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法医学者の悩み事
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先日福島県の県立病院の産婦人科医が逮捕された。帝王切開の時の出血多量で母親が死亡したのだそうだ。報道を見る限り、逮捕容疑は医師法21条の異状死届出義務違反と、業務上過失致死だとか。
逮捕されるような重大なミスや証拠隠滅行為があったのかどうかは報道からだけでは分からないが、人を救おうと思ってやった結果なのだから、余程悪質ではない限り逮捕までするのはどうかと思う。
病院が医師に対して減給処分を下していたという報道もあったが、うかつな処分決定は過失を認めたことになるので、このような逮捕を生み出すのかもしれない。捜査サイドからすれば「過失を認めながら、なんで警察に異状死届出もせず、解剖しなかったのだ」となったのだろう。
過去に臨床を経験し、ニヤミスも経験した立場からすると、医師の捜査に対する過敏な反応も理解できる反面、司法解剖の現状を知れば、異状死届出をしておいたほうが無難なのかなとも思う。ただ、臨床の先輩医師から異状死届出をした方が安心という指導も受けていないわけで、現実には中々難しいのかなとも思うが、、、
日本では、司法解剖された医療事故は多くの場合、刑事裁判では不起訴になるか、希に起訴されても略式起訴のようなことが多い。また、司法解剖されてしまうと、捜査サイドが、捜査情報として解剖結果を抱え込むあまり、民事訴訟で解剖結果が使えない場合も多く、逆に遺族からすると困っていることも多い。こんな状況では「捜査サイドが証拠隠滅?」と思われても仕方ないだろう。
フィンランドなどでは、病院で発生した異状死は臨床医のストレスなく司法解剖(行政解剖ではない)に回されるし、情報開示もスムースだと聞く。
日本法医学会も国際標準といえる異状死ガイドラインを作ったものの、捜査官の不足、解剖人員・設備の未整備で届け出られた異状死の殆どが解剖できていないのだから、どうしようもない。解剖結果が開示できないのも、法的に開示できないのではなく、運営の未熟さで開示されていないだけのようだ。このように、捜査側や解剖の体制不備も医療事故の問題に大きく影響していると思う。
臨床医側がとってきた路線も見直す必要があるかなと思う。捜査から免れようという動きより、逆をついて、臨床医の協力の下、未熟な捜査機関を充実化させる方向へ動いたほうが、案外良い結果が得られそうな気もする。そうなれば、医療事故があった場合、捜査機関に対して、臨床医サイドが適正な相談相手を紹介できるだけでも状況は良くなるような気がするのだが、、、
現在は、検察庁や警察が相談に行く臨床医は、手狭なコネクションを当てに探しているに過ぎないし、だいぶ困っているようでもある。

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    その届け出をもとに、臨床の専門家の間でも意見が分かれるようなケースで、臍帯(さいたい)を「じんたい」と読む程度の医学的知識しかもたない検察官が業務上過失致死として医師の刑事責任を問うているのが大野病院の件の裁判ですが、臨床医の立場からみると国際的にもきわめて異常なことです。このような自体を招いていることについて法医学界は我関せずというのであれば、そもそもガイドラインなど世に発表などせず、現実に運用可能となるまで理想論として学会の中だけで検討していればよかったのではないのでしょうか。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午前 1:37

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    法医学会のガイドラインを責めるよりは、「国立大学医学部附属病院長会議常置委員会」を責めた方が筋が良さそうです。なんとなれば、このガイドラインには「医療行為について刑事責任を問われる可能性があるような場合(注2)は,速やかに届け出ることが望ましいと考える。判断に迷うような場合であっても,できるだけ透明性の高い対応を行うという観点から,先ずは速やかに警察署に連絡することが望ましいと考える。」と明記してしまっているからです。法医学会のガイドラインでも、ここまで踏み込んでいなかったのではないでしょうか。

    [ - ]

    2007/2/4(日) 午前 1:49

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    経緯は、西島代議士のウェブに書いてありますね。http://www.nishijimahidetoshi.net/report/detail.php?RN=285

    [ - ]

    2007/2/4(日) 午前 1:51

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    全体の流れは下記にあります。 http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/dead/ijoshi.html 法医学会のガイドラインで「異状死は広義に解釈すべき」「診断を受け治療されている病気以外で死亡するのはすべて異状死」としたところから始まっています。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午前 2:26

