【僕が虜になったワケ ―― PIXの口金】第3土曜日ですので、テーマ研究ですが、最近は仕事が混んでいて、充分にブログの記事作成や写真撮影の時間がとれず――。 でも、無事にアップできたので、とりあえずホッとしました。 今回は、PIXの「口金」です。 ■ PIX独特の感触を支える1点前回のテーマ研究で取り上げた 「芯」 の太さ、良さが私がビンテージ・ペンシルを愛用している最大の理由だとすると、 今回取り上げる「口金」は、 PIXが他のペンシルと一線を画するものだと、私が感じているポイントです。 独特のノック感、そして、芯の安定感を生み出しているのが、 PIX独自の「口金」の仕組みなんです。 写真でご覧いただけるように、 PIXの口金には、3本のスリットが、螺旋状に切り込まれています。 (写真は1方向からですので、それぞれ1本ずつしか見えませんが……) 螺旋状にスリットを切り込むことによって、 口金の出口が、バネの効いた状態で、芯と接することになります。 緩くなく、さりとて締めすぎず――絶妙な力で、芯をホールドしてくれています。 現代のノック式のシャープペンシルは、基本的に、 口金の先端部は、ただの筒。いわば、芯のガイドです。 ノック式のペンシルの場合、 ノックしたときに芯が飛び出さない程度に締める作用が必要なのですが、 通常はその機能を、内部のゴムパッキンで果たしています。 何かのはずみで、このゴムをなくしたシャーペンは、 ノックするたびに芯が飛び出す――みなさんも一度は経験されているのではないでしょうか。 PIXはそのパッキンの機能を、口金のスリットで行っているわけです。 このPIX独特の口金がもたらすホールド感を、 言葉で表現する能力は、残念ながら私にはありません(汗)。 でも、仕事柄、ものすごい勢いで書く、書き続けることの多い私には、 他に代え難い安定感なんです……。 万一、このスリットがゆるんでしまった場合は、締めてやる必要があるわけですが、 これにはちょっとした道具が必要です。 我流にやると、出口が正円でなく楕円になってしまい、 お釈迦になってしまいますので、あまりおすすめしません。 きちんとしたいなら、やはり ユーロボックス さんが一番かと……。 私は、ちょっとした調整なら家できるよう、見よう見まねで道具を作りましが、 そのご紹介はいつの日か、また。 それにしても、こんなマニアックな話にいつもお付き合いくださっている読者の皆様には、感謝です。
私は、どんな多忙でも、自分が好きでやっていることがあるというのは、とても贅沢なことだと思っています。 でも、そんな贅沢続けられるのは、皆さんのおかげ。 “誰かが、「次は何を書くんだい?」と待ってくれているかも”と思うからこそ、 いい緊張感を持って、好きなことを続けられるんですよね。 本当に、いつも読みに来てくださって、ありがとうございます。 |
PIX総論・雑記
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【戦前モデルの「ロゴ」―― PIX-72G】いろいろ録画してあった年末年始の特番を、時間を見つけて観ています。多くは、少し観て、時間の無駄かなと思って消してしまうのですが、 NHKの 「プロフェッショナル 仕事の流儀」 で放送された 「イチロー・スペシャル」 は、 挑戦し続ける人だけが感じられる“SOMETHING”を、 野球には暗い私にも、ビンビン伝えてくれる良作でした。 むしろ、巨大な人物像過ぎて、取材したものを整理し切れていないものもあったのでは…… と思っていたら、追加篇ともいうべき 「トークスペシャル」 があるそうです(22日午後10時)。 ちょっと期待しています。 さて、第3週目の土曜日ですので、「テーマ研究」。 「研究」というと大袈裟ですが、 ちょっと視点を変えながら、ビンテージ・モンブランを見つめてみたいと思ってます。 ■ 想像、空想、妄想……「違い」が楽しみをふくらます私がビンテージ品を楽しんでいるポイントのなかで、「個体差」って大事な要素だと思っています。 同じ製品なのに、違う――現代の「商品」と呼ばれるものには、受け入れ難いことですね。 でも、これは俗に言う「アタリ・ハズレ」とは異なります。 今回見るのは、戦前のモンブランのPIXのロゴ。 数百本のPIXに触れてきましたが、1本だけ、違っているんです。 写真の左側は、1936年のクリスマス期の広告です。 有名なものですので、ビンテージ・ファンの方はご覧になったことがあると思います。 