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法医学者の悩み事
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本日、各国の変死体解剖率(行政機関に届け出られた死体の解剖率)について質問があり、色々調べてみた。
WHOでは、全解剖数(法医解剖+病理解剖)÷全死亡数のデータを示しているものの、変死体の何%を法医解剖しているのかに関してのデータは中々ない。
そんな中、アメリカに関しては以下のHPが参考になる。
http://books.nap.edu/openbook.php?record_id=10792&page=12
2001年に調査を行ったところ、39の州から回答があり、司法当局の取り扱った175000体の死体のうち、9万が解剖されたとのこと。つまり、アメリカでの変死体解剖率はおおよそ50%程度ということになる。

さて、イギリスの場合はどうか。
J Clin Pathol.2001; 54: 279-284
この論文によれば、スコットランドを除く英国(England & Wales)では、コロナーに報告された死亡事例の62%が解剖されているとのこと(変死体解剖率)。一方、スコットランドの解剖率は41%らしい。

ドイツの場合はどうか。
ドイツはヨーロッパの中で今いちなのは有名で、未発覚殺人が発覚数の倍あるといわれている。
Dtsch Med Wochenschr. 2002 Apr 12;127(15):791-5
によれば、「ドイツの法医解剖数は、昔から全死亡数の2%の過ぎず、ヨーロッパの中で驚くべき低さ」と酷評されている。
また、
http://www.forensicmag.com/articles.asp?pid=9
にも、ドイツの死因究明制度での犯罪見逃しの危険性が指摘されている。ミュンヘンは、全死亡数の3.4%が法医解剖(司法解剖しかない)され、ミュンスターでは、1.3%が法医解剖されるので、ミュンスターでは殺人などの犯罪見逃しの可能性が高いと書いてある。

さて、日本はどうか。日本の変死体解剖率(法医解剖数/行政に届け出られた死)は、監察医制度のない地域では4%とされている(監察医制度のある地域では20%)。この数字は、アメリカやイギリスの10分の1に過ぎないのだ。ヨーロッパで最悪のドイツと比べる場合は、パラメータが違うので、別の数値を使う必要がある。日本の全死亡数は108万、法医解剖数は、医務院の行政解剖を入れても13600体なので、全死亡数に対する法医解剖率は1.26%に過ぎない。これは、ドイツ全土と比較すると6割程度の数値で、犯罪見逃しが多いと書かれているミュンスターレベルの数値だ。またドイツ国内の法医解剖率の地域格差は、5倍あるとされるが、日本における全死亡数に対する法医解剖率(平成17年度)は、鹿児島0.1%、埼玉0.29%に対して、神奈川5.5%(胡散臭い)、東京3.3%、大阪2.8%、兵庫2.4%となっており、なんと33〜55倍の地域格差があることになる。また監察医制度のあるなしで比較すると、監察医制度実施地域(東京、神奈川、大阪、兵庫)での法医解剖数/全死亡数は3.5%と、ようやくミュンヘンレベルに達してはいるものの、イギリスやアメリカには到底及ばない状況だ。一方、監察医制度の無い地域(人口9000万人が居住)では、0.5%と、未発覚殺人がかなりあると酷評されているドイツのミュンスターより、相当ひどい。まあ、ドイツにも、立派な法医学研究所という設備があるわけで、そんな施設が存在しない日本と比較するのは、ドイツに申し訳ない感じもする。なにせ、横浜では開業医個人が司法解剖するレベルでもある。なんとも凄い状態を日本政府は放置しているものだと思う。こんな状態で一体日本はどれだけの事件・事故を見逃しているのだろう。パロマ事件や、数々の保険金殺人の見逃しは、氷山の一角だろうし、ある意味発覚するより、見逃されて当然といえるのだろう。

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そのほか参考となる文献としては
International Journal for Quality in Health Care 5:319-323 (1993)
では、スウェーデンの法医解剖数は全死亡数の10%以上と記載されている(日本の10倍)。

American Journal of Forensic Medicine & Pathology. 26(1):70-77, 2005.
https://oa.doria.fi/dspace/bitstream/10024/2354/1/fromfind.pdf
では、フィンランドの法医解剖数は、全死亡の21%であると記載されている(日本の17倍)。

BMC Public Health 2006, 6:40
http://www.biomedcentral.com/1471-2458/6/40
には、リトアニアでは、全ての変死体が解剖されているとある。

J Clin Epidemiol. 2003 Sep;56(9):891-5
では、オーストリアに関して記載がある。ウイーンでは変死体は全例法医解剖されるものの、その他の地域はイマイチで、死亡場所が解剖施設から遠ざかるほど、解剖率が減ることが記載されている。一方では、国としての解剖率は28.7%もあるらしい。

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    チームバチスタの映画を見て解剖率の低さに興味を持ち、読ませていただきました
    幼稚な憶測ですけど、日本の隠蔽体質とあってるんでしょうね
    権威や勢力が成長していく過程で決まった割合で見過ごしは必要なんでしょうが
    戦後、様々な幸運と日本人の気質が上手く融和して出来上がった今の社会
    エリ-ト層でない私には、不況に対応できずに傲慢に走る営業者、起業家が増えてきている感じがします
    特需なければ、このまま成り立っていけるのか不安です
    話が自分語りになり、すみませんでした

    [ hih*s*ne ]

    2014/4/2(水) 午前 2:02

    返信する

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