと呼んでいるだけだ。
イシナシ君はその意思もあやふやだが、「痛み」もあやふやであった。
いわゆる無痛症である。
この病気は通常の人が侵された場合、大変危険な病気である。
生命の危機を知らせる信号である痛みがないということは、
体の損傷や衰弱に気づかないということだからだ。
しかしイシナシ君の場合は違った。
イシナシ君の体は決して傷つきはしなかったのだ。
(正確には、損傷に治癒が追いついている状態)
会長はイシナシ君のこの体の異常性を発見した時、狂喜乱舞した。
「最高の人形が手に入った」と。


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    ピコル君の最終話(未完)は19話ですよ!
    あと、6話あります。

    [ not*ebu*mei ]

    2016/6/10(金) 午後 10:18

    返信する
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    本当ですか!ありがとうございます。発掘します!

    [ もきゅ ]

    2016/6/11(土) 午前 9:02

    返信する

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