ビンテージ・モンブランの備忘録

毎週土曜日が定期アップ。心が温められたり揺さぶられたときには、イレギュラー投稿もあります。

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【「文房具 56話」 ―― 文化を守る力】

東京は、雨がしとしと――。季節はずれの台風も接近しているようです。
第2土曜日ですので「文献紹介」。
折に触れ、幾たびも開いて、しっとりとした心地を味わっている1冊です。

■ 「文房具店にない文房具」を愛でる心
私は、フランス文学を志していたわけではありませんが、
渡辺一夫さん(仏文学者・評論家)の著作を耽読していた時期があります。
「ユマニスト」という言葉の真意というか、
「ユマニスト」として生きるすべを、
行間から感じさせてくれる渡辺さんの文章が、とても好きでした(もちろん今でもです)。

そんななかで、出会ったのが、串田さんの「文房具」でした。
串田さんは、渡辺さんの教え子でもある、哲学者であり詩人です。
最初に手にしたのは、古本屋で見つけた白日社のもの。
いつしか、どこへやったか分からなくなってしまったのですが、
文庫化されて「56話」になったものを、また買い求めていました。

タイトルの通り、自分が身近に使っている文房具について、
1つずつ、取り上げながら綴られたエッセー集です。

ご自身の思い出も織り交ぜながら書かれた1編1編には、
何とも言えない趣があります。
時代が違いすぎて、私の子供などには、イメージできない話もあるようですが……。

戦中・戦後のご苦労がうかがえる話のなかには、
文房具が手に入りにくくなり、代用品を使うようになったエピソードもたくさんあります。
そんな代用品でも、大切に使うなかで、手放せなくなる気持ち。
買い換えられるのに、そうしたくない気持ち。
そんな「文房具店にない文房具」を愛でる心に触れるたびに、
今の自分を見つめ直さずにはいられないのです。
それは、その底流に、ユマニストとしての矜持を、
ずっしりと感じさせてくれるものだからかもしれません。

「文化を守る力」と題された一文があります。
――戦中の物資欠乏。インクにも事欠き、紙も劣悪に。
そんななか、ある人はあっさりと、ないものはない、字さえ書ければ構わないと切り替えて平然としていた。
ある人は、なくともどこかにあるはずと、なんとかそれを求め歩いた――
そんな人々の様子をつぶさに見ながら、串田さんは、こう思ったそうです。

  文化というものは、ある底力を持った根強さはあるが、
  その上に築かれている部分は意外に脆いものであって、
  愚かな権力者が現れて、その文化を無駄なものだと無茶なことを言い出すと、
  簡単に崩れて、抵抗力がない。
  みんな落ちるところまで落ちると、却って気分がさっぱりしたような錯覚を抱いてしまう。
  
  実は私はそれが恐ろしいと思った。
  その点で、文房具類は、戦争中に質は落ち、殆ど役に立たないような代用品も現れたが、
  ともかく文化を守ろうとする抵抗があった。
  私はそれらの記念として、割り箸に釘をさしたようなコンパスだの、
  ボール紙の雲形定規だの、アンプルに近い壜に入ったインキなどを大切に保管している。

私自身が、読み返し続けたい1冊です。
そして、読み継がれてほしい1冊です。

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