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「パソコンの調子がおかしいねん。何とかして」 行きつけの居酒屋のママからSOSらしき電話をもらう。 ちなみにママはパソコンのことなど、これっぽっちもわからないオバハン。 歳の差からオバハンなんて言葉を使ってしまったけど、付き合いが長いから、お互いまだ若い頃から知ってるから自分は若いつもりでいたのだけど、今となってはこっちも立派なオッサン、だんだんと壮年に近付いている現実に気付いたりする。 しかもパソコンにはそんなに詳しいわけでもないのだ、私は。それでも困ったときには、店と客の関係を超えてこうして頼ってくるようになって二十年にはなる。 「おかしいって、どんな感じなん?」 「スイッチを入れたら、色々なメッセージが出てくんねん。皆、そんなもん放っといたらええとか言うんやけど、何か不安で。どうしたらええんやろ」 やれやれと思いつつも、確信めいた嫌な予感がよぎる。 ひょっとしたら、ウィンドウズXPを使っているのではあるまいか。 「メッセージの内容はどんなことが書いてあんの?」 「わからへんねん。とりあえず見に来て」 このあたり、オバハンのオバハンたる部分だと思う。現状について深く考えることもしないで、不安だけで他人に頼ってしまうところ。もっとも、そういう不安を心配に思って何とか助けようと出かけていくのも、いつものことではあるのだが。 「ほんならな、明日の二時半くらいに行くから待ってて。あんまり遅くなると店の仕事に響くやろ」 「わかった。頼むわな」 というわけで、八幡市から京都市内まで、京阪電車と京都市バスを乗り継ぐこと所要時間1時間ちょっとをかけて行くことになりました。 引っ越し前なら歩いても10分少々で行ける距離だったのだけど、引っ越し後だとこれくらいに物理的な距離は離れてしまってる。特に今の春の季節の京都は花見見物の観光客であふれかえっているので、交通渋滞が凄まじく、バスはなかなか前に進んでくれない。というわけで、物理的な距離以上の疲れを感じて、異常が発生したパソコンを見に行ったのでありました。 そこにあったパソコンは、某富士通のノートパソコン。ボディの厚みや角ばったデザインに時代を感じる。そして案の定、起動させるとウィンドウズXPの画面が立ち上がった。 「ママ、これはもうあかんねん。このパソコンは今後メーカーからの保証がなくなるし、ウィルスとかにやられやすくなるんや」 「え、それってどういうことなん。インターネットでけへんの」 予想通り、ウィンドウズXPの問題については何も知らなかった。やれやれと思いつつも、単刀直入にわかりやすい提案をすることにする。 「インターネットもでけへんようになる。ウィルスとかに感染されるから、今すぐ新しいの買いに行こう」 「そうか、ほんなら行こうか。あんまり高いのは困るけどなあ」 新しいのを買わなければいけないという厳しい現実を目の当たりにしたママは、さすがにガッカリした様子だったが、切り替えが早いのもオバハンの良さでもある。店の開店時間が迫っているなか、さっさと化粧をして出かける用意をして、車に乗り込もうとしている。こういう切り替えの早さがあるからこそ、水物の商売を切り盛りするタフさが身に付いているのだろうと感心したり、羨ましかったりする。 とりあえず、当然私もお供することになりました。強引に連れて行かれることになりましたけど、まあ、予想通りの展開ではある。 「予算は5万円!」 店頭価格10万円以上になっているパソコンを指差して、それくらい値切れるかということを主張するなんて、中途半端にパソコン事情を知っている私には絶対できないことだが、こういう自己主張ができるところが、ママの凄いところでもある。 とりあえずサポート役として(しかし、誰に対するサポート役なんだろ。ママは堂々と自信たっぷりに自己主張してるからサポート役など不要ではないか。むしろ無茶な要求をされて困っている家電量販店店員に対するサポート役に結果的になっているのかもしれん)、インターネット中心に使うこと、故障したときに保証があることなど、必要最低限の希望を伝えることにする。 「値引きが可能かどうか、ちょっと聞いてきます」 店員が困った表情で売り場を離れている間、売り場に置いてある様々なパソコンを見て、手に触れて操作したりしていると、色々な発見がある。 