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法医学者の悩み事
地味な仕事してますが、よろしくおねがいします
前回に続いて経費の考察をしてみる。

解剖謝金10万円/1体は執刀医の個人所得になり、大学へ納付される経費が
解剖基本料6万円/1体
組織検査代上限8万円/1体

という価格で、どのような事態が起きるかシミュレーションしてみる。

設定は、医師は教授1名、その他の教員2名、検査技師1名といった法医学教室。この規模の教室が発展できるかどうかをシミュレートすることは、法医学や死因究明のシステムが発展できるか判断するのに適当といえるだろう。

もし、まともに鑑定をし、法医学の本分として社会に貢献しようとするのなら、解剖した事例については全例鑑定書や報告書を記載すべきことは当然であろう。

ほかの国のように、解剖の補助をする検査技師が解剖台1台につき1人以上おり、さらに写真係もいて、ボイスレコーダーに録音した解剖所見を書き起こしてくれる秘書さんもいるのであれば、医師一人で年間200体くらいが上限だろう。ただし、研究が一切できなくなることを覚悟しなければならない。とはいえ、今の日本式の方法では、効率化がされていないので、解剖を年間100体以上行うと、鑑定書作成を簡略化したり、省いたりしないといけないので、実際は全例で鑑定書をかけるのは年間100体が限度ともいえるが、今回はあえて収入を増やすために大目に設定してみる。

想定した教室では、検査技師1名を解剖補助とし、教員2名で組織検査やアルコール検査を実施するなどし、また写真はこれまでどおり、警察任せとするのでああれば、あとは、書き起こしをしてくれる秘書さんが2名いれば、200体の解剖や検査が実施できるかもしれない。

しかし、それでは、教員は全員、大学の本務たる研究や教育が全くできなくなる。この前提はおかしいのでやめよう。

研究のアクティビティーを最低限維持するためにも、医師以外の教員2名には教育研究に専念してもらう必要がある。それを前提に考える。

年200例の解剖補助は既にいる検査技師1名にやってもらうこととする。組織検査、アルコール検査、生化学検査、精液検査など各種検査を実施してもらうためには、臨床検査技師がさらに2名必要になるだろう。さらにはボイスレコーダーからの書き起こしや鑑定書の作成には秘書2名も必要だ。

検査技師や秘書に給与を手取りで月25万払う場合、ボーナスと諸費用で年間1名の雇用に500万円必要になる。4名を新たに雇用するとなれば年2000万かかる計算だ。解剖基本料6万×200体だけでは大赤字だが、組織検査を全例で実施すれば、MAXで2800万の収入になる。とはいえ、高度に腐敗した死体や白骨では組織検査をできないので、幾分減る可能性がある。人件費2000万円を除いた残金は800万円未満だ。

他に必要な経費を計算してみる。

解剖一体当たり、様々な消耗品が必要だ。
ディスポの手袋、ガウン、マスク、替刃などで解剖1体最低でも2000円ほどかかるだろう。
簡易薬物検査のキットが2500円程度、生化学検査のキットが1000円ほど。
ホルマリンなどの廃液や医療廃棄物の処理代は1体7000円程度
合計12500円が1体分の消耗品等だ。年間200体なら250万円かかる。

次に設備の維持費を考えてみる。
エタノール検査のためのガスクロの購入が600万円程度、血液生化学検査や一酸化炭素測定のための機械をそろえれば400万円程度かかるが、無理に使って10年もたせても、年間100万程度を積み立てておかねばならない。
冷蔵庫・冷凍庫は年間200体も解剖したら、1年分の血液や尿でいっぱいになる。それを5年保管したら、冷蔵庫の寿命がくる。ディープフリーザ-と冷蔵庫をセットで交換すれば、5年で200万かかる。つまり年40万円が冷蔵庫・冷凍庫購入のための積み立てに必要だ。
電気・ガス・水道代は馬鹿にならない。普通の家でも月2万円だ。この4倍だとしても、年間100万くらいはかかる。
以上で、年240万円。

消耗品代と設備維持費を合わせて、年間合計490万円だ。
残金は310万円未満となる計算だ。

一方、大学は、外部から入ってくる収入に対して間接経費と称して10%から30%天引きしたうえで、法医学教室に入れるので、そもそも、最初から最低でも2800万円×10%の280万円は存在していない。

結局法医学教室に残る費用はMAX30万円だ。

年間200体のうち、白骨や腐敗死体が20体もあれば、その分の組織検査代160万円分が減収なので、130万の赤字になる。

その他に鑑定書作成などのためのパソコンの購入、写真の保管のためのキャビネット購入、臓器の保管のためのバケツ購入、組織検査やプランクトン検査のための消耗品や試薬購入などをすれば間違いなく大幅な赤字になる。

赤字にならないためには、秘書や検査技師を減らして費用を浮かせるなどの方策をとらざるを得ないが、これでは鑑定書を全例で出せなくなったり、必要なプランクトン検査や精液検査、生化学検査などの検査ができなくなったりするので、死因究明の質の低下につながり、死因究明の推進の観点からは本末転倒な結果になるだろう。薬物検査や死後CT実施のための高額な機材や人材などを揃えることなどは夢のまた夢。薬物検査は科捜研に頼るという不健全な状況とならざるをえない。

これで教室員はハッピーになれるのだろうか。教授以外の教員2名はなんとか教育・研究ができるので、よいとしても、教授は2000万円もの謝金の代償として、解剖以外には何もできなくなっている。大学としては、教育研究のために雇用したはずの人手が一人取られたことになり大きな損害といえる。

解剖が200体を超えて増えるとなれば、さらに問題がおきる。解剖を増やすには、既存の検査技師1名による解剖補助ではもはや無理だ。さらに解剖補助を行う技師や医師が必要となるが、それらを雇用する費用はないのだ。これは、若手医師が大学院に所属し、その後卒業しても、特任教員もおけないので、就職できないことも意味する。

つまり、前提とした価格では、教授の研究教育活動を全面的に犠牲にしているにも関わらず、解剖数の現状維持がぎりぎりできるかできないのレベルであり、解剖数が増えることには全く対応できず、若手医師の雇用もできないということになる。また、まじめにやると赤字になる可能性が高く、結果的には鑑定書を作成しないとか、検査を十分に行わなくなっていく可能性も高いということになる。

これでは死因究明のためのシステムが発展できるなどとは到底言えない。

そもそも、本来は大学の研究・教育のために配置された既存の人員と設備を、警察からの受託業務に流用するという前提に問題がある。既存の人員や設備を用いることは前提とせずに、解剖100体なり、200体なりごとにどれだけの医師、検査技師、設備維持費、消耗品が必要になるかといった計算をするのであれば、解剖数が年1000、2000に増えても、それなりに人や設備を増やすことができる。既存の人員と設備を使うことを前提としてしまっては、解剖数が倍になるなど、今ある枠を超える事態に対応することができないのは当然のことだ。

費用を算定するにあたっては、本来はまず第一に、法医学や死因究明のシステムを発展させるとはどういうことなのか?を考えなければならない。

将来的に解剖率は上げるのか?
写真や解剖後の縫合、掃除は警察官にやらせ続けるのか?(ほかの国では感染リスクの防止のために警察官にそんなことをさせてないが)
行うべき検査項目は何か?また薬物検査等の機材や人材をどうするのか?
全例で鑑定書を書くのか?どの程度の鑑定書か?

