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やはり、ドーム球場でコンサートというのはやるものではないね。ドッカンボッコン音が響いて、とても聴けたもんじゃない。
おまけに席は一塁側の三階席。音の悪さはさらに倍増。ステージまでの距離が遠いのは覚悟してたけど、ステージから急角度の斜め向かいだから、肝心の主役が観れない時間帯もあって悔しくてたまらん!おまけに音が聴こえるたびに心も身体も弾んでくるのに、安全上の理由でスタンディングは禁止。欲求不満が溜まるやんか!
でも、ええのよ。
ポールは間違いなく、そこにいてくれたから。
ステージ両サイドのスクリーンには日本語字幕まで出し、さらに下手糞な大阪弁を駆使して(!)、おまけにステージ登場時には半纏風衣装を羽織り、アンコールでは日本と英国の国旗を振り回すサービスぶり!
でも、そんなことせんでも、じゅうぶん・にじゅうぶん・さんじゅうぶん……楽しめるコンサートでした。
やっぱり、この人はライブ、そしてできればバンドのなかの一員としてプレイした方がいいね。
今回は5人編成のロックバンドとしては、ごくありふれた布陣。リズムはタイトでギターはソリッド。「エイト・デイズ・ア・ウィーク」で始まった演奏はドーム球場の音響の悪さ、あるいは今日がツアー初日ということも手伝ってか、よく言えばアグレッシブ、悪く言えば荒っぽい感じもした。
「マッチボックス」「ロング・アンド・ワインディング・ロード」「あの娘におせっかい」……ロックンロールのスタンダードナンバーからビートルズ、ソロ活動時代の名曲をノリの良い曲からバラードまで織り交ぜて演奏する内容。聴き手の期待を裏切らない出来栄えではありましたが、まあ、これは予想通りの内容。
ところが、グッとバンドのテンションが上がったように思えたのは、ステージ中央にキーボードを据えて、ニューアルバムからのナンバーをやり始めた瞬間。
それまで破綻なく進んでいたパフォーマンスが、急にさらにアグレッシブに、そして粗さを抑えながらバンドとしてまとまっていくような迫力が生まれてきたのでした。
今回発売されたニューアルバム、ラジオで数曲聴いたときはいまいちピンとこなかったのだけど、今回の演奏を聴いて自分の耳の悪さを恥じました。さっそく買ってきます!
この辺は未だ現役ロック・ミュージシャンとしての存在感を感じましたね。
オレは懐メロ・ミュージシャンじゃないぞ!新曲も出してるんだぞ!という意地。いや、そんな力んだものではないかもしれないな。だって誰もが知っている名曲‐「イエスタデイ」「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」「ゲット・バック」「オール・マイ・ラヴィング」……などは当然演奏するわけだけど、それらが特別なクラシックな名曲に聴こえず、いい意味で今を生きるバンドの音、ポールの音としてさりげなく聴こえてくる気がしたのだ。
かつてのツアーで演奏していた「バースデー」や「フール・オン・ザ・ヒル」などのライブ受けしそうな曲はなし、その代わり“ビートルズ版元祖ヘヴィメタル(?!)”「ヘルター・スケルター」や一般には余り知られていない「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ。ミスター・カイト」なんて不思議な曲をやったりする。
これは恐らく、ポールのなかでキャリアが一巡も二巡も三巡もして、いい意味でどの曲を演奏しても同じように完熟した風味を感じるような、かつどの曲も取り立ての果実のようなフレッシュさを見出すことができるまでに充実したものになっていることの証ではないかという気がする。
だから、そういう彼の今の存在感を多くの人に感じてもらうには、ビデオクリップのなかで加工されたソロ演奏ではなく、ライブのステージ上でアグレッシブに勢いよく動き回るバンドでないといけないのだと思う。
去年のロンドン・オリンピック閉会式で、ポールが「ヘイ・ジュード」を歌った場面を思い出した。
あのとき、元々ポールは口パクでの出演を断固拒否して生演奏にこだわっていたのだが、当日は機材のトラブルか何かで、録音された歌の部分と生歌の部分のつなぎが上手くいかず、仕方がなく急遽リハーサルとは違う、全て生歌・生演奏でのパフォーマンスを強いられることになったにも関わらず、オリンピック閉会式を混乱なく務めたのだった。
そういえばビートルズ末期の御馴染の映像、アップルレーベルのビルの屋上でのライブ収録を提案したのも、ポールじゃなかったかな。
やはり、この人はステージで生演奏してナンボ、バンドを率いてナンボの人だと思う。
個人的に一番良かったのは、「サムシング」。ポールではない、ジョージ・ハリスンの作品。ウクレレで静かに軽妙に始まって、最後は大盛り上がり大会になるアレンジのトリビュートナンバー。
ジョージ・ハリスンの死に伴う追悼コンサートの演奏が元ネタみたいだけど、もはやジョージだろうがジョンだろうが、ビートルズの名曲だろうが、ソロワークのなかの地味な作品だろうが、同じように何のてらいもなく思いを込めて演奏できる境地にいるのだろう、彼は。
齢71歳にして、アンコールも含めて2時間40分のロック・ショウ!
しかも火曜日にも公演はあります!何という充実ぶり!
すっかり打ちのめされた月曜日の夜でした。
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