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4.憲法問題(愛敬浩二、ちくま新書)
改憲派の側から出される「60年経って古くなった」、「押し付け憲法だから」、「軍隊を一切持たないのは非現実的だ」、「解釈改憲は限界で、九条は軍事大国化の歯止めになっていない。」、「九条以外にも環境も問題とか見直しが必要」と言ったさまざまな主張に対し、ある日の狩田ゼミの風景と言う設定で一つ一つ答えていくと言う形でこの本は書かれている。
押し付けか否かではなく、要はその中身だと言うことをアメリカ建国史から次の例を引き合いに出している。
南北戦争後に連邦政府は奴隷制を所有する南部諸州に対し奴隷制を廃止する州憲法を「押し付けた」事を例として取り上げ、「私はこの押し付けを支持する。」「また憲法を押し付けられたのは日本だけであるとするのは不勉強である。」とし、「この押し付けから140年経過した現在、世界中の殆どの人がこの(押し付けの)憲法修正を支持しているではないか」としている。
「60歳定年論」に対し、実際上の黒人の地位や人権が著しく向上するのは20世紀後半であって、アメリカの建国の精神である「自由」が実現するのに、長く曲がりくねった道を辿りながら200年も掛かった。1947年に5月に受胎した日本国憲法の理想が、六十年という「短い」妊娠期間を経ても、まだ完全に「出生」しないからといって、その理想を放棄する理由にならない。
また日本の憲法制定過程については、歴史の「もしも」は禁句だが、と断った上で、「もし日本政府が毅然とGHQ側の要求を拒絶して、GHQ自らが憲法草案を日本国民に提示していれば、日本国民の多くがそれを熱烈に支持していたのではないか。」と、日本国民にとっては押し付けは無かったと主張している。
また憲法が通過後、GHQの憲法起草に携わった人々に、吉田茂首相から、金の紋章がついた銀杯が贈られたが、「押し付け」られた当の政府が「押し付け」に感謝したと言うエピソードも紹介している。
この本は護憲派が普段ぶつかる色々な疑問を喩話を多用して、護憲派の論理を構築しようとしている。参考になるポイントも多いけれど、その喩話が本当に適切かどうか疑問に感じる部分もあって、もっとストレート議論を展開して欲しいなというのが正直な読後感です。
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