これを決めずして、解剖や諸検査の価格を決めることはできないし、それを怠って交渉すれば、警察庁の提示した価格について適正か否かを判断できず、結果的に先方にやりこめられてしまうことになる。とにもかくにも、根源的なところをまず考えてから、費用を設定しなければならないということだろう。

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法医学会と警察庁は、司法解剖や死因身元調査法による解剖の価格について協議を行っている。これまでは、組織検査代はスライド1枚5000円、機器分析を用いた薬物検査は1事例8万円などと、単価で計算されるしくみであり、その結果、さまざまな検査を実施する機関では1体あたり45万円程度となり、検査機材を保有せず、解剖しか実施できないような機関では8万円程度となるなど、大きな格差が生じてしまった。そこで、包括価格にしようという話が持ち上がっていたのだが、最近警察庁から以下のとおりの金額が示されたとのことである。

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司法解剖(包括方式)
(1) 諸謝金・・・ 解剖謝金 5万円 + 鑑定謝金5万円

(2) 検査料等 ○ 上限を25万円と設定 * 諸謝金と併せて上限35万円

○ 基本検査料6万円
血液等生化学、ウイルス、細菌、アルコール、一酸化炭素、プランクトン、精液、 簡易薬物(キット)等の各種検査、 施設使用料、感染防止用消耗品費を含む

○ 組織学的検査
40試料以上の場合〜8万円
30試料以上 40試料未満の場合〜6万円
20試料以上 30試料未満の場合〜4万円
10試料以上 20試料未満の場合〜2万円
実施しない又は10試料未満の場合〜0円

○ 薬毒物定性(分析機器)検査及び定量検査
薬毒物定性(分析機器)8万円
薬毒物定量検査3万円

調査法解剖
(1) 人件費 ○ 人件費相当額 〜 定額3万円(結果報告書作成料込み)
(2) 検査料等 ・・・司法解剖と同様上限25万円。ただし、薬物検査を行わない(行わせない?)場合の上限は14万円。

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果たしてこれは適正な価格といえるのだろうか。また、手続きも妥当なのだろうか。考えてみたい

まずは費用面を考察してみたい。
参考になるものとして、病理学会のHPに提示されている剖検費用がある。

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1.人件費
  医師 \48,163.7 
  技師 \18,711.1 
2.遺体収集費(遺族への謝金) \10,000.0 
3.葬祭費(慰霊祭経費) \5,000.0 
4.剖検室使用費および剖検時関連諸経費  \26,318.0 
5.組織標本作製費 \26,472.0 
6.病理解剖特別検査費 \14,076.2 
 小計A \148,741.0
7.剖検診断費  
 (保険加算相当点数を参考とした場合)  
  3臓器         880点x3 \26,400.0 
  細胞診(その他)   190点x1 \1,900.0 
  組織診断料      255点x1 \2,550.0 
  検体検査管理加   300点x1 \3,000.0 
  免疫抗体法加算  300点x1 \3,000.0 
  電子顕微鏡加算 1200点x1 \12,000.0 
  組織培養陽性1臓器  \3,010.0 
  動脈血培養陽性  \3,896.0 
  診療情報提供料 520点x1 \5,200.0 
  小計B \60,956.0
8.諸費   
  報告書作成費  \10,000.0 
  光熱水道費  \6,000.0 
  標本管理費  \5,000.0 
  危険手当(医師,技師)  \15,000.0 
  剖検室清掃・遺体清拭料  \5,000.0 
  小計C \41,000.0
  総計 \250,697.0
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病理学会は、解剖および組織検査と報告書作成に必要な費用を約25万円としている。

病理学会の試算では医師の人件費は5万円弱、検査技師等の人件費は2万円弱である。
法医解剖の場合、解剖中に書記がついたり、組織検査以外に様々な検査を行うため、医師以外にもう一名の人件費が加算されるべきであろう。つまり、病理学会の試算を参考にすれば、法医解剖(司法解剖および調査法解剖)に必要な人件費は病理解剖より2万円ほど多い8-9万円ということになる。

遺体収集費と葬祭費は法医解剖では不要であろう。ある意味、もう一名必要な人件費とほぼ相殺される形になるだろう。

剖検診断費については、病理学会では生体診察に対して支払われる保険点数を参考に計上せざるをえなかったのだろうが、実際にはすべて実施すわけでもない費用が計上されつつも、約6万円とのことである。法医解剖ではさすがに電子顕微鏡を使わないものの、病理解剖では頭部、頸部や四肢、背部の解剖が通常実施されないのに対して、法医解剖ではこれら部位が解剖されるべき事例は多く、また、検査される臓器数は3臓器では済まないなどからすれば、病理学会の算定する約6万円という金額は、最低限法医解剖でも必要な金額とされるべきであろう。

以上、病理学会の試算を参考とした場合、法医解剖でも、組織検査と解剖だけで25万円という金額が最低限な価格であるということになるだろう。

法医解剖ではその他に薬物検査、生化学検査、プランクトン検査、精液検査等が実施されるので、当然その部分も加算すべきである。薬物検査は警察庁提示の8万円でよいとしても、そのほかの検査にいくらかかるかという点は別に考える必要がある。生化学検査や簡易薬物検査のキット代だけでも1検査当たり数千円かかるし、プランク検査に至っては丸一日技術職員が検査を行うので、それなりに人件費が必要だ。解剖従事者の安全を守るためには、HIVやC型肝炎などのウィルス検査も全例で必須とすべきである。以上を考慮すれば、薬物検査以外の検査にも数万円程度は必要ということになるだろう。

従って病理学会の試算を参考にしたとしても、解剖と組織検査だけで25万円、諸検査のためには、薬物検査8万+その他の検査で数万円という金額が、少なくとも調査法解剖において大学法人に収められるべき金額ということになる。

さて、ここで改めて警察庁提示の金額を見てみる。
調査法解剖において、解剖、組織検査および薬物検査以外に必要な諸検査を実施した場合、大学に支払われるのは17万円である。病理解剖(薬物検査なしで25万円)では通常実施しない部位を含めて解剖したり、組織検査や薬物検査以外にも様々な検査が必要とされるべき調査法解剖にもかかわらず、病理解剖より8万円も安いのだ。果たしてこれが適正といえるのだろうか?