当時は、手書きなわけですが、かなり精緻に描かれていますので、 【PIX-72G】のロゴ部分を拡大してみました。 上の行に「MONTBLANC」、その下側に「Pix」。 これが、1934年のPIX発売以来、変わらないスタイルだと思っていました。 ところが、違うものがあったということで――写真右側が、その【72G】です。 PIXなのに、そう名乗っていないんです……。 「MONT-BLANC」という文字の間に、モンブラン山が描かれているロゴです。 このロゴは、主に1920年代、 ペンシルで見ると、回転繰り出し式の多くに見られたものです。 (例えば、 【10K】、 【22P】、 【44】、 【03】 などです) どうして違うのか――。 こういうタイプの個体差については、ほとんど“答え”は分かりません。 でもその分、想像がふくらむんです。 「軸を製造していた工場が、それまで使っていたペンシル用のロゴを間違って打ったのか?」 「万年筆とセット販売されたもので、万年筆のキャップのロゴに合わせたのか?」 「でも、この【72G】のデザインはマイスターシュテュック系統だから、 万年筆でも、このロゴは使われないはずだなぁ」 「では、ロゴが確定する前に、サンプル生産したものか?」 ――ここまでくると、妄想かもしれませんが(笑)。 こんな想像を、少しでも“正解”に近づけてくれるのは、 より多くの個体を見続けることだけなんですよね……ビンテージの危険な“落とし穴”の1つです。 いつか、同じロゴをもったPIXと出会えたらと思っています。 ちなみに、広告でセットになっている万年筆は、何でしょうか? 特徴的な「蛇型クリップ」や、丸めていない天冠、 そこに刻まれた「MONTBLANC・・・」の文字、 軸の縦縞はロング・インク・ウィンドー、 尻軸近くに刻まれた「D.R.P.・・・」の文字……。 こうしたことから推察すると、 小振りな【13X】シリーズ、恐らく【134】でしょうね。 この年のクリスマス商戦から投入されたのが、 テレスコープ式のピストン機構を搭載した マイスターシュテュック【134】と【136】だったわけで、 (【132】や【L139】は、1年遅れでした) その“最新モデル”で広告が打たれたんだなぁ……。 今見ると、レトロな雰囲気たっぷりのポスターですが、
当時は、最新鋭の斬新さを伝えるものだったわけで、 広告が伝えてくれる、そうした感覚のギャップも、楽しいものです。 |
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【日本での60年代の広告――自由研究(3)】 前回、モンブランの製品の正式輸入が60年代に入ってからであったことに触れました。 今回、関連でご紹介するのが、 【PIX−15】と同じ10番台のマイスターシュテュック万年筆【14】が掲載された広告です。 ■ 各社のメイン・モデルがずらり! ■ 媒体は、1965年(昭和40年)2月号の月刊『文藝春秋』。 私は仕事の関係で、調べもので図書館を訪れることが多いのですが、 これはそうした時に、偶然見つけて、カラーコピーしたものです。 銀座和光の広告です。 ともに掲載されているのは、各社の当時のメイン・モデルたち。 ペリカンが【400NN】(1957年〜)。 とがった天冠や、それまでのモデルに比べて先細になったクリップで、それと分かります。 パーカーは【45】(1960年〜)。 独特なデザインのペン先部分から、判別できますね。 そしてモンブランが【14】(1960年〜)。 ただ、もしかしたら、小振りな【12】の方かもしれませんが……。 でも、一番上部の【14】が握られている写真、 自分と比べると、かなりペンの後ろを持つ握りで、気になってしまいます。 まぁ、ペン先もこんな真横を向いていたら書けないでしょうから、 撮影用スタイルということでしょうか(笑)。 ■ 万年筆は高くなったか? ■ この広告をおもしろく思ったのは、 各社の商品の価格帯が表示されていたからです。 ペリカンが、1800円から9万円。 パーカーが、2000円から1万5240円。 モンブランが、3500円から9万円――と書かれています。 一見したとき、最低価格だけを見ると、“今より手頃だったのかな?”と感じましたが、 ペリカンやモンブランの最高価格を見ると、“すごい高級品だなぁ”とも……。 そこで、当時の貨幣価値の雰囲気を知りたくて、 「大学卒業者の初任給」を調べてみました。 すると、 1965年(昭和40年)で、2万3000円。 2006年(平成18年)は、20万円強。 