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    国立大学医学部附属病院長会議常置委員会などは医療過誤がマスコミに叩かれた時期に世論に配慮した意見として疑わしきは届け出をとしたのでしょうが、その後外科関連学会は現場の混乱を避けるため反発する意見を表明しています。しかしお役人や法曹界の人からは無視されていますね。できもしないことを求められ、できなければ罰せられるとなれば、待ったなしの現場の人間は自分が標的とならないよう逃げまわるしかありません。それが進行しつつある医療崩壊の現状です。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午前 2:28

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    それはさておき、臨床をやっていると普段から皮肉や反語的なきつい物言いが多くなるものですから、自分のコメントを読み返すとまじめな基礎医学や社会医学の先生方が読まれるとかなり失礼な言い方になっていますね。弁解じみておりますが、個々の法医学の先生方には決して敵意や悪意は持っておりません。臨床医に比べると研究の費用や環境の面において苦労が多いのにもかかわらず、地道に業績を積み重ねれておられる姿は日頃より尊敬しております。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午前 2:39

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    外科学会のガイドラインを読むと「過誤があったかどうかは、専門的な詳細な検討を行って初めて明らかになるものであり、まさに民事訴訟手続の過程において文献や鑑定の詳細な検討を経て判断されるのが相応しい事項である。」とも書いてありますが、警察の捜査は受け入れないけど、民事訴訟は受け入れると言うことなのでしょうか。それが現場の総意であるというのならば、それはそれで構わないと想います。

    [ - ]

    2007/2/4(日) 午前 3:04

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    ところで、「過誤があったかどうかは、専門的な詳細な検討を行って初めて明らかになるものであり」とありますが、これは司法解剖(つまり、警察への届け出)以外の何を意味しているのでしょうか。

    [ - ]

    2007/2/4(日) 午前 3:07

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    SOさん、yesmytnnさん ちょっと見ぬ間に、生産的ご意見ありがとうございます。 今後は医療の安全・安心のための死因調査を行ったうえで、あまりに酷い悪質な過誤事例だけを罰するという方向性が求められていると感じますし、それは、臨床医、法医学者、法曹関係者とも意見は一致しているようです。いずれにせよ、既存の制度をベースに考えても、後ろ向きな議論になってしまうので、今後どうするかが大事でしょうね。

    [ ももちゃん ]

    2007/2/4(日) 午前 11:51

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    私としては、将来は解剖機関や、調査機関のありかたを変えた上で、異状死届出は、医療の安全安心のためにも法医学会のガイドラインが採用されるべきだと思っているのですが、いかがでしょうか。また、新たな機関を作った場合に問題になるのは捜査権の担保の問題です。新設機関に捜査権は担保すれば、完全に警察から独立できるのですが、担保しない場合は、新設機関は警察のためのスクリーニング機関にならざるを得ないようです。

    [ ももちゃん ]

    2007/2/4(日) 午前 11:52

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    解剖機関や調査機関のあり方を変えた上でというのには同意見です。医療事故・医療過誤において医療従事者個人の責任を追及されるとなると、保身のために再発防止に必要な情報が隠匿、隠滅、黙秘されてしまいます。専門性が高い故、世間一般の事件・事故に比べそれが可能ですから。しかしそれでは同じ過ちが時と場所を変えて何度も繰り返されることになり、その結果医療の受益者である患者サイドに不利益が及びます。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午後 0:42

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    もし警察の捜査、司法の一罰百戒で臨床医学界が医療過誤の防止に熱心になるだろうという思惑で産科医の逮捕劇となったのであれば、問題に対する検察の認識は根底で間違っています。ヒューマンエラーはゼロにはならないし、すべての病気が治療により完治することなどありえません。確立されていない医療では結果が死となることもかなりの率で存在します。医療事故・医療過誤をなくす確実な方法は医療行為を行わないこと以外にないことが臨床医にはわかっていますから、締め付けるほど医者がいなくなる結果になります。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午後 0:48

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    医療事故・医療過誤に遭われた方には感情的に納得しがたいかもしれませんが、アメリカの制度であるように、システム上の欠陥であれ個人のミスであれ原則として当事者の過失については免責することを条件に包み隠さない情報を当事者から収集し、それらの情報を専門の人間が分析して再発防止策を検討・一般化したうえでオープンにするような仕組みにしないと医療事故・過誤を減らすことはなかなかできないと思います。 削除

    [ SO ]