そもそも調査法解剖の人件費が3万円とはどういうことか?法医解剖には医師1名、解剖補助1名、書記1名が入り、もろもろの検査の人件費も必要だが、それで3万はあまりに安すぎる。病理学会試算の人件費約7万円から比べて半額以下というのもおかしな話だ。なめられているとしか思えない。人件費だけでも、病理解剖をベースにしても4万円程度の加算が必要だし、法医解剖で病理解剖とは異なり頭部、頸部、背部、四肢などが解剖され、書記も入ることを考慮すれば6万円程度は加算される必要がある。

また薬物検査以外の検査代(生化学検査、簡易薬物検査、DNA検査、アルコール検査、プランクトン検査、精液検査等)はなぜか一つに丸められているにも関わらず、薬物検査の8万円だけが特に頭出しされているのはどういうことなのだろうか?もしや、DNA検査がそうであったように、「今後薬物検査は科捜研で実施するから、法医学教室には委託しない」と警察庁が各県警に指示をだせば、たちどころに法医学教室における薬物検査は消滅するが、それが予定されているのではないか。もし仮にそうなってしまったら、調査法解剖はどんなに一所懸命に様々な検査をしても、1体あたり17万円にしかならない。この金額は現在の調査法解剖の価格(現在は組織検査は大学に依頼しないと警察庁から指示されている)にほぼ一致することを考えると、ますます怪しい匂いが漂う。将来的に取り返しのつかない事態を回避するためには、薬物検査を実施する機関に限っては予め基本検査料として、薬物検査分の10万程度を加算しておくほうがいいのではないだろうか。

続いて手続き面を考察してみる。

そもそも、解剖や諸検査は、解剖執刀医一人でできるものではない。大学法人の人と設備を使ってようやく実施可能である。だからこそ、大学法人と警察が契約を交わして実施しているし、本来解剖および各種検査費用は、法医学会と警察の話し合いではなく、各大学法人と警察の話し合いによって決められるべきである。それ故、病理学会は、あえて参考価格として提示しているのみであって、それは特に強制力を持つものではない。

法医解剖についても、本来法医学会がなすべきことは、病理学会が行ったと同様に、個々の大学法人が契約する際の参考価格を提示するにとどまるべきである。もし法医学会が警察庁と価格を交渉しようとするのなら、法医学会としては、警察庁と交渉する以前の問題として、必要な費用について、病理学会のようにまずは明細を作って、各大学法人に提示し、納得してもらってから交渉を行う必要がある。しかし、現在そのような手続きが取られているのだろうか?

ましてや、法医学会と警察庁で決めた金額は、その後警察庁内と文科省内に通達され、その金額で契約しないと「安く契約してくれる他の大学に持っていくので、結構です」などと嫌がらせをされて、結局ほぼ強制的に契約されることとなる。事前に何も知らされないまま、突如これまでと比べて激安な料金で半強制的に契約させられる大学も出てくることになる。

そもそも警察庁が提示してきた既存の予算枠から計算しただけの金額が妥当としてしまうと、大いに問題がある。

本来は、解剖や各種検査にこれだけの金額が必要であるという明細を作って交渉すべきであるし、それを怠ると結果的にだまされてしまう可能性もある。今提示されている金額に、ろくな明細も示されていないのは非常に危険である。明細なしのどんぶり勘定では、この検査をやったら損をする、この検査もやったら損をするという話になりかねない。病理解剖に比べても、低い金額設定ということから推察すると、頭部、または胸部だけの解剖だけやって、組織検査も、生化学検査もプランクトン検査もやらないですませば最も収益率が高いように思える。ましてや組織検査代は1切片あたり2000円以下の設定だが、外注すれば薄切1枚2000〜2500円なので、組織検査代でさえ、場合によっては赤字採算である。このままでは、いずれほとんどの大学の法医学教室において、解剖は全身解剖でなく部分解剖、検査は何もしないというような状態(警察庁が望む姿のようだが)に陥り、結果的に法医学全体を衰退させる方向に作用しそうにも思える。

一方、司法解剖で個人が謝金を得ることについて法人の許可を得るか否かも考えなくてはならない手続きの一つだ。

先に述べた通り、本来法医学会は大学法人の委任を受けたうえで、警察庁と交渉すべき立場だろうと思われる。そのような委任の手続きを取っていないとしたらそれも問題である。法人から見れば、法医学会は司法解剖によって謝金を得ている方々の利権団体という捉え方をされかねないからである。

司法解剖における警察庁提示額では、執刀医のみが1体当たり10万円もらう算定となっている。現在の平均7万から見ても個人が得るには十分な報酬といえるだろう。一方で、大学法人に入る金額が病理解剖より低い金額というのは法人に対してどのように説明がつくだろうか。これはある意味背任になりかねないのではないだろうか。

そもそも、法人から見て謝金制度というのは許容されるべきなのだろうか?法医学者が正当な報酬を受けるべきという話は理解できるが、その方法については十分考えなければならない。例えば、国立大学法人の附属病院の外科教授が、病院で手術をした際に、外部から別途報酬を受けているだろうか。昔であれば、国立大学の教授が手術すると、封筒が立つほど患者さんからお礼をもらったなどの噂話も聞くが、今のご時世で許されるはずがない。事実、法医解剖で個人謝金を得ることを容認しない大学も少数ながら存在している。むしろ、調査法解剖で想定されているように、大学法人に一度入れた費用のなかから、大学からインセンティブとして受け取るなどの手続きが将来的には本来推奨されるべきなのではないか。

もし仮に、このまま法医学会が個人に入る謝金については十分に確保したまま、大学法人に入るべき経費については無関心のまま明細も示さず、しかも法人の意向を聞かず、病理解剖の試算から比較してもかなり低いような金額で警察庁と同意してしまうようでは、学会としての良識を疑われかねない。

本来であれば、法医学会がやるべきことは、病理学会がそうしたように、特別委員会でも作って、大学法人の意向を伺いつつ、また弁護士などもに相談しながら妥当な額についてまずは解剖経費と検査代について明細を作り、示すことであるように思われる。

とにもかくにも、おかしな金額で無理やり契約させられ、結果的に法医学が衰退しないことを祈るばかりだし、法医学会としての良識が示されることを祈るばかりである。


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金正男氏暗殺 VXガス使用の可能性 別の女逮捕、殺意を否認
産経新聞 2017年2月17日

 【ソウル=桜井紀雄、クアラルンプール=吉村英輝】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がクアラルンプール国際空港で殺害された事件で、韓国メディアは16日、外交消息筋の話として、致死性の高いVXガスが犯行に使われた可能性があるとの見方を伝えた。
  一方、マレーシア警察は16日、犯行に関与した2人目の容疑者として「シティ・アイシャ」と名乗る25歳の女を逮捕した。インドネシアの旅券を所持していた。現場映像に同容疑者が写っていたという。殺害の意図は否認している。同警察は女の交際相手であるマレーシア人の男(26)も逮捕、事件への関与を調べているが、「捜査進展のため」として、事件への直接関与に否定的な見方を示している。
  現地の裁判所は16日、前日に逮捕されたベトナム旅券を持つ28歳の容疑者「ドアン・ティ・フォン」について、7日間の拘置を認めた。地元紙は、この女が金正男氏にスプレーを噴射する役だったと報じている。事件には、逮捕された女2人のほか別の男4人が関与しているとみて警察が行方を追っている。遺体は金正男氏と確認された。
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北朝鮮、正男氏の火葬要求 司法解剖反対、2日遅らす
東京新聞2017年2月17日

