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情けない試合だった。
そもそも、後半10分過ぎても北朝鮮の単調なロングボール攻撃を止められなかった時点で、あるいは開始3分で右サイドバックの遠藤航のアーリークロスを、トップ下の武藤雄樹が北朝鮮守備陣の裏に抜け出して先制点を決めたとき、調子に乗った実況アナウンサーが「縦に速い!コレが新しい日本のサッカーだ!」と叫んだときから、嫌な予感はしてたのだ。
縦に速いサッカー?それを言うなら、北朝鮮の方が余程"縦に速いサッカー"してたぞ。確かに面白味も何もない攻撃だけど、ボールを持ったら、すぐに前へ!ほめる対象にするなら、彼らの方が相応しいんじゃないの?と嫌みも言いたくなる。
そして本当に"縦に速いサッカー"を会得しているのなら、逆にそれをやられたときの対策も知ってなきゃいけないんだけどね。
ああいう場面では、どうしても自陣内で選手が釘付けになるのは仕方がないこと。しかし、ヘディングでの空中での競り合いに負けても、地面に落ちたボールはイーブン、むしろテクニックに優る日本の方が有利だろう。
そこで奪ったボールを大事にキープすること。ひとりでできないなら、複数の選手がフォローしあって行う。ほんの数秒の我慢でいい、それだけの時間があれば北朝鮮はますます前のめりになる。
そこが攻守の逆転のチャンス。空いたスペースを虎視眈々と狙った選手が走り出せば、カウンターの完成である。
確かにシンドイよ。高温高湿、ピッチも荒れ気味のコンディションだもの。でも、マスコミが騒ぐ"縦に速いサッカー"をやり抜くには、攻守両面で受け入れなきゃいけない試練はあると思う。そもそも"縦に速いサッカー"なんて、世界的に見れば"当たり前のサッカー"なので、こういう言葉を使うこと自体止めて欲しいけどね。
ちなみに、それ以外の対策としては、ロングボールにはロングボールで!ということで、イングランドの下部あたりにいそうなクラブみたいに、バコーン!ドカーン!の、中盤の組み立てなど無視したゴール前のヘディング合戦に持ち込むという手もあるんだけど……豊田陽平あたり呼んで欲しいけどね。あるいは巻誠一郎?盛田剛平?
こういう、ボールを単調に放り込み、あとはキック&ラッシュでひたすら蹴って走るという戦法をとるチームには、意外なほど昔から日本は弱い。
それは日本人の体格の相対的な小ささの問題や、フィジカルよりもテクニックを重視してきた強化方針の伝統もあるのだろうけど、本質は"縦に速いサッカー"(使うのを止めようと書いたのに、また使ってしまった……)を理解できていないから、あるいはもっと乱暴に表現すると、ゴールを入れる、得点を奪うということを、相手ゴールの位置から逆算することができてないからだと思う。これは守備面に置き換えると、いかに自陣ゴールに入れさせないかということの計算ということになるのだけど。
これは戦術や戦略の問題ではない。選手個人の根本的な意識、それらが集合体となったチーム意識の問題である。
これは悲しいことにチームに染み付いた、あるいは国民性(あー、嫌な言葉だ!これこそ使いたくない言葉だ!)の体質的問題であり、ましてや、海外組がいないから、という問題ですらない。その証拠に、この試合では何度か決まっていたショートカウンターが徐々に減り、ついには攻撃面では相手ゴールに迫るほどに、守備面では自陣に迫られるほどにスピードが落ちるという悪循環にハマっていくのがはっきりわかった。海外組の選手だって、現時点で所属クラブで定位置を確保できてる選手はひとりもいないのは、そういう根本的な意識のスピードが劣っているからだろう。
これから対戦する韓国と中国は、伝統的にロングボールとキック&ラッシュを得意にするチームである。体格でもスピードやスタミナだけなら日本人選手を上回る選手も多いし、韓国人選手に至っては海外リーグのチームでレギュラーを獲得してる選手も多い。きっと、今回の試合を観ながら、ほくそえんでることだろう。
さらに、この三連戦は他のアジアの国も間違いなく凝視している。アジアのトップクラスの日本を裸にすべく。
これほどの試練の場はないね。もちろん、アジアの洗礼を浴び始めたばかりの監督にとっても。
少しきになるにのは、ハリルホジッチ監督が「Jリーグの日程が過密だから、強化の時間が取れない」と言い訳めいたことを言い始めたこと。
まったく正論ではあるのだが、こういうリーグと代表強化の時間の奪い合いというのは世界的に同じ問題であって、経験豊富な同監督もそういうことを充分理解した上での、サッカー協会への牽制だと思う。この辺、この世界を長年渡り歩いてきた狡猾さである。
しかし、この人、意固地なところも強いので、自分の意見が通らないとあっさりトンズラしてきた前科が何度もある。だから、あまりこういう兆候が増えてくると、危険信号だろう。
個人的には面白い監督だと思うので、協会は全面的にバックアップ、監督も少し我慢してね、としか言いようがないのだが。
我満すりゃ、ボールも自分の方に転がってくるのが、フットボールだと思うぞ、うん。
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