【インサイダー ―― 映画と筆記具(3)】来月から日本でも公開される映画 「フィクサー(原題:Michael Clayton)」 の試写会へ行ってきました。大手製薬会社が販売した、農薬の毒性に関する事実の隠蔽をめぐり、 その企業と弁護士事務所、農薬の被害者らが、物語を紡いでいきます。 訴訟や事件もさることながら、関わる人々の“迷い”や“葛藤”などを丹念に描いた作品です。 なかなかの秀作でした。 今回の「映画と筆記具」は、それを観ながら思い起こした、私にとっての“名作”の1つ、 「インサイダー」です。 ■ 銃声のない、荘厳なる戦場1999年、マイケル・マン監督。アル・パチーノ、ラッセル・クロウ主演。タバコ会社の研究開発担当副社長だったラッセル・クロウが、 社の方針に沿わない人物として解雇される。 彼と出会ったTVプロデューサー=アル・パチーノが、 人々のために、隠された事実を告発するよう、決断を促すが……。 実話に基づいた映画で、 企業名や製品名、テレビ局名、番組名などをすべて実名で描いています。 法的闘争、大企業と解雇された人間との格闘、 ジャーナリズムを担う公器でありながら同時にやはり企業でもあるTV局と報道人の格闘……。 「銃声のない、荘厳なる戦場へ」というコピーでしたが、絶妙なコピーだと思います。 上が、ラッセル・クロウが、解雇された後、 誰との接触も避けて、自分の書斎にこもっているシーン。 それでも彼は、自分が知ったことを整理しています。 握られているのは、モンブランのマイスターシュテュックのボールペン。 真ん中が、アル・パチーノが、 コンタクトを取ろうとしても拒否するラッセル・クロウに、手書きのファックスを送る場面。 何か、商品の販促用広告が書かれているボールペン。 下が、タバコ会社の社長が、ラッセル・クロウを呼び出し、 解雇後の守秘義務契約を、さらに強めようと交渉している場面。 実際には、彼のみならず、家族の安全も保証しないという“恫喝”をしています。 クロスの金張りボールペンのデスクセットのように見えますが……。 私の持っている「インサイダー」のDVDには(最も初期のものだと思います)、 美術担当や監督が、セットや小道具にこだわっていたことを紹介する“オマケ”映像も収められています。 それを見ると、かなりの練りようです。 恐らく、用いられた筆記具たちも、 その人物の経歴や仕事ぶり等との整合性がきちんと考えられているのだと思います。 例えば、主人公をラッセル・クロウだけにしてしまえば、2時間以内に収まるでしょうし、 逆に、アル・パチーノだけにしても、同じような時間の映画になったでしょう。 というか、普通はそれが限界だと思います。 この「インサイダー」の醍醐味は、2人の主人公という、 ともすれば窮屈になったり消化不足になったりするかもしれないリスクを乗り越えて、 「1+1=2」以上の、「+α」を目指して構成を練り上げたことにあると思います。 ベースが「実話」ですから、さらに事情は複雑だったと思いますが……。 こういう映画を観ると、 「アメリカ」とか「アメリカ的」と言われるものの大きさを見せつけられます。 人々の健康を冒してでも、利潤を追求してしまう企業の“とんでもなさ”も、 それを暴き出し、間違っているものは間違っているという姿勢を貫き、 “とんでもなく”ドラマチックに正義を実現していく姿も、 「アメリカ的」なんですよね……。 「銃声のない、荘厳なる戦場」での武器は、「言葉」です。
自分の存在をかけた「言葉」です。 日本で、もっと不正を糾す力が増すには、 この「言葉の力」を、もっと高める必要がある――私の自戒です。 |
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とっても立派なブログですね。
参考にさせて頂きますね。
また、お伺いしま〜す。
2008/4/23(水) 午前 8:40 [ 山本かおり@元アナウンサー ]