 【クアラルンプール共同】マレーシアで北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が殺害された事件で、在マレーシア北朝鮮大使館が遺体の司法解剖に強く反対、火葬を要求していたことが17日、分かった。このため解剖は2日間遅れた。マレーシア政府高官が明らかにした。正男氏は毒物で殺害されたとみられており、情報当局者の間では北朝鮮側が証拠隠滅を図ろうとしたとの見方が出ている。
 正男氏は13日に襲われたとされる。マレーシア当局は13日に遺体を司法解剖しようとしたが、北朝鮮側の反対を受け延期。事件が大きく報道された後の15日、犯罪性が強く疑われるとして司法解剖した。
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この件、日本の空港で発生していたらどうなっただろう。
以前偽造パスポートで入国した際に、逮捕起訴せずに帰国させてしまったこともあったことを考えると、日本の場合、外交上の配慮から遺体を解剖せずに返してしまうかもしれない。もし仮に解剖せずに返したら、日本の空港は暗殺し放題だとほかの国から舐められてしまうだろう。その意味では、マレーシア政府は自国民をそうした危険から守ったといえる。

ところで、マレーシアは最近急速に発展している。法医学研究所もあるようだし、いずれ日本はアジアの中で後進国になってしまうかもしれない。日本で殺しても薬物はフリーパスなどとされたら、日本中で暗殺し放題だ。

思い返してみれば、オウム真理教がVXガスやサリンなどを使って殺害した事件があったが、薬物をしっかり検出できたケースは稀だった。あのころから日本は何も変わっていないように感じる。


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「勾留中に暴行死」 法医学者が奈良県警の警官告発
産経ニュース 2016年11月14日
 
 平成22年2月、奈良県警に業務上過失致死容疑で逮捕され、県警桜井署で勾留中だった男性医師=当時(54)=が死亡したのは、取り調べ時に警察官から暴行を受けたことが原因だったとして、遺体の鑑定書を調べた岩手医大の出羽厚二教授(法医学)が15日、特別公務員暴行陵虐致死罪で、容疑者不詳のまま県警に刑事告発した。
 告発状によると、男性医師は22年2月14日〜24日ごろ、取り調べ時に警察官から頭部、胸部、足を殴打され、これが原因で発症した急性腎不全などの多臓器不全によって死亡したとしている。
 当時別の医師が行った司法解剖では、死因は急性心筋梗塞と判断されたが、出羽教授は「下肢に広範囲の皮下出血があり、打撲により生じたものだと考えられる」と訴えている。
 男性医師は18年6月、奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(廃院)で、男性患者=当時(51)=の肝臓の手術を助手として担当。誤って肝静脈を損傷し失血死させたとして、22年2月6日に逮捕され、同25日に勾留中の桜井署の留置場内で倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡した。

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殺人適用せず、父に懲役12年判決…東京高裁
 毎日新聞2017年1月13日

 神奈川県厚木市のアパートで当時5歳の長男を放置して虐待死させたとして、殺人罪などに問われた元トラック運転手、斎藤幸裕被告(38)の控訴審判決で、東京高裁は13日、懲役19年とした裁判員裁判の1審・横浜地裁判決を破棄し、懲役12年を言い渡した。秋葉康弘裁判長は「適切な対応をしなければ死亡する可能性が高いと認識していたとは言えない」と述べ、1審が認めた殺人罪を適用せず保護責任者遺棄致死罪に当たると判断した。

 事件は2014年5月にアパートで斎藤被告の長男、理玖(りく)君の白骨遺体が見つかり発覚した。司法解剖でも死因は明確にならず、死亡前の長男の衰弱状態について述べた複数の専門家の証言をどのように評価するかで1審と2審の結論が分かれた。
 1審は、小児法医学の専門医の証言を基に長男が死亡した07年1月の1カ月前ごろには、栄養不足から関節が曲がって固まる症状が始まっていたと認めた。その上で「遅くともこの段階で医師の適切な診療を受けていれば救命できた」として、診療を受けさせるなどしなかった被告に殺意があったと判断した。
 これに対して2審は、解剖医の証言も重視して「長男に関節が曲がる症状があったとは認定できない」と判断。長男が動けない状態だったと述べた被告の調書についても、取り調べで誘導した疑いもあったとして「信用性は高くない」と指摘し、「長男に適切な診療を受けさせるなどしなければ、死亡する可能性が高かったとも、そのことを被告が認識していたとも認定できない」と結論付けた。
 判決によると、斎藤被告は長男に適切な食事を与えず部屋に閉じ込めて放置し、07年1月に死亡させた。被告の弁護人は「実の子への殺意が否定され被告はほっとしていた。刑事訴訟法の原則に忠実な判決だ」と評価。東京高検の曽木徹也次席検事は「判決を精査・検討し適切に対処したい」とコメントした。【近松仁太郎】

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<乳児死亡>元少女に無罪判決「首絞め断定できず」東京地裁
毎日新聞2017年 2月13日

 2013年に東京都渋谷区のマンションで、知人女性から預かった生後3カ月の女児の首を絞めて死亡させたとして、傷害致死罪に問われた当時18歳の元少女(21)に対する裁判員裁判で、東京地裁は13日、無罪判決(求刑・懲役7年)を言い渡した。家令和典裁判長は死因について「ひものようなもので首を絞めたことによる窒息死と証明されたとは言えない」と指摘した。
  元少女は「首を絞めていない」と無罪を主張。弁護側も栄養失調による衰弱死やうつぶせ寝の状態で窒息死した可能性があると訴えていた。
  判決は、女児の首に残る痕をひものようなもので圧迫されたものと判断した専門医の見解について「皮膚の写真に基づく判断で、内部の変化まで読み取れるか疑問」と指摘。検察側が、首を圧迫された根拠の一つとした血液成分の変化も「他の死因でも変化することがあり、首の圧迫があったと断定できない」と退けた。その上で、女児が栄養をほとんど与えられず衰弱していたことや、死亡前にうつぶせで寝ていた状況を踏まえ、他の死因も考えられると結論付けた。
  閉廷後、4人の裁判員が記者会見した。審理で遺体の写真が示されたことに関し「イラストより判断しやすい」「不必要な部分を見せない配慮があり、負担にならなかった」などと述べた。
  元少女は、女性とその長女の女児、別の少女の3人と同居し、女性に代わって女児を世話していた。13年11月1日に部屋にいた女児の首を絞めて死亡させた、として起訴された。
  無罪判決を受け、東京地検の落合義和次席検事は「主張が認められなかったことは遺憾であり、判決内容を検討して適切に対処したい」とのコメントを出した。【近松仁太郎】
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ここのところの報道を見ると、死因判定のばらつきが原因でおかしなことが起きているように感じる。というか、昔から同じようなことは頻回に起きていると思うが、どの件にも共通点があると思われる。

