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法医学者の悩み事
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木を見て森を見ず

大野病院医療事故:鑑定医を証人尋問 癒着範囲めぐり攻防−−公判 /福島(5月26日 毎日新聞)


 県立大野病院で04年、帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(39)の第5回公判が25日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であり、死亡女性の子宮を病理鑑定した医師への証人尋問が行われた。当時の女性の胎盤の状況について、鑑定医は「胎盤が子宮の前壁部分にまで癒着していた」と、胎盤の癒着が広い範囲に及んでいたと証言した。
 鑑定医は、子宮の一部を採取したプレパラートを顕微鏡で観察し、子宮の前壁部分にも癒着の跡が認められたと証言。また「子宮筋層の2分の1程度まで胎盤が癒着していた」とし、弁護側が主張する「5分の1程度」を否定する見解を示した。
 一方、弁護側は鑑定書の補足説明の中で「プレパラートの一部で癒着が認められたら、その標本の採取部位全体に癒着胎盤があるとみなして範囲を推定した」という記述があることを指摘し、鑑定の信用性に疑問を投げかけた。鑑定医はこの日、「同じ標本の中でも癒着胎盤がある部分とない部分がある」とも証言した。【松本惇】
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この鑑定を担当させられた病理の先生は大変お気の毒だ。裁判にまで呼ばれ、新聞で弁護側から信用性を疑われたことまで書かれている。
子宮全体が残っているわけではないようだが、子宮の組織片のみで何がわかるというのだろう。議論全体が矮小化しているように感じる。これも、解剖による証拠保全がなかったことも影響してないとはいえないだろう。

正確な法医学的な鑑定は、健全な証拠保全(解剖と各種検査)と、詳細な状況調査(医療事故の場合は臨床経過)の上にしか成り立ち得ない。法医学的鑑定において、病理診断は、アルコール等ある特定の薬物についての検査結果と同様、単なる枝葉、パズルのひとかけらにすぎないといえる。既に子宮の一部しか残っていない状態では、正確な鑑定を行うことは不可能とすべきであり、むしろ鑑定に応じてしまった鑑定人は本当にお気の毒としかいいようがない。もし彼を医師もマスコミも非難することがあるのなら、それはそれでただの苛めといっていいだろう。それゆえ、批判はすべきではないと思われる。

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    こんばんは、はじめまして。足跡から参りましたkaorinと申します。
    福島大野病院の件、むりやり刑事事件に仕立てた印象があり、以前から興味を持ってウオッチしています。
    法医学鑑定のお話、参考になりました。 削除

    [ kaorin ]

    2007/5/27(日) 午前 2:03

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    またお立ち寄りください。
    この裁判から学ぶべきことは多いでしょうね。ただ、何かを学べるかどうかも、医師次第なところもありますが。

    [ ももちゃん ]

    2007/5/27(日) 午前 5:46

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    解剖や病理診断に限界があるのは当然と思いますが、
    正確な鑑定が不可能ならば、そう証言すべきであり、その意味で批判されても仕方ないのではないでしょうか?
    わからないことはわからないということは重要と思います。
    それとも、鑑定に応じた上でわからないということは、許されない雰囲気でもあるのでしょうか? 削除

    [ 循内勤務医 ]

    2007/5/27(日) 午前 10:33

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    病理結果と臨床診断が乖離することは当然ありうる。

    法律的問題は、予見可能性と結果回避義務である

    病理結果から予見可能性の推測は可能であっても、実際に可能であるかどうかは確率論の問題であり、診断精度の問題でもある。法律は予見できない事態に対して、予見義務を課していない。つまり予見できないものに、過失の罪を問うことはできない。

    臨床診断と病理との互いのフィードバックは必要だけれど、病理結果が全てではないということを、鑑定医は意識すべきだろう

    検察に買われてる犬であれば、検察に尻尾は振るだろう。患者に買われている犬であれば、患者に尻尾を振るだろう。

    餌に釣られる犬に、公平な鑑定ができるのかどうか?

    鑑定医には、犬にならない仕組みが必要なのではないか? 削除

    [ Med_Law ]

    2007/5/27(日) 午前 10:39

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    鑑定人には、公平さ、公正さが求められています。従って、わからない場合は、わからないとはっきり言うべきだと思います。
    起訴前の事例では、検察・警察側も公平・公正な鑑定を求めています。裁判を維持するためにも弁護側からみても文句の出ない鑑定結果が必要だからです。しかし、一度起訴してしまった後の事例では話が全く異なります。検察側も、弁護側もお互いに有利な鑑定人を探してくる傾向があります。

    [ ももちゃん ]

    2007/5/27(日) 午後 0:41

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    そうなってしまうと、言葉巧みに、まずは結果ありきの鑑定嘱託を申し出てきますが鑑定人は自分のためにもそれに惑わされてはいけません。行き過ぎた鑑定をしてしまうと、批判にあいますし、その人は鑑定人としてその後信用されなくなる可能性もあります。惑わされないためにも、鑑定人には経験が必要とされます。今後第三者機関を作って、医療事故を調査するとしても、同じことでしょうね。

    [ ももちゃん ]

    2007/5/27(日) 午後 0:47

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    今後は、それこそ、弁護側にも検事側にも犬にならないような鑑定人を養成していく仕組みづくりが求められているでしょう。果たして、それだけの覚悟が一般の病理医の先生にあるかどうかは不明なのですが、、、、

    [ ももちゃん ]

    2007/5/27(日) 午後 0:48

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