文字通りの“1つ桁が違う”って感じです。 そうやって、改めて当時の万年筆の価格を考えてみると、 ……決して安くはないですね。 むしろ、最高級品は、ものすごく高い気がします。 恐らく当時の「モンブランの9万円の万年筆」とは、金無垢の万年筆【94】あたりでしょうが、 実に、初任給の4倍! もちろん、単純に大卒者初任給だけで比較することはできませんし、 60年代といえば、なんと言っても、日本は高度経済成長期のまっただ中。 毎年10%前後も経済成長を遂げ続け、 個人消費の購買意欲が、今とは比べものにならないほど高かったわけで……。 それでもやはり、当時も、 「いいものは、相当な決断が必要な価格だった」のではないでしょうか。 ■ 広告は時代を映す ■ 1枚の広告で、結構楽しい“思考の旅”“タイムトリップ”が楽しめます。 価格の面ばかりでなく、 宣伝の「ご婦人にも人気がございます」なんていう謳い文句も、 「ウーマン・リブ」という言葉が誕生する前夜の、社会の空気を伝えているように思います。 ちなみに、左側ページは、女優の野際陽子さん。 来歴を見てみると、 もともとはNHKのアナウンサーで、その後フリーになっていたのがこの写真の時期。 女優としての活躍はもう少し後からのことのようです。 私のイメージには、“姑役”の野際さんしかありませんでしたが、
いわゆる才女としてグラビアページを飾っているわけです。 女房は、現在放送中のTBS「地獄の沙汰もヨメ次第」を見て、 野際さんのどぎつい姑ぶりを笑いながら、暑さを忘れようとしているようです。 |
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ボルテール――自由研究(2) ■ ボルテールはボルテールだった?! ■ 今回は、結論から申し上げます。 PIXの「L」シリーズには、“ボルテール”という愛称があったのです。 ■ 挑発的なPIXの広告 ■ 写真左側にあるのが、 1935年――PIXが正式に販売されはじめた翌年の、PIXのポスターです。 大きく「Blamage!」と書かれていますが、 これは“恥ずかしいよね!”とか“恥を知れ!”といった意味合い。 描かれている図柄をご覧になれば分かる通り、 鉛筆を使っている人に向けられた言葉で、 細かく書かれた説明文には、要するに“進歩的な人はPIXを使うものだ”と謳っています。 今の時点で冷静に見ると、“そこまで言いますか”というほど過激で挑発的ですが……(笑)。 でも、こうした広告をうつくらいですから、 モンブランとしても、 PIXには、実用品としての相当の自信があったという証左でもあると思います。 ポスター下側の文章の4行目に、 描かれた「L」シリーズのPIXを指して、“ボルテール”と呼んでいます。 ■ 「L」シリーズの特異性 ■ PIXの多くは、その素材の使い方や、クリップ、リングなどのデザインは、 同時期の万年筆とマッチするようになっています。 戦前もそうした傾向はありました。 しかし、「L」シリーズには、対応する万年筆がありません。 これほど特徴的、かつ魅力的なデザインですから、 あってもおかしくないと思うのですが……。 実際には、プロトタイプ(試作品)としてのみ存在したようで、 その写真は「The Montblanc Diary & Collectors Guide」(J.Rosler著)で見ることができます。 どういった理由で製品化されなかったのかは不明です。 逆にPIXファンの私などにとっては、 PIXとしての独自性を感じさせてくれる「L」シリーズは、 やはり特別な存在です。 ■ PIXの宣伝の主力だった「L」シリーズ ■ これは私の想像ですが、 この「L」シリーズのデザインは、PIXに特化したかったのではないかと考えています。 一方、PIX独自の広告では、 前面に出てくるのは「L」シリーズ。 その究極の宣伝スタイルが、写真の右側です。 モノクロ写真ですが、 男性そのものが、PIXの「L」シリーズに扮しています。 頭にかぶったノック部と、上着の襟元、更にベルトと、ズボンの折り返し部分が、 すべて金色で仕上げられていたことがお分かりいただけると思います。 もちろん、衣装そのものは黒。 “PIXと言えばコレ!”と 一度見たら忘れられないくらいのインパクトがあったと思います。 長くなってしまいました……。
きょうは8月15日、終戦の日。 あのコスチュームを着ていた笑顔の青年は、第2次大戦の時代をどう生きたのかしら? そんなことを思う日です。 |