多くの国では、複数の鑑定人が所属する法医学研究所で、同僚同志議論を積み重ねながら死因を判定しているが、日本では法医学的な鑑定機関が法医学教室といった小規模な機関であり、教室内の鑑定人は教授しかいないか、あるいは他にいたとしても、教授とは対等とは言えない助教や講師が1人しかいないという状況が生み出されている。このような環境では、教授一人の独裁となり、鑑定について同僚からの批判を受けることがなく、独善に陥ってしまう。結果的には、日本では鑑定の質が諸外国以上に大きくばらつくことになる。

鑑定がバラバラの機関が存在するという状態は、恣意的な結論を得たい検察・警察、弁護士にとっては大変都合が良いといえる。日本のどこにおいても同様の状態だが、特に東京都内のような大規模都市周辺は、大学が複数ある割りにいずれも小規模であり、日本の縮図といえ、容易に都合のよい鑑定人を見つけ出せてしまうところがあるため、より問題が起きやすいといえるかもしれない。

例えば、首に首絞めの形跡が明確にない死体がみつかった場合、ある鑑定人は慎重に対応し、「首絞めとは断定できない」と判断するが、警察のいうことを鵜呑みにする傾向のある別の鑑定人は「首絞めの可能性が高い」とか、「首絞めとして矛盾しない」などと断定に近い表現をすることがある。警察が被疑者を有罪にしたいなら、後者の鑑定人の書いた鑑定書だけを裁判にだせばいいだろう。

あるいは白骨の死体が見つかった場合、多くの法医学者は、「死因は不明とすべきだし、骨だけでは関節の拘縮があったかなどわかるわけがない」と考えるのに、「関節が曲がっているから関節に拘縮があったと思われる」と言ってくれてしまう者が現れたりする。警察や検察が被疑者の罪を重くしたいとき、後者の鑑定人の意見は、関節の拘縮に気づいていたのにわざと放置したという被疑者の悪質性を表すストーリーに利用可能である。

あるいは、警察官が暴れる犯人を取り押さえていたら、突然犯人が死んでしまったようなケースでは、「警察官の暴行が死因に関与した可能性は否定できない」と判断する鑑定人がいる一方で、「病死である」と断定する鑑定人もいる。もし警察が身内を無罪にしたければ、後者に鑑定を任せればいい。

このように死因などの判定にばらつきがあることは、被疑者を有罪あるいは無罪にしたい場合、そのためのストーリー構成において非常に好都合なパーツを提供してくれるといえる。

警察官は犯人を捕まえ、事件を解決すると評価されるが、冤罪防止に尽力しても評価されない。警察とは良くも悪くもそういう組織である。彼らが正義と思って行動したとしても、結果的に行き過ぎた捜査に陥る傾向がある。そうした環境で、法医学における死因鑑定にばらつきがあれば、警察が独特の正義感から有罪にしたいと思えば、警察の思い描くストーリーの通りに鑑定してくれる鑑定人を見つけ出すことができてしまうというわけだ。

しかしながら、これでは、法医学が本来目指すべき、公平・公正さが実現されているとはいいがたい。科学的・客観的に正しい鑑定が証拠として採用されないことも起きるので、冤罪は起きやすくなるし、警察内で発生した犯罪は隠蔽しやすくもなる。国民にとっては大きな問題だ。

本来は中立・公正であるべき法医学的な観点からは、現在の状況は大いに問題があるため、以前から法医学会としては政府に対して、複数の鑑定人が所属し、相互に批判しあえるような機関として諸外国のような法医学研究所の設置を要望してきた。しかしながら、この要望はいまでも無視され、法医学を取り巻く状況はむしろ悪化しているといえる。

特に最近は、警察や検察が鑑定する法医学者を恣意的に選ぶ傾向は強まっているようにみえるし、法医学的に必要な検査(組織検査やDNA検査)を警察が予算等の都合でやるなと言ってきたりもする。医師が医師として判断することさえできない状態だ。

このままでは、えん罪発生の予防には基本的に関心の薄い捜査側のやりたい放題となってしまうので、大変危険な状態といえるのだが、国民がその実態を知らないのは問題といえるだろう。その点、メディアが、鑑定のばらつきの原因について、深く掘り下げて報じないのも問題のように思う。

国民の安全安心のためには、公平公正であるべき法医学がしっかり機能し、ある時は行き過ぎた正義感から発生する行き過ぎた捜査を諫めることができるような制度作りを進めなければならない。


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勾留中死亡、法医が告発へ「自白強要で暴行」 奈良県警の警官
2016.11.14 産経新聞

 2010年2月に奈良県警が業務上過失致死容疑で逮捕し、桜井署で勾留中の男性医師=当時(54)=が死亡したのは取り調べ時の暴行が原因として、遺体の鑑定書を調べた岩手医大の出羽厚二教授(法医学)が、特別公務員暴行陵虐致死容疑で取り調べを担当した警官を告発することが14日、分かった。
 15日に告発状を県警に提出する。出羽教授は取材に「取り調べで自白させるために暴行し、死亡させるようなことがあってはならない。県警は真実を隠さずに調べてほしい」と話している。
 医師は勤務先の奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(廃院)で、06年に肝臓の手術ミスで患者を死亡させたとして、10年2月6日に逮捕され、同月25日に死亡した。
 告発状によると、警官は同月14〜24日ごろ、医師の取り調べ中に頭部や胸部、上下肢を殴打して傷害を負わせ、急性腎不全などの多臓器不全で死亡させたとしている。
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法医学教授
「勾留中に暴行死の疑い」奈良県警を告発
 毎日新聞2016年11月15日

 2010年2月に奈良県警が逮捕し、勾留中に死亡した男性医師(当時54歳)について、司法解剖結果などを調べた出羽厚二・岩手医大教授(法医学)が15日、遺体の状況から取り調べの際に暴行を受けた可能性があるとして、特別公務員暴行陵虐致死容疑で県警に告発状を提出した。容疑者は不詳とし、特定していない。

