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5.日本国憲法の論点(伊藤真、トランスビュー)
伊藤真さんは司法試験のための伊藤塾の塾長で短期合格者を多数輩出する「伊藤メソッド」で有名な方だそうだ。この本は「高校生からわかる日本国憲法の論点」と題されているように憲法全体を分かりやすく、かつ明快に解説されている。
押し付け論は、自分の草案をGHQに否定された松本烝治が、押し付けの事実を1954年に証言した事から始まるが、それは「国体護持」と言う目的を果たせなかった人たちの怨念のようなものであり、GHQによる占領は、旧体制を維持したいと考えている人間にとっては「屈辱」であり、人権が抑圧されていた国民にとっては「解放」であったので、「押し付け論」とは権力側の人間による感情論である。としている。
感情論とは別に、国際法的に見た場合の成立過程の正当性の検討が2つの視点から必要だとしている。
1つ目は「自立性の原則(自由意志に基づいていたか)」を満足していたかどうか?
憲法草案はGHQから渡されたが、それ以前に一種の休戦協定であり、「国民主権の採用」、「基本的人権の確立」と言った条件が含まれているポツダム宣言を自らの意思で受諾している。日本はそれに合致する憲法をつくる義務があり、連合国は遵守を求める権利があった。したがって、ポツダム宣言を受諾した時点で現行憲法が示す価値観を自ら選び取ったのであって、押し付けではない。としている・
法的側面の2つ目には、「他国を占領するときには他国の基本的な法制、制度を尊重しなければならない(したがって国体の護持も否定してはならない)」というハーグ陸戦法規に違反していると言う議論がある。しかし、ハーグ陸戦法規は交戦中の占領に対して適用されるものであって、この場合はハーグ陸戦法規よりも休戦協定(ポツダム宣言)が優先されるとしている。そしてこれは単なる個人的な見解ではなく、憲法学的に決着がついている問題である。としている。
また一方で、「憲法は常に押し付けられるもの」である、その理由は、憲法は国民から権力者に向かって「押し付けられるもの」であって、国家権力に歯止めをかけることが目的であるから、権力側の人間が「押し付け憲法」と感じるのは当たり前であり、国民の側がそれを押し付けと考える必要は全く無い。
さらには、イギリスの権利の章典、フランスの第3共和国憲法のように、憲法は歴史的、世界的に見ても、戦争後の大変動の中で制定されていくので、制定過程に問題を抱えていることが多い。ともしている。
憲法の制定過程的は国際法に合致しており、国会を賛成多数で通過しているので国内法的にも問題が無い。「押し付け」は旧体制を維持したい権力者の感情論であり、国民にとっての押し付けは無かった。と言うのがまとめです。
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現憲法は押し付けられた憲法ではないと思います。21世紀にふさわしい憲法なのです。60年が過ぎておりますから多少国民の権利義務の点でみなをすところがあると思いますが、全面改正の必要はないでしょう。
2006/10/10(火) 午前 10:07