今やデスクトップ型は少なくなって、あってもキーボードはワイヤレス型、テレビチューナー内蔵で、すっかり家電としての体裁に変わっていること。値段は10万円を少し超えるくらいだろうか。 ノートパソコンの店頭価格は思ったより下がっていないこと。消費税増税の影響もあって駆け込み需要で在庫が減って店頭に回ってこないと店員は言っていたけど、このあたり消費者は巧妙に騙されているのかもしれないと思わないでもない。 逆にタブレット型や小型ブック型の値段は、思ったより安いこと。私は今ウィンドウズ7型のモデルを使っているのだけど、買い換えようかなと思ったくらいだった。 デスクトップ型、ノートパソコン型、タブレット型、ブック型、色々なモデルを店頭に並んでいる数とその値札で観察していると、今の売れ筋と、そこでメーカーや量販店がいかに利益をあげようかというのが見えてくる気がする。 昔から日本での人気品種はノート型といわれてきたのだけど、消費税増税とウィンドウズXP終了というタイミングに合わせて、これらを求める消費者層にメーカーも量販店もターゲットを絞っているのだろう。 逆にブック型やタブレット型というのは、某NTTや某イーモバイルなどの通信サービスに加入することで更に割引をするという抱き合わせのような販売方法で、ハード機器を売った目先の利益ではなく、通信料金も含めた中長期的な利益を求めているような気がする。 ということは、これらの範疇から外れたデスクトップ型パソコンこそが、逆に今のお買い得商品だという気がしないでもない。液晶大画面はきれいだし、普通の家電としてテレビ放送やブルーレイディスクも見ることができるし、しかもデザインも洗練されている。ただ問題は店頭であまり熱心に薦められていないから見逃してしまうということと、日本の狭い家屋の部屋だと置く場所が限られてしまうということだが。 結局、ママが買ったのは今まで通りのノートパソコン。 インターネットさえ見れればいいということで、それに特化した台湾の某エイスースのものになりました。ちなみに中国の某レノボは初期不良が多いと店員さんは言ってました。こっちの方が安かったんだけどね。 さっそく持ち帰り、インターネットに接続。今まで通りの光回線(ちなみに店員さんは、私らが買うと決めたときに「実はこういうプランがあるんですよ」と、某NTTのフレッツ光の案内パンフレットを出してきたのだけど、「ゴメン、それは加入してんねん、もう」と答えたら、ものすごくガッカリしてましたな。可哀想だったけど、しょうがないやん、こればっかりは)で、インターネット環境はあっという間に完成してしまいました。 しかし、ウィンドウズ8というのは操作しにくい。慣れの問題もあるだろうけど、あんなにわかりにくくする必要があるのだろうか。マックを意識し過ぎて変な方向に行ってしまった気がしないでもない。何とかパソコン音痴のママでも今まで通り操作できるようにカスタマイズしたかったのだけど、そこまではできませんでした。それだけは残念。 ウィンドウズXPが終了することについてマイクロソフト社に不平不満を言う人も多いみたいだけど、そもそも栄枯盛衰が激しいIT業界で、ひとつの基本ソフトが10年以上普及し好評を得ていたということ自体、例外的な奇跡みたいなものなのかもしれないと思ったりする。 その10年以上の年月の間に、パソコン音痴の人もそれなりにパソコンを触れるようになり、次なるステップに進めるような環境作りができたのだから、それはそれで偉大な気がする。別にマイクロソフトの肩を持つ気は、これっぽっちもないんだけどさ。 ちなみに翌日、「パソコン、ちゃんと動いてる?」とママに電話をしたら、「うん、動いてるよ。今までと違うのは新しくなったということやから、もうそれに合わせんとしゃあないわな」という返事が返ってきた。 どうせインターネット見るくらいしか使い道はなんだろうけど、こうして新しいパソコン、新しい技術の変化についていく人たちが増えているのから、今回のサービス終了も意義があるのではなかろうか。 こうして引っ越した後も、店と客の関係を超えた関係が続くきっかけが維持できているのも、ウィンドウズXP様様なのかもしれないと思ったりする、個人的には。また困ったときには電車とバスを乗り継いで、はせ参じるとするか。 |

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