 男性医師は、医療法人雄山会「山本病院」(奈良県大和郡山市、廃院)で06年に起きた男性患者死亡事件を巡り、業務上過失致死容疑で10年2月6日に逮捕された。県警桜井署で勾留中の同25日に死亡し、司法解剖で死因は急性心筋梗塞(こうそく)とされた。
 告発状で出羽教授は、解剖結果では男性医師の遺体の足や頭などに皮下出血があり、打撲傷だと指摘。取り調べ中に暴行を受けた傷が原因で腎不全などを発症し、死亡したと訴えている。
 医師の遺族は13年2月、県警が勾留中に適切な治療を怠ったなどとして県に約9700万円の損害賠償を求めて提訴し、奈良地裁で係争中。出羽教授は、07年の大相撲時津風部屋の力士暴行死事件で、力士を解剖して「多発外傷によるショック死」と鑑定し、当初病死とした愛知県警の判断を覆したことで知られ、今回は遺族側の依頼で調査した。
 奈良県警は「暴行は一切ない。足の出血は留置場で座る際に床で打ったことが原因」などとしている。【塩路佳子】

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日本の司法はあまりに遅れている。警察庁はあれこれ理由をつけては全面可視化を避けてきたが、どうにも、隠したいことがあるようである。
この件も、全面可視化さえしていれば、何も問題なかったと断言できるだろうに、可視化を怠ったばかりに、疑惑を消すことができない。もういいかげん、普通の先進国の流れに乗るべきではないか。

また、法医学の脆弱性が露呈した話でもある。1大学に1人か2人しか医師がいないようでは、あるべき同僚批判も全くできない。結果的に警察のいいなりになっている者もいないとは限らない。また、法医学者本人はまじめにやっているとしても、周りがそう思ってくれないこともおきる。だからこそ、国として、法医学の独立性と客観性をしっかり担保すべきだし、そのためにこそ、諸外国並みの法医学研究所を設置すべきなのだ。しかし、それとは正反対に、最近の警察庁は法医解剖に関わる検査代の制限をかけてくるが、こんなことを放置しては、人も設備も充実されようもなく、ますます警察のいいなりになってしまうことになるだろう。すでに、DNA鑑定は、法医学で実施されないこととされ、警察の手に落ちているが、それこそ警察のやりたい放題になるので大問題といえる。もっとメディアも賢くなるべきだろう。

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死体相手だけでない

1人に可能性 児相との「形跡判断」で 県立医大 /和歌山
 
毎日新聞2016年10月29日
 
 児童虐待の早期発見を目的に、県立医科大(和歌山市紀三井寺)が今年度から県内の児童相談所(児相)とともに取り組む「虐待形跡判断」で、相談が寄せられた5人(今月27日現在)のうち1人について、虐待の可能性が高いと判断していたことが分かった。県立医科大の近藤稔和教授(法医学)が28日、報道陣に明らかにした。

 同医科大では今年4月から、児相が保護した子供の中で児童虐待が疑われる事案について、法医学的な観点から調べる虐待形跡判断を実施している。
 近藤教授によると、5人中1人の体に残るあざなどを法医学的に診た結果、通常のけがではなく虐待によってできた可能性が高いと判断。他の相談も含めて自治体や病院、警察など関係機関と情報を共有し、児童の保護や入院など適切な処置につなげるという。
 近藤教授は「児童虐待の可能性がある事案に接した医師や大人には、法医学者に相談する選択肢があることを知ってほしい」と話している。【最上和喜】


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虐待防止に法医学活用を  医大の近藤教授が訴え
わかやま新報2016年10月29日
 
児童虐待が大きな社会問題となる中、県内でことし4月から法医学の知識を活用した虐待防止の取り組みが始まっている。28日には和歌山市紀三井寺の県立医科大学で、報道関係者を対象に取り組みが紹介され、同大法医学講座の近藤稔和教授が児童虐待の現状や県内における取り組みについて解説した。
児童虐待は身体や性、心理への虐待に加え、養育の怠慢、拒否も含まれる。件数は増加の一途をたどっており、平成24年度に国内の児童相談所が対応した相談件数は、平成11年度の5・7倍にのぼる。
近藤教授は児童虐待の深刻さについて、虐待を受けた子どもの写真を示しながら解説。虐待の結果として、身体の損傷だけでなく、発育の遅れや感染症罹患などの症状が見られると指摘した。
近藤教授によると、数年前から虐待防止において、法医学の重要性が各分野から指摘されるようになったという。近藤教授は虐待の有無に関する判断や被虐待児の保護において、傷の状態診断を専門とする法医学の役割は大きいと話した。
県内における児童虐待の件数は、400台だった平成20年ごろに比べると大幅に増加しており、平成26年度には932件にのぼった。被害児童の約3割が小学生で、加害者の約半数が実母となっている。
近藤教授は昨秋、児童相談所から相談を受けて試験的に取り組みを開始。ことし4月から相談所と連携して虐待が疑われる児童の診断を行うなど、本格的な活動に乗り出した。これまでに5件の相談を受けたという。
近藤教授は「虐待死は救える命。行政・教育・医療が連携して取り組み、子どもたちが安全で楽しく暮らせる社会をつくっていきたい」と意気込んでいる。

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ヨーロッパの法医学でのルーチンワークは、解剖だけではなく、生体診察も含まれている。日本では、法医学者が少なすぎて、手が出せなかった分野だが、そろそろ放置できなくなってきている。

ヨーロッパでは、傷害事件の被害者や、虐待を受けた子供の診察は法医学者が行うことが法律で定められている場合もある。一般臨床医に任せてしまうと、診断が患者よりになりすぎたり、診療費を上げるために大げさな診断名をつけてしまうことがあり、客観性にかけるからだ。日本では、法医学者が少ないので、こうした事例は一般臨床医が診ているのだが、現に多くの問題が発生している。

例えば、交通事故によるむちうち症がいい例だ。首が痛くもないのに、整形外科からむちうち症とか頸椎捻挫と診断され、通院させられることもある。民事における損害賠償レベルの話であればまだいいが、場合によっては、過失運転致傷という刑法犯として扱われかねないので、いい加減な診断を許すべきではない。そのためにも臨床法医学分野の発展が求められるのだが。

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ほんとう?

災害時の車中泊、対策へ動く自治体 熊本地震では死者も
朝日新聞デジタル 10/31

 災害時に車の中で寝泊まりする避難者の対応策を、防災計画に明記する自治体が増えている。朝日新聞が46道府県庁の所在市と政令指定市、東京23区の計74市区に書面で尋ねたところ、13市区が盛り込んでいた。半年前の熊本地震でも、車中泊に伴うエコノミークラス症候群による死亡事例があり、その後に対策を追加した自治体もある。全体の中ではまだ少数だが、検討中という市区もあり、徐々に広がりつつある。
  車中泊は災害のたびに課題になっている。今年4月の熊本地震では、車中泊の避難者らがエコノミークラス症候群を発症し、熊本県によると、うち1人が死亡した。今月21日に最大震度6弱を観測した鳥取県倉吉市でも、避難所の校庭に車中泊の車が並んだ。
  エコノミークラス症候群による車中泊の死亡例が知られたのは、2004年10月の新潟県中越地震からだ。74市区にアンケートした結果、11市区が昨年3月までに車中泊の対策を防災計画に盛り込んでいた。
  具体的には、避難所の外で避難生活を送る人たちの居場所や健康状態を把握することや、物資の配布、医療支援、エコノミークラス症候群の予防法を知らせるチラシの配布などを防災計画に明記している。