    2007/2/4(日) 午後 0:49

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    SOさま おっしゃるとおりです。ところで、福島の件に関しては、検事さんの多くも、何で逮捕・起訴したのか首を傾げてますので、今後はコンセンサスは得られやすいのではないでしょうか。ただ、福島の件も、臨床の先生にとって敵は身内にありといった印象も持っています。検事にアドバイスをした臨床医の先生が何を言ったか不透明ということがこの件での疑心暗鬼をさらに悪化させたような気がします。今後は制度の改革が必要と感じます。

    [ ももちゃん ]

    2007/2/4(日) 午後 1:57

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    ただ、この問題、臨床の方が、最初厚生労働省に駆け込んだというのも、話をややこしくした気がします。本来は、警察庁と法務省の問題も大きいわけで、いまだに折衝がうまく行ってないのも、臨床の偉い先生の読み違いがあったように感じます。今後修正できるかどうかがポイントだと思います。

    [ ももちゃん ]

    2007/2/4(日) 午後 1:59

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    法医学の異状死ガイドラインについては臨床の現場との乖離が混乱の原因との考えでしたが、法医学者の立場での見解や思いなど具体的なお話をmomohan 1さまより伺いそのガイドラインの発表の意義について納得できました。日本では臨床の土台となる基礎医学の部分にかける費用と労力が少なすぎるのは医学、医療の維持の面で大きな問題であることは全く同感です。挑発的で失礼な物言いにもかかわらず紳士的にお答えいただきありがとうございました。 削除

    [ SO ]

    2007/2/5(月) 午前 9:30

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    こちらこそご理解いただければ嬉しいです。法医学は死体とばかり接しているのですが、理想的には死体を通して、今生きている方々の安全・福祉・権利維持に役立とうという学問領域です。医療崩壊は我々の望むものと正反対のものですし、その点では臨床の先生のお考えと何ら変わることはないと思います。ただ、あまりにこの領域が未整備なまま放置され、死者を疎かにしてきた結果、最近は死者の祟りか、様々な社会問題が発生しつつあります。犯罪やCO中毒などの見逃しもそうですし、医療関連死で遺族の怒りを納められなくもなりました。

    [ ももちゃん ]

    2007/2/5(月) 午後 5:31

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    厚生労働省などの各役所もそろそろ本気で対策を考えて欲しいですが、中々やる気が出ないようで、困っています。検事さんらの話によれば、検事さん以上に厚生労働省の役人は医療関連死に関する現状認識が甘いらしく、彼らもあきれていたほどです。厚生労働省の役人の多くは、医学部出身者だと思うと、医学部での社会教育の水準の低さに対しても情けなくもなります。複雑な気分です。

    [ ももちゃん ]

    2007/2/5(月) 午後 5:31

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    AceCombat5 The Medical Crisis
    http://www.youtube.com/watch?v=lGVKbUw2WpQ

    いくら医療が進歩してきているとはいえ、医療は未だ(というか永遠に)発展途上な分野であり、その時点の医療技術で最善を尽くしても、どうしても命を救えない…という「医療の限界」が存在する訳で。

    その「医療の限界」に直面し、最善を尽くしても、どうしても患者を救えなかった医師が、警察に腕に鉄の輪を嵌められ、取調べで「あなたは殺人者だ」と言い放たれ、医療ミスではない事が裁判で明らかにされてなお、世間に「殺人医師」「人殺し」と呼ばれ続けている現状では、医師になりたい…と思う者がいなくなっても仕方が無いでしょう。

    「医療の限界」による落命までもが「殺人」として扱われるのならば、「医療の限界」で命を救えない可能性のある分野に携わる医師(特に産科、小児科、救急)は皆「殺人者予備軍」「犯罪者予備軍」という事になってしまうんですから。

    好き好んで「犯罪者予備軍」になろう…なんて人間は、はたしてどの位いるんでしょうかね?

    [ KRTさん ]

    2009/9/30(水) 午後 1:34

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    医療の限界のレベルで患者さんが亡くなった場合まで、刑罰を科すとすれば、それは法の本来の目的とは違うと思います。法は人のためにあるのであって、法のために人があるわけではありません。弁護士や検事の一部の方には、そうした原則を忘れている者もいるのかもしれません。何のために刑罰を法で定めるのか?過失事犯は、厳罰でどの程度予防可能の佳?原点から考え直せば、医師と司法の間の乖離も案外埋まるような気がします。しかし、双方なかなか、原則に立ち返る暇もないのか、溝が埋まらずに時間だけが過ぎているようです。困ったものです。

    [ ももちゃん ]

    2009/9/30(水) 午後 9:49

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