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エコノミークラス症候群の診断は、解剖しないと難しいのだが、ちゃんと解剖して判断した結果なのだろうか。なにか怪しさを感じてしまう。
災害対策のためにも、しっかりした死因究明を行うことを忘れてはならない。

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急死のプレイメイト、死因はカイロプラクティックだった
女性自身 10月20日


今年2月に米『PLAYBOY』誌のモすデル、ケイティ・メイ(34)が、何の前触れもなく脳卒中を起こし、その数日後に死亡した。その原因がようやく明らかになった。
  
ロサンゼルス郡検視局によると、彼女は亡くなる数日前、首にカイロプラクティックの施術を受けていた。指圧療法士が首を曲げた際、左の椎骨動脈が裂けてしまったという。椎骨動脈は、首の左右に二本通る動脈で、脳に血液を送るという重要な役割を担っている。この動脈が傷つけられたことで血流が妨げられ、脳卒中を起こしたことが直接の死因となった。
  
メイは1月30日に「撮影中に首をひねってしまって、今朝調整してもらったの。すっごく痛い! 他に家でできる治療法を知らない?」とツイートしている。ファンからは「温かい湿布をして横になって」「リラックスしてNetflixを見る! これに限るよ」といったアドバイスが寄せられ、メイは律儀に「ありがとう! やってみる」と返答している。この“調整”によって、彼女は2月4日に命を落としてしまった。
  
メイはシングルマザーとして、ミアという小学生の娘を育てていた。遺族はミアの学費をまかなうため、メイが亡くなった直後に10万ドルをゴールに設定したクラウドファンディングを開設。寄付額は10月20日時点で31,554ドルと、あまり伸びていない。

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頸椎の異常運動により、椎骨動脈が損傷し、脳幹梗塞や小脳梗塞が発生することが知られている。カイロプラクティックのほか、柔道の練習中や交通事故でも発生するのだが、診断のためには、生前であれば血管造影、死後であれば解剖が必要である。通常の画像検査では脳梗塞で病死とされてしまうので、日本では柔道後に脳梗塞をおこしていてもほぼ全例が病死になっていると思われる。諸外国では、ちゃんとやっているようだ。
2月の事件の死因が8か月もたって発表されているが、難しいケースでは死因を判定するにはそのくらい時間がかかるものだ。日本のように、死んだ翌日に死因が報道されているほうが異常だ。

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安福謙二弁護士のインタビュー記事を読んだ。
https://www.m3.com/news/iryoishin/462940
以下印象に残る部分を引用した。

・ 現状の医療事故調査制度は、過去の数多くの事故調査報告書と判決との齟齬を見据えて検証したものとは言い難いと考えています。

・ 大野病院事件の前、私はどちらかと言えば推進派で、「より良い“事故調”を作らなければ」と言ってしました。ところが、大野病院事件の院内事故調査の背景は、あまりにもひどく、まずはその結果として作り出された報告書との戦いでした。また、モデル事業(日本内科学会等および日本医療安全調査機構が実施していた「診療行為に関連した死因の調査分析モデル事業」)の現状を聞くと、その運用はとても手間暇がかかり大変であり、厚労省の大綱案(2008年6月にまとめた、医療事故調査制度案)についても懸念、ひいては疑念を抱くようになった。さらに大野病院事件の判決後、さまざまな機会に、いろいろな“事故調”を見聞きしているうちに、「今の“事故調”では、ダメではないか」とも思うようになりました。 一方で、患者側、あるいはマスコミの方々には、それぞれの“事故調”の理想の姿、夢がある。それを否定しませんが、それを運用することの難しさを誰も本気で考えていない、議論していないことにも危機感を覚えました。しっかりしたインフラを整備しないで、“事故調”を機能させることはできないということです。

・ 事実認定の重要さは、医療機関における事故調査に限りません。検察の捜査でも、裁判においても同様です。しかし、何よりまず医療者に対して、その重要性を訴えたい。「主治医や執刀医を大切にしなかったら、本当の事故調査はできない」ということ。と同時に、「もし患者さんが言うところの、そしてドクターが求めるところの真実、本当の事実を知りたいなら、刑事責任を追及していたらできるはずはない」ということです。今回の本では、そこまで言っては刺激が強すぎると思い、「ミランダルール」の言及にとどめています。

・ ミランダルールとは、1966年のアメリカ合衆国の最高裁判決により明確化された、身柄拘束中の被疑者の取り調べにおける黙秘権や弁護人選任行使権についての基本を明確にルール化したものです。2013年の拷問禁止委員会で、このミランダルールに反する日本の刑事手続きは「中世のものだ」と批判されました。日本の大使がその批判に反論し、「Shut up!」と発言したことがニュースになり、世界を駆け巡りました。 しかし、司法記者クラブの記者でも、この「Shut up!」発言の背景事実自体を知らない人がいます。「ミランダルール」について書いた本は幾つかありますが、「医師も含め、司法とは関係ない一般の方に、日本の司法の根源的な誤りを理解してもらいたい」と思ったことも、本書を書いたきっかけです。医師たちは、「医療事故に警察や司法が介入することはおかしい」「医療裁判はひどすぎる」などと言いますが、おかしいのは日本刑事司法そのものなのです。

・ 私が、司法と深い関わりを持っていない一般社会の人、司法に対して一定の評価をされている人たちに向けて一つ言いたいのは、日本の司法は想像以上にいい加減なものであり、「これでいいのですか」ということ。それがさらに悪化の一途だと言うことです。私は約40年この世界に身を置いてきて、つくづく限界というか、恐ろしさを感じています。 日本の司法を全面否定するつもりはなく、十分に機能している面もあります。諸外国と比較してもいい面もありますが、一方で、国際社会からすれば、「日本の司法は中世だ」と言われてしまう現実があるわけです。そして何よりもお願いしたいのは、「物事を調べる」という基本を、もう少し根本的に見直してくれないかということ。事実を確認する作業は簡単ではありません。しかし、事実を確認する作業をしっかりやらなければ、裁判でも、また医療事故の調査や科学的究明であっても、何一つ動きません。

・「物事を調べる」「事実を知る」基本が守られない医療事故調査制度は、何一つ生み出さず、悲劇を大量生産するだけ。それは、患者さんにとっても、家族にとっても、医療者にとっても不幸。この不幸を避けるには、患者家族には、医療者を「犯罪者か」という視点で、物を言うのはやめるべきです。一方で医療者も、患者家族を尊重する、敬意を持って接する。医療者にとって、最大のステークホルダーは患者さんなのですから。このことが原点になると考えています。

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安福弁護士の意見、同感な部分が多い。

日本の刑事司法は、自白中心であり、江戸時代のままだ。事実認定のための一つの手続きとして刑事司法を支えるはずの死因究明制度も、800年前の中国のやり方が色濃く残り、自白ばかりに頼った危うい制度である。

また、診療関連死問題は医療側に改善すべき問題があるというより、未熟な刑事司法側にこそ猛省すべきことが多々あると思う。でたらめな死因究明制度もその一つだ。その点、医療側に思い違いやボタンの掛け違えがあったように思う。

外科系学会が平成13年に出した異状死に関連した声明がここで読める。
「過誤があったかどうかは、専門的な詳細な検討を行って初めて明らかになるものであり、まさに民事訴訟手続の過程において文献や鑑定の詳細な検討を経て判断されるのが相応しい事項である。」という記載がある。その後平成16年に発生した大野病院事件では、外科学会が「相応しい」とした示談という民事的な手続きの過程において病院側が報告書を作成した。しかし、それがをもとになり、検察が医師を逮捕・起訴してしまったという結果が生まれた。そもそも民事手続きは、真実究明を第一とするはずの刑事手続にくらべ、真実究明が曖昧であるとされるが、刑事手続きがそうした曖昧な民事上の書類を利用したこと自体が本末転倒だったし、日本の司法の未熟さ、危うさを露呈させたと考えられる。

ほかの国であれば、大野病院事件のような事例は、日本とは違う「大人」な警察への届け出を経て、犯罪捜査としてでなく、真実の見極めとして死因が究明され、結果的には犯罪として立件・起訴されることもなく終了し、しかも解剖や諸検査の結果は開示され、民事手続きにも利用されるであろう。

日本の司法は、江戸時代のまま、初動段階での科学的調査や事実認定をおろそかにし、自白(病院で作成した報告書も同様である)などの供述に頼っている。そうした科学性・客観性の乏しい根拠のみから犯罪性が疑われる事例ばかりを選別し、それについてのみ死因を判定するための解剖を行っている。しかし、こんな状態では、当初は犯罪とはだれも思っておらず解剖に回されなかったものの、後になってから、遺族の告発等から刑事的に動かざるをえなくなる事例が続発し、その時点ではもはや何ら客観的証拠がないことから、自白や民事手続きの書類などの客観性の乏しい証拠に頼って立件・起訴を試みざるを得ないことになる。さらに、そこに刑事手続きに不慣れな医師による、バラバラで諸説紛々な意見や鑑定が加わると、検事の都合のよいストーリー構成のためにうまく切り貼りされることとなり、本来犯罪でないものまで犯罪として立件できてしまうこともある。まさに、大野病院事件がそうであったように見えるが、こんな状況では、冤罪も起きるし、悪質な犯罪も見逃すことになり、医師、遺族双方にとって不幸なことがおきる。

そうしたやり方を根っこから変え、初動段階で、死因がわからない事例はできるだけ解剖するなど客観的な証拠を集め、その後自白に頼らずに刑事手続きに進めるか否かを冷静に判断するような、諸外国で実施しているような制度に変えていかなければならない。しかし、医療版事故調の作成する報告書が利用できるなら警察も検察も楽ができるということで、それをあてにし、死因究明制度をでたらめなまま放置している刑事司法の現状からみると、日本の司法の将来は真っ暗だ。

医療版事故調にも重大な設計ミスがある。死亡事例について承諾解剖や画像検査で事実認定するということ自体に無理があり、大いに問題がある。こんなことでは事実認定がいいかげんになり、そのまま民事や刑事で話が進んだ場合、医師にも遺族にも悲劇が発生することになるだろう。

そろそろ医療界も、そうした刑事司法や現在の事故調のおかしさに気付き、より抜本的な改革の在り方を提言していくべきだと思うが。

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温泉旅館、過去にも2人死亡 硫化水素との関係も捜査
朝日新聞デジタル 10月21日

 北海道足寄(あしょろ)町の旅館「オンネトー温泉 景福」で2014年10月、男性入浴客が浴槽内で倒れて重体に陥る事故があり、道警が業務上過失傷害の疑いで捜査している。事故直後の保健所の測定では、温泉に含まれる硫化水素ガス濃度が国の基準を大幅に超えていた。この施設では以前にも2人が同じ浴槽で倒れて死亡しており、道警はこの2件についても経緯を慎重に調べている。
 事態を重く見た環境省は今年9月に再発防止に向けた検討会を設置し、硫化水素を含む温泉の安全対策について基準を見直す方向で検討している。
  地元消防や男性の親族の話によると、重体となったのは東京都内の男性(52)。14年10月8日夜、浴槽内で意識を失っているのが見つかった。搬送先の病院で硫化水素ガス中毒の疑いによる脳機能障害と診断され、現在は意識不明で寝たきり状態となっている。
  事故のあった同じ浴室では重体となっている男性以外にも、13〜14年に3人が救急搬送され、うち2人が亡くなっていた。搬送先の病院によると、13年に亡くなった64歳の男性は「溺死(できし)」、14年に亡くなった38歳の男性は心臓に血が行き渡らなくなる「虚血性心疾患」と診断されていた。
  病院側は今年9月、取材に対して「当時は硫化水素ガス中毒を疑わず、血液や尿の分析など詳しい検査をしなかった。同じ浴室からの搬送が相次いだことを考えると、今思えば中毒がきっかけという可能性は捨てきれない」と説明。病院は2人の診療記録を道警に提出し、道警が硫化水素との関係を慎重に調べている。
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「病院は2人の診療記録を道警に提出し、道警が硫化水素との関係を慎重に調べている。」というが、慎重という言葉の意味は、つまりは、何もできないし、しないということだろう。

パロマのガス湯沸かし器の時もそうだが、日本は死因究明制度がでたらめゆえ、同じ原因で何人も犠牲者が出てしまう。

他の国であれば、これまで担当医として診てこなかった方の死体を検案した場合は、警察へ異状死届け出をすべきこととなっているし、警察はそうした死体を相当の確率で解剖などの法医学的検査に回している。少なくとも、この報道にある38歳の男性は、若いので、間違いなくほかの国であれば解剖されただろうし、64歳の男性も、溺死なのか、病死なのかわからないので、かなりの確率で解剖されただろう。結果的に、ほかの国であれば、のちに重体となった犠牲者を発生させずに済んだと考えられる。

日本の場合、警察に異状死届け出をしても、警察は相手にしてくれないし、そうしたことから、医師には届け出自体をしない癖がついている。結果的に、本来犠牲にならずに済んだ人まで犠牲になってしまっている。

一時期は、死因究明制度を改善させようとの動きもあったが、最近は警察庁も厚生労働省も、逆の動きを見せている。国全体が国民を見殺しているのだが、とんでもない国だと思う。こういう事態が発生することは、以前から政府の検討会などでも指摘されてきたにもかかわらず、役人は故意に無視しているわけで、一度国賠訴訟でも起こされたほうがよさそうだ。

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